ファンタジー小説『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史(以下『バベル』)』上下巻が、2月12日(水)に東京創元社から刊行される。
世界的なSF文学賞の一つであるネビュラ賞を受賞した一方で、同じくSF賞の権威であるヒューゴー賞では最終選考から漏れただけなく、スキャンダルにも巻き込まれたことで話題を呼んだ作品だ。
定価は上巻が3200円、下巻が2750円(共に税込)。書店、Amazonで予約を受け付けている。
R・F・クァンによるファンタジー小説『バベル』
『バベル』(原題『Babel: Or the Necessity of Violence: An Arcane History of the Oxford Translators’ Revolution』)は、2022年にアメリカで刊行されたファンタジー小説。
1996年生まれ、米国在住の中国人のR・F・クァンさんが手がけた。
物語の舞台は世界の覇権を握る19世紀の大英帝国。ここに中国・広東から連れてこられた中国人の少年が、オックスフォード大学の王立翻訳研究所、通称・バベルに参加。言語のエキスパートになるための訓練を受けるのだが、学内には大英帝国に叛旗を翻す秘密結社があった……。
日本語版は、ケン・リュウさんの『紙の動物園』などを手がけた古沢嘉通さんが翻訳を担当。カバーは、『ジェリーフィッシュは凍らない』などのイラストを手がけた影山徹さんによるものだ。
世界的SF賞 ネビュラ賞を獲得……ヒューゴー賞ではまさかの選考漏れ
『バベル』はアメリカでの刊行後、ドイツ、ロシア、ポルトガル、台湾、イタリア、スロバキア、ウクライナ、フィンランド、中国、フランスなど20ヶ国以上で翻訳された人気作だ。
2023年のネビュラ賞では長編部門を受賞。同じくSFやファンタジーを対象にした文学賞のローカス賞では、ファンタジー長編部門を受賞している。
なお、ネビュラ賞と並ぶSF賞の権威であるヒューゴー賞においては、長編部門受賞の有力候補と見られながら、最終候補の6作品から漏れたことが話題になった。
「ノミネート資格なし」SF界の大スキャンダルに巻き込まれる
後に、最終候補の6作品に入る得票数を獲得しながら、「ノミネートの資格なし」という理由で選考委員により最終候補から外されていた作品が複数あることが判明。
選考対象から外された作品の中には『バベル』も名を連ねており、物議を醸した。
ヒューゴー賞は毎年開催される世界SF大会(ワールドコン)で発表されており、2023年版は中国の成都で2024年1月に開催。
そのため、選考漏れ作品が明らかになると、関係者からは各作品の内容や著者のこれまでの言動を鑑みて「中国政府が選考に介入したのではないか」と、指摘する声が上がった。
さらに2024年2月には、有志によって、選考委員による不適切な検閲があったとする長大な報告書が公開(中国政府が作品選定に影響を与えた証拠はなかった)。関係者による告発も行われるなど、ヒューゴー賞の歴史に残るスキャンダルに発展していた。
こうした騒動でも(思わぬ)注目を浴びた一作が、ついに日本に上陸する。
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