ちょうど夜中の1時頃に夫の車で病院へ到着。
病棟は二人の先生と一人助産師さんがいました。
内診の結果やはり破水ということでそのまま入院へ。
次に超音波でもともとある筋腫をチェックされる。胎盤の上にあるため、出産後の弛緩出血を予測して危険に備えるとのこと。自己血はあらかじめ400CC取ってあるのでイザという時はそれを使うとのことでした。そのことは検診の時から聞いていたので特に今更不安にはならなかったし、「危険を予測しているとたいがい大丈夫なことが多いから」と言われていたのでさほど心配もせず。
この時診てもらった先生の声の聞こえにくさったらなかった。ボソボソ~と喋るので私に話しているのかさえ分からないほど。唯一まだハッキリ聞こえたのは「背も高いのでポロッと生まれたらいいね」と言われたことくらい。”やっぱり背の高さってお産に関係あるの?”と思ったけどそんなこと聞くような気持ち的余裕はなかった。
陣痛室に案内され、入院着に着替えたりモニターを付けられたり、入院の書類を書いたりしているうちに20代前半くらいの担当の助産師さんが挨拶に来てくれる。
夫と陣痛室で過ごしていると当直の助産師さんがモニターをチェックして、いきなり走って出て行ってしまった。私達は”何???”と理由が分からずどきどき。すると先生二人が駆けつけてきて、助産師さんが急いで私に装着すべく酸素マスクの袋をやぶりかけた時、先生が何やらチェックして「うん、大丈夫」と。
先生は「赤ちゃんの心拍が下がりかけたけど、赤ちゃんが動いたせいだと思います。でもこれが繰り返されると危険なので自然分娩以外の方法を取るかもしれない。帝王切開だと麻酔をするので念のため食べ物は食べないでください。水分も口を湿らす程度で。そんな不安がらなくても大丈夫ですよ。僕達は念には念を入れるので、万一に備えてということで」と言われました。
陣痛中にエネルギー補給をと考えて持ってきた飲み物や食べ物はしょっぱなから必要なくなってしまったのでした。夜ご飯は食べたけど”出産まで体力持つだろうか?”と少し不安に・・。
夜明けとともにだんだん増していく痛み。担当の助産師さんは「すごい順調ですよ!」と何度か声をかけてくれました。そうかそうか、、嬉しい。このまま順調に赤ちゃん誕生までいってくれれば。。
「初産だしお昼までに生まれたら安産かな?」と言われる。
お腹が痛いうちはまだ余裕でしたが、痛みがだんだん骨盤やお尻に下がっていくにつれて、痛みに耐えるため体に力が入ってしまう。呼吸も順調にできていたのに、やがて「ふーぅぅ・・・」と声を出してしまうように。そばにあるモニターで赤ちゃんの心拍を気にしながら見ていた余裕もなくなっていきました。
夫にずっと腰やらお尻やらをさすってもらっていましたが、助産師さんがかわって指圧してくれると不思議に痛みが和らいで呼吸がスムーズにできました。
すごい~すごい~! 助産師さんってやっぱりすごい!
「痛い~~」とうめくと「痛いねぇ・・」と優しく声をかけてくれ、私はずっと助産師さんにそばにいてもらいたいくらいでした。
一方、夫は私が息を吐く時に声を出してしまうため、指圧してくれる度に「呼吸!」「声出さない」とか短く言われるのが命令されているようでだんだん腹が立ってきました(笑)でも毒付くエネルギーがもったいないと思い、極力黙って聞いていましたが一言「分かってるわ!」と言ったのだけは覚えています。
陣痛のさなかでも”オリバー鳴いてないかな?”とオリバーのことが気になる。
何時頃か分からないけどすっかり夜が明けて、私がもうベッドの手すりにしがみついていないと耐えられなくなった頃、夫が「なんか腰がさっきと違う感じがする」と言っていたのと同時くらいかしばらく経ってからか体が勝手に軽くいきんでしまう感覚が。「いきみたい」と思ってしばらく経った後、「内診しますねー」と先生と助産師さん4人ほどがベッドを囲む。ちょうど朝の勤務交代時間でスタッフも増えてきた頃でした。
看護師さんに「仰向けになってください~」と言われて「イヤや~!」と返してしまう・・。こんなに痛いのに体勢を変えろとは。「痛いのは分かるけど」とか「これから歩いて分娩室にも行かないといけないよ」とか諭されつつ、自分で痛みが引くタイミングを見て辛すぎる仰向け姿勢に。
子宮口は8~9センチとのこと。”まだ5センチ”とか言われると気が遠くなりそうだけど、「あと少しで全開だ」と思えるところまで来ていたので痛みに耐えながらホッとしたような気がします。助産師さんが不意に私の股にクッションをはさむ。”そっか、股を開いていると赤ちゃんが下りてきやすいんやったな”と両親学級で知ったことを思い出しながら”まだコレ以上に痛くなるのかな”と怖くなる。助産師さんも「これから痛みが増すにつれて息がしにくくなると思うけど・・」みたいなことを言うし、まだ未体験の痛みが襲ってくるのか・・・。
助産師さんに「分娩の準備してきますねー」と言われ、”もうすぐ産むんだ、この痛みが終わるんだ”という気持ちと”まだ痛くなるのか・・”という恐怖とが入り交じっていました。
ほどなく分娩の準備が整う。
隣の分娩室までは20歩も歩かないけど、それがツライ!案内される時にも私は「イヤだ」とか何か言ったような気がするような・・。夫によると私は支えられながら分娩室に向かったようだけどなぜかこの時の記憶だけ飛んでいます。
分娩台にあがる直前にぐぉーーーっと痛みに襲われ「待ってー待ってー」と分娩台に上がらせようとする助産師さんを制すところから記憶が再開。
やっとこさで分娩台に上がったけど、究極に痛いと思っていた時よりもまだ強い痛みが襲ってくると同時にものすごいいきみ感が。体が勝手にいきんでしまう。
「いきんでいい?」と聞くと「いいよ」と言われたので仰向けになった私は体に力が入るままいきむ。「目を閉じないで!」と言われるけど、まぁーそれが辛い!「波が来たら2回深呼吸して。大きく息を吸っていちばん強い痛みのところで息んで」と言われ、そのとおりにしようとしていたけど、深呼吸している段階でマックスな痛みが来る感じでどうもワンテンポほどタイミングが合わなかったような気がします(笑)
「わぁーん!痛い~ 怖いよ~」とか声を出していました。立会い出産希望だったので夫も分娩室に入っていたようでしたが、もはや夫の存在は完全にフェードアウト・・・。
産むまで私は耐えられるのか? そう思うと怖くなりましたが、今ここで心が折れたらいったい何もかもがどうなるんだろう?耐える以外にないんだと思いました。
そしてこんな状況でもオリバーが朝ごはんを食べたのかを考える冷静な部分もあり・・・。後から考えると可笑しい。
程なく男の先生が来て私の足元には助産師さん含め3人がいた。
「足もっと開いて!赤ちゃんが通りやすいように」
「一回の陣痛で二回息んでね」など色々言われました。
どのくらいいきんだのか「吸引!」と言われて”赤ちゃん、吸引されるん?”と思ったような・・。いつのまにか私のお腹を知らない先生がグイグイ押していた。
「あと何回~?」「赤ちゃん下りてきてるん?」助産師さんに質問する私。「あと少しだよ」「赤ちゃん下りてるよ」と優しく答えてくれる助産師さん。
下りてきてるという感覚が全くなくてまたもやゴールが見えない気がして不安になる。
早くゴールが見たいーーーー。
何回か息んで私の右側にまたいつのまにか立っていた助産師さんに「次産むよ」と言われて私は必死な中でも少し嬉しくなって「次産む~?」と蚊の泣くような声で再度聞いた。「うん、産むよ」と助産師さん。
もう泣くに泣けないこの状況の下で、お腹を押していた物静かそうな先生が私の目を見て「頑張れ!”私”が産むんや。頑張れ!」と言ってくれた。その言葉もそうだけど、先生の真剣な目を見て少し我を取り戻した気がする。今でもその時の先生の目が印象に残っています。
最後のいきみで踏ん張っていると助産師さんが「見といてよ」と言ったので目を向けると赤ちゃんが出てきた!顔の右半分に血の付いた赤ちゃん・・・泣いてる。
感動というよりも安堵感・・?というより、痛みに必死に耐えるのといきむのに無我夢中なのとがバッサリ切られたように終わり、眼の前に赤ちゃんが見えても脳が素早く反応しない感じでした。
半分真っ白な状態というのでしょうか。
あ・・・夫は?
私の右上にいました・・。ようやく私は手を差し出し、夫と握り合いました。
その後は赤ちゃんとの対面も束の間に、私の手術が待っていたのでした。