4K修行僧

パナソニックのUHD BDを購入。真の4K映像体験に度肝を抜かれる

~音響もドルビーアトモス対応にしてみた

こんにちは、4K修行僧です

 2015年8月に東芝の55型4K TV「REGZA J10X」を購入して以来、しばらく視聴していたのはフルHDコンテンツだったが、その後、Fire TVやPS4 Proを購入し、ゲームやYouTube、アマゾンプライムビデオなどの4Kコンテンツを家で楽しんでいる。だが、4K TVで一番観たかったのはUHD BD映画だ。

 J10X購入時はまだUHD BDプレイヤーは発売されておらず、その後すぐ、パナソニックが製品を出したが、個人的に不要なレコーダー機能があり(TVで録画できる)、価格も高い(40万円)うえ、当時はまだUHD BDタイトルが少ないと言うことで購入は見送っていた。

 そんななか、この6月にソニーとパナソニックが相次いで、安価なプレイヤーを投入してきた。また、UHD BDタイトルも増えてきた。国内での発表はソニーの方が早かったのでそちらを買うつもりでいたが、最終的には映像コンテンツのオーサリングで定評のあるパナソニックの製品「DMP-UB30」を選んだ。価格は4万2千円だ。

 結論から言うと、大変満足のいく買い物で、想像を超えるクオリティの映像を楽しめる環境が整った。

4K解像度でHDRにも対応するUHD BD

 DMP-UB30を注文したのは6月4日。HDMIハイスピードケーブル(DMP-UB30には付属しない)と、トム・ハンクス主演「ハドソン川の奇跡」とマット・デイモン主演「ジェイソン・ボーン」のUHD BDも注文。こちらはすぐ届いていたので、古来からの伝統に則り、正座してDMP-UB30の到着を待つ。果たして発売日の6月16日の午前中にDMP-UB30が届いた。

 最初に驚いたのは、その軽さ。1.3kgと13型ノートくらいしかない。なんとなく4~5kgのものを想像していたので、配達員から箱を受け取ったとき、あまりの軽さに、違うものが届いたかと思った。サイズも320×191×45mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトなので、設置場所を選ばない。その日は仕事だったので、帰宅してからUHD BDの鑑賞を始めた。

DMP-UB30の外箱。13.3型ノートPCと比べてこの程度のサイズ。軽すぎて中身が入っていないんじゃないかと思ったほど
内容物は、本体、リモコン、電池、電源ケーブル。HDMIケーブルは付属しない
本体正面。トレイ以外はUSBがあるくらいで、かなりシンプル
背面には、電源、HDMI、USB 3.0、Ethernetの端子
最初、PS4 Proのうえに置いてみたところ、PS4 Proのシステム画面などが重くなった。どうやら上面からの排熱が悪くなり、CPUクロックが下がったようだ。今は離して設置している

 ジェイソン・ボーンとハドソン川の奇跡を選んだのには理由がある。じつは4KのUHD BDでも、マスターが2Kでそれを4Kへとアップスケールされたものも多くある。もちろん単純に解像度を4倍にしたのではなく、高画質化処理を加えながらのアップスケールだろうし、従来のBDよりは高画質だとは思うが、撮影やマスタリングが4Kでなされているリアル4Kのものには精細さの面で劣るだろう。

 「realorfake4k.com」では、そういったUHD BDなどのコンテンツがリアル4Kなのかどうかという情報を提供している(ただし、独自調べのようなので、情報に間違いがないのか保証はない)。リアル4Kで、未見であり、観たい作品と言うことで、この2つを選んだ。

ジェイソン・ボーンとハドソン川の奇跡のUHD BDを購入

 UHD BDは解像度だけでなく、色の点でもHDR対応という違いがある。以前書いたとおり(4K HDR対応のPS4 Proと30万のAVアンプを買ってみた。そして、また罠にはまった参照)、REGZA J10Xは4K60pではHDRに対応できず悲嘆に暮れたが、24pである映画ではHDRに対応できる。HDRにより、色深度は8bitから10bitになり、最大輝度も10倍以上になる。また、UHD BDでは色域も広くなっている。こういった点も楽しみだ。

ジェイソン・ボーンの映像は、ちょっと肩すかし

 最初に視聴したのは、ジェイソン・ボーン。なるほど、冒頭のシーンにアップで映し出されるマット・デイモンの顔は、高精細さを感じる。ただ、全編を通じて、室内を含めたやや暗めのシーンではノイズが気になった。この作品は35mmフィルムで撮影されているようなので、フィルム独特の粒状感(フィルムグレイン)が出るのだが、それとは別に感度不足のようなノイズのようなものが見受けられる。それに伴って精細さが失われている。

 現在発売されているUHD BDには、従来のBDのディスクも同梱されている。そこで、ひとしきり見終わった後、BD版を再生し、見比べてみた。

 1時間ほど一時停止したりしながら、いろんなシーンを比較したが、ジェイソン・ボーンでは、UHD BDによる画質の向上をそこまで感じられなかった。もちろん、場面によって明らかにUHD BDの方が高精細なところもあるが、冒頭のマット・デイモン登場のシーンも、BDでも同じくらいくっきりしているのだ。

パッケージにはUHD BDとBDの両方が入っている

 BDでは、場面転換で表示される現在地の文字部分について、画面から30cmほどの距離まで近付くと、UHD BDには見られない圧縮ノイズのようなものが出ているのがわかる。色深度や輝度についても、確かにUHD BDはBDに勝るが、入念に見比べてわかる程度。結果として印象面での画質は、2mくらいの視聴距離では大きな差を感じられなかったのだ。

 前述のとおり、UHD BDは色深度がBDの8bitから10bitになっているが、カラーフォーマットはBDと同じYCbCr 4:2:0を採用している。つまり、解像度は4倍だが、色解像度はフルHD相当のままだ。DMP-UB30では、パナソニックのノウハウに基づき、このYCbCr 4:2:0をYCbCr 4:4:4へとクロマアップサンプルする機能があり、色解像度も4K相当となる。

 だが、筆者のREGZA J10XのHDMIは帯域が18Gbpsではなく、10.2Gbpsなので、4K/24pでYCbCr 4:4:4の出力ができず、YCbCr 4:2:2止まりとなってしまう。これでもYCbCr 4:2:0からは色解像度が2倍にアップサンプルされているものの、このあたりが精細さに欠ける原因なのかもしれない。深夜にもかかわらず、謎の焦燥感に駆られつつ、J10Xの買い取り価格をチェックしたが、表示価格は5万円ほど。2年半前の製品なのでこれでも十分高額買い取りなのだとは思うが、4K有機EL TVの原資としてはちょっと足りないため、落ち着きを取り戻し、思いとどまった。

DMP-UB30の再生情報を表示させたところ。ソースはHDRでYCbCr 4:2:0/10bitとなっているが、出力段ではYCbCr 4:2:2/12bitとなっている
REGZA J10Xのコンテンツ情報からも、YUV(YCbCr) 4:2:2の、色深度36bit(12bit×3色)で受け取っていることがわかる
HDRにも対応している

ハドソン川の奇跡を観て度肝を抜かれる

 やや落胆しつつ、もう時間も深夜3時を回っていたので、ハドソン川の奇跡は翌日に回そうかと思ったが、とりあえず冒頭だけ観てみることにした。

 すると最初のプロダクションのロゴを観た瞬間、「これは何か違うぞ」と直感した。製作会社のロゴが、なまめかしいほどに金属的な質感を醸し出している。そして、本編が始まり、コックピットの計器板、飛行機外観の映像を観て、「これが……。これこそが求めていたものだ……」と密かに確信した。

 結局朝6時頃まで一気観。映像の美しさに見とれ、あの無表情で有名な4K修行僧も、終始口元が緩みっぱなしであった。

 同じようにこちらもPS4 ProでBD版と見比べたが、明確な違いを認識できた。ジェイソン・ボーンとハドソン川の奇跡でこのように画質に違いが出たのにはいくつかの要因があると思うが、最大の違いはカメラだろう。ハドソン川の奇跡は、6.5Kのデジタルシネマカメラで撮影されている。視聴時の解像度が同じでも、撮影解像度が高いとより精細になる。また、デジタルシネマカメラでもノイズと無縁ではないと思うが、フィルムグレインはないので、カリッとした画になる。

 たとえば、深夜のランニングのシーン。ニューヨークの町並みにBDでは板状の街頭広告が光っているように見えるが、UHDではそれが2重の細いネオンサインなのだとわかる。また、斜めに走る星条旗の赤いネオンは、BDでは拡大によるジャギーが目立つが、UHD BDではまっすぐな直線になっている。それぞれ細かなところだが、映像全体の解像感がまるで違う。

 誤解を恐れずに言えば、4Kを訴求するために全編チューニングされたデモ映像のようで、クリント・イーストウッド監督のヒューマンドラマ作品でこの画作りの映画を、しかも自宅でも味わえるとは思ってもみなかった。

 2008年に「ダーク・ナイト」のBDを観たとき、IMAXで撮影された映像の美しさに「これがBDの真の実力か」と息を呑んだが、今回のハドソン川の奇跡では「これがリアル4Kの底力か」と度肝を抜かれた。

 HDRについても先ほどのシーンで、奥の方に写るビルが黒つぶれしていない。また、その直後、夜のハドソン川の空母イントレピッドが映し出されるシーンでは、BDではイントレピッドの色調が、明るいライトの方に引きずられ全体的に輝いているように写っており、UHD BDよりもむしろ明るくなっている。それに対しUHD BDでは、より深い階調をもって明暗がしっかり表現されているので、空母が存在感を表わしながらも、夜のとばりにすっと溶け込んでいるのだ。

 BD版も6.5Kデジタルシネマカメラの撮影により、非常に美しい映像に仕上がっている。だが、UHD BDとの違いは枚挙にいとまがない。

 映画の映像の良し悪しは、精細さやノイズの少なさだけで語られるものではない。カメラワーク、ライティング、役者の表現力、ポストプロセスなどすべての要素が絡み合って、1コマ1コマが脳裏に焼き付くイメージとなる。デジタル撮影を行ないながらも、映画らしさを演出するために、後処理でフィルムグレインを意図的に加える監督もいるほどだ。だが、4K HDR TVの描写能力を体感するうえで、この作品はうってつけだと言える。

 そして、その体験はYCbCr 4:2:2であっても享受できるようだ。早まらないで良かった。

ドルビーアトモスで音響環境もパワーアップ

 じつは今回、DMP-UB30と同じタイミングで、デノンのドルビーアトモス イネーブルドスピーカー「SC-EN10BK」も購入した。

デノンのドルビーアトモス イネーブルドスピーカー「SC-EN10BK」。このようにフロントスピーカーの上に置く

 ドルビーアトモスは、ドルビーの新しい立体音響技術で、従来のチャネル方式でからオブジェクトベースへと変わっている(劇場向けと家庭向けで仕組みはやや異なるが)。詳しい説明はAV Watchの記事(映画館の音をそのまま家に。Dolby Atmosの新サラウンド)に譲るとして、従来技術との大きな違いは、天井に独立したスピーカーを設置することで、高さ方向を含めた立体的な音響を表現できる点にある。同等の技術としてDTSからは、DTS:Xが登場している。

 今回買ったジェイソン・ボーンはDTS:Xに、ハドソン川の奇跡はドルビーアトモスにそれぞれ対応している。ちなみに、この両技術はUHD BDの専売特許ではなく、BDでも対応可能だ。ただ、まだ対応数は少ないようで、筆者が過去に購入した新しめのBDのなかで対応しているのは、「バットマンvsスーパーマン」と「アメリカン・スナイパー」くらいだった。

 さて、さきほど天井に設置するとさらりと書いたが、筆者宅は賃貸。勝手に天井に穴を開けることはできない。そういうユーザーのために用意されているのがドルビーアトモス イネーブルドスピーカーだ。ドルビーアトモス イネーブルドスピーカーは、ユニットが斜め上を向いており、フロントスピーカーやリアスピーカーの上に置くことで、音が天井に反射し、天井に設置したかのような効果を得られる。なお、DTS:Xでもドルビーアトモス イネーブルドスピーカーは利用できる。

 ドルビーアトモス イネーブルドスピーカーはいくつかのメーカーが製品を出しているが、筆者宅のAVアンプはデノン製の「AVR-X7200WA」なので、同社のスピーカーを選んだ。

 ドルビーアトモス(DTS:X)の効果について、画質面では精細さを感じ取れなかったジェイソン・ボーンだが、音響については、過去視聴した作品で最高レベルだと実感した。一言で言うと、映画の世界のなかにいる感じにどっぷり浸れる。飛び交う銃弾や爆発音などが、さまざまな方向から聞こえてくるが、あざとい感じがない。定位が非常に自然で、かつスピーカーとスピーカーの間に音の隙間がないのだ。

 従来のドルビー・デジタルなどの音響が四方から聞こえているとするなら、ドルビーアトモスでは文字通り四方八方から聞こえてくる。効果音だけではなく、BGMについても楽器によって鳴る場所が違っており、緊迫感を盛り上げるよう、巧みに計算されているのがうかがえる。

 ただし、上から聞こえてくる感じはしない。ドルビーイネーブルドスピーカーに耳を近づけ、ドルビーアトモスをアンプ側でオン/オフしてみると、確かにこのスピーカーから独立した音が鳴っているのがわかる。だが、ソファに座ると、その音は上から来ていないように感じる。

 じっさい、アンプの音場補正技術を使ったスピーカーの測定結果では、ドルビーイネーブルドスピーカーは、フロントスピーカーから10cmの距離にあるという判定が出ている。これは天井に反射して届く距離より遙かに短い。つまり、機械の測定でも、音は上からではなく正面からやってきていると検知しているのだ。

AVアンプで測定すると、フロンスピーカーの距離が2.28m
そしてハイトスピーカー(トップミドル)が2.37m。スピーカーユニットはハイトがフロントよりちょうど10cmほど奥に位置しているので、音は上からではなく正面から来ているということ

 仕組み上、ドルビーイネーブルドスピーカーは、天井の素材など環境によって効果が変わりやすい。SC-EN10BKの値段は2つで2万2千円ほど。まぁ、ないよりマシにはなっているはずだとは思うが、なんか悔しい。と言うことで、突っ張り棒を2本購入し、天井の角に無理矢理設置してみることにした。

 これにより、TVのある壁面全体から音が鳴るようになった。単に音が来る面積が広がっただけでなく、たとえばバットマン vs スーパーマンでは、雨や雷の音がしっかり上のハイトスピーカーだけから鳴る。これでも音は真上からは来ていないが、最初より遙かに状況が良くなった(ガッツポーズ)。

市販の突っ張り棒を買って、こんな風に天井の角にスピーカーを設置してみた
スピーカーに合わせて黒いやつを買ったのだが、意外とこれが在庫がなくて探すのに苦労した。スピーカーケーブルがだらりとぶら下がるのも嫌だったので、モールを買って隠した

 気をよくして、ドルビーのサイトに「Star Warsバトルフロント」がドルビーアトモス対応と書かれていたのでPS4版をダウンロード購入してみたのだが、信号はドルビーデジタルしか来ていない。おかしいと思ってサイトを見直したら、Star Wars バトルフロントでドルビーアトモスに対応しているのはPC版だけだった(合掌)。

 AVR-X7200WAは、従来のドルビーデジタルやDTSなどの5.1chを仮想的に5.1.2(最後の2がハイトスピーカー)にするNeural:Xに対応しているので、これをオンにしてプレイすることにする。

 なお、PS4でドルビーアトモスを再生するには、BD再生時にオプションボタンを押し、音声フォーマットを「Linear PCM」から「ビットストリーム(ダイレクト)」に変える必要がある(設定は保存されるので操作は一度でいい)。同様に、ゲームが対応しているのなら、「設定」→「サウンドとスクリーン」→「音声出力設定」→「音声フォーマット(優先)」を「ビットストリーム(Dolby)」に変更する。

結論

 今回のUHD BDプレイヤー導入で、我が家の4K環境は1つの到達点に来たと思う。解像度をフルHDから4Kにしただけでは、画質の向上を感じ取りにくいことも多いが、HDRとBT.2020という高色域を想定して作られた4Kコンテンツは、新しい次元の体験をもたらしてくれる。これは請け合ってもいい。文句なしのKAITEKIDO=4Kだ。

 だが、我が家のTVはUHD BDには完全に対応していても、DMP-UB30のYCbCr 4:4:4クロマアップサンプルには対応しきれいていない。また、映画を観るときは没入するため電気を消しているのだが、液晶の黒浮きが気になる。やはり、HDMI 2.0完全対応の有機ELに買い換えなきゃいけないのだろうか……?

UHD BDの感動度=4KAITEKI

 最後に余談だが、たとえば「アビス」、「ターミネーター2」、「アバター」などの映画を観たとき、CGでしかできない表現に感動したものだった。ジェイソン・ボーンでは、最後にラスベガスで激しいカーチェイスシーンがある。これも「うまいことCG使ってるなぁ」と思ったのだが、BDの特典映像を観て、車線を飛び越えての車同士の衝突や、車がカジノに突っ込んでめちゃくちゃに破壊してしまうところもすべて実写であり、かつ本当にカジノに車を突っ込ませているのだと知った。この作品で初めてラスベガスの通りを封鎖してロケが行なわれたらしい。

 そんな感じで、最近はCGではなく実写で撮影していることの方に驚く作品が増えた。筆者は、映画好きの割に、あまり映画館に行かないことによく驚かれるのだが、ディスクの映画には、劇場にはないこういった舞台裏を知ることができる楽しみがあるのだ。