2024年の映像業界を振り返る
2024年は、国内映像業界にとって、喜ばしい出来事と残念な出来事が交錯した一年となった。 AJA製品やTricasterを扱うリーンフェイズの業務終了、IMAGICA Lab.の一部事業撤退、オムニバス・ジャパンの一部事業撤退など、残念なニュースが相次いだ。これらは、特定の事業領域における戦略変更を象徴するものと言える。一方で、取り扱い製品の分野では、海外メーカーから新製品が相次いで発売され、映像業界全体に活気が戻ったことも事実である。 特に注目すべき出来事として、焦点距離の長さによるボケ味が特徴的な65mmシネマカメラの登場が挙げられる。ARRIは小型でコンパクトな「ARRI ALEXA 265」を、Blackmagic Designは「URSA Cine 17K」をそれぞれ発表。
また、富士フイルムから「GFX ETERNA」が発表され、大きな話題を呼んだ。これらの動きが業界を大いに刺激したことは間違いない。2025年には、さらに65mmフォーマットに関する話題が増加する可能性がある。
また、Vision Proヘッドセット向けの3Dコンテンツ制作では、カメラ開発競争が激化している。Appleは8K 3Dビデオ撮影に対応した2つのレンズを搭載した「Apple Immersive Videoカメラ」を発表。Blackmagic Designも「Blackmagic URSA Cine Immersive」を発表し、最高スペックの3D Immersiveカメラとして注目を集めている。さらに、キヤノンは「EOS VR SYSTEM」の3D撮影用レンズ「RF-S7.8mm F4 STM DUAL」を発表し、「空間ビデオ」をリアルかつ手軽に体験できる製品として話題となった。
ちなみに、箸休め的な話題として、Blackmagic Designのオンライン発表会が今年は4月13日の1回のみ開催されたことが挙げられる。過去の2023年、2022年、2021年は3回開催されていたため、頻度の減少が目立った。CEOのグラント・ペティ氏が製品を紹介する様子はユニークであり、深夜にも関わらず多くの視聴者が集まった。深夜3時や4時にもかかわらず、SNSのタイムラインでは映像業界が一丸となって盛り上がる様子が見られ、良い機会となった。
しかしながら、1年分の14製品を一度に発表した結果、各製品への理解が深まらなかったり、情報過多に感じられるとの声も一部で聞かれた。まさに混沌とした2024年だったと言えるがみなさんにとって2024年はどういう一年だったろうか?
さて、大賞何が受賞するのか…?いよいよ発表!
PRONEWS AWARD 2024 大賞
キヤノン EOS C400
大賞はキヤノンの「EOS C400」が受賞した。今年のキヤノンは、出し惜しみすることなく、CINEMA EOSシリーズに全力で取り組んできた一年だった。その中で登場したEOS C400は、価格対性能比に優れたシネマカメラとして高く評価されている。
このコンパクトなサイズで6K対応のフルサイズセンサーを搭載し、CFexpressメディアへの6K60Pの12bit RAW記録に対応している点が特筆に値する。さらに、最大16ストップのダイナミックレンジを実現し、ISO800、3200、12800のトリプルネイティブISOを搭載していることも評価の決め手となった。これにより、低照度環境でも鮮明な映像を撮影でき、ライブ撮影や緊急時の撮影にも柔軟に対応可能だ。
加えて、最近のRFマウント製品群における動画撮影対応への配慮も際立っている。静止画・動画撮影の両方に対応した「VCMシリーズ」やパワーズームアダプターの発売に加え、一部レンズでの2種類のカラーバリエーション展開など、動画撮影に向けた取り組みが他社を凌駕している。このような製品戦略と姿勢が、今回の大賞受賞に大きく寄与したと言える。