「ゼルダの謎解きが嫌い」だったのに『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』を楽しみにする理由

2024年6月18日のNintendo Directでは、ハード末期にも関わらずさまざまなNintendo Switchの新作が発表されて驚いたが、なかでも『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』は特に注目が集まるタイトルであった。

『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』は、斜め見下ろし視点の「ゼルダの伝説」（いわゆる2Dゼルダ）シリーズ作品である。主人公はリンクではなくゼルダで、さらに本作でも従来のシリーズのアタリマエを見直しているという。

「ゼルダの伝説」シリーズは、従来の構造を見直して大きく舵を切った『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が爆発的な人気を得たうえ、その続編である『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』もまた期待を越えるヒット作となった。

『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』はまだPVが公開されたばかりだが、それでも2Dゼルダの新しい進歩が見られそうで、興奮を抑えきれないファンが存在しているのである。

アタリマエを見直した3Dゼルダの影響が2Dにもやってきた

本作は、ゼルダが机や岩などを「借り物」として利用しつつ、謎を解いたりバトルを行うといったゲームシステムが特徴となっている。

従来のシリーズ作品であれば、すでにあるものを駆使して謎を解いたり、あるいは新たなアイテムを手に入れて試行錯誤することになる。その「すでにあるものから正解を探すゲーム」を破壊しようとしているのだろう。

Nintendo Directで青沼プロデューサーが「プレイヤーの数だけ冒険が変わる」と語るように、謎を解いたり障害を越えるにしても解法はいろいろありそうだ。これは大ヒットした『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にも通じる要素である。

ところで、筆者はかつてゼルダの謎解きが嫌いだった。なぜイヤなのかといえば、謎のヒントがミスリードに見えてしまうからである。

今でも忘れられないのが『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』の最序盤の謎解き「ひとつは上に　ひとつは下に」である。このヒントはスイッチのある場所を指し示しているのだが、想像した「上」とはまったく違う場所にあり、ヒントを無視して総当たりで探したほうが早かった。これでは無駄に迷うわけで、解けても楽しくない。

一方、「ゼルダのアタリマエ」を見直した『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』では、解法がひとつではなくなったし、なんなら必須ではないものは謎を無視してもよくなった。それでいながら答えにたどり着く方法を考える楽しみはあるわけで、これは謎解きが嫌いでも好きになれる作りだったわけだ。

こうしてアタリマエを見直してたくさんのファンを掴んだわけだが、『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』にも同様の匂いを感じるのである。

すでに『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はプロトタイプをファミコン風の2Dグラフィックで制作していたことが明らかになっている。つまり、2Dであったとしてもクエストをこなしたり難題を解決したりするために複数の方法があるインタラクティブなゲームが実現できていたと考えられる。

さすがに『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』ほどのアプローチの豊富さは期待していないが、それでも『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』は嫌いだったゼルダを大きく変えてくれそうな雰囲気が感じられているし、そう感じるのは私だけではないからこそファンの間でも盛り上がっているのだろう。

発売前なのに「どうなるんだろう？」と考えてしまうほどのゲーム

『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』はグラフィックこそ、リメイク版『ゼルダの伝説 夢をみる島』のものを一部流用しているようだ。冒険の壮大さよりかわいらしさが先に立つが、それでもやはりゲームシステムがかなり魅力的に見える。

本作では水を重ねれば高いところへ容易に行けてしまうようだが、そんなことが許されるのだろうか？　2Dゼルダで考えるのであればとんでもないシーケンスブレイクが実現しそうだが、わざわざ初報で公開するのだから想定済みなのだろう。

ベッドで足場を作れるのであれば、邪魔な穴を塞ぐこともできるのではないか？　川を渡るのも容易だろうし、バトルも戦い方が豊富なようだ。アクションが苦手な人でもなんとかなるようなバトルシステムであれば、裾野を広げることにも繋がる。

……と、数分のPVが公開されたばかりなのに、すでに「どうゲームを進めようか？」と考えてしまうほど可能性に期待できるのだ。それも、かつてゼルダの謎解きが嫌いだった人が、だ。

『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』は9月26日、Nintendo Switch向けに発売予定だ。

渡邉卓也（@SSSSSDM）はフリーランスのゲームライター。『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』は移動系の要素がどうなるか気になっている。