ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

意外にも撮影OK!国立博物館で仏像や文化財の写真を撮りたおす!


人は誰しも、一眼レフのカメラを買ったら、まっさきに「仏像や埴輪や土偶の写真を撮りたい!」と思ってしまう、おかしくも哀しい生き物です。友だちや恋人の写真などを撮ってもろくなことがありません。目が半開きの瞬間を捉えてしまって「これ、わたしじゃなーーい!」などと怒られるのが関の山。心をこめて撮ったのになんで怒るのかと小一時間問い詰めたいところですが……。それに比べて文化財はさすがに多くの人に愛されてきた逸品たちなので、変な写真になったりしないし、なっても文句を言わないので被写体の中でもかなり優等生と言えるでしょう。

お寺や資料館などで、「文化財保護の観点から撮影禁止」と書いてあるところは多いです。仏像なら「神聖だからアカン」的なのも。撮影したくらいで損なわれる神聖さっていうのも脆弱やなーと思うのですが、それはさておき、こういうときは国立博物館がおすすめ。静かな場所なので撮影禁止のイメージが強いですが、実は「撮影禁止」のパネルがあるところ以外は耳なし芳一の耳のごとく、好きにしていいのです。
知識階級に属するこのブログの読者のみなさまにおかれましては、土日はだいたい会社の上司や同僚を招いてリッツパーティなどの出世工作に余念がなく、国立博物館なんかには行ったことないわ、という方もいらっしゃるかと思います。しかし出世したあとに教養がないことがばれてしまったらどうするのですか?教養のない上司にお説教される部下の身にもなってみては?今回は見どころも紹介させていただきますので、リッツパーティで発生したリッツおよびスモークサーモンの破片の掃除はルンバに任せて、国立博物館にお出かけください。
なお、長い文章が苦手な人のために、最初に要点をまとめておきました。このあとのどうでもいい写真とどうでもいい文章はおそらく時間の無駄なので、読まなくてもいいですよ〜

【博物館で撮影するときのコツ】


(1)F値は小さく(解放)する
撮影OKとはいえフラッシュは使えないので、ブレないよう、F値はできる限り小さくしておきます。
ちょっとボケすぎて恥ずかしいかもしれないですが、ボケているだけでいい写真だと思う人も多いから気にしなくてOKです。


(2)ピント合わせは慎重にする
F値が小さくなると、ピントが合っている領域が狭くなってしまうので、どこにピントを合わせるかはよく考えて決めるべきです。
カメラのプレビューでは問題なく写っているように見えても、家に帰ってパソコンで見たら、意図しないところがボケていたりするものです。仏像など人物をかたどったものについて、ノーマルな感性の方は目にピントが合うようにすると無難です。埴輪は目のところが無になっておりますので瞼などにしてみてください。
しかし土偶のころは目を描いていたのに、なぜ埴輪では無にしてしまったのでしょうかね。退化しているのではという疑惑が頭をもたげてきます。


(3)ガラスケースが汚れていない朝イチに行く
ガラスケースは、オッサンが「ほっほぉ…」と言いながら指紋をべったりつけたり、ちびっこが顔をべったりつけたりする(注:変な顔にするポイントは鼻。強く押しつけて、可能な限り斜め上か斜め下にズラすと、いっそう変な顔になります)などのハラスメントに晒されているおそれがあるので、乱暴者たちが活発になる前にさっくりと撮影を済ませるほかないのです。


(4)ガラスにレンズを近づけて撮る
まず反射が少ない角度を見つけ、ガラスにレンズを近づけて撮るようにすれば、ガラスの映りこみが最小限になります。


(5)展示物はローテーションを組んでいるので、あらかじめホームページをガン見して、行く日を決める
たとえば東京国立博物館だとここで展示物を見ることができます。だいたいローテーションを組んでいて、いま何が展示されているのか、これから何が展示されるのか、人はどこからきてどこへいくのか……はわからないですが、だいたいのことはわかるので、お目当てのアイテムがある場合は参考にしてみてください。準備なしに行くと気が動転してしまって、超どうでもいい焼き物などをガン見しつつ撮影、、家に帰ってからこれじゃなーいなどと思う羽目になるのです。

今回は、あんまり知られていない事実、「国立博物館は写真撮影可である」という事実を、東京国立博物館を例にとって、小生の拙い作例と作例とはほとんど関係ない病的なキャプションで紹介しようという野望に満ちた企画でありますが、ツイートやブックマークなどしていただければわたしのささやかな自己顕示欲が満たされます。

混雑している特別展のチケット売り場を横目に、華麗に常設展のチケットを買うのがOSHARE

東京国立博物館というと、特別展が気になってしまうかもしれませんが、あれは飾り。刺身の上のタンポポ、ポテトサラダの下に敷いてあるレタス、あと有給休暇も。気まずくて全部消化なんてできないんだから買い取ってくれやせんかのー。話を戻します。特別展は混んでいるので、「圧倒的な孤独感に耐えかねて、赤の他人でもいいからそばにいてほしい」「たくさんの老人たちを見て、いま自分の支払っている年金がどのように使われているか確認したい」などのややこしい気持ちになったとき限定で行くべき場所で、よほど見たいものがない限りはおすすめできません。原則的に撮影禁止ですし。
それに対して、常設展はほとんど人がいなくて、土日に見に行っても「もしかして今日、平日なん?」的な不安に襲われるほどであります。同様に、ブラック企業も土日に出社しても平日みたいですけどね。

本館の入口入ってすぐの仏像コーナーは必ずエンジョイしたい

まずは本館から。入ってすぐ右を向くとおもに仏像コーナーがあります。
このコーナーに限らず、頻繁に展示替えをしているのですが、まず、4月22日まで展示している素敵なアイテムたちを紹介させていただきます。

まず毘沙門天立像。平安時代のものなのでムキムキ感はないのだが、このぎこちなくはりついた感じ。
絶対にしばかれそうにない安心感がありますね。


毘沙門天の多くは邪鬼を踏みつけているので、こちらも要撮影。

かわいらしいからといって会社のパソコンの壁紙にしてしまうと、だんだん自虐的な気分になってしまうので注意が必要です。

そして博物館なら、仏像のパンチ部分をなめるように撮影することもできます。実際になめたら超苦いんだろうけど……

こうしてアップで見ると、パンチ部分は貝のように渦巻いており、やはりパンチ部分をパンチ呼ばわりすることはそれなりに適切であったということになりましょう。


そして、いま展示しているなかで一番すてきなのが釈迦涅槃像。
お釈迦さまが志んでいる(注:「死んでいる」と書くと縁起がよろしくないので、あえて「志んでいる」と表記しています)釈迦涅槃図は多いのですが、これは彫刻で、ここ以外で見たことないです。

釈迦涅槃図は周囲に人間や動物、ヘビやムカデまでもが泣いているのですが、こちらの像は単体で横たわっているだけで寂しい……
ピンの方が偉いのかもしれませんが。

寂しさのあまり、意味もなく足にピントを合わせたりしてしまいます。


いまは展示されていませんが、神像を展示してあるときもあります。
神像について簡単に説明すると、大昔はとくに神の像などはなかったのですが、仏像が朝鮮半島から入ってきて、「これはいいねー。やっぱり形がないよりあった方が拝みやすいよね。うちもやろっか」ということで、日本の神々についても像が作られたという経緯。



このように、仏像に比べておっそろしくシンプル。伊勢神宮とか桂離宮はモダニズム呼ばわりすることで欧米へのコンプレックスがふんわりと和らいだことでおなじみやけれども、これをモダニズム呼ばわりするのはどうしても無理があって、どうやって弁護していいのかわからへん、という意味で戸惑いを発生させるモダンアートのようであります。
並置してある仏像と比較してみると、このままじゃアカンという気になってしまうが、かといって橋本市長かというとそれも違うような気がするし……。

これも以前の展示ですが浄瑠璃寺の仁王像。
浄瑠璃寺は吉祥天像をはじめとして仏教美術が満載で、この仁王像ですら序の口なので、ぜひ足を運んでいただきたいところです。
これはめっちゃ強そうなので、フレームいっぱいに撮ると壁紙向きかも。




もちろんMっ気たっぷりに踏まれている邪鬼も見逃せません。

お召し物にあしらわれている動物もCawaiiが、チューしたら逮捕されるので、せめてアップで撮っておきたいとこやねー。


BIGな不動明王が展示されているときもあるが、こちらもいい顔だし炎が盛り上がっているので壁紙向きでございます。
怒りっぽい人と思われるかもしれませんが……。

この部屋のトリは、めっちゃ豪華なコーナーが常に用意されていて、4月22日までは、蓮華王院本堂(a.k.a.三十三間堂)のずらりと並んでいる例の千手観音のうち三体が飾られています。
残念ながら撮影禁止なのですが、あの仏像を近くでガン見=玩味できるチャンスです。Don't miss it.

参考までに、以前行ったときは鎌倉時代後期の康円という仏師がこさえたコンパクトな仏像たちがありました。
小さいのに躍動感が凝縮されていて、若き日の福原愛ちゃんを見ているようでありますなァ……。
特に福原愛は好きじゃないけど、日中友好のためにがんばってほしいです。








これも前ので申し訳ないですが、彩色がごっそり落ちているこいつらが展示されているときもある。
彩色がないことで恐ろしさが際立っております。


絵画コーナーも充実。
基本的にあんまり写真に撮っても面白くはないのですが、時期によっては暁斎の絵などもあって、つい撮ってしまいたくなります。

親子連れは全員、お子様に「悪いことするとこうなるんだからね!」と言い聞かせており、数百年経っても教育的効果を誇っている。
「実際に悪いことをすると刑務所に入れられ、出所しても社会復帰への道はきわめて厳しい。ちなみに悪いことをしていないからといって安心できないのがいまの社会。再チャレンジは事実上不可能なので、進路の選択を間違ってはならない」などの事実を教えてあげてほしいですね。

彫刻・絵画以外の作品も面白さ爆発です!

彫刻・絵画以外も面白いものがたくさん。小物類をいい感じに撮るのは難しいですが、仏舎利入れなども精巧ですばらしい。
中に仏舎利があるのですが、実際、仏陀の骨が極東の弱小国まで来るわけがないのではないかという気がしてならないので、舎利の部分にはピントを合わせない方がいいのかもしれんね。


これは残念ながら展示が終わってしまった銅人形。
これはすばらしいので常に展示してわたしたちを妙な気分にさせてほしいところです。




これ、鍼灸関連の試験に使われてて、表面に蝋を塗って、ツボの部分に針を刺すと、「正解〜」っていう意味で水とか水銀が出てくる仕組みらしい。
生まれたての赤ちゃんは頭のてっぺんがやわらかくて、「これってつっこみどころ?」と思ってしまいますが、あそこも針を刺すと水銀が出てきたりするんやろか。

こっちの人形は血管などの位置もわかる高性能な人形……なのですが、スケベ丸出しの爺をかたどっています。
血管の位置がわかるとともに、スケベも度がすぎるとこのような罰を受けるという見せしめ効果もあり。

ちなみにこの人形のように、年老いると眉毛が際限なく長くなりがちですが、これは老化によって「眉毛このへんでストップにせんと変な顔に見えちゃう!」みたいな命令が届かなくなって伸び放題になるそうな。


また、こちらはいま展示中のもので、昔のイラストつきの書籍です。

何も考えないで見るとフーンと思うだけで通りすぎてしまいそうですが、驚くべきことに、100年も続いたベストセラーなのです。100年売れ続けるファッション本、編集者にとってのファンタジーですね……。
現代だと、10年前のモードでも、なんやその眉毛はモッサリして、と思ってしまうのに、当時は100年前の眉毛がアリだったということですから衝撃です。どんなにぼんやり生きていたとしても、江戸時代の人に比べたらせわしなく生きてるということになりますね。

平成館の伏兵、国宝級の埴輪&土偶の土臭い見世物たち

「平成館=特別展」というイメージがあって、われわれ常設展愛好者にとっては近寄りがたいイメージがあるかもしれませんが、平成館の1階も実は常設展が入っていて、常設展のチケットで入ることが可能。もうまるでベトコンやねー。パルチザンやねー。民間人と思ってたらねー。
その常設展には老若男女に大人気なアイテムがギッシリなので、人気者になりたいと思うなら絶対に外してはならないのです!
まずは埴輪。埴輪といえば、まず真っ先に頭に浮かぶ「挂甲の武人」がおります。

210円切手にもなっておりますが、あの大スターがこんなに近くに!

うしろはこんな感じ。
なんや汚れてるように見えるので、いますぐガラスをバリバリに割って拭いてあげたくなりますが、ここはグッと我慢。


あと、このペアの埴輪もかわいらしい。

「我こそは真の不思議ちゃんや!」と思われる方は、写真に撮ってパソコンの壁紙にしたら、すてきなボーイフレンドができるかもしれませんね。
まあ不思議ちゃんが好きな男は不思議くんなので、共倒れになってしまう場合も多いんですけどねー。

もちろん、家型の地味な埴輪も撮影し放題なので、ガンダムのプラモデルで好きなのがムサイ巡洋艦や武器セットだった、という特殊な性癖をお持ちの方も満足できるはずです。


また、土偶も負けてはいない、というか、そもそもこれ勝負じゃないし……。
UFOといえばアダムスキー型であるのと同様、土偶というと遮光器土偶を思い浮かべますが、挂甲の武人と一つ屋根の下にいるなんてねー!

しかし女性をかたどったものとはいえ、涙袋がdekasugiて泣いてなくても何かつらいことがあったのか聞いてしまいそうです。


これはまさに岡本太郎。岡本太郎関連を壁紙にするのはミーハー臭くてチョット……と思っている方にはこちらをおすすめいたします。


もちろん銅鐸も撮り放題。

当時の生活のいろいろが描かれていますが、いま銅鐸を作ろうと思ったら、バグにあたるのか仕様変更にあたるのかを切り分ける綱引き気味の会議をしていたり、待ち合わせで「ごめん、10分遅れる」みたいなメールを見て、毎回10分遅れて来るなら10分早いニセの待ち合わせ時間を設定してやろうかと思っていたりするところがあしらわれるんでしょうね。

表慶館のアジア文化財はいっそうガードがゆるくて撮りがいあり!

写真撮影に気を取られて忘れがちですが、東京国立博物館は、建物そのものが文化財。
ちょうどソフトクリームのコーン部分が、入れ物であると同時に食べ物でもあるのと同様ですね。

本館は上から撮るとスケール感が際立ちます。

文明国に生まれた喜びと罪悪感で胸の奥がじんわりしてしまいますね。

かっこいいのは表慶館。くる人はみんな真上にカメラを向けますが、魚眼レンズをお持ちの方は床と天井と両方おさめたいところですし、魚眼レンズをお持ちでない方は、写真を撮るのがめっちゃ楽しくなるので、安いモデルでもいいから買った方がいいかもしれません。

東洋館はアンダーコンストラクションで、アジアの文明的なものたちは表慶館に所狭しと陳列されています。


どれがなんという名前か忘れてしまったけど、日本の重文などに比べるとカジュアルに展示してあって撮りがいがあります。
もともとこれらがあった東洋館にはミイラなども展示してあったので、早く改装を終えてほしいところです。
なんなら手伝ってもいいが、お茶をこぼしてミイラを部分的に生々しい感じにしてしまうかもしれん。

撮影不可能っぽいムード満載の法隆寺館も実は撮影OK!

「美人は敬遠されがちだから、意外に口説かれることは少ない」という言説は、わたしの調査によるとウソであることが判明しています。実際は男たちがくじ引き感覚で言い寄ってくるので面倒だとか……。
わかりにくい例で申し訳ありませんが、照明がめっちゃ落とされてムーディでゴージャスなたたずまいから、撮影が敬遠されがちな法隆寺館も、実は撮影OKなのです。

入ってすぐ左にある伝来仏コーナーは幻想的な風景の中で仏像が見られます。特別展だけ見て帰る人の気がしれませんねー(……って、なんで特別展だけ見て帰る人を目の敵にしているのかわからんようになってきましたが)

そして、なんでこれが国宝やねんと思ってしまうことでおなじみの香炉もいちおう撮っておきますかね…

日本史の資料集でよく見かける竜首水瓶も見放題。
本当の龍だったら食べた象の毛とかを丸めた毛玉状のものをペッとするんでしょうけど、出てくるのは水。
これはちょっとかわいらしいから国宝と言われてもさもありなんと思う。


今回、東京国立博物館を例に紹介させていただきましたが、国立博物館はどこも展示替えが頻繁に行われるので、カメラを持って、定期的に行ってみると楽しいですよ!