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MENDELSSOHN/The Complete Masterpieces
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Various Artists
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いよいよ、メンデルスゾーンの生誕200年記念の年に突入しました。すでに数年前から、この年に向けて進行していたプロジェクトなどもあったわけですから、今年はさぞや盛り上がることでしょう。
そんな中で多くの記念アイテムもリリースされることになるのでしょうが、これはメジャー・レーベル「ソニー・ミュージック」から出た30枚組でありながら4000円程度という破格の値段のボックスセットです。「コンプリート」というタイトルですので、「全集」か?と思うかもしれませんが、そのあとに続くのが「マスターワークス」、日本語だと「全名曲集」という微妙な言い方がおかしいですね。事実、声楽関係にはあまり「名曲」がなかったようで、オペラは1曲も収められてはいません。
ところで、このボックスをリリースしたところは、以前プッチーニの全オペラボックスを出したところと同じ「会社」なのですが、その時とは微妙に名前が異なっているのには、お気づきでしょうか。その頃は確か「ソニーBMG」でしたよね。ロゴマークもト音記号を挟んで「SONY」と「BMG」が並んでいるというものでした。しかし、今回は、普通に「Sony Music」というレタリングです。
ご存じでしょうが、2004年8月に、元をたどれば「ヴィクター」と「コロムビア」という、世界で最も古い歴史を誇る2つの大きなレコード会社の末裔である「BMG」と「ソニー」が合併して「ソニーBMG」という会社になりました。これは、昔からのレコード・ファンにとっては、かなりショッキングな出来事だったのではないでしょうか。今まで競争し合ってきたものが合体してしまうというのは、昨今のグローバル化の進む企業の振る舞いからは別に驚くべきことではないのでしょうが、ことレコード会社という、ある種の「文化」を担ってきた企業が、それまで全く別の価値観での「文化」を築いてきた企業と同じものになってしまったのですからね。
その、いわば「対等合併」の末に出来た会社が、2008年8月に、「BMG」が「ソニー」に吸収されるという形で、「ソニー・ミュージック」と名前を変えました。その、商品への反映が、今回のボックスの表記なのです。余談ですが、それぞれの会社の日本法人は、今までは親会社の合併にもかかわらずそれぞれが別個の活動を展開していましたので、国内盤だけを購入している分には合併という実体は捉えにくいものだったはずです。しかし、親会社の「吸収」に伴い、200810月には、日本の「BMG」は日本の「ソニー」の完全子会社となりました。その影響は、いずれ目に見える形で現れてくることでしょう。その時にこそ、「レーベル」という一つの文化が資本主義経済の中で殺されてしまったことが実感として認識されることになるのです。
といったきな臭い話はともかく、「ソニー・クラシカル」、「ヴィヴァルテ」、「RCA」、「アルテ・ノヴァ」そして「オイロディスク」という艶っぽい(それは「オイロケディスク」)レーベルを一堂に会したボックスが、面白くないはずはありません。ブロムシュテットの「エリア」や、ダウスの「パウロ」といったレアな大曲が聴けるだけでも、元は取れてしまいます。さらに、「弦楽のための交響曲」ということで、「普通の」交響曲ほどは顧みられない初期の13の交響曲のオリジナル楽器による演奏(ハノーヴァー・バンド)も見逃せません。まだ3楽章形式だった最初期の6つの交響曲の、なんとチャーミングなことでしょう。真ん中の楽章の美しさなどはモーツァルトさんをも超えています。チェンバロやフォルテピアノの即興的な「おかず」も、素敵ですよ。「8番」では、管楽器の入ったバージョンを採用、こうなると「交響曲」の番号も考え直す時期に来ているのかもしれません。
オルガン作品だけで3枚も費やしているのも、なんとも贅沢な構成。これを聴くと、メンデルスゾーンとバッハとのつながりが再確認出来ることでしょう。そんなこんなで、今年は彼のさまざまな面がクローズアップされてくるはず、とても楽しみな1年です。

CD Artwork © Sony Music entertainment
by jurassic_oyaji | 2009-01-23 20:06 | オーケストラ | Comments(0)