起立性調節障害とは? 症状や原因、不登校との関係を解説
こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。
起立性調節障害にはいくつかタイプがありますが、いずれも甘えではなく、自律神経の働きや血圧低下によるものです。
このコラムでは、起立性調節障害の概要やタイプ、親御さんができる対応、予防方法、相談先について解説します。あわせて、起立性調節障害の体験談も紹介します。
このコラムを読むことで、起立性調節障害のあるお子さんご本人はもちろん親御さんも、理解を深められるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
目次
起立性調節障害とは?
この章では、起立性調節障害の概要や原因、診断基準などについて解説します。
起立性調節障害の概要
起立性調節障害(OD、Orthostatic Dysregulation)とは、自律神経である交感神経と副交感神経の機能が低下することで発生する血行不良に伴い、さまざまな症状が引き起こされる病気のことです。(参考:一般社団法人 日本小児心身医学会「(1)起立性調節障害(OD)」 一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害とは?子ども・大人別に特徴を解説」)
私たちキズキ共育塾は、起立性調節障害があり学校に行きづらい人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
起立性調節障害の症状
起立性調節障害の具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。(参考:一般社団法人 日本小児心身医学会「(1)起立性調節障害(OD)」、つだ小児科クリニック「起立性調節障害 OD (自律神経失調症)」、恩賜財団済生会「起立性調節障害」)
- 朝起き上がれなくなる
- 頭痛がする
- 立ちくらみがする
- 倦怠感がある
- 食欲がなくなる
- 動悸や息切れがする
- 失神発作を起こす
- 乗り物酔いする
- 顔色が優れない、青白い
なお、これらの症状が常に現れているわけではありません。午後になると体調が回復する場合が多く、逆に夜になってから元気になり、目が冴えて眠れなくなるという症状もあります。
起立性調節障害のタイプ・症状は、大きく4つに分けられます。詳しくはこちらで解説しています。
起立性調節障害の原因
起立性調節障害の主な原因は、以下のとおりです。(参考:MYメディカルクリニック「起立性調節障害とは?原因、症状、治療法について解説」、一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害とは?子ども・大人別に特徴を解説」)
- 遺伝的な要素
- 体質
- 生活習慣の乱れ
- ホルモンバランスの乱れ
- 精神的ストレス
- 水分・塩分摂取不足
- 筋力低下
遺伝的な要素や体質は、自分ではどうにもできないことです。
しかし、生活習慣の乱れや水分・塩分摂取不足などの原因に思い当たる場合は、自分自身やご家庭内で取り組めることがあるかもしれません。まずは、無理のない範囲で、できることから始めてみましょう。
ただし、自分やご家庭で症状の改善に取り組むことは大切ですが、専門的な知見をもとに治療を進めることも必要です。
起立性調節障害の相談先については、こちらで紹介します。
起立性調節障害の診断基準
起立性調節障害の診断は、問診を含む診察と体位変換にともなう血圧や脈拍の変化から判断します。(参考:一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害とは?子ども・大人別に特徴を解説」、東京逓信病院「学童・思春期に多い『起立性調節障害』」)
診察では、こちらで解説した症状がどのくらいあるかを確認します。その後、安静時と起立後でどのくらい血圧や脈拍に差があるかを測ります。
起立性調節障害の4つのタイプ・症状に当てはまれば、起立性調節障害になります。
起立性調節障害の治療方法
起立性調節障害の治療方法には、以下のようなものがあります。(参考:MYメディカルクリニック「起立性調節障害とは?原因、症状、治療法について解説」、一般社団法人 日本小児心身医学会「(1)起立性調節障害(OD)」)
- 疾病教育
- 環境調整
- 薬物療法
疾病教育では、本人と家族に対して起立性調節障害への理解を促すように指導します。理解が深まると正しい治療をしやすくなります。
環境調整では、心理的ストレスを軽減させます。定期的に家族と面談するなどして、本人を見守る体制を整えます。
薬物療法では、漢方薬などを用いて自律神経を整えます。薬物療法だけでは効果が薄い場合が多いため、ほかの方法と併せて行われるのが一般的です。
起立性調節障害の合併症・併存症・状態
起立性調節障害の合併症・併存症・状態として、以下のようなものが挙げられます。(参考:一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害とは?子ども・大人別に特徴を解説」)
- 睡眠障害
- 発達障害
- うつ病
- 集中力の著しい低下
- 不登校
こちらでも解説したとおり、起立性調節障害の症状は、朝に強く現れるため、学校に行くことが難しくなる人もいます。そして、症状によって学校に行けない状態が続くと、不登校になる場合もあるのです。
午後になると元気になるお子さんの様子を見ている親御さんとしては、学校に行きたくないだけのように見えるかもしれませんが、これは起立性調節障害の症状によるものです。心配になるかもしれませんが、叱ってはいけません。
起立性調節障害による不登校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
参考記事:キズキ家学「【起立性調節障害による不登校】治療法・今後の進路・相談先を紹介」
補足:起立性調節障害チェックシート
起立性調節障害は、病院を受診して診断を受ける方法が一般的です。また、起立性調節障害の診断は、専門の医師しかできません。
しかし、セルフチェックとして、あらかじめ自分自身やお子さんの症状がどの程度当てはまるかをチェックしておくことは可能です。
以下の資料の9ページにチェックシートがあるので、ぜひお試しください。
参考:岡山県教育委員会「起立性調節障害対応ガイドライン」
起立性調節障害の4つのタイプ・症状
この章では、起立性調節障害の4つのタイプ・症状について解説します。(参考:一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害とは?子ども・大人別に特徴を解説」)
タイプ①起立直後性低血圧
起立直後性低血圧は、起立直後に血圧低下が起こったり、血圧の回復が遅れたりするタイプです。
軽度・中等症の場合は、起立中に徐々に回復していきますが、重症になると起立して3~7分後に収縮血圧低下が寝ている時の15%以上を持続します。
タイプ②体位性頻脈症候群
体位性頻脈症候群は、起立時の血圧低下がなく、心拍数が以上に増加するタイプです。
軽度・中等症の場合は、起立3分後の心拍数が115/分以上、心拍数増加が35/分以上です。重症になると起立時の心拍数が1分あたり125以上、心拍数の増加が1分あたり45以上になります。
タイプ③神経調節性失神
神経調節性失神は、起立中に急激に血圧が低下し、失神するタイプです。
重症になると、起立直後性低血圧(INOH)もしくは対異性頻脈症候群(POTS)を併発します。
タイプ④遷延性起立性低血圧
遷延性起立性低血圧は、起立中に少しずつ血圧が低下していき、失神するタイプです。
起立から3~10分経過すると、収縮期血圧が寝ている時の15%以上、または20mmHg以上低下します。
起立性調節障害と不登校の関係
起立性調節障害になると、朝起き上がれなくなり、学校への登校が難しくなるケースがあります。そして、その状態が続くと、不登校になる可能性があるのです。
起立性調節障害は、「ただ学校に行きたくないだけ」と勘違いされることも多く、親御さんも子どもの起立性調節障害に気づかないことがあります。
また、気づかないままに、叱ったり無理矢理学校に行かせたりすることもあるかもしれません。
しかし、お子さんは自分自身ではどうにもできない症状に苦しんでいます。そんな状態の中で、親御さんからの理解を得られないと、さらに学校へ行けなくなり、親御さんに対しても心を閉ざすかもしれません。
そのため、お子さんが起立性調節障害である可能性があると感じている場合は、「子どもの今の状態は、起立性調節障害の症状によるものかもしれない」と理解し、医療機関で診察を受けるようにしましょう。
また、お子さんが起立性調節障害と診断された場合は、親御さんは起立性調節障害への理解を深め、適切な対応・サポートを行うよう心がけましょう。起立性調節障害のお子さんに親ができるサポートは、こちらを参考にしてください。
起立性調節障害による不登校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
参考記事:キズキ家学「【起立性調節障害による不登校】治療法・今後の進路・相談先を紹介」
起立性調節障害のある子どもに親ができる5つの対応
この章では、起立性調節障害のあるお子さんがいる親御さんができる対応について解説します。ぜひ参考にしてください。(参考:一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害の治し方・親ができること・治った方の事例を解説」、一般社団法人 起立性調節障害改善協会「もしかして親のせい?起立性調節障害の子どもへの接し方とは」)
対応①「病気である」と理解する
まず、親御さんが最初にできることは、お子さんの状態について病気であると理解することです。
お子さんは、決して甘えや怠けで、朝起きられなかったり、不調を訴えたりしているわけではありません。
学校へ行きたくないから具合が悪くなるのではなく、具合が悪いから学校へ行けないのです。
病気であると理解するだけでも、お子さんへの不必要な叱責、親御さん自身の不安やイライラが減っていくはずです。
対応②起床時のサポートをする
目覚まし時計だけではなかなか起きられない起立性調節障害のあるお子さんにとって、起床時のサポートは必要不可欠です。
ただし、大声で起こしたり無理矢理布団を剥いで起こしたりしてはいけません。優しく声をかけたりカーテンを開けたりするなど、お子さんが無理なく起きられる方法を実践しましょう。
対応③話を聞く
起立性調節障害のあるお子さんの話を聞くことも、親御さんができる対応の1つです。
例えば、どんなことで悩んでいるのか、本当はどうしたいのかなどについて聞いてみましょう。お子さんと会話をして、お子さんの気持ちや考えがわかれば、今後のお子さんとの接し方を考える際に活かせるでしょう。
ただし、いきなり質問をしても話してくれないケースもあります。その場合は、無理に聞きだそうとするのではなく、話してくれるまで待つことが大切です。
親御さんが「いつでもあなたの気持ちや話を聞かせてね」という姿勢で接していれば、お子さんも少しずつ心を開き、話したいタイミングで話をしてくれるはずです。
対応④予防方法を実践するように促す
予防方法を実践するように促すのも、適切な対応です。
お子さんは症状について悩んではいても、症状を和らげるためにどうすればいいのかを知らない場合が少なくありません。そのため、親御さんが情報収集をして、予防方法などについて伝えてみてください。
以下のような予防方法を実践することにより、症状が軽くなる可能性があります。(参考:一般社団法人 起立性調節障害改善協会「もしかして親のせい?起立性調節障害の子どもへの接し方とは」)
- 30秒以上かけてゆっくり立ち上がる
- 早寝早起きで生活リズムを整える
- 暑いところは避ける
これらの予防方法を意識すると、血圧や心拍数の上下を抑えられます。すぐにできるものばかりなので、ぜひお子さんに伝えてみてください。
対応⑤専門家や医療機関に相談する
親御さんやご家庭内でできることもたくさんありますが、専門の医師や専門家、支援機関に相談する方が、より専門的で効果的なサポート方法が見つかりやすくなります。
特に、お子さんの起立性調節障害が重症化しているようであれば、すぐにでも受診しましょう。また、症状がまだ軽い場合であっても、早い段階で専門の医師や専門家、支援機関に相談すれば、重症化を防げる可能性があります。
起立性調節障害の相談先は、こちらで紹介しています。ぜひ参考にしてください。
起立性調節障害の相談先
この章では、起立性調節障害の相談先を紹介します。どこへ相談すればいいかわからない人は、ぜひ参考にしてください。
相談先①小児科
お子さんが起立性調節障害であることが疑われる場合は、まず小児科を受診しましょう。また、病院を選ぶ際は、小児科と内科ともに同じ先生が診ている病院がオススメです。
また、総合診療科がある総合病院でもいいでしょう。ただし、高校1、2年の年齢では受診できない場合もあるため、訪れる前に電話で問い合わせておくのが賢明です。(参考:NPO法人 起立不耐症と起立性調節障害の会「高校生の受診先について」)
相談先②学校の先生
お子さんが起立性調節障害のために不登校になっている場合は、学校の先生に相談するのもいいでしょう。
学校での勉強の進捗を共有してもらったり、家庭学習の方法を相談できたりします。
お子さん自身が望んでいる場合であれば、お子さんと一緒に相談しに行けたらなおよいでしょう。学校へ足を運ぶきっかけにもなるので、お子さんと相談したうえで学校の先生への相談も検討してみてください。
相談先③スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー
スクールカウンセラーとは、児童生徒や保護者の抱える悩みを受け止め、学校におけるカウンセリング機能の充実を図るため、臨床心理に専門的な知識・経験を有する学校外の専門家のことです。(参考:文部科学省「2 スクールカウンセラーについて」)
スクールソーシャルワーカーとは、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉等の専門的な知識や技術を有する専門家を指します。(参考:文部科学省「スクールソーシャルワーカー活用事業」)
いずれも、児童生徒の悩みを聞き、解決へ導く存在です。スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーが協力するケースもあります。
学校の先生とはまた違った視点からアドバイスしてくれるので、ぜひ頼ってみてください。
相談先④教育相談センター
教育相談センターとは、面談や電話・メールで不登校やいじめなど教育に関する相談、障がいのあるこどもに対する学校や家庭での対応や配慮について相談できる窓口のことです。
以下のように、各自治体で名称が違っている場合があります。
お住まいの自治体にある教育相談センターをお探しの場合は、インターネットなどで調べてみてください。
相談先⑤精神保健福祉センター
精神保健福祉センターとは、精神保健の向上および精神障害者の福祉の増進を図るための機関のことです。
各都道府県および政令指定都市に設置されており、起立性調節障害について相談できます。
以下のサイトに全国の精神保健福祉センターが掲載されています。お住まいの近くにあるか探してみてください。
相談先⑥民間のサポート機関
民間のサポート機関に相談するのもいいでしょう。
特に、以下のような不登校状態にある子どもへのサポートを行ってる支援機関であれば、起立性調節障害への理解がある場合が多いです。
病院などでは聞きづらい勉強に関する悩みや不登校に関する相談も、親身になって聞いてくれます。無料相談・体験を実施しているので、お試しで受けてみるのもオススメです。
起立性調節障害の体験談
この章では、実際に起立性調節障害を経験した人の体験談を紹介します。
起立性調節障害のあるお子さんとの接し方のヒントになるかと思います。ぜひご覧ください。
体験談①娘が起立性調節障害を治療しながら大学に合格
谷本さん(仮名)は起立性調節障害があり、完全に治癒しないままで大学受験を迎えました。
「どのように勉強を進めるか」「大学を選ぶか」などの悩みがありましたが、ペースに合わせた勉強方法や先生を紹介してもらえると思い、キズキ共育塾で勉強を始めました。
無理ないペースで通塾し、推薦入試に向けて小論文の対策もしました。その結果、無事に大学合格を勝ち取ることができたのです。
学校に通うのが難しい場合は、谷本さんのように塾で勉強するのも一つの手です。自宅で一人で勉強するよりは、不安や悩みが解消されるはずです。
谷本さんの体験談をより詳しく知りたい人は、以下の体験談をご覧ください。
体験談②起立性調節障害の経験を生かして、悩む人を支える塾講師に
小野さん(仮名)は中学2年生のとき、起立性調節障害の症状と思われる、立ちくらみやめまいに悩まされるようになり、部活を引退することになりました。
不完全燃焼のまま部活を引退したことが悔しく、勉強にも身が入らなくなり、推薦入試は不合格。なんとか一般入試で第一志望の高校に合格しましたが、大きな後悔が残ったと言います。
一時的に症状はよくなったのですが、高校2年の秋頃から気持ちが落ち込む時期が続き、3年になると再び朝起きられなくなったのです。
それから勉強がほとんど手につかなくなり、大学受験はすべて不合格。浪人生活が始まったのです。
浪人当初は、ベッドに横たわり、ぼんやり机を眺めながら涙を流すことしかできませんでした。入試は何とか受け、第一志望ではないものの東京理科大学に合格。
大学入学後に再び症状が悪化し、呼吸をするのもつらく、起き上がることができなくなり、留年することになりました。
そこで精神科を受診して治療を開始したところ、1年ほどで体調が回復し、勉強できるようになったのです。
この経験を経て、小野さんは「やはり病院を適切に利用することは大事だな」と感じたそうです。
起立性調節障害はもちろんですが、それ以外であっても、何らかの症状に悩んでいるのであれば、1人で抱え込むのではなく、誰かに相談してみてください。
小野さんの体験談をより詳しく知りたい人は、以下の体験談をご覧ください。
まとめ~症状と向き合い、一歩ずつ前に進みましょう~
起立性調節障害の症状は、甘えや怠けに見られることが多く、本人は周りの対応や言葉などによって傷ついていることが少なくありません。
特に、親御さんから理解を得られないと、「誰も自分を理解してくれない…」と心を閉ざすことになるかもしれません。
そのため、親御さんはまず起立性調節障害への理解を深め、症状が改善に向かうよう、お子さんをサポートしましょう。
また、ご本人や親御さん、ご家庭内で悩みを抱え込む必要はありません。
医療機関や相談先で、起立性調節障害に関する悩みや困りごとを打ち明けることで、あなたやお子さんに合った治療方法やアドバイスを提案してもらえるはずです。
Q&A よくある質問