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南京事件否定論は腐っても使い回される法則

 

Twitter / hyakutanaoki: 意外に知られていないことだが、南京陥落当時の日本と中国は国際 ...

 

 

よく知らなかったが、この百田直樹という人は放送作家・小説家だそうだ。今は見ないが、かつては毎週欠かさず見ていた程好きだった「探偵ナイトスクープ」の構成も手掛けたとか。「たかじんのそこまで言って委員会」にも出演することがあるとか。まぁこの人がどんな人かは割とどうでもいいが、この人の上のようなツイートを見たとき、僕は時代が過去に戻ったのかと思った。

 

もう10年以上前になると思うが、一時期僕は南京事件議論にはまり、ネット上で否定派相手に相当議論をしたものである。図書館にまで出かけて古い資料を漁ってコピーして持ち帰ったり、自分でも分厚い資料本をネット古書店で買ったり、かなり熱中してたといってもいいだろう。その成果のほんのわずかな一部分がその筋では超有名なサイトである南京事件−日中戦争 小さな資料集の片隅に採用されたりしている。あまりに片隅過ぎてどこなのかは恥ずかしくて言わないが。

 

なので、記憶はぼやけてはいても南京事件議論の内容は色々と知っている。否定論を世に広めた功績として大きいのは小林よしのりの『戦争論』で、否定派大御所の故・田中正明や東中野修道などの否定論を用いて世に喧伝した。こうした否定論はその度に大抵は肯定派人に論破されてきた。何せ内容が酷い。

 

例えば有名な否定論に「南京には当時20万人しかいなかったのに30万人殺せるわけがない」というものがある。ところがこの短い文章の中には多くの誤りが含まれている。詳しくは資料を細かく当たらないとなかなか分かりにくいが、概略、この20万人というのは南京攻略戦被害から逃れようと南京市内に設けられた安全区に避難した市民の人口である。ものすごく大雑把に言うが、この人たちは大虐殺の人数にはそもそも含まれないのである(※実際には含まれるのだが割合的にという意味で)。そしてこの人数には中国軍人の数は入っていない。30万人という虐殺数の中にはその中国軍人もかなりの割合で含まれるのである。さらに、日本の肯定派学者の間でも30万人という数は信じられていない。中国の学者だってどうやらまともに受け入れていないらしい。つまり、「南京には当時20万人しかいなかったのに30万人殺せるわけがない」→だから嘘である、というような単純な理屈は全く成り立たないのである。

 

とにかく否定論というものの多くはこのような感じで、短い否定論の中に多くのウソを含ませる。冒頭のリンクも例外ではない。

 

意外に知られていないことだが、南京陥落当時の日本と中国は国際的には戦争状態ではなかった。だから当時の南京は欧米のジャーナリストやカメラマンが多数いた。もし何千人という虐殺が起こったりしたら、その残虐行為は世界に発信されていたはずだ。しかし実際にはそんな記事はどこにもない。

 

前段は何が言いたいのかよくわからない文章になってる。日中双方ともに宣戦布告しなかった、そこには互いの利害があったからだが、実質的には戦争状態だったことは常識である。南京攻略戦は双方とも膨大な死傷者を出すほどの激戦で、取材は大変危険なものであり、実際のところ陥落後も南京市に残って取材を続けたのはニューヨークタイムズ紙のティルマン・ダーディン含め5名で、彼らも陥落から三日後には南京を離れている。これを「多数いた」と表現していいのかどうか僕にはよくわからない。

 

で、後段だけども、「実際にはそんな記事」があるのは有名な話。「南京事件 ダーディン」でググると出てくる。他にはシカゴデイリーニュースのA.T.スティールの記事もあるし、ロイターのスミスによる講演記事などもある。こんなのは今の時代、ggrksである。ていうかこいつ、何十年も前にとっくに論破済みの古いネタを恥ずかしげもなくよく使うよなぁ。このネタを最初に使ったのは否定派の祖先みたいな故・田中正明である。当時すでにあっという間に肯定派に論破されている。

 

ところで、関西には南京事件否定論に与する人が有名人に結構いるのではないかと思う。有名どころでは浜村淳がそうで、彼がパーソナリティを務める「ありがとう浜村淳」というラジオ番組で、「南京大虐殺は真っ赤な嘘っぱちなんです」みたいな話をしてるのを拝聴させてもらったことがある。

 

そういうなんか、繋がりみたいなので百田氏も毒されちゃったのかもしれないね。

 

※追記

またまたホッテントリに百田氏の別のツイートが上がってきたので暇つぶしにやっつけてみるとする。なおこのネタを使用する否定派はさすがにあまりいないと思う。

 

Twitter / hyakutanaoki: 私が十代の頃(今から40年前)、中国は南京大虐殺の被害者は1 ...

 

私が十代の頃(今から40年前)、中国は南京大虐殺の被害者は100万人と堂々と主張していた。しかしその後、心ある日本の知識人たちが、中国の主張の矛盾を指摘し、反論と 反証を試みると、中国は被害者数をどんどん減らしていき、今は30万人と言っている。バナナの叩き売りかよ。

 

このネタ元は確かにあった気がする。誰かが調べてたけど残念ながら記憶が出てこないのでだれが言い出したかもわからない。うっすらと何か百科事典ぽいものにそう書いてあった、というような話だった気がする。…違うかなぁ、知ってる人がいたら教えてほしい。

 

で、南京大虐殺の犠牲者数が30万人というのは、戦後に行われた軍事裁判の一つ、南京軍事法廷での判決文からである。公式数字はこれ以来変わらない。以下のゆう氏による資料ページに判決文がある。

 

南京軍事法廷判決

 

 調査によれば虐殺が最もひどかった時期はこの二十六年十二月十二日から同月の二十一日までであり、それはまた谷壽夫部隊の南京駐留の期間内である。中華門外の花神廟・宝塔橋・石観音・下関の草鮭峡などの箇所を合計すると、捕えられた中国の軍人・民間人で日本軍に機関銃で集団射殺され遺体を焼却、証拠を隠滅されたものは、単燿亭など一九万人余りに達する。このほか個別の虐殺で、遺体を慈善団体が埋葬したものが一五万体余りある。被害者総数は三〇万人以上に達する。死体が大地をおおいつくし、悲惨きわまりないものであった。

 

百田氏が40年前にいったい誰からそんな数字を聞いたのか…そんなことはどうでもいいけども、僕がうろ覚えのうら覚えでの記憶では、「最初30万だったのにそれが42万と増え、ついには100万と主張するようになった」というような説が原型だと記憶する。百田氏のバナナの叩き売り説とは真逆に大幅に水増ししていった、というわけだ。…でもこれソースが出てこなくて、不確かな話なので御注意を。

 

ついでに言うと、中国はこの判決に当たり、特に厳密な数量調査をしたってことはないように思います。いろんなところから出てきた埋葬数の記載事実やあるいは証言などの数字を足すとそういう数字になる、と言っただけのような気がします。被告に判決を下す為のものでしかないので、正確さは不要だったのでしょう。ではでは。

 

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