老師オグチの家電カンフー

スティック掃除機とクルマの選び方は同じ!?

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
「Dyson Micro 1.5kg」英国のメーカーだが、どうもドイツ車っぽさを感じてしまう

掃除機は家の中のクルマと見つけたり。

両方とも走らせるものですし、選ばれる基準がほぼ同じです。クルマの「走りのパワフルさ」は吸引力、「運転のしやすさ」は取り回しのしやすさ、「ラゲッジスペース」はゴミの収納力、「燃費」はバッテリー駆動時間に相当。「排気」のキレイさも最近は重視されますし、もちろんデザインも評価ポイントです。

クルマが大きい方が偉いという価値観からダウンサイジングへとトレンドが移ったように、掃除機もコードレスのスティック掃除機が主流になりました。ロボット掃除機は、さしずめ完全自動運転の車です。

なぜ、こんなことを考えたかというと、先日「Dyson Micro 1.5kg」を購入したからです。自動車評論家がベンツやフォルクスワーゲンGOLFをベンチマークとして押さえなければならないように、一応家電ライターとして、これは買わねばならんのではないかと。なんといっても、ダイソンのスティック掃除機の最大の弱点だった重さが完全に解消されています。クルマで言うと、ベンツのCクラスやBMWの3シリーズが日本に投入された時の状況に近いのではないでしょうか。

どうせなんで、他のスティック掃除機も独断でクルマのブランドに例えてみましょう。米国メーカー、シャークのスティックは独自の機能性とグイグイくる感じがジープ チェロキーをイメージさせます。先日掃除機に参入したバルミューダ「BALMUDA The Cleaner」は、独特の個性と乗り心地重視の部分でシトロエン。パナソニックの「パワーコードレス」はトヨタのクラウン? 東芝は日産、シャープはマツダ、日立はスバル、マキタは日野自動車(だんだんテキトーになってきた)。iRobotの「ルンバ」は、電気自動車の市場を拡大させたテスラですね。

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んなことよりも、家電 Watchらしく役立つ情報を書けという声も聞こえてきそうです。個人的には「Dyson Micro 1.5kg」はベストダイソン。本体の軽量化ももちろん、クリーナーヘッドも小さく(V11シリーズ比で45%小型化)、より狭い場所も掃除しやすくなっています。

クルマであれば、大きいことは室内空間が広い、事故ったときに安全、道路上で大きな顔できるなどのメリットがありますが、掃除機が大きいこと自体に良いことはありません。ただスペック上、バッテリー駆動時間は大きく下がり、最長20分です。「V11」の最長60分、「digital slim」の最長40分と比べるとずいぶん短いですが、個人的には大掃除でもない限りそんなに長時間使わないので問題ありません。ロボット掃除機と併用する家庭なら、不満にはならないと思います。

他社のサイクロン掃除機よりも優秀だと感じるのは、布団やソファーを掃除した時。ダニの死骸も含んでいるのか、細かい粉のようなゴミがクリアビンに溜まるのですが、これすなわち、フィルターが目詰まりしにくいということです。サイクロン掃除機はフィルターが結構詰まりがちでメンテナンスが面倒なんですよね。

ちょっとだけ不満なのは、サイクロンのパワーがある分、長い髪の毛が強く内部に巻き付いてしまうこと。ゴミ捨ての際、毎回手で引っ張って取り除かなくてはならないのはイラっとします。女人禁制のスペースで使うならまったく問題ないでしょうが。

コンパクトで軽快、そして一目でダイソンとわかるデザインなどをクルマにたとえると、アウディのTTロードスターやベンツのSLCクラス(旧SLKクラス)あたりでしょうか。長い髪の人は風で髪型が乱れてしまうのでオープンカー苦手でしょう?

軽量化されても誰が見てもダイソンと分かるデザイン。クルマと一緒で、一目で認識されるのは大事!

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>