暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

鑑了 サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~

フォローしているSNSアカウントで紹介されていた。俺自身は全然この作品を知らなったのだが、2021年度アカデミー賞に作品賞を含む主要6部門にノミネートされ、音響賞・編集賞を受賞したのだそう。そりゃ観るしかないよねと、こちらも三連休中に鑑賞。

監督はダリウス・マーダー、出演はリズ・アーメッド、オリヴィア・クック、ポール・レイシー、クリス・ペルフェティ他。全部で120分の作品です。

www.culture-ville.jp

以下、あらすじ。(参照 Filmarks)

突如難聴になったドラマーのルーベンは、一緒にバンドを組む恋人ルーに難聴者のコミュニティに連れていかれる。難聴であることをハンディとして捉えていないコミュニティの人々と過ごしながらも、その現実を受け入れることの難しさに直面するルーベンは、自分の人生を前に進めるために、ある決断をする・・・。人生の挫折・再生を描きながら、その主人公の人生を疑似体験できる秀逸な感動作。

youtu.be

冒頭はルーベンがバンド演奏でドラムを叩くシーンから始まる。個人的に音楽映画が外れたことがないので、それだけでも楽しみになり、引き込まれたのだが、実はこの映画の醍醐味はそこではない。音の表現という意味では正解なのだが、それは音楽という音ではない。日常、我々が当たり前のように感じている「音を聴く」ということが作品では表現されている。その意味でも、色んなレビューサイトでも書かれているとおり、ヘッドホンでの鑑賞は必須。

あまりネタバレのないように書くが、インプラント手術を受けたあと「我々が聴こえている音」と「ルーベンが聴こえている音」の比較が、なんとも言いようがなく苦しかった。

人間の耳には「ノイズキャンセラー(雑音消去)」と「イコライザー(周波数)」が入っており、自然と自分が聞きたい音だけを拾う。それに対して“インプラント”は全ての音を拾ってしまうから「騒音」に聞こえる。

なるほどね、というのは観終わってから調べて分かった。

聴力を失っていくとともに、それ以外のものも多く失っていき、葛藤するルーベン。もちろん、見ているこちら側も辛くなるのだが、その息の詰まるようなしんどさが、最後、静寂になるシーンで一気に洗われる。一番最初は『え、終わり?』という感覚になってしまったので、3回くらい繰り返し観てしまった。しかし、そうやって反芻するほど作品の素晴らしさが滲み出てくる。そんな、感情がどちらかといえばグシャグシャにかき乱される映画。

ありがとうございました。

 

   

 

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