カムコーダー/ミラーレスカメラ部門のノミネート発表
この1年間、各社から数多くのミラーレスカメラが登場し、SNSは新製品の話題で常に盛り上がっていた。特にキヤノンはフラグシップモデル「EOS R1」を発表し、ソニーも「α1 II」の後継機を投入。さらに、ソニーからは新たにグローバルシャッターを搭載した「α9 III」が登場するなど、驚きの新製品が次々と発表された1年だった。それでは、カムコーダー/ミラーレスカメラ部門のノミネート製品を紹介する。
ソニー PXW-Z200
発売日:2024年9月13日
希望小売価格:オープン 税込649,000円
ソニーから6年ぶりとなる新型カムコーダーが登場した。近年、各社の新製品はミラーレスカメラが中心で、カムコーダーの新製品はほとんど姿を消していた。テレビ番組撮影では「HXR-NX5R」が長らく愛用されてきたが、4K撮影に対応しておらず、すでに生産が終了している。それにもかかわらず高い人気を誇っていた。
そんな状況下で、移行先として注目されたのがカムコーダー「PXW-Z200」だ。今年大きな話題を集めたこの新製品は、HXR-NX5Rと同等のサイズ感と質量を持ち、SDXCメモリーカードとCFexpress Type Aメモリーカードのマルチスロットに対応。電源オン時の起動時間も短縮され、現場での即応性が向上している。また、従来の3連リングから2連リングへの変更も注目を浴びたポイントだ。被写体認識やオートフレーミング機能を搭載し、高いAF精度を備えることで、ワンオペレーションの現場でも高く評価されている。
キヤノン EOS R5 Mark II
発売日:2024年8月30日
希望小売価格:オープン 税込654,500円(キヤノン公式オンラインストアの価格)
キヤノンの「5」の名を冠するモデルは、動画撮影の歴史を切り開いてきた伝説的なカメラばかりだ。2008年に一眼レフでの動画撮影を可能にした「EOS 5D Mark II」や、世界初の8K動画を実現した「EOS R5」などがその例だ。そして今回登場した「EOS R5 Mark II」もまた、「5」の名にふさわしい優れた動画撮影性能を備えている。
「EOS R5 Mark II」は、最大約4500万画素のフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサーに加え、映像エンジン「DIGIC X」と新開発の解析エンジン「DIGIC Accelerator」を搭載。これにより、高解像度で低ノイズの画像生成やAE/WB解析を通じた高画質化を実現している。動画性能においても、8K60PのRAW記録に対応し、高画質を追求したい場面では「4K RAW」を選択可能。高画質と利便性のバランスを両立した仕様となっている。
さらに、フルサイズHDMI端子の搭載や、最大16+ストップの広いダイナミックレンジを実現する「Canon Log 2」の新搭載も特筆すべき点だ。読み出し速度の向上により、ローリングシャッター歪みの軽減を実現。加えて、熱対策にも注力しており、冷却ファンを搭載した縦位置グリップを用意することで、長時間撮影時の熱暴走を効果的に抑制できる仕様となっている。
富士フイルム GFX100S II
発売日:2024年6月28日
希望小売価格:オープン 税込847,000円(富士フイルム公式オンラインストアの価格)
GFX100S IIは、2023年に発売されたGFX100Sの兄弟機である。最大の特徴は、44×33mmの102MP CMOS IIセンサーを搭載しながら、若干の小型化と価格の引き下げを実現した点だ。
富士フイルムGFXシリーズの動画性能は、ローリングシャッターの影響を考慮すれば、非常に優れていると言える。その中で、GFX100 IIとGFX100S IIの動画性能には若干の違いがある。GFX100 IIは8K30P、DCI4K/4K 60P、FHD 120Pに対応しているのに対し、GFX100S IIは8Kには対応せず、DCI4K/4K 29.97PおよびFHD 59.94Pとなっている。また、ビット深度にも差があり、GFX100 IIは4K60Pで4:2:2 10bit、GFX100S IIは4K30Pで4:2:2 10bitに対応している。
いずれにしても、GFX100S IIは最新の富士フイルムGFXシリーズのスペックを手軽に体験できるモデルであり、多くのユーザーにとって魅力的な選択肢となるだろう。
ニコン Z6III
発売日:2024年7月12日発売
希望小売価格:オープン 税込435,600円(ニコン公式オンラインストアの価格)
多機能かつ高性能なハイブリッドミラーレスカメラである。ニコンのフラッグシップモデル「Z8」「Z9」に搭載されている画像処理エンジン「EXPEED 7」など、多くの先進機能を惜しみなく受け継いでおり、静止画と動画の両方で驚異的な速度と高フレームレートを実現している。
動画機能も充実しており、最大6K60pの内部N-RAW記録や内部ProRes RAW HQ記録に対応している。クロップなしでフルフレームセンサーの幅を活用した撮影が可能だ。クロップ時限定ではあるが、4K120pの撮影にも対応している。このサイズ感でこれだけの機能を搭載し、税込435,600円という価格設定は驚異的と言える。
パナソニック LUMIX GH7
発売日:2024年7月26日
希望小売価格:オープン 税込274,230円(パナソニック公式オンラインストアの価格)
動画撮影業界で高い人気を誇るマイクロフォーサーズミラーレスカメラが登場した。動画に強い特性を引き継ぎつつ、CFexpress Type Bカードを使用して5.7K Apple ProRes 422 HQやProRes RAW HQを内部記録できる仕様を実現している。また、オプションのXLRマイクロホンアダプター「DMW-XLR2」と組み合わせることで、32ビットフロート録音にも対応しており、プロフェッショナルな録音環境を手軽に構築可能だ。
特筆すべきは、待望の像面位相差AFの搭載だ。これにより、AFの速度と精度が飛躍的に向上し、動画撮影時のピント合わせが格段にスムーズになった。旧機種には戻れないほどの大幅な改善がなされており、動画撮影のあらゆるニーズをカバーするこのシリーズの完成度がさらに高まった印象を与える。
ソニー α1 II
発売日:2024年12月13日
希望小売価格:オープン 税込990,000円(ソニー公式オンラインストアの価格)
ソニーαシリーズのフラッグシップモデル第2世代が登場した。α9シリーズがスピード特化のモデルであるのに対し、α1シリーズは解像度とスピードを両立させたフラッグシップモデルとして位置付けられている。
「α1 II」は、フルサイズ積層型有効約5010万画素センサーを引き続き採用し、AIプロセッシングユニットを搭載することで、最大759点の位相差AFに対応。リアルタイム認識AFでは、人物、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機といった多様な被写体を正確に追尾できる。特筆すべき進化点として、シャッターを切る前の瞬間を記録できるプリキャプチャー機能を搭載。シャッターボタンを押す前の瞬間を遡って連続撮影が可能であり、最高約30コマ/秒の連続撮影においても画素数を損なうことなく記録できる。
動画性能も大きく向上しており、8K30Pや4K120Pの高画質・高フレームレート動画撮影に対応。動画撮影時にもリアルタイム認識AFが機能し、様々な被写体を高精度で追尾できる点が大きな特徴となっている。
ソニー α9 III
発売日:2024年1月26日
希望小売価格:オープン 税込935,000円(ソニー公式オンラインストアの価格)
グローバルシャッターイメージセンサーを搭載した「α9 III」は、業界の潮流を一変させるほどの個性を持つミラーレスカメラである。映像業界において、ローリングシャッターによる歪みを排除し、これまでにない新しい撮影体験を提供する。4K120Pに対応し、AIプロセッシングユニットを搭載することで、オートフレーミング、AFアシスト、フォーカスマップ、ブリージング補正といった先進機能を実現している。被写体追従性能やリアルタイム瞳AFの精度も向上しており、AIによる高度な画像処理が可能だ。
静止画撮影では、最高約120コマ/秒の高速連写に対応。さらに、1/80,000秒という驚異的なフラッシュ同調速度を実現しており、スポーツやパフォーマンス撮影に最適な性能を誇る。高速な動きを確実に捉え、一瞬の表情や動きを鮮明に記録できる。
以上がカムコーダー/ミラーレスカメラ部門のノミネート製品となる。
■PRONEWS AWARD 2024 シネマカメラ部門 ファイナリスト
- ソニー PXW-Z200
- キヤノン EOS R5 Mark II
- 富士フイルム GFX100S II
- ニコン Z6III
- パナソニック LUMIX GH7
- ソニー α1 II
- ソニー α9 III
はたして何が受賞するのか…?いよいよ発表!
PRONEWS AWARD 2024 カムコーダー/ミラーレスカメラ部門 ゴールド賞
キヤノン EOS R5 Mark II
EOS R5 Mark IIは、動画と写真のハイブリッドカメラとして、多くのプロフェッショナルから高い評価を得ている。特に、主に写真撮影を中心に活動しながらも、高品質な動画素材を必要とするカメラマンにとって、現時点で最有力の選択肢となり得るモデルだ。
このカメラは写真と動画の両立を特徴としており、動画性能においても業務レベルの要求を十分に満たしている。前モデルであるEOS R5では、8K RAW動画の記録が最大30Pに制限されていたが、EOS R5 Mark IIではボディ内蔵バッテリーで8K60PのRAW記録が可能になった。従来のEOS R5 Cで必要とされていた外部電源が不要になり、撮影場所を選ばず自由な撮影を実現した点は大きな進化だ。また、R5 Mark IIは4K SRAW動画を60fpsでフルサイズ撮影できる機能を備え、高画質な映像を記録容量を抑えながら撮影したい場合に最適な選択肢となる。
さらに、キヤノンのプロフェッショナルログガンマ「Canon Log 2」を採用しており、ダイナミックレンジは最大16段以上の表現力を実現。これにより、CINEMA EOSシリーズとの連携も容易で、プロフェッショナルな制作環境に適している。
加えて、マルチ撮影や共同作業が必要な場合には、空冷ファンやアナモフィックモードを搭載するCINEMA EOSシリーズのEOS R5 Cという選択肢もある。また、映像制作向けにはC80が新たに登場しており、キヤノンのラインナップの充実が際立っている。このような幅広い選択肢を提供できる点が、キヤノンカメラシステム全体の大きな強みと言える。
PRONEWS AWARD 2024 カムコーダー/ミラーレスカメラ部門 シルバー賞
ソニー PXW-Z200
ニュースやドキュメンタリー、マルチカメラでのライブ撮影といった技術分野では、高倍率ズームレンズを搭載したビデオカメラが依然として重要な役割を果たしている。しかし、近年どのメーカーも新しい放送用カメラを発表していなかった。その流れを変えたのがソニーの「Z200」だ。特に、AIによるオートフレーミング機能の精度や、S-Cinetoneによる映像表現の幅広さは非常に高く評価できる。
マニュアルアイリスリングが廃止され、フォーカスとズームの2連リングとなった点は残念だが、アイリスと電子式可変NDフィルターに対応した2連ダイヤルが搭載されたことは前向きに評価すべきだ。また、FX6のUIを反映し、S-Cinetoneを採用した点は、現代のニーズにしっかり応えている。
AIによるオートフレーミング機能は、被写体を自動追尾し、フレーミングを自動化する便利な機能だ。特に単独のオペレーターによる撮影や、ステージ上のスピーチなど、被写体への焦点を維持する必要がある場面で大きな効果を発揮する。さらに、手ブレ補正の性能も優れており、ワンマンオペレーションや高い信頼性を求めるカメラマンにとって、まさに救世主となるだろう。