木原直哉オフィシャルブログ

プロポーカープレーヤー、木原直哉が、思ったことを書いていきます。道場やってます。https://lounge.dmm.com/detail/308/

多井プロと麻雀警察の件

麻雀界でちょっとした議論が。

https://note.com/fukuchimakoto/n/n44609a3b5278

有料記事だけど、事の経緯はこの福地さんの記事の無料部分で分かると思います。

 

https://www.youtube.com/watch?v=UHhyHUcTgt0

これが問題になった動画。

 

 

この件、どちら側の気持ちも分かるので難しいなと思ったのです。

まずは多井さんの立場から。

Mリーグが大反響で終わって、このタイミングでどんどん麻雀人口を増やしたいと間違いなく思ってます。そして、それは程度の差こそあれ、麻雀にどっぷりな人の総意のはずだとも思っているはずです。

そのために一番手っ取り早いのは著名人に入ってもらうこと。

多分、Mリーグの成功のかなりの部分が萩原さんのおかげであると思ってて、それを内部の人としてすごく実感しているんじゃないかなと。

スポンサーを貰える価値がある人は、

・それに値するくらい強い

・それに値するくらいエンタメ要素を持っている

・外部からたくさんのお客さんを引っ張ってこれる

ゲームの不遇な時代を知っている身からすると、どんなにどんなに強くても、多くの人に知られてない世界では報われないんですよ。

そういう意味では、圧倒的に強いことよりも、外部からお客さんを引っ張ってこれる人のほうが圧倒的に偉いんです。

 

https://kihara-poker.hatenablog.com/entry/2018/07/20/221443

 

自分は以前こんな記事を書きましたが、ゲームの世界でも全く一緒です。どんなに圧倒的に強くても、商業的に成功してなかったら意味がないのです。多井さんはそのことを身にしみて分かっているのです。

 

ところで、自分はポーカープロであって、

「プロギャンブラー」

と呼ばれるのが非常に嫌です。一方、自分からその呼称を使っているポーカープロも結構います。これはポーカープロでも意見の分かれるところだと思います。

 

同様に、Vtuberでも

「麻雀Vtuber」

と呼ばれるのが、問題ないと思う人、まあいっかと思う人、そう言われたくないと思う人と多々いると思います。麻雀警察の動画の1位の人のように、元々麻雀にどっぷりな人は問題ないと思うでしょう。一方、特に別の分野から客を引っ張ってこれる人が配信の一つとして麻雀をした場合、こういう風に呼ばれることを嫌がる率は高そうです。

そして、麻雀の裾野を広げてくれるのはそういう人たちなのです。

「麻雀Vtuberと言われるくらいなら、別に麻雀じゃなくたっていいし、麻雀するのをやめようかな」

と少しでも思われるなら業界として損じゃないか、と言うのが多井さんの意見だと自分には読めます。

 

 

一方で、殆どの麻雀ガチ勢(麻雀警察含む)からすると

「外の知名度があるだけで、スキルが足りないのにMリーグに飛び入りで参加できるのはずるい、せめてそれに値するくらい強くあってほしい」

と思うわけです。外から客を連れてくる事の価値は認めるものの、それ以上に羨ましいという気持ちが先にあります。

Vtuberについても、外から客を連れてくる能力がある人に価値があることは当然分かっていつつ、現状麻雀に情熱を注いでいるガチな人を正当に評価したいという気持ちが非常に強いのだと思います。

そして、その正当な評価がされることは、麻雀自体の裾野が広がることよりも優先されるべきだと思っているのです。

麻雀というフィルターを通してしか見る気がないので、「麻雀Vtuber」と呼ばれるだけで嫌だと思うならそれはそれでよしと思う人の方が大多数なんじゃないかなと。

 

結局この対立は

「裾野を広げることが何よりも優先されるべき」

「情熱やスキルなどが正当に評価されるべき」

という価値観の対立だと自分には思います。

そして、ライトな層はどっちでも良く、ガチ勢は後者の率が非常に高く、ごく一部のトップ層(主に頑張っても報われない時代を経験している人)が前者の立場を取るのだと思います。

 

これからの若手強豪は、報われなかった時代など知らない人が多数出てくるでしょう。サッカーのJリーグが出来るまでは、日本人でどんなにサッカーが上手くても、世界にリスクを取って飛び出さない限り報われなかったのです。

そんな報われない中でも頑張り続けてきたトッププロが最初のMリーガーとして選ばれているのです。麻雀ガチ勢ファンからすると、いつ報われる時代が来るかわからないのに情熱を燃やしてプレイし続けることの凄さはなかなか理解できないのです。

 

麻雀ガチ勢には、トッププロが裾野を広げることに必死な理由として、少しでもそのことに思いを巡らせてほしいかなと思います。

一方で、トッププロ(多井さん)側は、報われて「羨ましい」とガチ勢ファンから強く思われていることに自覚的になって、そこへもう少し説明する方が良いんじゃないかなと思ったりもします。まあ、自分で言うのってかっこ悪い面はあるかもですが。

 

自分は報われることから、麻雀とバックギャモンではなくポーカーを選んだ人間です。そのことに後悔はないし、ポーカーでも運良く報われている方だと自覚してますが、別の世界に行ったほうが報われると分かっているのに麻雀に情熱を燃やし続けた人たちを本当に尊敬してます。自分には出来なかったことですから。

そういう経緯があって、この記事を書きました。

Â