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 私は2024年8月に日本共産党を不当に除籍・解雇され、同年11月に私は共産党などに裁判を起こしました。

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 この件について、簡単な経過を知りたい方はこちら。(この記事は、ブログのトップに一定期間置いておきます。)

第1回口頭弁論での私の意見陳述

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方は24年8月20日付の記事を、また裁判については私の弁護団長である平裕介弁護士の意見陳述を先にお読みください。)

 

令和6年(ワ)第30571号 地位確認等請求事件

原告 神谷 貴行

被告 日本共産党 外1名

意見陳述要旨

 

2025(令和7)年1月16日

東京地方裁判所民事第36部 御中

原 告   神 谷  貴 行

 

第1 生活と尊厳を奪われた

 意見陳述の機会を与えていただき感謝いたします。

 私は、昨年(2024年)8月に被告らから不当に除籍・解雇され、生活と尊厳を奪われました。生活の糧という点では、私は月27万円余を給料として得ていましたが、それを突然奪われました。

 尊厳についても奪われました。私は京都大学卒ですが、今述べたとおり同級生に比べると大変な薄給です。にも関わらず、私がこの仕事を選んだのは、日本共産党の活動にやりがいと誇りを感じていたからです。

 私は1988年、高校生の時に共産党に共鳴し自分で入党を申し込み、その後、共産党の活動を生涯の仕事にしようと、大学を卒業した1995年に専従者、党職員になりました。

全学連委員長の頃(1994年)

 主には、選挙などの政策論戦、もう一つは市議会議員団の事務局の活動を任されてきました。

 選挙の政策論戦は、実際にビラにするまでが仕事です。

私が起案・製作に関わった各地の共産党のビラ

 福岡だけでなく東京、沖縄、被災地など、全国各地の応援に行って、たくさんビラを作りました。版下で年間100種類、30年近く働いたので3000種類は作ったと思います。それだけでなく、私の場合、取材から執筆、党内の意見調整、そしてパソコンによるレイアウトをして入稿まで全て自分で行います。

 的確なビラを素早く作ることは、選挙や党活動では最も求められることの一つですが、プロセスごとに担当者が違ったり、組版やデザインを政治に疎い業者に委託したりするので、膨大な時間がかかってしまうのが普通です。私の場合この工程が全て一人で完結できるため、非常にスピーディーに完成し、どこへ行ってもありがたがられました。住民からも様々な反応が返ってきて、選挙勝利や地域の改善につながり、それらが私の喜びであり、誇りでありました。

 もう一つは、福岡市議会議員団での事務局としての活動です。

 この仕事の中心は何と言っても議員の質問づくりのサポートです。

 私が除籍をされる直前の共産党の議会質問を例にあげてみますと、市側が発表した経済効果のごまかしを私の調査・研究によって暴きました。また、市が進める巨大開発計画が何をモデルにしているかを、私の調査で発掘しました。さらに、2万字に及ぶ防災提言や市の基本計画への市議団としての対案をほぼ全て私が起草し、議会質問の元になりました。ほとんど議員になりかわって書いた質問もあります。つまり党の議会質問の不可欠の部分を支えてきたのです。

 だからこそ、2018年の福岡市長選挙では、市民団体から共通して、「政策に強い神谷を市長として推したい」という声が上がり、党の市議団・県委員会幹部からも直接出馬要請を受けました。その結果、共産党単独推薦候補としては歴史上最高の9万4437票、得票率24.9%を獲得できたのだと考えます。

2018年の福岡市長選挙の結果の記者会見

 こうした仕事は私の誇りでした。いち党員としても、党職員としても業務を懈怠したり無断欠勤をしたりして、懲戒や処分を受けたことは一度もありませんでした。それどころか、2018年には「永年党員」として党から表彰され、共産党と社会進歩にまじめに貢献してきたことを評価され、晴れがましく思ったものです。しかし、こうした私の尊厳を、被告らによる除籍・解雇は全て奪ってしまいました。

 

第2 除籍と解雇、パワハラは不当なものだった

 被告らは、私が2023年3月に、直前の党の県委員会総会について書いたブログ記事が、総会の決定とは異なる意見を公表するなどの規約違反だったと言っていますが、私のブログ記事は“総会決定に従って活動する”と明記するなど、規約には何ら違反するものではありませんでした。また、私が規約に違反したかどうかの正式な認定は最後までどこでもされませんでした。しかも、私はもし私の規約違反が正式に認定されたならその決定には従い、ブログも削除することを繰り返し表明していました。被告らは、私のこうした主張にまともな反論をしないまま、除籍と解雇を強行したのであります。

県委員会総会の討論や写真を公開する日本共産党福岡県委員会のHP(2014年)



 しかもそのプロセスで深刻なパワー・ハラスメントを受けました。

 県委員会の正副委員長・書記長など5人の幹部が取り囲んで私一人を査問しました。5人は、まだ正式な調査もしていないのに、そして党規約では意見の保留が権利として認められているにも関わらず、自己批判せよ、すなわち私が悪かったと謝れ、できなければ「党員としての資格を問われる」、つまり党から追放するぞと迫ったのです。私は精神を病んでいるので5対1での調査はやめてほしいと懇願しましたが、彼らは冷たく拒否し、かわるがわる私を責め立てました。その後も、幹部5人が仕切る県の常任役員の会議において、11対1の構図で、やはり党からの追放を脅す形で自己批判を迫られました。

 後に被告らは“怒鳴ったり机を叩いたりはしなかったからパワハラではない”と言い訳しましたが、上級者で取り囲み追放をチラつかせて自己批判を迫るなら、いくら静かにそれを言ったとしても、いや、静かに言われれば言われるほど、言われた私は凄まれているように感じ、党員人生を全て否定される恐怖を感じてしまうのは、容易に想像できることではありませんか。

 被告らのパワハラはこれだけでは終わりませんでした。私から全ての仕事を取り上げ、職場への出勤の禁止や職場のライングループ外しを命じて職場の同僚と接触を断ちました。職場の移転作業の手伝いや、若い人たちと続けてきた資本論学習会への参加さえ禁じたのであります。

 さらに被告らは、県内の地区委員長会議、福岡市議団会議、国政候補者会議などを次々開き、私の出席を禁じた上で、調査も終わっていないのに「神谷は重大な規約違反をした」と一方的に報告し、同年2月に党を除名された松竹伸幸氏は共産党を破壊し撹乱する者であり、その福岡県における同調者が神谷だと述べ、私の評価を低下させる宣伝を繰り返したのであります。

 被告らのパワハラによって生じた精神疾患のために、提訴や裁判期日が近づくたびに不安は高まり、私は今でも病院に通い、薬を飲み続けなければならない体にさせられています。

 私はそのような仕打ちを受けながら、調査は査問などの予備調査の期間を含め1年3ヶ月の間続き、自分の将来がどうなるかもわからない中に閉じ込められたたま過ごすことになり、本当に辛い時間となりました。

 しかしだからと言って私はこのことを公に発信したり、職務を放棄したりするのではなく、調査結果が出るまで、与えられた職務を誠実にこなしながら、辛抱強く待ちました。

 党規約第48条には規律違反の処分のための調査が定められていますが、私への調査はその48条に基づくものだと正式に決定されました。だからこそ、規約に定められている通り、調査結果が出て、処分についての県役員全員による審議が行われ、そこで私が意見表明をする機会があるのだと信じ、私はずっと待っていたのであります。ところが、被告らは昨年(2024年)8月になって突然、処分ではなく、除籍を決定し、これらの機会は全て奪われてしまいました。

 党規約において除籍は規約第11条で、処分とは別個に定められ、「党員の資格を明白に失った」場合に適用されると書いてあるように、国籍や年齢とともに、本人が綱領・規約を認めるかどうかなど外形・形式によって党員資格の有無を定める条項です。だからこそ規約違反を処分する場合とは違って、非常に簡素な手続きで名簿から抹消できるようになっています。

 私は繰り返し綱領も規約も認めると明言しており、除籍に該当しないことは明らかです。党規約の公式解説である『国民に開かれた党へ——日本共産党新規約のはなし』の73ページでは、重大な規律違反をした党員を処分せず、11条の「除籍で処理するのは正しくありません」とはっきり書いてあります。

 被告らのやり方は、幾重にも慎重な手続きを定めた除名などの処分を回避して、簡単に追放できる除籍条項を悪用したものであり、「カジュアル除名」とでもいうほかない、制度の潜脱であります。私の除籍後に、私への人権侵害に抗議の声をあげた他の党員が、正式な違反認定も処分も回避させる全く同じやり方で、党内から次々と除籍されています。

党東京都委員会の職員時代。代々木駅前で他の職員(のちに国会議員)とともに住民署名に。

 どうか、私の生活の糧と人生の尊厳を回復させてください。そして、被告らにパワハラなどの償いをさせるようにしてください。そのことは、私一個の人生だけでなく、依然として日本の政治で重要な役割を果たしている共産党の立て直し、そして、理想を持って社会進歩を進める組織に加わりながら、結社の自由を盾にした幹部の横暴や人権侵害に苦しんでいる多くの人たちに希望を示すことにもつながると信じております。

 公平な裁判所の判断をよろしくお願いします。

www.ben54.jp

第1回口頭弁論での平裕介弁護士の意見陳述

 私の起こした共産党不当解雇裁判。

 2025年1月20日に、弁護団長である平裕介弁護士の意見陳述がありました。書面で提出された「意見陳述要旨」の全文をご紹介します。

 訴状はA4で27ページありますが、この意見陳述要旨はその訴状の、わかりやすいポイント解説になっています。

第1回口頭弁論の後の司法記者クラブでの記者会見より

 

令和6年(ワ)第30571号 地位確認等請求事件

原告 神谷 貴行

被告 日本共産党 外1名

意見陳述要旨

 

2025(令和7)年1月16日

東京地方裁判所民事第36部 御中

 

原告訴訟代理人 弁護士  平  裕 介

 

1 本件の事案の概要

本件は、原告である神谷貴行さんが被告日本共産党において35年以上にわたり誠実に党活動に従事し、党の職員として長年地域社会に貢献してきたにもかかわらず、党内での問題提起を理由に不当な「除籍」措置を受け、さらにその除籍を理由に解雇までされ、生活の糧を奪われるという、極めて理不尽な仕打ちを受けたという事案です。原告は党の規約に違反しておらず、逆に、被告日本共産党(以下「被告共産党」といいます)や被告福岡県委員会(以下「被告県委員会」といいます)の側が党の規約や法律に違反して除籍や解雇を行ったものであり、本件で原告は除籍や解雇が違法・無効であることを訴えています。党や党組織に人生をささげてきた個人の尊厳が踏みにじられており、決して看過できるものではありません。

 

2 当事者

原告は、1988年に入党し、2006年から被告県委員会と雇用契約を締結した上で党の職員として勤務し、真摯に業務を遂行し、市議議団事務局長、常任委員などの要職を歴任し、福岡市長選にも立候補するなど、党の信頼を背負って活動してきました。

他方で、被告共産党は、100年以上の歴史を持つ公の政党でありますが、このたび、原告を党規約に違反して除籍し、原告に対する数々のパワーハラスメントや人格権侵害を放置してきました。また被告県委員会は、被告共産党の内の一組織ではありますが、原告の雇用主であり、違法な解雇を断行した権利能力なき社団です。

原告は、労働基準法・労働契約法上の労働者であり、被告県委員会もこれを認めています。被告県委員会は、原告が労働法上の労働者であることを大前提として、原告に解雇通知書を送付しています。

3 規則に違反する除籍

このような原告が、突如として、2024年8月6日に、除籍され、同月16日、被告県委員会から除籍を理由に解雇されました。

しかし、除籍の要件である「党員資格を明白に失った」という点は到底認定できません。被告県委員会は、1年以上にわたり、「査問」などという時には11人という大人数で原告一人を責めたて、「自己批判」などという反省を強要するような異常な態様の調査によって原告を精神疾患に追い込み、2度も休職させるほどのハラスメントや人格権侵害を繰り返してきましたが、結局、原告の規約違反1つ認定できませんでした。このことは、党規約に違反せずに、あくまで規約の範囲内で、原告が党の決定に従う姿勢を示しつつブログ投稿をするなどの表現の自由を行使したにすぎないという原告の言い分が正当なものであったことを意味します。にもかかわらず、党側は強引に「党員資格を明白に失った」という規約上の要件を一方的に認定し、しかも事前に経なければならない「協議」という規約上の手続すら経ずに、独断的に原告を除籍してしまいました。

被告共産党の規約には「除籍」措置とは別に、「規律違反の処分」としての「除名」が規定されています。本件除籍は、いわば「カジュアル除名」ともいうべき除名の要件や手続を潜脱するような姑息な手法でなされたものでした。原告は、「規律違反の処分」(規約48条以下)の調査審議を受け、規約48条に基づく党員の権利制限を受け続けましたので、原告としても、この規律違反の処分の調査手続に繰り返し応じてきました。にもかかわらず、原告は、突如として一方的に、警告、権利停止、罷免、除名といった規約48条の「規律違反の処分」とは性質の全く異なる「除籍」の措置(これは「規律違反の処分」ではありません)をとること宣告され、その上で、極めて不意打ち的に「協議」(規約11条)という簡易な手続しかない措置の対象とされ、規約11条の「党員の資格を明白に失った党員」という要件についての意見を述べる機会もないままに除籍されたのです。「規律違反の処分」(規約48条)であれば、「十分意見表明の機会をあたえる」(規約55条)など「事実にもとづいて慎重におこなわなければならない」ところ(規約49条)、被告らは、このような慎重な手続を必要としない「除籍」措置によって、実質的な除名処分を行っているわけです。これがこの国の政策に大きな影響を与えている公の政党のすることでしょうか。本来は党員が国籍を失ったり、年齢が18歳未満だと判明したりしたときなどにだけ適用されるとされるはずの、趣旨の全く異なる「除籍」の規定を、除名の代わりの規定として、いわば脱法的に適用することは、政党自身が自ら作ったルールに違反するものであり、公党として許される行為ではありません。

このように、本件除籍は実体的にも手続的にも瑕疵があり、無効なものです。

行きの新幹線で。伊吹山でしょうか。



 

4 解雇権の濫用

(1)本件解雇の客観的合理性は存在しない

被告県委員会による本件解雇も、違法であり、無効であると言わざるを得ません。先に述べたとおり、原告は労働基準法・労働契約法に規定される「労働者」であり、解雇については使用者の側に高いハードルが課せられています。

そして、本件除籍は、実体的にも手続的にも瑕疵があり無効ですから、本件除籍を理由とする本件解雇には「合理的な理由」(労働契約法16条)がありません。

これは勤務員規程との関係でも同じです。原告宛ての解雇通知書には、「日本共産党福岡県委員会勤務員規程第1条、第2条」との記載がありますが、これらの規定は、県委員会の「勤務員」としての活動や任務遂行について抽象的な定めを置くものにすぎず、除籍されたから直ちに解雇されるなどということは一言も書いていません。さらに言えば、原告は、勤務状況について能力不足やミスを理由に上司等から具体的な注意を受けたこともありませんから、具体的な業務上の支障を発生させたわけでもなく、他の解雇事由もありません。勤務員規程の第8章では「規律違反」「ふさわしくない、言動」「不都合な行為」による罷免を定めていますが、被告県委員会はこのような規定も適用していません。このように、勤務員規程との関係でも、客観的にみて「合理的な理由」があるなどということは到底いえないわけです。

(2)本件解雇は社会通念上相当といえるものでもない

本件解雇には社会通念上の相当性もありません。

原告は、被告県委員会による過酷な査問・調査や権利制限を受け続け、適応障害により休職に追い込まれ、通院及び投薬が必要な状態にさせられましたが、それでもなお、長期にわたる調査に誠実に対応してきました。原告は精神的にボロボロになりながらも、規約違反についての調査や審議に協力し、党勢拡大の活動に尽力し、党に貢献してきました。

また、原告は党の規約を遵守する態度を示し続けています。原告は、綱領・規約・大会決定を守る意思はあるかなどという質問に対し、「あります」と回答し、党のルール等を遵守して行動する旨を述べていますから、規約第4条で定める「規約を認める」という「党員の資格」は満たしています。

さらに、原告は、勤務員としての勤務につき具体的な支障を生じさせていません。懲戒処分を受けたことがないのは勿論のこと、勤務状況について能力不足等の具体的な注意を受けたこともありません。

しかも、本件解雇には合理的な解雇手続も経られていないという問題もあります。本件解雇について原告の意見表明の機会はありませんでした。

したがって、本件解雇には社会通念上の相当性もありません。

以上より、本件解雇は、被告県委員会が解雇権を濫用したものであり、違法かつ無効です。

5 パワーハラスメント・人格権侵害

本件で、原告は、被告らの安全(健康)配慮義務違反あるいは職場環境調整義務違反も主張しています。判例に照らすと、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入つた当事者間」においては、その「法律関係の付随義務として……信義則上負う」ものとして、原告対する被告県委員会や被告共産党の安全配慮義務等が認められます。

被告県委員会は、労働者である原告に安全な職場環境を提供し、パワーハラスメントや人格権侵害を防止する義務を負っていましたが、これを怠り、適切な調査方法を取らずに、原告を精神的に追い詰めました。また、被告共産党も、被告県委員会の指導機関の地位にありながら是正措置を怠り、ハラスメントや人格権侵害を放置しました。被告共産党内では、過去に、小池晃書記局長が現在は委員長の地位にある田村智子副委員長に対しパワハラをして規律違反の処分としての「警告」(規約49条)を受け、田村氏も当初はそれに気が付いていなかったような態度をとっていたなど、幹部のレベルでもパワハラが横行し、パワハラへの理解不足がありました。対外的にはハラスメント根絶を声高に叫びつつ、党の内部では逆にハラスメントが平然と行われ、蔓延しつつあります。

被告らは、原告に対し、安全配慮義務違反等に基づく賠償責任を負うべきです。

 

6 結語

最後に、この訴訟の意義について述べます。

原告は、被告らの違法行為により、党員・党職員としての地位を失い、精神的苦痛を受け続け、現在でも通院や服薬を余儀なくされています。それにもかかわらず、現在、全国的に同様の「カジュアル除名」としての除籍やパワハラが横行していることも考慮し、党員・党職員としての誇りを守るために、原告は法廷に立つことを決意しました。神谷さん一人だけの問題でありません。この訴訟は、同じ境遇にある多くの党員ひとり一人に対する政党の違法行為をなくすための訴訟でもあります。

原告は、政党の「結社の自由」を否定(して)おらず、むしろ尊重しています。しかし、同時に、結社の自由は、公の政党が解雇権濫用やパワハラをやっていいことの言い訳にはなりません。結社の自由は違法行為をなきものとする免罪符ではないのです。

除籍や解雇が公正なものでなければ、組織内で信念を貫く行為そのものが理不尽な制裁の対象とされ、党上層部への「黙従」だけが評価される不健全な社会となります。そのような政党が国家権力を伴う国家の政策を左右することを許していいのでしょうか。ここで原告が救済されなければ、党組織への信頼だけでなく、法の正義そのもの、司法権の存在意義そのものが問われます。このたびの原告の勇気ある決断をぜひ正面から受け止めていただき、そして裁判所の英断によって、原告の誇りと生活を取り戻す判決を賜りたく、心よりお願い申し上げます。(以上)

共産党職員は労働者であると公式に認めた

 1月20日は私の共産党不当解雇裁判の第1回期日でした。たくさんの傍聴に来ていただいてありがとうございます。また、そのあとの報告集会にもたくさんの方が来ていただきました。資料が足りずご不便をおかけしました。カンパや支援をその場でもいただきました。心からお礼を申し上げます。(時間がなくて十分にお話しできない方も大勢いらっしゃいました。申し訳ありません)

 私の意見陳述などは追ってお知らせいたします。

 

 このことにも関わりますが、産経の昨日の報道は歴史的なものだったと思います。

www.sankei.com

 まず共産党中央が

党機関専従者も労働法制を順守することは必要と考えている

と正式に回答しています。これは党職員(専従者)が労働者であることを認めたものだと言えます。

 「党専従は労働者ではない」という歴代の見解(謬論)が否定された瞬間です。共産党は1970年代の宮地健一さんの裁判で公式にこの謬論を主張し最近もこの主張で現場を指導してきました。党運営の根本に関わることであり、こんな簡単なコメントでなく大会や中総で反省を表明すべきではないでしょうか。

 

 そして、

福岡中央労働基準監督署は党福岡県委に対し、就業規則が提出されていないとして、昨年10月21日までに届け出るよう求めていた。

党側は就業規則を提出したものの、さらに有給休暇取得の条件が法令基準を満たしていないなどとして再提出を求められた。

安衛法では、平成31年4月から労働者の健康管理措置を適切に行うため、雇用者に客観的な記録による労働時間の把握を求めている。だが、党福岡県委は専従職員の労働時間について法令が求める形では記録しておらず、この点についても福岡中央労基署から党側に是正指導が入った。

という点も重大です。

 

福岡県委員会は私を解雇する資格はない

 私の解雇についても、こんなずさんな認識と体制のまま強行したわけで、その不当性が満天下に明らかになった大事件です。

 

 日本共産党は第4回中央委員会総会で

暮らしに安心とゆとりを――そのために、働き方、税制、社会保障、教育費負担、農業など暮らしにかかわる政治の全体の改革を求めてたたかう。…

賃上げとともに、労働時間短縮の切実な要求にこたえるたたかいを発展させよう。それはジェンダー平等の日本をつくるうえでも重要である。労働運動の原点に立ち、残業規制の強化とともに、「1日7時間、週35時間労働」をめざす世論と運動を起こそう。

と決議しましたが、この決議に照らして「労働法制を順守することは必要」であるべき福岡県委員会のこうした現状は、正反対のものだと言えるのではないですか。

 福岡県委員会は私を解雇する資格はありません。
 福岡県をはじめ、党幹部は裁判で争うことをやめ、反省して私を党に戻すべきではありませんか。

 

福岡県の若い活動家の皆さんに心から敬意を表します

 そしてここまで事態を動かしてきたのは、福岡県で私への人権侵害に声をあげて追放された若い人たち、砂川絢音さんや羽田野美優さん、そして油鳥さんたちの勇気ある行動です。

 

 心から敬意を表します。

 

私の解雇はなぜ不当だと言えるのか

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方は24年8月20日付の記事を先にお読みください。)

 

 私は党職員でしたが、共産党幹部から不当に解雇されました。それを撤回させる裁判をしています。

 

共産党にとって解雇とはどんな問題か

 日本共産党にとって「解雇」とはどういう問題でしょうか。

 日本共産党の綱領には次のように記されています。

大企業・財界の横暴な支配のもと、国民の生活と権利にかかわる多くの分野で、ヨーロッパなどで常識となっているルールがいまだに確立していないことは、日本社会の重大な弱点となっている。労働者は、過労死さえもたらす長時間・過密労働や著しく差別的な不安定雇用に苦しみ、多くの企業で「サービス残業」という違法の搾取方式までが常態化している。雇用保障でも、ヨーロッパのような解雇規制の立法も存在しない。

 日本の独占資本主義がどのように日本の労働者を苦しめているか。

 「ルールなき資本主義」の典型の一つが、解雇規制の立法が存在しないこと、つまり簡単にクビを切れる世の中になっているということなのです。

 その上で、当面する民主主義革命で、日本をどう改革するかについて、経済分野の最初に次のように書いています。

1 「ルールなき資本主義」の現状を打破し、労働者の長時間労働や一方的解雇の規制を含め、ヨーロッパの主要資本主義諸国や国際条約などの到達点も踏まえつつ、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる。

 現在の日本では、一方的に解雇をするという「ルールなき資本主義」がまかり通っており、その規制を目指していることがわかると思います。

 長時間労働の是正とあわせて、解雇をルールによって規制することは、綱領において経済分野で一番重要な課題の一つとして例示されているのがわかるでしょう。

 だからこそ、共産党議員はもとより、共産党員の弁護士たちも、使用者側ではなく、労働者の立場に立って、一方的な解雇は許さない、労働者の権利を守るために奮闘してきたのです。

日本において解雇はどう規制されているか

たとえば、1982年のILO158条約は、解雇に正当事由を求める規制を定めており、ドイツのように、「解雇には正当な理由を要する」との解雇制限法を制定する国も見られる。これに対して日本では、解雇の自由を一般的・包括的に制限する立法は存在せず、(土田道夫『労働契約法』有斐閣、p.572、2008年)

と言われており、綱領で「ヨーロッパのような解雇規制の立法も存在しない」と記されているのはまさにこういう現状です。

 と言っても、解雇を規制するルールがないわけではありません。

 判例を積み重ねてできた解雇権濫用法理、つまり解雇は自由*1だけど濫用してはいけないというルールができて、それが法律の条文として労働基準法(2003年)、次に労働契約法(2007年)の中に結実したのです。

 労働契約法に

第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

とあるのがそれです。

 ただ、この条文自体はもちろん大事ですが、条文を生み出した判例の積み重ね、つまり労働者が裁判などでたたかってきて生み出してきたルールの力——解雇権濫用法理こそが、一方的な解雇を押しとどめる現実の規範力を発揮してきたのです。

 

一般的に見て、解雇の合理性ないし解雇権濫用に関する裁判例の態度はかなり厳格であり、解雇を容易に認めない。(土田前掲書p.579)

 土田道夫・同志社大教授の解説では、高知放送事件を取り上げています。寝過ごしてニュース放送に2週間で2度も穴を開けたアナウンサーが解雇されたのですが、最高裁で解雇権濫用と判断されたケースです。

解雇権濫用法理は、解雇を正当化する十分な理由を備えない解雇を権利濫用として無効とする理論であり、権利行使に対する例外的規制という権利濫用法理の本来の性格を脱して、解雇権の内在的制約をもたらす法理に発展した。(同前)

 「解雇は自由というのが原則だけどルールで例外をもうける」という規制のあり方から、実質的に「正当な理由がない解雇はダメだよ」という感じに近づいているというわけです。

 「解雇は自由というのが原則」なら、解雇される労働者側が「解雇権を濫用している」ということを説明しないといけないはずですが、逆に、多くの裁判では、解雇した使用者側が「濫用じゃない」という説明をする責任を負わされていることからも、「解雇は自由というのが原則」というあり方がもはや実質的には大きく変わっていることがわかります。

こうして、解雇権濫用法理は日本の労働法のいわば心臓部に位置し、企業行動や雇用システムに大きな影響を及ぼしてきた。(同前)

 「え、じゃあ、安心じゃん」と思うかもしれませんが、「解雇規制法」みたいなちゃんとした法律(制定法)がないとやはり使用者や労働者の意識にのぼり、日常的に守られるルールになりにくいのです。

 そのために労働の現場では、無法な首切りがけっこう横行しています。

eulabourlaw.cocolog-nifty.com

 土田教授は、

解雇権濫用法理は判例法にとどまり、制定法主義をとる日本では、社会への浸透力が弱く、実効性が高くないため、その立法化が課題とされてきた。(同前)

として、その結果生まれたのが労働契約法第16条の条文だったとしています。

こうして、判例法としての解雇権濫用法理は、実定法としての解雇権濫用期生として労働契約法の中枢に確立されることになった。この新たな法制度においては、労契法16条は、解雇権の労働契約上の限界を画する基本的法規範に位置することになる。(土田前掲書p.580)

 しかし、それでも現場では、先ほど述べたような無法なクビ切りが横行するわけです。それは「社会への浸透力が弱く、実効性が高くないため」ですが、そのためにも、「解雇規制法」みたいなちゃんとした法律(制定法)を作って、解雇規制の内容(要件)を定めたガイドラインのようなものが具体化されて、使用者や労働者の意識にのぼらせ、日常的に守られるルールにする必要があります。

 まさに共産党綱領が求めている「解雇規制法」ですね。

 

解雇の「合理的な理由」とは

 さて、先ほどの労働契約法の

第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

の「合理的な理由」とはどういうものでしょうか。

 土田教授は、「就業規則の解雇事由該当性の判断」だとします。つまり就業規則などに「こういう場合は解雇しますよ」と定めておいて、それに触れた場合に、初めて解雇する権利が使える。これが合理的な理由だというわけです。

 土田教授によれば「次の七つに大別できる」とされています。

  1. 労働者の傷病や健康状態に基づく労働能力の喪失
  2. 職務能力・成績・適格性の欠如
  3. 欠勤、遅刻・早退、勤務態度不良の職務懈怠
  4. 経歴詐称
  5. 業務命令違反、不正行為等の非違行為・服務規律違反
  6. 経営上の必要性に基づく理由(整理解雇)
  7. ユニオン・ショップ協定に基づく労働組合の解雇要求

です。

解雇が「社会通念上相当である」とは

 では、もう一つの「社会通念上相当である」とはどういうことでしょうか。

 就業規則にあるような理由に該当すれば直ちに解雇できるかというとそうではないのです。先に挙げた高知放送事件の判決では、7点があがりました。

  1. 本人の悪意・故意ではない
  2. 本人が謝罪している
  3. 一緒に宿直した記者も寝過ごし、その人は譴責処分で終わっている
  4. 本人に事故歴がなく勤務成績も悪くない
  5. 会社ではこれまで放送事故による解雇がない
  6. 放送の空白時間が長くない
  7. 会社が放送事故への対応策を講じていなかった

です。この7点がいつもそうだというわけではありません。ある弁護士事務所のサイトの解説では

 社会通念上の相当性とは、労働者が行った行為や状況に照らして、相当な処分であるか(バランスを欠いていないか)ということです。

 軽微な就業規則違反を理由に解雇したり、必要な注意処分や指導教育といった段階を踏まずにいきなり解雇処分としたような場合は、相当性を欠くと判断されることになります。

と書かれています。

 土田教授はこれらをまとめて、

  1. 労働者の行為態様・意図
  2. 使用者に与えた損害
  3. 本人の情状
  4. 他の労働者の処分・過去例との均衡
  5. 使用者側の対応

の5点にまとめています(土田前掲書p.583)。高知放送事件の7つの要素がだいたい含まれていることがわかると思います。

私の場合はどうか(合理的な理由)

 さて、こうした解雇規制ルールに照らして、私の場合はどうでしょうか。

 これは訴状に詳しく書いてありますが(14・15ページ)、私なりに考えて書いてみます。

 まず、「合理的理由」——就業規則にどう書いてあるのか、ということです。

 そもそも、共産党福岡県委員会は「常時10人以上の従業員を使用」の事業所であり、労基署に届け出ないといけないのですが(労基法89条)、私が解雇された後の24年9月に調べた時には、就業規則を届け出ていませんでした。つまり正式な就業規則がなく、解雇についての規定がないとも考えられる状態であり、それだけですでに「合理的な理由がない」と言えるのかもしれません。

 しかし、代わりに「勤務員規程」というのがあるので、仮にそれが就業規則だとしてみましょう。

 その場合、その第7章(12条)・第8章(13条)には「解任及び退職」「罷免」の規定があります。 *2

 

第7章 解任及び退職 

 第12条 次の各号に該当する場合は解任及び退職とする。 

(1)県委員会の幹部政策により、勤務員の任務を解かれた場合。 

(2)休職期間が満了した場合。 

(3) 満65才に達した場合定年退職とする。但し、県委員会が留任の必要を認めた場合  は例外とする。 

(4) 死亡した場合。 

 

第8章 罷免

第13条 次の各号に該当する場合は、罷免する。 

(1)党の規律に違反して処分をうけ、県委員会の勤務員として、ふさわしくないと認め  られた場合。 

(2)反社会的、反階級的行為を行い、県委員会の勤務員として、ふさわしくないと、認  められた場合。 

(3) 県委員会勤務員としてふさわしくない、 言動がしばしばあり、それについて批判  され指導されても、なお、あらためない場合。

  (4)その他、前記各号に準ずる不都合な行為があり、県委員会勤務員としてふさわしく  ないと認められた場合。  

 

 おっ、これじゃねえの!? と思うかもしれません。

 しかし、私の解雇通知にはこの第7章(12条)・第8章(13条)に基づくものであることは一言も書かれていません。

 代わりに解雇通知には勤務員規程の第1条・第2条に基づくものだということが書いてあります。

 では第1条・第2条とは何か。

第1条

日本共産党福岡県委員会勤務員は、日本共産党綱領・規約および、党の諸決定(党大会・中央・県)に従い、福岡県党の先頭にたって活動する。

そのため、各自は、学習と修養に励むとともに、いかなる困難にもひるまず民主集中 制の組織原則を堅持し、自覚的、積極的に各自の任務を遂行する。

第2条

本規定は、 日本共産党綱領・規約および党の諸決定(党大会・中央・県)にもとづき、 日本共産党福岡県委員会勤務員に適用され、その活動における必要最小限の事項を規定したものであり、委員会はその機能の遂行のため、必要に応じて県委員会勤務員の活動上の、諸措置を適宜決定する。  

 みなさん、これをみて驚かれるかもしれませんね。

 だって、どこにも解雇のことなんか書いてないからです。

 では共産党幹部は1条・2条から私の解雇の理由をどうひねり出したのでしょうか。

 それは、想像するしかありませんが、“1条・2条を読めば、これは勤務員は党員であるということが前提になっていることは明らかだ。だから、党員でなくなれば自ずと勤務員ではなくなる”というエクストリーム主張だと思われます。

 いや、全然違ったら申し訳ないのですが。

 だから訴状でも次のように批判しています。

また、解雇通知書…では、「日本共産党福岡県委員会勤務員規程第1条、第2条」と記載されているが、同規定…は、被告県委員会の「勤務員」としての活動や任務の遂行について抽象的な定めを置いているものにすぎず、これらの規定が何故「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」(規約11条)と関係があるのかすら不明であり、少なくとも被告らはこのことについての具体的な説明を一切していない。つまり、仮に、勤務員規程(第1条、第2条)が原告との関係で被告県委員会の就業規則としての性質を有するとしても、そもそも勤務員規程第1条及び第2条には、被告県委員会に雇用される者が被告共産党の党員ではなくなった場合には当然に解雇するという旨の規定は存在しないものというべきであるから…、このような点でも、解雇事由はない。

 続いてこう批判しています。

 なお、原告は、普段の勤務員としての勤務状況について、能力不足やミスがあったなどとして上司等から具体的に注意を受けたことはなく、具体的な業務上の支障を発生させたこともないから、他の規定との関係でも解雇事由はない。

 また、勤務員規程第8章では「規律違反」「ふさわしくない、言動」「不都合な行為」による罷免を定めているが、被告県委員会は原告にこのような規定を適用することはなかった。
 ゆえに、勤務員規程との関係でも、本件解雇につき、客観的にみて合理的な理由があるとはいえない。

 つまり、党幹部側が示した私の解雇の「合理的な理由」、つまり就業規則(勤務員規程)のここに該当して解雇できる、ということは現時点では「言えない」、というわけです。

私の場合はどうか(社会通念上の相当性)

 じゃあ、次に、仮に勤務員規程の第8章(13条)を使って、規約違反やふさわしくない言動があったから解雇するんだとしましょう。

 それに照らした場合でも、私は解雇できるのでしょうか。

 すなわち仮に「合理的な理由」があった=就業規則にあたる勤務員規程に該当したとして、「社会通念上相当」だと言えるのかどうかという問題です。

 土田教授は、

  1. 労働者の行為態様・意図
  2. 使用者に与えた損害
  3. 本人の情状
  4. 他の労働者の処分・過去例との均衡
  5. 使用者側の対応

をあげていましたね。

 「労働者の行為態様・意図」という点では、規約を破るつもりでやったのではなく、規約の範囲内であるという意図でブログを書いて公表したのです。だからこそ、正式に規約違反だと認定されたことはなく、勤務員規程の第8章(13条)を適用できなかったのではないでしょうか。

 また、「本人の情状」という点では、自己批判(=反省)はしていませんが、それは規約に自己の意見を保留する権利が認められているので、謝罪しないことは規約に照らして問題があるとは言えません。

 そして、仮に規約違反であることが正式認定されたら、ブログを削除することは繰り返し表明していたし、正式認定される前でも、自己批判を求めず規約違反だと決めつけず、純粋に「ブログを削除せよ」という決定だけなら従いますよと表明していました。むしろ規約に背いて自己批判の強要にこだわったのは党幹部の方でした。規約に背くことはできないので、私は逆に苦悩させられたのです。

 次に「他の労働者の処分・過去例との均衡」ですが、例えば共産党の埼玉県議(当時)は「政党助成金をもらうべきではないか」という党の見解と異なる自分の意見を「公表」*3し、ブログで内部の討論を公開しています。しかし、この元県議は規約違反に問われたり処分されていません。

ameblo.jp

 また、党の都議も、綱領とは異なる意見を述べ、内部の討論を公開していますが、規約違反にも問われず、処分もされていません。

kamiyatakayuki.hatenadiary.jp

 私は23年3月のブログ記事で、党と異なる見解を述べたことはありませんし、内部の討論を公開したこともありませんが、これらの県議・都議が規約違反に問われていないのに、私が規約違反に問われる道理はありません。

 最後に「使用者側の対応」ですが、土田教授は解雇は「雇用継続を期待できない事情がある場合に限定すべき」(土田前掲書p.581)として、これを「最後の手段の原則」(同前)と呼んでいます。具体的には、「軽微な就業規則違反を理由に解雇したり、必要な注意処分や指導教育といった段階を踏まずにいきなり解雇処分としたような場合は、相当性を欠くと判断されることになります」ということが言えると思いますが、まあ私の場合、そんな段階的なものは一切ありませんでした。まさに「突然除籍・いきなり解雇」だったわけですね。

 

 訴状では「社会通念上の相当性もない」ことを他にも色々書いています。

(1)調査審議への協力、党への貢献
…原告は、被告県委員会による過酷な予備調査、調査審議、権利制限等…を受け、適応障害によって2度の休職に追い込まれた…ものの、それでもなお、長期にわたる調査に誠実に対応してきた。
 また、原告は、勤務員として職務を遂行し、被告県委員会や被告共産党の党勢拡大の活動に尽力し、被告らの諸活動に貢献してきたものである。

 これは「本人の情状」に当たるものですね。

(2)規律違反の不認定
 被告県委員会が1年3か月も調査審議しても、被告県委員会は原告に対して規約48条以下の規定に基づく規律違反行為を認定することができなかった。

 このことからは、原告が党の規律に違反したことはなく、また、仮に規律違反していたとしても公式に認定できなかったほどに違反の程度が軽微であるものというべきである…。

(3)規約の遵守
 原告は、被告県委員会からの綱領・規約・大会決定を守る意思はあるかなどという質問に対し、「あります」と回答しており…、党のルール等遵守して行動する旨を述べており、規約第4条で定める「規約を認める」という「党員の資格」を満たしている。

 この二つは「労働者の行為態様・意図」に当たるものでしょう。

(4)勤務員としての勤務につき具体的な支障を生じさせていない
 原告は、…普段の勤務員としての勤務状況について、能力不足やミスがあったなどとして上司等から具体的に注意を受けたことはなく、具体的な業務上の支障を発生させたこともない。
 原告は勤務員として円滑な業務遂行をしてきたものである。

 これは「使用者に与えた損害」や「本人の情状」に当たるものですね。

(5)合理的な解雇手続が履践されていない
 以上の各事項に加えて、本件解雇に係る手続もまた不合理なものといえる。
 本件解雇については、本件除籍(規約11条)が先行し、本件除籍が本件解雇の理由とされているが…、原告は、前述したとおり、「規律違反の処分(規約48条以下)の調査審議を受け、規約48条に基づく党員の権利制限を受けていた。そのため、原告としては、規律違反の処分の調査手続に繰り返し応じてきたのである。
 にもかかわらず、原告は、突如として一方的に、警告、権利停止、罷免、除名といった「規律違反の処分」(規約48条)とは性質の異なる「除籍」の措置(「規律違反の処分」ではないもの)をとること宣告され、その上で、極めて不意打ち的に「協議」(規約11条)という簡易な手続しかない措置の対象とされた。しかも、原告は、規約11条の「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」という要件についての意見を述べる機会もないままに除籍されたのである。「規律違反の処分」(規約48条)であれば、「十分意見表明の機会をあたえる」(規約55条)など「事実にもとづいて慎重におこなわなければならない」ところ(規約49条)、被告らは、このような慎重な手続を要しない「除籍」処分によって、実質的に除名処分を行っているに等しいのである。

 このように、原告は、急遽、除名等の規律違反の処分から除籍という全く別の性質の措置をとると一方的に宣告され、かつ、この除籍を受ける前に党組織と「協議」をすることすらできなかった。すなわち、被告県委員会ないし被告共産党は、規約11条では「除籍にあたっては、本人と協議する。」と明記されているにもかかわらず、原告との間で除籍を決定する日までに「協議」の手続を行うことすらなく、「第4条に定める党員の資格を明白に失った党員」(規約11条)の要件に該当すると一方的に認定し、本件解雇の前提とされる本件除籍を強行した。被告らは、この日すなわち除籍措置の決定よりも後の時点における短時分のやりとりをもって「協議」(規約11条)を行ったと主張しているようであるが、原告に対する事後の協議は規約11条に違反するものというべきである。規約11条は、「除籍にあたっては、本人と協議する」とし、その前提として除籍についての「慎重」な調査、審査を要求しているのであるから、これらの文理ないし趣旨からすれば、協議が可能な場合には、事前の「協議」をする運用が必要となるものと解すべきである。本件では、原告は特に協議を拒絶しておらず協議が可能な場合であるから、被告らが事前の協議手続を経ることなく原告を「除籍」したことには手続上の瑕疵があるものというほかない…。このように、本件解雇に係る手続も不合理あるいは不相当なものというほかない

 これは「使用者側の対応」に当たるでしょう。

 

 このように、私の解雇は「合理的理由」も「社会通念上の相当性」もどちらもないものであり、不当な解雇そのものだということができます。

 

最高裁判決はまさに私の除籍・解雇が司法で扱えるものだと言っている

 一体党幹部はなんと反論してくるでしょうか。

 具体的な答弁書が来ていないのでわかりませんが、松竹伸幸さんの裁判や、私への解雇通知から予想すると、

  1. “どういう理由かはわからないが、神谷は除籍されて党員でなくなってしまった。党員でない以上は勤務員規程の第1条・第2条に基づいて勤務員をやめてもらう”
  2. “除籍が不当かどうかは、共産党の結社の自由に関わることなので裁判所は口を出さないでください”

というものだと考えられます。

 1.の「勤務員規程の第1条・第2条」を使って解雇の「合理的理由」にすることはすでに上記(および訴状)で批判されています。

 ここでの問題は2.です。この「理屈」は、結社の自由をタテにして内部問題に口を出すなというのは共産党袴田事件の最高裁判決がもとになっています。

政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし、

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/340/062340_hanrei.pdf

 しかし、この判決では、

政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない

としており、私の除籍*4は、解雇という生活・人権問題=「一般市民法秩序と直接の関係を有」する問題に関わっていますから、当然裁判所が扱える問題です。

 そして、

右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であつても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、…適正な手続に則つてされたか否かによつて決すべき

とされており、まさに袴田判決を根拠にすれば、私への除籍が適正だったかどうかが司法の場で争われることになります。

 単純な話で言いますと、例えば、「神谷は日本国籍を失ったので、除籍する。だから解雇します」と言われたとしましょう。その時私が「いえいえ、私、日本国籍、失ってませんよ。国籍、ありますけど…?」と反論し、解雇は無効だと主張したらどうなるでしょうか。

 その時も「除籍するかどうかは党内問題だから司法は口を出すな。解雇は勝手にできる」ということになるでしょうか。

 なりませんよね。

 私の訴状ではまさにその最高裁判決を使って、次のように批判しています。

 本件は党員の除籍との関係で労働者の解雇が問題になる事案であるところ、政党の組織といえども職員として人を雇う以上、労働基準法や労働契約法に従うべきことは当然であり、これは民間企業の場合と同じであるから、民間企業の場合と同様に、司法審査が通常通り及ぶことになる。
 なお、本件では、原告が被告共産党側からの除籍を理由に被告県委員会から解雇されており、かかる解雇は、①客観的に合理的な理由を欠き、②社会通念上相当であると認められない場合には、権利の濫用として無効となる(労働契約法16条)ところ、原告の除籍が無効である場合には、①客観的合理性要件を欠くことになるから、本件は、「政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる」(最三小判昭和63年12月20日判時1307号113頁(共産党袴田事件判決))事案などではなく、「一般市民としての権利利益を侵害する場合」(同判決)に当たる事案でもある。
 なお、除名等の処分ではなく除籍という措置であるとしても、除名と同様に党員資格を剝奪する措置であり、かつ、党員資格の有無が党職員としての地位を直接左右するものとされるのであるから、司法審査が及ぶものというべきである。

 まあ、ここは、具体的に党幹部側がなんといってくるかによりますね。

 

 私が労働者の一人であることは、党幹部自身が認めました。

 日本が「ルールなき資本主義」の最も象徴的な問題として、共産党綱領でその是正がトップに掲げられている解雇を、他でもない、労働者である私に対して、きわめて無法な形でやったのが党幹部なのです。

 一方的な不当解雇を、共産党幹部自体がやってしまっている、というのが、シャレにならないところです。共産党幹部は綱領を学び直すべきでしょう。

 そして、労働者のたたかいでつくられてきたルール——解雇権濫用法理は裁判になればかなり強い力を発揮してきたものであり、土田教授が述べているように、

一般的に見て、解雇の合理性ないし解雇権濫用に関する裁判例の態度はかなり厳格であり、解雇を容易に認めない。(土田前掲書p.579)

のです。

 そのような労働者が血の滲むような努力で作り出してきたルールに、まさに共産党幹部自身が破壊の刃を向けようとしているのではありませんか?

 

*1:民法627条1項「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」。つまり「解約自由」が原則であって、「解雇には正当な理由を要する」という欧州とは原理が根本的に異なる。

*2:これはそもそも土田教授のいう7点にあまり沿っていない気がします。つまり「合理的理由」とは必ずしも言えず、法理に反しているので、そもそも就業規則の解雇規定として無効の可能性があります。まあ、それは今はおいておきましょう。

*3:もちろんこれは党の見解と異なる自分の意見の公表ではなく、最終的には受け取るべきではないという結論に落ち着いており、私の時と同様に、党の見解と異なる意見をただすためのレトリック・論述にすぎません。

*4:除籍は「処分」ではないが「組織内の自律的運営」の一つであり、「除名その他の処分」に該当する。

共産党側から答弁書が来た

(この記事は私の不当な除籍・解雇事件の問題の一部についてです。全体像を簡単に知りたい方は24年8月20日付の記事を先にお読みください。)

 

 被告(共産党・共産党県委員会)の代理人(弁護士)から答弁書が本日付でファックスで届きました。

 除名・解雇の撤回や損害賠償などの私の請求に対していずれも却下・棄却を求めています。

 簡単な結論しか書いていないので、理由など詳しいことはこれから出されるんでしょう。詳しいものが届き次第、またおしらせします。

 共産党側の弁護士は、小林亮淳さん(弁護士法人西むさし法律事務所)、前田憲徳さん(北九州第一法律事務所)、長澤彰さん(杉並総合法律事務所)の3人です。

 前田弁護士だけ面識があります。



 そしてファックスにはこう書いてありました。

なお被告代理人は、指定の第一回弁論期日には他の予定があり、出頭が出来ないので、答弁書は擬制陳述する。

とのことです。

 つまり、裁判の最初の日(1月20日の第一回口頭弁論)には、被告側の弁護士は来ない(出廷しない)ということです。*1

 裁判官と私たち原告側だけになります。 

 裁判の期日は、被告と原告がそろわないといけないのですが、初回に限り欠席が許されます(民事訴訟法第158条)。*2

 裁判の素人にはよくわからないのですが、「弁護士が3人とも都合が合わない」ってことがあるんですかね? まあ、今はそれをどう見るかは述べませんが。

 

 もちろん被告側がどういう対応をしようが、私は堂々と意見陳述を法廷で行うつもりでいます。弁護士の方もです。

 なので、ぜひ多くの皆さん、傍聴にお越しください。

 

*1:もちろん被告本人(志位和夫氏や党県委員長)も来ないのでしょう。

*2:第2回以降の期日に欠席すると、原則として、書面を提出していても、裁判で陳述したものとはみなされません。そのため、原告の主張を認めたものとして、敗訴するおそれもあります。

https://www.houterasu.or.jp/site/faq/saiban-saiban-002.html 

2025年にやりたい3つのこと

今週のお題「2024こんな年だった・2025こんな年にしたい」

 

昨年を振り返って

 昨年8月に、私は日本共産党から不当に除籍・解雇され、そのプロセスで深刻なハラスメントを受けて精神疾患となり、現在も通院・投薬を続けています。昨年11月に除籍・解雇を撤回し、ハラスメントなどを償わせることを求める裁判を起こしました。

 募金、支援集会参加、スタンディング、SNSでの激励、メールや手紙での慰労、党支部会議への招待など、びっくりするくらい多くの方が支援の呼びかけに応えてくれました。報道や取材もたくさんしていただきました。

 本当にありがとうございます。

年末年始の私

 私の健康を気遣ってくれている方も大勢いますのでお知らせしておきますが、私を病気に追い込んだ人たちにはなるべく会わないように注意しながら、できるだけ心穏やかに過ごせるように、注意して年末年始を過ごしました。

 正月に郷里に帰って、小・中学校時代の友人、高校時代の友人にもたくさん激励されました。

 地元の奇祭「てんてこ祭」をその友人の一人と見物。県指定の無形民俗文化財なのです。大村知事も来ており、初めて本人を間近で拝見しました。

www.youtube.com

 総じて、とても心穏やかな年末年始でした。

 

今年やりたい3つのこと

 一つ目は、裁判(地裁)は1年から1年半くらいで判決が出るんじゃないかという見通しもあります。ということは今年中にも出る可能性があります。もしそうであれば、何としてもそこでは今年は勝利判決を勝ち取る年にしたいと思っています。

 まずは、1月20日午前10時から東京地裁で第1回口頭弁論がありますので、ぜひ多くの方に傍聴をお願いします。その日の午後2時から「DAYS赤坂見附」にて報告集会を開きますので、こちらも関心のある方は、ぜひお越しください(終了後懇親会も予定)。

 

 二つ目ですが、共産党の議員さんはもとより、いろんな党派の議員のみなさんたちと力をあわせて、国政や地方政治をよくすることができればと思っています。そのために、リアルで共同の動きを広げていきたいと思います。

 その一つは、福岡県における教育費の負担軽減です。

 できれば2月くらいまでに、福岡県の県立高校の教育費の負担軽減に向けて、少しでもアクションを起こしたいと思っています。実は昨年5月に情報開示をしていて、その結果をだいたいまとめているんですが、除籍・解雇そして裁判が重なってしまい動きがとれませんでした。3月には県知事選が始まってしまうし、年度が変わってしまうので、それまでには何か形にしたいと思っています。

 もちろん、それ以外の形でもいろんなテーマなどで共産党の議員さん、他の議員さんと力を合わせていければいいなと思います。このブログもそれに役立つようなものを発信したいと思っています。*1

 三つ目ですが、共産党という古民家をリフォームする仕事に励みたいと思います。

 裁判はその大きな一つですが、それ以外にも、さまざまなアクションや提言をしていきます。

 特に私が関心を持っているのは、組織のあり方です。

 高度成長期につくられてそれに適合して急成長したこれまでの組織のあり方は、大きな力を発揮してきましたが、今となっては現実に適合していないものがかなり出てきています。

 もちろん共産党自身も努力しているのですが、党幹部が組織を私物化して、異論を排除してしまうという深刻な病理を抱えているので、戦略的な議論が自由にできない状況に陥っています。

 赤旗はこのままでいいのか、というか政党としてのマネタイズはこのままでいいのか、地区や県のあり方はこのままでいいのか——そういう根源に迫る検討を、いろんな人の知恵も借りて議論していければいいなと思います。

 

 本年もどうぞよろしくお願いします。

*1:少数与党になって国民の要求が実現する状況が生まれていますが、それを生かすには、国民自身の社会運動そのものを発展させることが不可欠でしょう。だから、私が共産党議員を含むいろんな党派の議員さんと運動の上で共同することは、少数与党のもとでの「新しい政治プロセス」が始まったことを生かそうという共産党の主張にも合致していると思いますし、共産党が第29回党大会決議で要求実現と党勢拡大を車の両輪にする活動とそれを具体化する「政策と計画」を持つことを呼びかけている方針にも合致するはずです。