経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるブログ

経済を良くするって、どうすれば

 昔、内閣府で働いていた頃、「どうすれば、景気は良くなるんだろう」という政策統括官のつぶやきに、感じ入ったものだった。立場上、「これで良くなる」と説明しなければならないのに、投資促進策に大して効き目のないことは、経験上、分かり切っていたからである。そして、今もなお、総裁選の候補者は、どうすれば良いかも分からないことを公言し、日経は社説で効き目のないことを求めてくる。

………
 成長には設備投資が必要だが、金融政策や産業政策では出てこない。経営者は売れると思って初めて踏み切るからだ。ゆえに、緊縮財政を組み合わせると、需要が見込めなくって、躊躇してしまう。需要に関係なく絶対に売れる技術革新なんて限られるから、経済学の理論に合わないことが現実になる。需要を安定的に増大させていく財政運営は、実際には不可欠な要素なのである。

 現下はインフレだから、いかに低所得層の負担を軽くするかが焦点になる。負担の大半は社会保険料なので、維新の保険料軽減の主張は正しいが、本丸は医療でなくて年金だから、的がズレている。国民党の所得控除の拡大も正しいが、必要なのは社会保険料で所得税ではなく、的を外している。立民の給付つき税額控除も正しいが、社会保険料の軽減と連動させてないために所得把握や給付に難が生じ、的を射貫けない。

 皆、大事なことに感づいてはいても、肝心のところまで行き着いてない。なぜ、そうなるかと言えば、年金保険料を負けることが常識外になっているからだ。実際には、国保や国年は負けているわけで、欧米でも普通にやっているが、御当局は、面倒に巻き込まれないよう口を噤んでいるし、学者や民間では、入り組んだ制度設計は手に余る。それで、かみ砕いたものを本コラムで見せたけど、まあ難しくって分かってもらえない。

 そもそも、社会保険料に所得控除がなく、貧乏人からフルに取るのは無理がある。それゆえ、所得税には所得控除があるし、消費税は食料を軽くした。無理があるから、「年収の壁」ができ、労働供給が制約され、保険料逃れの非正規がはびこり、低所得者の家計の苦しさで少子化が進む。こうして、年金財政まで窮まるのだから世話はない。年金保険料のかたくなさが諸悪の根源になっている。 

(図)

……… 
 7月の人口動態速報が公表になり、婚姻は、平成7年7月7日があったせいか、前年同月比+22.5%の急増だった。それほどでなくても、底を打った状況になっており、出生も減少幅が縮小傾向になっている。むろん、今年の出生率が1.12人位になるにせよ、低位推計の水準であり、更なる年金改正が必要とされるだろう。しかし、5年後の財政検証を待つのでは遅い。少子化対策は、今が最後のチャンスと言われていなかったか。

 経済を良くするには、現実に即した解決策を編み出すことである。効果の薄い理論的に正しい政策に拘ってみたり、保険料は負けられないといった教条に陥ったりしてはいけない。無理に目を向け、現実的な解決策が突き当たる理論や教条が本当に意味があるかを確認し修正していく必要がある。求めるだけムダかもしれないが、やらなければならないことだ。gooブログでの最後の投稿に当たり、タイトル回収をしておこうと思う。

 

(今日までの日経)
 社説・経済成長への戦略をもっと明確に。アベノミクス後の成長 岸田氏、分配論提起で勝利。給付付き控除、なぜ実現難しい。ロシア、戦時経済疲弊。総裁選・見えぬ成長、家計支援偏重。猛暑の夏、消費じわり回復。中国AI半導体、開発競う。