日本国憲法展 2024 Part3

日本国憲法展 2024 Part3の初日にオープニングレセプションに参加しました。皆勤賞です。
そして今回も自分の情報整理のために後から調べた情報をまとめました。



青山悟《Just a Piece of Fabric》
2024
ポリエステルオーガンジー にポリエステル糸、 蓄光糸で刺繍/
ジェラルミンケース(モニター、タイムカード、UVライトなど)
H40×W44×D15cm

第二十七条
1. すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2. 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3. 児童は、これを酷使してはならない。

「Just a piece of fabric」と題された作品群では、資本主義における「ドリーム」である紙幣そのものの存在感が誇張されている。いっぽう、1億円分が入るという特注のジュラルミンケースの中には青山が実際の作品制作に要した時間(労働時間)を東京都の最低賃金で換算したタイムカードが収められており、経済格差への疑問を提示するものともなっている。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/26520



村上慧《村上勉強堂計画報告書》
2022-
プリントしたPDFをファイリングしたもの
A4 約250ページ
村上慧《村上勉強堂のためのドローイング》
2023
ケント紙にインク
22 × 34 cm

第二十二条
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
② 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

《村上勉強堂》(旧夏の家 冬の家計画)



服部公太郎《威嚇》
2023
アクリル、オイルパステル
89.4×130.3cm

第八十一条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。



こうの史代《ぼおるぺん古事記》
2012
ボールペン、紙

第二条
皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

驚くほどに愛らしく、自由で、残酷で、わがままな物語――。
日本最古の神話・古事記がロマンあふれる絵物語になってよみがえる!!
人気漫画家・こうの史代が原文(書き下し文)を生かしながら、
物語を「絵」で読み解いていく、まったく新しい古事記本!
第1巻は天地創生、国生み、黄泉の国、天の岩戸、ヤマタノオロチのエピソードなど、盛りだくさんの11話。
イザナキ、イザナミ、アマテラス、スサノオなど有名な神様も続々登場!
「昔からずっと、古事記を絵にしたいと思っていました。
魅力的な登場人物、ストーリーはもちろん、原文の味わいも楽しいですよ!!」
―こうの史代
www.heibonsha.co.jp



加藤立《Untitled Body (R・K)》
2022
ミクストメディア
H175 x W53 x D68 cm

第三十八条
1. 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2. 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3. 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

ステイトメント

作品は鏡であるから様々なものが映り込む。
まずは作者が映り込む。ゴッホの絵にはもう他のものが映り込む余地がないほど純度100パーのゴッホが映り込んでいる。
次に作品は鏡だから鑑賞者が映り込む。これは実は当然と言えば当然だけど、観ているときには案外気がつかない。例えば、映画や演劇の場合は観る席が決まっていて、2時間なら2時間ずっとそこで観るということになってるけれど、美術館やギャラリーで観る美術作品の場合には、どこでどのくらいの時間どの作品の鑑賞に費やすのかっていうことが、基本的にはすべて鑑賞者にゆだねられている。この差は大きい。特に、ビエンナーレとか、作者の渾身の作品ばかりが続いていく鑑賞ツアーともなれば、それらをひとつひとつ存分に観ていくわけにはどうしたっていかない。いつの間にやらスイスイと作品の間を駆け抜けている。
あなたが観ている作品とは、あなたが観たい作品のことで、そこにはあなたの興味や生活や性格やさらにはその時の気分までもが如実に反映されている。だから、作品鑑賞というのは、基本的にはひとりでいくものと思っていたが、そうともいえないのかもしれない。自分の食べたいものだけ食べ続けてるのは不健康だ。

そしてさらに、作品は鏡だから社会が映り込む。
この、社会を映し出す鏡であるという属性がアートをアートたらしめている。
次のように言い換えてもいいかもしれない。良い作品には社会が映り込んでしまう。
そう、良い作品には社会が映り込んでしまうのだ。そして、このことが、例えば何百年も昔の、ダヴィンチとかカラヴァッジョとかの聖母マリアだとかキリストの磔刑だとか、現代の極東に住む私たちにはなんの由縁もないように思える絵画の中にも何か訴えかけてくるものがある、その理由であろう。良い作品には、その作品がつくられた当時の社会が映り込んでいるだけでなく、鑑賞者が観ている現在の社会が映り込んでしまうのだ。
artfairbeppu.com

オープニングで作品について伺ったお話では、自分をもう一人作りたかった、というようなことでした。時間が経つと時差が生まれるので、5年おきに作ってみたいとも。



横山奈美《Shape of Your Words -H.K.-》
2024
麻布に油彩
H60.6 ×W72.7cm

第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

本シリーズの当初の制作では、横山自身が書いた文字やドローイングの形をネオンに置き換え、それをモチーフとして描いていましたが、やがて自身の言葉から他者の言葉へと興味が移っていったといいます。本展では、横山の友人や知人がそれぞれに筆記した「自由」という言葉をモチーフとする新作絵画10点を発表します。横山は、他者の言葉に関心を抱いた理由と本作について以下のような言葉を寄せています。

私の言葉があるように、この世界に存在する全ての人たちも、皆唯一の言葉を持っていると思ったからです。今回の個展では、《Shape of Your Words》というタイトルで、様々な人たちに「自由」という言葉を書いてもらい、それを絵にしました。自由とは何か。それはいつの時代を切り取っても人類にとって大きな命題だったように思います。この作品から様々な自由の形を考えてもらえたら嬉しいです。
横山奈美
アーティスト招聘プロジェクト vol.1 横山奈美 「Shape of Your Words」 | Hiroshima Art Scene



長谷川学《九四式拳銃》
2022
鉛筆、色鉛筆、紙、アクリルケース
31.2×39.4×8cm

第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

現在のフロッタージュによる制作は長谷川が大学在籍時に課題で取り組んだ事に端を発します。
紙と鉛筆という素材が持つある種の懐かしさ、書いては消すという行為が端的に行える安心感、鉛筆から伝わってくる振動と心地よい書き味から緩やかに過去の記憶と繋がり出すなどの理由から、長谷川にとって重要な素材と技法となっていきます。
過去には500体の髑髏、1000体のキリスト像を反復してつくる修練とも取れる制作にも臨みました。その経験から長谷川の作品は単なるオリジナルの複製という視覚言語だけ留まらず、次第に目には映らない「真実」の輪郭を追求するための表現へと向かっていきます。
当初は銃が持つ硬質で冷たい質感と鉛筆の鉛色に親和性を見い出せた事で現在の作風へと変化していったと長谷川は語りますが、死をもたらす象徴ともいえる武器や兵器を作品の主題として扱うことは無意識ではあれ、幼少期から抱いてきた戦争に対する疑問と根源的な死に対する恐怖心という着地点を見い出せない潜在的な問題に改めて立ち返り、対峙するという点において、ある種の必然性があったのかも知れません。
https://artsticker.app/events/27788



石黒健一《Emptiness (Light Bulb)》
2009-
大理石を彫刻、照明器具、電球
H.115×W.55×D.55mm (大理石部分のみ)

第四十八条
何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

1986年神奈川県生まれ。京都府、滋賀県を拠点に活動。共同スタジオ「山中suplex」創設メンバー。
主に鉱物などの時代や地域を象徴する物質を扱い、彫刻の可能性を追求している。ものに付随する「価値」の不確定さを主題としながら、それらを異なる文化や歴史を接続することにより、様々な関係性を導き出す試みを行っている。近年は彫刻を軸に映像などの多様なメディアを横断して作品を展開している。
主な展覧会に「3331 ART FAIR 2020」(3331アーツ千代田 / 東京、2020)、「山中suplexのみんなと、尼崎のあなた」(A-Lab / 兵庫、2019)、「滋賀近美アートスポットプロジェクトVol.2《Symbiosis》」(高島市泰山寺野 / 滋賀、2019)、「かみこあにプロジェクト 2019」(上小阿仁村 / 秋田、2019)、「YESTERDAY’S TOMORROW IS TODAY」( VBKÖ / ウィーン, オーストリア、2019)、など。
https://sites.google.com/view/a-clipping-from-a-book/artist/石黒isikuro



大谷透《Temptation》
2024
水彩色鉛筆、研磨紙
115×28 cm

第六十四条
1. 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2. 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

大谷透の作品の媒体はファウンドマテリアルである。インターネットオークションや偶然の出会いを通して、タバコの包み紙、紙やすり、ポストカード、ノート、チラシなどを収集し、それらをキャンバスとして色鉛筆で丁寧に描かれた作品を制作している。既存のグラフィック要素(ロゴ、表示、または以前に使用された痕跡)は、隠されたり、明示されたり、孤立したり、繋がったりして、解けない判じ物(訳註:文字や絵画に隠された意味を当てる謎解き)のような謎めいた構図を形成する。

一連の要素は、彼の作品を通じて、シンボルや原型として長きにわたり繰り返し登場し、その都度、新しいメディアや新しい戦略を見つけ、その姿を現す。フロイトによる夢の仕組みの説明では、私たちの潜在的な思考は変位と凝縮のプロセスを経て、翻訳されるべき象形文字の形をとる。これがおそらく、大谷の作品群が私たちに与える魅力を最もよく表しているだろう。
https://keijiban.online/jp/toru-ohtani


宇川直宏《DOMMUNE》
2010-
https://www.dommune.com/

第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

アーティストの宇川直宏が2010年3月1日にDIYで開局した、日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル。
「ライブストリーミング」とは、PCやスマートフォンなどで、映像と音声からなる「生配信」を楽しむことができる、インターネット上のTV番組。
番組は月曜~木曜日にかけて平日毎日配信され、国内外の様々なゲストを迎え開催される19時から21時のトーク・プログラムと、世界各国のDJやミュージシャンが演奏する21時から24時のミュージック・プログラム(BROADJ)の2部で構成されていて、日本だけでなく、世界でも圧倒的な人気とビューワー(視聴者)数を誇っています。
インターネットで気軽に見られるのはもちろんのこと、出演者の「生」の表情をDOMMUNEスタジオで体験することもできます。
また、番組視聴中には、サイトのTwitterにログインして、感想を呟いたり、タイムラインに参加して、現場を盛り上げたり、ビューワー同士の交流も楽しめます。宇川はDOMMUNEスタジオで日々産み出されるこれら番組の、撮影行為、配信行為、記録行為を、自らの"現在美術"作品と位置づけ、 2011年「Final Media DOMMUNE」として"文化庁メディア芸術祭推薦作品"に選出。
宇川直宏の実験精神と、オリジナリティあふれるゲストが織りなす、最前線のストリーミング・ワールドを是非!
DOMMUNEとは? | DOMMUNE (ドミューン)
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日本国憲法展 2024 Part3

会場:青山|目黒(東京都目黒区上目黒 2-30-6 保井ビル1階)
http://aoyamameguro.com/
会期:10月26日(土)―11月17日(日)
営業時間:水―金 12:00-19:00、土・日・祝 12:00-18:00
休廊日:月・火
*11月3日(日・祝 文化の日、日本国憲法公布日)は開廊
参加作家:こうの史代、長谷川学、横山奈美、宇川直宏、村上慧、青山悟、加藤立、石黒健一、大谷透、服部公太郎