非職業的技師の覚え書き

JK1EJPの技術的検討事項を中心に記録を残します。

室内LW × 10Wによる国内CW交信の達成度

室内LW × 10W(8m LWアンテナ + AH-705 × IC-705)の設備によってDX通信がどこまで可能かに挑戦し、その経過を報告してきました。今回は一休みして、国内CW交信の結果を棚卸したいと思います。

NYP

室内LW × 10Wの設備でNYP(New Year Party)に2回CWで参加しました。LW×ATUの利点は複数のバンドに簡単にQSYできることです。国内メインバンドの40mおよび30mで局数を稼いだ後は、AH-705のカバーする全てのバンドで交信することを目標に参加してきました。結果を下記にまとめます。

全9バンドの交信は2年連続で未達です。昨年(2024年)は80mバンドで交信できませんでした。今年(2025年)は80mバンドで2局と交信できたのですが、12mバンドで交信できませんでした。

80mバンドで交信した2局の中の1局は1エリアの局でしたが、他の1局は0エリア(長野県)の局でした。ちゃんと電離層反射で微弱電波が飛んで行ってくれたようです。

12mバンドでは「CQ DX」は聞こえたのですが、「CQ NYP」は聞こえませんでした。その代わりに、同じWARCバンドである17mバンドの交信数が増えました。コンディションの違いかもしれません。

30mバンドが減って40mバンドが増えているのは、40mバンドの環境ノイズの原因(換気装置)が判明し、運用中はOFFにするなどの対処ができるようになったからです。

その他のトッピクスとして、初めて聞く2文字サフィックスのOM局と交信できました。NYPならではのことかもしれません。

POTA

POTA(Parks on the Air)の達成状況を獲得したアワードで下記に示します。

75公園までの希少鉱物シリーズのアワードを達成したところで壁に突き当たり、100公園からの北米植物シリーズを獲得するのは無理ではないかと一時は思っていました。しかし、2024年からアクティベータ局の数が一気に増えたように感じ、300公園まで達成することができました。200公園まではCWモードのみで達成できましたが、300公園はCWとFT8のミックスによる達成となりました。

JCC/JCG/AJA

集計方法

Turbo HAMLOGからCSVでログをエキスポートし、Pythonを用いて集計しました。原単位表としてのJCC/JCG/区リストは、JARLのWebページ(市郡区番号リスト)で公開されているTEXTファイルをダウンロードし、整形して利用しました。直近の浜松市の区域変更前のデータ等の過去の履歴も網羅されています。

照合の注意点を残します。

  • JARL公開のJCC/JCG/区リストのTEXTファイルは人が見易いようにフォーマットされており、Python(Pandas)のデータフレームに読み込むCSVフォーマットに変換するのに一苦労しました。人が見易いデータは計算機は読み難い、逆も真成りです。計算機による集計を前提にしたCSVファイルも準備して頂けるとありがたいところです。
  • Turbo HAMLOGのDXコードは独自のコードということであり、JCC/JCG/区コードとは重複していないため、国内/DXの分離は容易です。なお、Turbo HAMLOGのDXチェックボックスは真面目に管理してこなかったため、「DC12」のチェックデータは利用できませんでした。
  • 区所在の局と交信した場合は、ログ記入のコードは可能な限り区コードにしています。特別市扱いの東京都以外も行政区のある都市は、JCC集計時に区コード(6桁)まで見る必要がありました。AJA集計時には、区コードと当該JCCコードのダブルカウントをしないように消込が必要でした。

集計結果

JCC、JCG、区、AJAの集計結果を下記にまとめます。

AJAの達成率は約65%であり、室内LW × 10Wでも国内の半数以上の市郡区と交信できることが分かりました。

区の達成率が最も低く、約61%に留まります。都市部にアマチュア無線局の数が少ない、あるいは当局と同様にアンテナや出力に制限を受けていることが理由ではないかと思われます。

JCC集計の詳細

都道府県別のJCC達成率を下記に示します。縦軸はQSLコンファームの達成率(交信済みの市の数/市の数)です。

電離層反射がスキップしそうな香川県の8市との交信が100%でコンプリートしていました。地元の神奈川県も90%以上を達成しています。

80%以上を達成しているのは、左から東京都、滋賀県、福井県、山口県、徳島県、愛媛県、宮崎県、沖縄県です。日本列島両端のエリアに限定されることなく、電離層スキップしそうな県が多く含まれる点が意外でした。POTAも含めた移動サービス局に感謝いたします。

逆に、50%未満の都道府県は、左から青森県、岩手県、長野県でした。長野県は電離層スキップが影響しそうですが、7エリアから2つの県が入っていることは意外でした。

JCC達成度をマップした地図を下記に示します。緑色が高達成率、橙色および赤色が低達成率の都道府県です。西高東低が一目瞭然です。

達成度が低い理由には、物理的要因と人文地理的要因があるように思います。物理的要因は電波伝搬の難易度です。人文地理的要因には、都道府県内の市数の多寡、固定局の有無、移動局の移動先に選ばれるかどうか等があります。初盤は物理的要因の影響を感じていましたが、達成率が各県50%を超えてからは人文地理的要因の影響の方が強いように感じられます。

東京都と神奈川県は、直接波で交信できる範囲と思います。対して、北関東から長野県、富山県にかけては電離層スキップのベルトができているように思います。

同じように、北陸から近畿にかけても電離層スキップの影響を受けると予想していましたが、滋賀県とのパスは良好に開ける場合があります。福井県の達成度が高い理由はアクティブな移動サービス局のおかげです。

西方では、高知県を除く四国の達成度が高いのも意外でした。山口県、宮崎県、沖縄県も達成度が高くなっています。移動サービス局のおかげと、コンテストに参加した成果と思います。

東北方面に目を向けると、思ったよりも達成度が低いことが意外でした。特に、青森県は最も達成度が低くなりました。物理的要因よりも、人文地理的要因の方が効いていると思います。根拠は次のJCG達成度と比較すると分かります。

JCG集計の詳細

都道府県別のJCG達成率とJCC達成度マップを下記に示します。

西高東低の傾向はJCCと同じです。ただし、西日本でも達成度40%以下の県が近畿から中国地方にかけて並びます。また、JCCの達成度が40%だった青森県もJCGの達成度は87%を超えています。
JCCとJCGの達成度の違いは、物理的要因(電波伝搬)ではなく人文地理的要因の方が支配的であることを示していると思います。例えば、JCCよりも複数の町を含むJCGの方が要望の多いレアな場所が多かったり、郡の面積は広大なためアンテナを展開する場所を探しやすいという傾向があるのではないでしょうか。また、POTAには市立公園はカウントされないため、地方のPOTA公園は郡部に跨る国立公園もしくは県立自然公園が多くなる傾向があるのではないでしょうか(分析はしていませんが・・・)。

AJA集計の詳細

上記JCCとJCGの達成率を集計し、さらに区を加えたAJAの都道府県別達成率と達成度マップを下記に示します。

AJAでレアな県は8市5郡の島根県という結論になりました。西高東低の傾向は維持されていますが、AJAをコンプリートした都道府県は西方にもまだありません。偶然の巡りあわせに期待するだけに留まらず、QRV情報を能動的に集めないとコンプリートは容易ではないかもしれません。

室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(9)

DXCC認定書の着荷

DXCC(Mixed 100)の紙アワードが着荷しました。荷姿(写真上)は長方形の箱でした。箱を開くと(写真右)、丸めて輪ゴムで止めたアワード(写真下)が入っていました。箱内で特には固定されていませんでしたが、薄手軽量の紙ということもあり、折れ曲がり等の破損はありませんでした。

申請11月10日(米国)に対して、承認12月27日(米国)、発送1月9日(米国)、着荷1月17日(日本)のリードタイムでした。今回は冬休みが挟まったことと、システム障害の余波が残っている(待ち行列が長くなっている)と思われることから、今後は短縮に向かうかもしれません。

アワード記載の日付は申請日の11月10日でした。Mixed(CW & FT8)のため特記はありません。「室内LW×10W」が心の中の特記です。

アワードには「この認定証は、卓越した業績を称え、DXセンチュリー・クラブの会員であることを証明する」と記載されており、DXCCというクラブの会員資格認定書であることが分かります。通し番号が会員数と仮定すると、7万人強の会員数ということになりますが、多いのか少ないのか分かりません・・・。

ARRLがPDFで発行しているDXCC Standings(Mixed)のリストにも掲載されました。ARRLのリストはStandings(順位表)と言いながらも順位の表記は無く、PDFのため検索に不便です。

CQ誌2月号のDX Newsのコラムに、DXSCAPEのDXCC rankingリンクの解説がありました。ARRL DXCC Standingsを情報源として順位をカテゴリーと地域別に表組してくれています。「--JA-- MX」をクリックして検索するとヒットしました。JA内のMixedカテゴリーで1月17日現在3,803位であることが分かりました。

CQ誌フォロー

CQ誌2月号の話題が出たところで、カラーページp.160の寄稿「タジキスタンのDXペディショナーEY8MM来日レポート」についての覚え書きを残します。

記事を見たときに「見たことのあるコールサインだ」と思いログを検索すると、12月中旬にEY8MM局と10m FT8で交信していました。室内LW×10Wによる中央アジアのエンティティとの交信は困難(見えても届かない)を極めるため、コールサインが記憶に残っていました。SNRを見返すとhis/my = +03/-15dBでした。当日のコンディションが良く、強力に入感していたために交信できたものと思われます。

CQ誌寄稿によると来日されたのは11月末で、当局が交信できたのは12月中旬でした。帰国後にJA旅行を思い出しながらビームを向けてくれたのでしょうか・・・。

EY8MM局専用のWebページも見つかりました。Bouvet Island を初めとしたDXペディションに活躍されている様子が伺えます。当局にとっては、EY8MM局ホームのタジキスタンも一期一会のATNOだたのですが。

ちなみに、タジキスタンはこのように美しいところです。交信したエンティティの4K動画を検索することが最近の日課になっています。

www.youtube.com

新着QSL

K8R - American Samoa

アメリカ領サモアのDXpeditionのQSLカードが届きました。N5J(Jarvis Island)の前哨戦として、FT8 Super Foxモードのテストを行ったDXpeditionと記憶しています(室内ロングワイヤーアンテナはSWR1.0の夢を見るか(18) - 非職業的技師の覚え書き)。

切手から分かるように、日本国内からの発送でした。後述のN5J DXpeditionにはリモートオペレータとして日本からも複数のHAMが参加していたため、そのグローバル体制の関連かも知れません。

カードの表面は、山が間近に迫る入江と、自然保護のためにオペレータが島から離れてRIB(Testing RIB (Radio In a Box) Technology in a DXpedition Environment )をリモート運用するための船舶基地の写真でした。

カードの裏面は、RIBが上陸した海岸線の写真とRIBの効能の説明が記載されていました。

裏面の写真を拡大すると、水陸両用ボートに乗せられたRIBが写っていました。後尾に2本のアンテナが見えますが、これは船舶基地とのリモート運用通信のためのもので、HF用のアンテナは海岸線に立てているはずです。

カードを改めて見ると、IOTA番号が記載されていないことに気づきます。LoTWの方も同様です。同コールサインのK8R(Swains Island)の方には、同じRIB運用ですがIOTA番号が記載されていました。上陸して運用しているかどうかで違いが出るのでしょうか・・・。

N5J - Jarvis Island

上記K8R (American Samoa)のQSLカードと同じ封筒に、N5J(ジャービス島)DXpeditionのQSLカードが同封されていました。

単なる絵葉書として一瞥するだけでは勿体ないため、DXpedition後にN1DG局から寄稿された「The DXpedition to Jarvis Island, N5J」を基に、QSLカードの図案を読み解きたいと思います。日本語訳も下記Webページにて参照できます。

カードの表面の写真には、ジャービス島を象徴する要素が漏れなく写っています。今回のDXpeditionのワッペンが左上に配置されています。左下にはThe Northern California DX Clubのロゴが配置され、右下には今回のDXpeditionに許可を出してくれたUSFWS(U.S. Fish and Wildlife Service:合衆国魚類野生生物局)の紋章が配置されています。

ワッペンの拡大を下記に示します。図案の要素は、(1)海上標識塔(灯火のない灯台)、(2)島名看板、(3)海鳥の三つです。

ジャービス島で唯一の建造物?である(1)海上標識塔はQSLカードのワッペンの右下に小さく写っています。視認困難ですが(2)島名看板も海上標識塔の近くに写っています。(3)海鳥の種類は分かりませんでしたが、コールサインの左に写っています。QSLカードの海鳥はグンカンドリと推測しました。カツオドリは首が黒いようです。

QSLカードに写っている海鳥は構図が良すぎるため、最初は合成と思いました。しかし、公開されているドローンによる下記撮影動画を見ると、最後に海鳥がタイミング良くドローンに接近しています。そのベストショットを採用したのかもしれません。

QSLカードには浜辺に設営された3本の垂直アンテナが確認できます。手前のアンテナから伸びるケーブルを追いかけると、海上標識塔の下にRIBを載せた水陸両用ボートを確認できます。解像度は悪いですが、K8RのQSLカードで見たものと同じです。

QSLカードは見開きになっています。裏面(下記写真上左)には、(2)島名看板の前で撮影した上陸メンバーの集合写真と、リーモート・オペレータのコールサインが配置されています。

上陸メンバーの前列3人がUSFWSの職員、後列の4人がDXpeditionの現地オペレータです。ペンキが剥がれていた(2)島名看板を、USFWSの職員と協力して修繕したとの記述が寄稿にありました。メンバーに隠れていますが、(2)島名看板の下部には英語、韓国語、中国語に加えて、日本語で「上陸禁止」と書かれています。

見開き面左(上記写真下左)には数枚のスナップ写真と、ジャービス島の説明およびUSFWSへの謝辞が記されています。スナップ写真の説明はN1DG局の寄稿にありますので、ここで繰り返すことは止めます。

見開き面右(上記写真下右)にはジャービス島から見た夕日の写真を背景に、ドナーおよび数多くのスポンサーが記され、ログシールが貼られていました。

なお、N5JのQSLカードにはIOTA番号が記載されていました。上陸メンバーと交信できたのは一部の交信に限定されると思われますが、IOTAプログラムに有効かどうかはまだ調べ切れていません。

D2UY - アンゴラ

前回報告したD2UY局からのQSLカードがいち早く届きました。切手を見ると発送元はブルガリアでした。

図案の鳥はオームのようですが、特に説明文はありませんでした。尾羽が鮮烈な赤色をしていることが特徴です。尾羽、コールサイン、QTHが赤のトライアングルを構成する図案です。

「アンゴラ」で調べても当該の鳥に辿り着けませんでした。「アフリカ」に範囲を広げて検索するとGray Parrot(ヨウム)が見つかりました。白い顔と赤い尾羽を持つ大型の灰色オームという「ヨウム」の特徴と一致するため間違いないと思います。

ヨウムは赤道アフリカ原産とのこと。アンゴラの大部分は生息地に含まれませんが、赤道に近い北部の飛び地カビンダは生息地に含まれます。おそらく、カビンダではよく見られる鳥ということで図案に選ばれたのではないかと推測します。

C21MM - ナウル共和国

「室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(6) - 非職業的技師の覚え書き」で報告したC21MMより、OQRSでリクエストしたQSLカードが届きました。

表面の写真には、ナウルの海岸線のヤシの木と後方にアンテナが写っているようです。裏面には、QRVした2か所の島内のQTHが説明されています。2か所からアクティブにQRVしてくれたおかげで、室内LW×10Wでもログシール2枚分の交信ができました。ログシールが2枚張られたQSLカードが届いたのは今回が初めてと思います。

偶然、YouTubeで10m CWの運用の様子を発見しました。ピックアップした周波数をそのままモニターしながらCQを出しているようです。定石通りピックアップされた局の周波数で呼ぶのが良いということになりますが、JAのパイルの場合は同じことを考える局が多いと思われるため、天邪鬼に離れた隙間周波数で呼びました。

LZ5R - ブルガリア

SASEでリクエストしていたブルガリアのコンテストステーションLZ5RからCW交信のQSLカードが届きました。カードチェックを受ければ、DXCC(CW 100)に向けてエンティティを1アップできます。

これでSASEの仕掛は全て回収できました。2023年に7通、2024年に5通のSASEを出しましたが、行方不明になったものはありません。主に北米とヨーロッパにしか出していませんが、今のところグローバルの郵便システムは信頼性高く機能しているとの認識です。

4U1A - オーストリア(国連ウィーン事務所 ウィーン国際センター)

15m FT8で交信した4U1Aより、OQRSでリクエストしたQSLカードが届きました。封筒に貼られていたのは見覚えのある切手です。なぜか、オーストリアではなくロシアから届きました。

QSLカードの図案は定期的に変わるようですが、現在の図案は下記の複数のコールサインの共用カードになっています。

4U1Aの今現在のエンティティはオーストリアですが、将来もしかしたら別のエンティティに変わる可能性もゼロではないかもしれません。

室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(8)

2025年元旦の朝も雲一つない富士山を見ることができました。

DXCC進捗

DXCC受理

11月10日に申請したDXCC(Mixed 100)が12月28日に受理されました。Application HistoryのStatusが「Sent」から「Finished」に変わり、Reasonに「Completed by DXCC Desk」と記入されました。申請に誤謬がないことが人手チェックにより確認されたようです。

Account Statusを見ると、「LoTW QSLs in Process」の列にあった申請QSLが「DXCC Credits Awarded」の列に移動していました。申請したQSLが無事にCredit(DXCCに有効なQSL)として認められました。LoTWシステムのDXCC Awardカウント機能で事前にカウントされたQSL分の申請だけですので、当然ではありますが・・・。

システム障害の余波が残っているのか、申請から1か月以上かかりましたが、年末に受理されたことにより良いお年玉になりました。

DXCCカウントアップ

上記Account Statusを見ると、申請時からこの1カ月の間にDXCCに有効なQSLがMixedで10件(CWで7件、Digitalで11件)追加されました。その内訳を下記に示します。赤字がMixedでの追加エンティティを示し、黒字がそれぞれのモードのみにおける追加エンティティを示します。

CW

  1. 3D2AG/P(ROTUMA)
  2. YT0Z(SERBIA)
  3. ES9C(ESTONIA)
  4. KH0/WH2JA(MARIANA ISLANDS)
  5. XQ1KZ(CHILE)
  6. VK9CV(COCOS (KEELING) ISLANDS)
  7. GB2ZL(SCOTLAND)

Digital

  1. EY8MM(TAJIKISTAN)
  2. S21DX(BANGLADESH)
  3. V73WE(MARSHALL ISLANDS)
  4. S52GP(SLOVENIA)
  5. D2UY(ANGOLA)
  6. HB9EFK(SWITZERLAND)
  7. KH0/WH2JA(MARIANA ISLANDS)
  8. EA8BS(CANARY ISLANDS)
  9. VK9CV(COCOS (KEELING) ISLANDS)
  10. HI3K(DOMINICAN REPUBLIC)
  11. 7Q6UJ(MALAWI)

Mixedで新規にLoTWコンファームできた10件のエンティティのうち、CWから追加されたQSLは赤字で示したEUのセルビア、およびOCのマリアナ諸島とココス諸島の計3件です。他の4件は既にDigitalで交信済みのエンティティをCWで追いかけた形になりました。ココス諸島とはDXpedition局と交信でき、セルビアおよびマリアナ諸島とはコンテストで交信できました。なお、マリアナ諸島とのCW交信は既にQSLカードを入手していましたが、今回は別の局との交信をLoTWでコンファームできました。CWのLoTW QSLの合計は85まで伸長しましたが、コンテストで微増する以外は伸び代が少なく、DXCC(CW 100)までの道のりはまだまだ長そうです。

一方、Digitalで追加されたQSLは計9件です。その内訳は、ASからはタジキスタンとバングラデシュの2件、OCからはマーシャル諸島、マリアナ諸島、ココス諸島の3件、NAからはドミニカ共和国の1件、AFからはアンゴラ、カナリア諸島、マラウイの3件です。この中でCWと重複している交信は、コンテスト参加(および事前運用)のマリアナ諸島とDXpeditionのココス諸島の2件だけです。室内LW×10WのCWでは交信が難しいAFの3件を筆頭として、Digital(FT8/FT4)の優位性が示された形です。ただし、DXpeditionのバングラデシュおよびマーシャル諸島はCWの運用がありませんでした。Digitalの優位性は微弱電波のデコードだけでなく、DXpeditionにおける運用比率も含みます。

DX日乗

上記で示したDXCCカウントアップ集計を見ると、Digitalモードによれば全世界とのDX交信も容易との印象を与えるかもしれません。しかし、室内LW×10Wの微弱電波ではDigitalモードでも往々にしてATNO(All Time New One)との交信は困難を極めます。その一端を備忘録として残します。

S21DX(BANGLADESH)

このDXpeditionの前にもバングラデシュからの強力なFT8信号が室内LWに入感することはありましたが、こちらの10Wの信号は一向に届きませんでした。

S21DXはIOTA DXpeditionでしたが、バングラデシュ自体がATNOだったため初交信を期して定期的にウオッチしました。しかし、High Band側のSF/Hモードは一向にデコードしませんでした。下記ホームページを見るとベアフット(100W?)運用とのこと。そこで、最終日のMSHV運用でストリームを絞ってくれることを期待しました。

最終日は17mのMSHV運用でした。午後、受信SNRは-03dB/ストリーム1本、-05~-06dB/2本、-08~-09dB/3本にまで上昇し、QSBが無ければ十分交信を期待できるコンディションになりました。こちらの室内LW×10Wの信号も届いているはずだと信じて、待ち行列に席を確保するために呼び続けているとコールバックがありました。受け取ったSNRは-20dBとデコード限界付近の値でした。

下記画面コピーを見返してみると、コールバック後に一旦再コールをして途中でレポート返信に切り換えています。理由は失念しましたが、リターンが無いため諦めて送信停止にした途端にリターンがあったため、操作を間違えたものと思います。FT8あるあるですね。送信時間15秒のうち、半分の7秒をロスしたため、こちらからのレポートデータ送信は復唱ができていませんでした(FT8は15秒の間に2回送ります)。

案の定、S21DXからはレポート再送がありました。しかし、受信SNRは-13dBから-09dBに上昇したため交信は成立するだろうと期待していたところ、QSBがあったのか次の受信信号をデコードできませんでした。ここでS21DXからRR73が送られていれば交信成立、三度目のレポートが再送されていれば四度目の再送を断念したというこで交信不成立です。S21DXのログはDXpedition終了後でないとアップされないとのアナウンスがあったため、前者か後者かは分かりませんでした。

画面を見返してみると、デコードできていない回が多いことに気づきます。QSBが多発していたため、コンディションの上昇を待って再挑戦しました。

粘り強く待っていると、コンディションが上昇しただけでなく、最終日の後半ということで1ストリームの運用が始まりました。受信SNRは+02dBまで上昇しました。QSBの山で再度呼び続けていると、プチパイルの最後にリターンがありました。交信直後にCQが送信されたため、パイルの最後であったことが分かります。

S21DXからのレポートは-19dBで1回目とほぼ同じです。しかし、受信SNRは+00dBで1回目とは段違いです。RR73までストレートにデコードでき、交信を成立させることができました。後ほどのClubLog検索で1交信しか表示されなかったことから、1回目は交信不成立であったことが確認できました。FT8とは言えバングラデシュATNO解消は薄氷の舞台でした。

S21DXは、Dhal Char島(AS-140)のIOTA DXpeditionでした。Char(チャール)とは「河口の砂州の島」を示します。バングラデシュのベンガル湾河口には数多くのチャールが存在しています。

その中でダールチャール(Dhal Char)はバングラデシュ南端のCharです。チャールは砂の堆積と浸食によって姿形を変えるだけでなく、移動するムービングアイランドと称されているようです。偶然発見した京大研究集会資料「コロナ画像を用いたバングラデ シュ・ハティア島の海岸侵食の推定」を参照すると、2009年の地図にはHatiya島から見て北西部にダールチャールという名称のCharがあります。現在の地図では、その位置のCharは消えて、Hatiya島の南西沖にダールチャールがあります。

ここまでHatiya島を跨いで押し流されたと考えるには距離が長過ぎるように思います。初代ダールチャールは浸食されて消滅するか堆積して陸地化し、沖にできた新しいCharが2代目ダールチャールを踏襲したのではないかと推測していますが真偽は不明です。

V73WE(MARSHALL ISLANDS)

マーシャル諸島共和国の首都があるマジュロ環礁(OC-029)からのIOTA DXpeditionでした。SP9FIH局がワンオペでサービスしてくれました。

ホームページには次の記述があり、マーシャル諸島をATNOとする室内LW×10Wの微弱信号を拾い上げてくれる期待が高まりました。

As usual during my expeditions, I will be paying attention to the weaker stations for which I am ATNO.
Much more fun with one weak station than with 20 big kilowatts…

マジュロ環礁は、内側の細長い礁湖(ラグーン)を囲む環状サンゴ礁の島ですが、北部の半分は沈降している部分が多いようです。

日本からの距離はハワイよりも近いぐらいですが、短周期のQSBに悩まされました。

FT8(MSHV)による交信結果を下記にまとめます。最初の交信でATNOは解消できたのですが、室内LW×10Wの微弱信号は他局の邪魔にならないと考え、バンドニューについても交信させて頂きました。

High Band側の15mと10mから始まったのですが、両者ともにQSBによってRR73をデコードできませんでした。例として、10mの画面を紹介します。

ワイドグラフから、スペクトル強度に赤い部分もあれば薄い黄色の部分もあり、周囲にスペクトルが分散してコンディションが良くなかった状況が分かります。Houndとして応答したため、レポート返信にQRMの影響は無かったものと思います。自動的にDFを低い位置に移して無駄なレポート返信を繰り返してしまいましたが、翌日にログインを確認できたため再交信はしなくて済みました。

次に、RR73までストレートに到達した17mの例を紹介します。こちらもQSBやスペクトルの分散が見られますが、上記10mよりコンディションが良いこととストリームを絞って運用してくれたため、RR73デコードまで無事に到達してHound応答を自動的に終了しました。

コンディションが良かったことから-02dBのレポートをもらっていますが、直前のJA6の局は+13dBのレポートをもらっており、室内LW×10Wが相対的に微弱信号であることが分かります。パワーの比率を100W/10Wと仮定すると10dBの差になりますが、アンテナの利得等も含めてそれ以上の差がついていました。

D2UY(ANGOLA)

アンゴラはアフリカ南西部の大西洋に面した国です。もちろん、室内LW×10WにはATNOでしたが、12m FT8で困難な交信を成就することができました。

D2UY局のQTHは、コンゴ民主共和国を挟んでアンゴラ北部の飛び地になっているカビンダ州の州都カビンダでした。島国の日本は陸続きの飛び地の領土には馴染みがありません(日本でも自治体には河川に絡んだ飛び地があります)が、世界各地には歴史的経緯から多くの「飛び地」があります。「飛び地」は個別のエンティティーになっていることも多く、交信を通してその存在を知ることがあります。ちなみに、カビンダは個別のエンティティーではありません。

コールバックがあった時にD2UY局のSNRは-24dBのデコード限界値でした。この信号強度の局を室内LW×10Wで呼ぶことはないため、ロングパスのQSBでコンディションが急低下したものと思います。

コールバックが4回続き、SNRは-24dB、-04dB、-05dB、-10dB、-18dBと変化し、持ち直したコンディションがまた低下してしまったために諦めかけた時に待望のRR73をデコードしました。

交信の後にD2UY局はCQを送信していたことからパイルは掃けていたようです。パイルになっていないために余裕があり、コールバックを4回続けてくれたことが交信成就の僥倖につながったと思います。室内LW×10WでATNOと交信するにはこのような僥倖が必要になります。

室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(7)

DXCC申請

室内LW×10Wのアパマン小信号設備を用いたダイニングテーブル週末移動運用にて、サイクル25のシーズン中にDXCC(Mixed 100)を達成することができました。本命はDXCC(CW 100)ですが、FT8の助太刀ですべり止めを達成でき一安心です。11年後のサイクル26では運用を続けているか分かりませんので・・・。

LoTWシステムからのDXCC(Mixed 100)申請の備忘録を残します。なお、DXCC申請はまだ保留中になっているため、下記手順に瑕疵が含まれている可能性を否定はできません。ARRL発行の正式なLoTWシステム操作マニュアルは下記を参考にしてください。(申請後に発見しました・・・)

DXCCアカウントの状況確認

LoTWの(1)[Awards]ボタンからアワード選択画面に入ります。

アワード選択メニューの一番上にLoTW ARRL DXCC Acountがあります。Acountに(s)が付いているのは、コールサイン違いなど複数のアカウントを持てるためのようですが、当局には1つのアカウントしかありません。そのアカウントが既に選択済みになっています。アカウント名は自由に変更できるようですが、ディフォルトはコールサインとエンティティ名の組み合わせです。(2)[Select DXCC Award Acount]ボタンをクリックすると、Award Account Menue画面が開きます。

初期画面はAccount Status画面です。左列のメニューから[Select DXCC Award Account]ボタンをクリックすると、Account Status画面は何時でも開くことができます。

「New LoTW QSLs」列の「Mixed」行が100に到達していますので、DXCC(Mixed 100)の申請に進みます。左のメニューボタンの中の[Application]ボタンをクリックして、以後は「進む」、「進む」、・・・で各申請画面に必要事項を入力して画面を進めていきます。

DXCC申請 - Part 1

最初の画面ではDXCC Creditの対象になるQSOを選択します。「Credit」はクレジットカードなどのカタカナ英語になっていることもあり、この文脈で上手く訳すのは難しいのですが、「DXCCに有効な交信単位」といった感じでしょうか。例えば、JAの100局と交信しても「DXCCに有効な交信単位」は1です。最初の局とのQSOを「Credit」=「DXCCに有効な交信単位」として申請すると、残りの99局のQSO記録はDXCC申請に有効ではなくなります。(バンドやモードが異なれば限定特記賞の対象に成り得るかもしれません。)

後述するように「Credit」単位で課金されるため、費用を抑えるためには今回の申請対象である「Mixed」列に「X」が付いたQSOのみを選択すれば良いのですが、「Check all」をクリックしてしまいした。次の画面に進みます。

DXCC申請 - Part 2

この「LoTW ARRL DXCC Acount」を「DXCC record」と紐づけします。

このページは最も難解でした。以下の剣呑なメッセージが書かれています。

This award acoount is not linked to a DXCC record. If you have a DXCC record, you must link it before making an application. If you do not, your application will be rejected.

和訳は次のような感じでしょうか。

このアワード・アカウントはDXCCレコードにリンクされていません。DXCCレコードをお持ちの場合は、申請前にリンクする必要があります。リンクされていない場合、申請は却下されます。

ここで「DXCC record」とは上記のQSO選択記録のことではないのかと、間違った疑問が沸き上がります。CQ誌2024年11月号の記事「From USA」にヒントがありました。記事では、LoTWシステムとは別のDXCCオンライン申請システムについて言及されています。記事を参考に、「LoTW ARRL DXCC Acount」と「DXCC record」の関係を下図のように別サーバで管理されている別物であると考えると、「link it」の意味を捉え易くなります。

つまり、「DXCC record」はLoTWシステムではなく、DXCCオンライン申請システムで管理されている申請承認記録と考えると腑に落ちます。LoTWシステムが公開される前には、紙QSLカードのチェックのみでDXCCの申請が管理されていたはずです。前述の[Account Status]画面において、QSL数がCredit数に遷移していく状況も、LoTWシステムからDXCCオンライン申請システムにデータが移っていく状況と捉えれば明解です。
申請が却下されるのは、既にDXCCレコードを持っているにもかかわらず紐づけをしない場合なので、新規申請時はスルーして良いはずです。新規申請時は「DXCC record」がDXCCオンライン申請システム上に新規作成されることになると推測します。新規申請時のことをもう少し詳しく書いておいてくれると安心なのですが。なお、後で調べると「Name」欄に名前を入力するのが正解のようですが、「link it」に気を取られて未入力のままで「Continue」ボタンをクリックしたところ、警告もなく次のページに進んでしまいました。

DXCC申請 - Part 3

この画面では、Part 1で選択したQSO群が「DXCC record」の「Credits」に加算される予定数が表示されます。新規申請であるため、申請QSO数が「Credits」に移るだけです。

この表で重要なのは「Award Action」列です。Mixedが100 Creditsになるため「☑ Apply for award」チェックボックスが表示されています。100 Creditsに到達したことを記念するAward申請であるため、忘れずにチェックします。他のモードとバンドのCreditsは「DXCC record」に加算されるだけです。Awardの請求費用は$12と送料であることが注記されていますが、後述するようにこれが総費用ではありません。

この表の下に住所等を入力する欄があるため入力し、次の画面に進みます。

DXCC申請 - Part 4

ここに至って総費用が表示されます。下記が2024年11月時点の総費用です。

上から申請料、アワード発行料、送料、クレジット伝票発行料、LoTW Credits購入料が並びます。この中で、LoTW Credits購入料は305 Creditsの購入対価となっているため、最少100 Creditsの購入対価に節約できる部分です。何れにせよ、円安効果もあり、結構なお値段となっています。
無料との幻想を抱いていたLoTW利用料は、一般ユーザに対しては主にこの段階で回収されるのだと思います。LoTW利用の入口が無料なのは、利用ユーザの便益を最大化する「ネットワークの外部性」(LoTWの利用者が増えることで、LoTW利用者全体の利益や利便性が向上していく経済的特性)を推進するためだったのですね。そのおかげで、LoTWだけでDXCC(Mixed 100)を達成できたことは確かです。

閑話休題、この明細画面の下に支払方法の入力欄があります。PyPalは選択できないため、日本からはクレジットカード払いを選択することになると思います。

これで申請入力は終了です。申請送付ボタンをクリックします。申請完了の画面に申請データの詳細が表示されます。

DXCC申請履歴の確認

左のメニューボタンの中の[Application History]ボタンをクリックすると、申請履歴から処理の状況を確認できます。

以前(障害発生前)は数日で処理されたような記述も見かけましたが、障害発生中に多くの申請仕掛が発生したものと推測されます。未だ「送付」の状態から動きません・・・。

現在の[Account Status]を確認すると、申請したQSL群が「LoTW QSLs in Process」列に移動し、「New LoTW QSLs」列には新たなQSLの蓄積が始まっています。

CWのQSLは80まで伸長し、DXCC(CW 100)までは残り20エンティティです。

室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(6)

DXCC カウントアップ

DXCC 103 : 3D2V – Rotuma LoTW コンファーム

前回報告した3D2V(ロツマ島)のQSLカードをOQRSにてリクエストしたところ、いち早くLoTWでコンファームされました。これで、DXCCは103(LoTW:98 + Card:5)にカウントアップしました。

3D2VはFT8のコールサインです。CWのコールサインは別立ての3D22ですが、3D2VのOQRS画面に3D22交信分のレコード照合欄も出てきました。入力しましたが、3D22のLoTWコンファームはできていません。ログシールに両方とも記載されるかどうかも特段のアナウンスはされていませんので、カードが届いてみないと3D22のコンファームが同時にされるかどうかは分からない状況です。

DXCC 104 : ZL7IO – Chatham Islands LoTW コンファーム

こちらも前回報告したZL7(チャタム諸島)がLoTWでコンファームされました。DXCCは104(LoTW:99 + Card:5)にカウントアップしました。これで、LoTWのみのDXCC100も大手です。

DXCC 105 : LZ3CB – BULGARIA LoTW コンファーム

9/30のブログ(室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(2) - 非職業的技師の覚え書き)で次のように報告しました。

次の課題はEU ブルガリアです。こちらは3局と計5回(CW:5回)交信済みですが、同じくコンファームできていません。最初に交信した局にSASEを送付しましたが、半年後も未着です。行方不明になってしまったのかな・・・。今は、コンファームしてくれそうなブルガリア局をFT8で探しています。

それ以来、FT8で強い信号のブルガリア局を見つける度にコールしましたが、何故かコールバックは帰ってきませんでした。しかし、1か月後の11月に至ってようやく、17m FT8にてLZ3CB局からコールバックが返ってきました。SNRは his/my = +13/-24dB でした。彼我の差は37dBで、室内LW×10Wの信号はFT8の最小限界感度でブルガリアに届いていました。この日は何かのコンテスト開催の関係か、バンド内が比較的空いていてQRMが無かったために-24dBでも交信できたのではないかと推測しています。

LZ3CB局のQTHを調べたところ、黒海沿岸のブルガスでした。地図を拡大すると、ブルガスの日本方面は黒海に面し、背面にはブルガス湖を背負っています。この水面との位置関係が電波伝搬に有利に働いているのかもしれません。

これで、DXCCは105(LoTW:100 + Card:5)にカウントアップしました。カードチェック無しのLoTWシステム上のオンライン処理だけでDXCCを申請できることになりました。(別途報告)

DXCC 106 : 7Q6UJ – Malawi LoTW コンファーム

FT8で頻繁に見えるけれどもコールバックが返ってこない7Q6UJ(マラウイ共和国)とようやく15m FT8で交信できました。上記ブルガリアと夜間に交信した翌朝のことです。SNRは his/my = +05/-14dB でした。彼我の差は19dBですが、室内LW×10Wの信号は十分な強度でマラウイに届いていました。今まで交信できなかったのは、パイルによるQRMが主な理由と考えています。

OQRSリクエストを出して直ぐにLoTWでコンファームされました。これで、DXCCは106(LoTW:101 + Card:5)にカウントアップしました。

マラウイはアフリカ大陸南東部のタンザニア、ザンビア、モザンビークに囲まれた内陸国です。アフリカの島嶼部もしくは沿岸国とは室内LW×10Wでも交信できていましたが、内陸国との交信はこれが初めてです。マラウイは内陸国ですが、日本方面には細長いマラウイ湖があります。上記ブルガスほどではありませんが、この水面との位置関係が電波伝搬に有利に働いているかもしれません。

マラウイから17歳のOpが精力的にQRVしているということで、当局も免許取りたての中学生の時には精力的にQRVしていたことを思い出しました。

DXCC 107 : HI3K - Dominican Republic LoTW コンファーム

FT8のレア局がクラスターに載っていても、SNRがマイナス一桁以上で室内LWに入感していないと10Wの信号は届かないことが多いため、クラスターに頼らずにデコードリストの信号強度を目でウォッチしています。一方、FT4はコンディション次第なため、クラスターを参考にしています。なお、FT4にレア局が出ている時のコンディションはEスポに似ており、室内LW×10Wでも十分に勝算ありです。

HI3K(ドミニカ共和国)もクラスターで見つけ、17m FT4で交信できました。SNRは his/my = +07/-15dB でした。週末翌週の月曜日に直ぐにLoTWでコンファームでき、DXCCは107(LoTW:102 + Card:5)にカウントアップしました。

ドミニカ共和国は、カリブ海のキューバとプエルトリコに挟まれたイスパニョーラ島にあり、同島を東西に分かつ西側のハイチと国境を接しています。なお、J7(ドミニカ国)と混同しないように、「ドミニカ共和国」は正式名称で呼ぶ必要があります。

HI3KはLoma Del Toro DX Clubの会長とのことで、Loma Del Toro丘陵のコンテストシャックからの運用と当初は考えていました。丘陵地にタワーが林立しており、室内LW×10Wからの微弱信号を拾ってくれそうです。

しかし、LoTWにはIOTA NA-122(Dominican Republic's Coastal Islands:ドミニカ共和国沿岸島嶼)が記載されていました。Loma Del Toro丘陵があるイスパニョーラ島はIOTA NA-096とのことです。HI3KのQRZ.comでも確かにIOTA NA-096と記載されています。検索しても、近々のIOTA NA-122 peditionの情報はありません。真偽は?

DX日乗

C21MM - Nauru OQRS

前回、進捗を報告したナウルのDXpeditionが終了し、OQRSでQSLをリクエストしました。最終結果は以下の通りです。

FT8のバンドスロットは20mと40mが前回報告より増えました。室内LWが苦手な40mのSNRは his/my = +00/-22dB で困難な交信でした。FT8の標準周波数でCQを出し、パイルが始まるとDXpedition用の周波数に遷移し、パイルが掃けると標準周波数に戻るスタイルで運用していました。一度、標準周波数における運用中にコールバックがありレポートを返送したのですが、パイルが始まりQRMで当局の-22dBの信号を受信できないと考えたのか、DXpedition用の周波数に遷移してしまいました。そのメッセージに気付くのが遅れたのと、DXpedition用の周波数でDFをどう設定すべきか迷っているうちに時間が経過し、プチパイルが掃けたと同時にC21MMは標準周波数に戻ってしまいました。再起を期して標準周波数でコールを繰り返すうちに、またプチパイルができたことによりC21MMはDXpedition用の周波数に遷移してしまいました。そこで諦めずに追いかけてコールを繰り返すと、QRMがなくなったプチパイルの最後にコールバックがあり、今度はRR73まで到達しました。標準周波数とDXpedition用周波数を行ったり来たりする運用は初めて見ました。一般的運用法ではないと思いますが、文字数を限定したFT8の略記メッセージに気付けるかどうかが勝敗の分かれ目です。

一方、CWのバンドスロットは10mと15mが前回報告より増えました。30mは再起を期してチャレンジしましたが届かず、残念ながらコールバックを取り損ねたNILのままに終わりました。綺麗にスロットを埋めることはできませんでしたが、室内LW×10WでもオセアニアのDXpeditionであればスロット埋めにチャレンジできることは証明できたかと思います。

ところで、このナウルDXpeditionのワッペンには鳥と重機が描かれています。異種取り合わせですが、ナウルを象徴しているはずです。国鳥かと思い検索すると、下記の本がヒットしました。

鳥は予想に反して(絵柄に反して)海鳥のようです。その糞が化石化してリン鉱石(肥料の原料)ができ、そのリン鉱石の採掘と輸出がナウルの基幹産業になっているそうです。重機は鉱山機械だったわけですね。そのリン鉱石も無尽蔵ではないため、枯渇が心配されているそうです。国名すら知らなかったナウルに関する知識が、交信を機会に少しだけ増えました。

VK9CV - Cocos (Keeling) Islands

「ココス(キーリング)諸島」のDXpeditionは昨秋もありましたが交信できませんでした。昨秋のDXpeditionは2名のチームでしたが、今秋は大規模チームでしたので交信の機会はあると期待しました。

「ココス島」で検索するとグアムの島がヒットしてしまいます。Islandsですから「ココス諸島」で検索する必要があります。「ココス」という名称はココヤシに由来するため同名の島が他にもあるらしく、区別する意味で別名「キーリング」がわざわざ付いているようです。

オーストラリア領ですが、太平洋の島ではなくインド洋の島です。通常の地図で見るとインドネシアより少し遠い程度に見えますが、大圏地図で見るとシドニーと同程度の距離と思います。FT8なら射程圏内であり、コンディションが良ければ室内LW×10WでもCWで交信可能との予想で臨みました。

期間は約2週間だったため、使える週末は2回しかありません。そこで、室内LW×10Wでは無謀ですが、DXpedition開始直後からパイルに参戦しました。結果は以下の通りとなりました。

初戦は10m FT8からでした。40分粘りました。下記スクリーンショットから分かるように、室内LWから見えるJAのパイルは小さいのですが、インド洋ということもあり見えないEUと競合していました。JA局の隙間に位置取るだけではEU局の隙間にいるか分からないため、定期的に位置取りを変えて40分呼び続けました。届いていないかも?と諦めかけた時にコールバックがありました。VK9CVは6ストリームで運用していたため、SNRは his/my = -09/-13dB でした。信号自体は必要な強度で届いていたことが分かります。ただ、EU(SNRはマイナス一桁以上)のパイルに打ち勝つだけの十分な信号強度が無かったために、位置取りが重要だったということになります。

この後、下のバンドにもVK9CVがFT8でQRVしていたため、12m、15m、17mと順番にコールしていきました。12mはJAのプチパイルしかありませんでしたが、15mはEUと競合し、17mはEUおよびASと競合しました。それでもコツ?をつかめたのか、下のバンドは何れも数分以内に交信でき、一夜の一時間少々で4バンドのスロットが埋まりました。20m FT8は翌週に交信できました。

一方、CWは12mから始めました。室内LWにもRST=559~579で強力に入感していたため交信できると思ったのですが、10mと12mは一向に届きませんでした。15mと20mはそれより弱い入感でしたが、翌日と翌週に交信できました。17m CWもチャレンジしましたが、さらに弱い信号だったため、間違ったコールバックを空耳スルーしてしまったらしく、交信は不成立となりました。

ワッペンの図柄は、島名の由来になったココヤシの木、スパイダービームアンテナ、そしてヘッドセットを付けた蟹です。交信できなかった昨秋のDXpeditionのQSLカードにも蟹の写真が使われており、蟹が「ココス諸島」を象徴しているようです。調べてみると、クリスマスアカガニであることが分かりました。

近隣にあるクリスマス島の名前が付いていますが、クリスマス島とココス諸島の固有種とのこと。各DXpedition局はワッペンのデザインに趣向を凝らしていることから、交信先の象徴的事象を知ることができます。

4U1A - Austria (The Vienna International Center)

稀に室内LWに入感するも届かなかった4U1Aとようやく15m FT8で交信できました。SNRは his/my = +00/-17dB でした。

4U1Aはウィーン国際センター(国連事務所)内にあるアマチュア無線クラブ局(ARCDXC:AMATEUR RADIO CONTEST DX CLUB)とのこと。

「4U」は国連機関のプリフィックスです。国連の「Capitals」は3つあり、それぞれにアマチュア無線局が設置されています。Geneva(4U1ITU)、New York(4U1UN)、Vienna(4U1A)です。この中でエンティティとして認められているのは4U_ITU(国際電気通信連合本部)と4U_UN(国際連合本部)の2つだけです。

これに対して、「ウィーン国際センターは治外法権区域であり、オーストリア法の管轄外である」のに、4U1Aのエンティティがオーストリアになっていることに議論があるようです。

4U1Aは独立エンティティをリクエストし、DXAC(ARRL)がリジェクトしている状況のようです。折衷案として、4U1Aを4U_ITUに属させる案もあるようです。もしかしたら、将来4U1Aのエンティティが変わる可能性もあるため、4U1Aとオーストリア局の両方と交信しておいた方が良いようです。

Z33Z - North Macedonia

Z33Z(北マケドニア)と20m FT8でようやく交信できました。左右対称の珍しいコールサインです。コールサインを自由に選べるということは、アマチュア無線局数が少なく、交信の難易度が高いことを意味していると推測します。SNRは his/my = -09/-21dB で、レポートの再送が必要な危うい交信でした。南はギリシャ、東はブルガリアと、四方を他国に囲まれた内陸国であることが影響しているかもしれません。

残念ながらLoTWによるコンファームには対応していないようです。SASE送付が必要ですが、郵便事情が良くないためギリシャのマネージャ?に送るよう指示が載っていました。

LX1RFJ - Luxembourg

こちらも稀に室内LWに入感するもなかなか届かなかったLX1RFJ(ルクセンブルク)と15m FT8で交信できました。SNRは his/my = -19/-17dB で珍しくイーブンでした。マイナス2桁のSNRのEU局をコールしても、室内LW×10Wで交信できる確率は限りなく低いのが実情です。失念しましたが、おそらくコールを続けているうちにコンディションが低下したものと思います。RR73を受信した時には、his = -24dBの限界感度でした。

ルクセンブルクも、フランス、ベルギー、ドイツに囲まれた内陸国です。学校で習った「ベネルクス3国」(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)を思い出しました。

eQSL.ccによる電子QSLは直ぐに発行してくれましたが、LoTWによるコンファームには対応していないようです。BUROもしくはSASEによる紙カード交換が必要です。

EA8BS - Canary Islands

稀にFT8で入感していたEA8BS(カナリア諸島)と17m FT4で交信できました。SNRは his/my = +02/-14dB でした。FT4で交信できるぐらいなので、その日はカナリア諸島とのパスが開けていたようです。

現地で情報交換があったのかもしれませんが、カナリア諸島の別の局も17m FT4でCQのコールを始めました。信号強度はさらに強く、一度にカナリア諸島2局と交信できるとは凄い僥倖だと思ったのですが、その局とはつながりませんでした。JA他局との打率も低いようでした。理由は不明ですが、交信できたEA8BS局は島のJA側で、交信できなかった別の局は島の反対側であることは確認できました。しかし、信号強度はより強かったため、中央の火山が障壁になったとも考えられません。

eQSL.ccによる電子QSLは直ぐに発行してくれましたが、LoTWによるコンファームはまだありません。QRZ.comにQSLは「EQSL.CC OR LoTW」と案内がありますが、「OR」の意味が微妙です。相手の立場なら「どちらかでコンファームする」の意味になり、こちらの立場に向けてなら「(両方アップするので少なくとも)どちらかでコンファームできるはず」の意味になるように思います。どちらでしょうか・・・? SASEは受け付けていないようなので、メールで問い合わせることになるかもしれません。
*** 追伸 ***
半月後にLoTWでもコンファームできました。「OR」の意味は後者でした。ありがとうございます。

カナリア諸島は、大西洋モロッコ沖のアフリカ大陸に属するスペイン領の群島です。

2つの島の山の上には望遠鏡があり、天文関係のテレビ番組で時々登場します。「遊星人の海外研究記 その7 〜カナリア諸島にて,島から島へ〜」を読むと日本の研究者も滞在しているようです。

カナリア諸島(EA8)、カーボベルデ(D4)、マデイラ諸島(CT9)、アゾレス諸島(CU)からなる地域を通称マカロネシアと呼んでいるそうです。まだ、カーボベルデ(D4)とアゾレス諸島(CU)が残っています。アゾレス諸島(CU)はFT8で見たことがあります。何時か交信できるでしょうか・・・。

 

室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(5)

DXCC カウントアップ

DXCC 102 : S. Cook Is. LoTW/QSL コンファーム

南クック諸島DXpedition E51EMEと6m FT8および10m FT4で交信できました。サフィックスが示すように、EME(Earth-Moon-Earth:月面反射通信)を目的に含めたDXpeditionとのことで、CWの運用はありませんでした。FT8の由来がEMEであることを思い出しました。EMEについては6mで 21 QSOs(全体 2,245 QSOs) を達成したとのことです。

6m FT8による交信のSNRは His/My = +06/-11dB でした。彼我の差は17dBです。E51EME局が使用したRigはIC-705で当局と同じですが、1kWの自作PAが付いている点が異なります。単純なパワー比は20dBに及びます。また、アンテナはEMEを目的にしているため2×5 ele スタックとのこと。ビームの方向にも依りますが、室内LWとは比べようのない利得があると思います。現地のノイズレベルが高いとの情報も特にはありません。設備の差から考えると、SNRの差17dBは小さ過ぎます。これが6m Eスポの醍醐味かと思います。開局当時、6mハンディ機は中学生の入門機として好適だったのですが、いつの間にか6mはHF Rigのおまけバンドになってしまった感があります。

一方、10m FT4による交信のSNRは His/My = +11/-18dB でした。コンディションが良かったためにFT4でランニングしていたと思いますが、彼我の差は29dBに及びます。RigはIC-705で同じです。PAは200Wで、アンテナはデルタループとのこと。パワー比は13dB程度と思いますが、アンテナの利得を考慮しても、SNRの差29dBは大き過ぎるように思います。コンディションの波に乗れない室内LW×10Wの悲哀を時々感じます。

8月下旬に6m FT8で交信した後、9月上旬にOQRSリクエストを出し、10月15日にQSLカードが届きました。しかし、OQRSリクエスト後の9月中旬に10m FT4でも交信できたため、LoTWのコンファームもリクエスト(ドネーション)することになりました。これで、LoTWのDXCCクレジットは97となり、紙QSLカードの5エンティティと合わせて102エンティティになりました。

QRZ.comのページに運用日記が公開されています。それによると、QSLカードは首都があるラロトンガ島内で限定100枚を印刷し、クック諸島の切手を貼ってクック諸島郵便局に投函したとのこと。ClubLog先着100人の後はニュージーランドに帰国してからの発送になるとのことでした。9/13~14の記述を引用します。

2024-09-13 and 2024-09-14:
CIPO(クック諸島郵便局)を訪れ、この島で印刷したQSLの限定ロット(100枚)を発送した。 CIPOで切手を買うのは本当に忍耐力が試される。ボブが警告していたように、彼らの「ルール」は本当にバザールなのだ! いずれにせよ、最終的にすべてのロットを投函できたので、OQRSを利用した多くの人たちは、遅かれ早かれ「紙」のカードを手にすることになる。封筒にはカラフルなクック諸島の切手が貼られている。
(https://www.qrz.com/db/E51EME)(訳責ブログ筆者)

9月上旬に早々とOQRSリクエストを出したことにより、現地の綺麗な切手も入手することができました。2枚の切手には「COOK ISLANDS」や「TOURISM」といった文言が見られ、クック諸島が観光立国であることを訴求しています。1枚はパドルボートの絵柄、もう1枚はショッピングの絵柄になっていました。

切手を発行していることから分かるようにクック諸島は国です。エンティティは北と南に分かれています。今回は南クック諸島との交信だったため、北クック諸島と交信してDXCCを積み増す余地があります。

クック諸島は立憲君主制国家ですが、ニュージーランドと自由連合形態を取っているとのことで、国家承認していない国が多いとのこと。日本は国家承認しています。

DX近況

3D22 & 3D2V – Rotuma

オセアニアのプリフィックス 3D2 には3つのエンティティがあります。フィジー、コンウェイ礁、ロツマ島です。プリフィックスが分かれていないということは、昔は1つのエンティティだたのでしょうか・・・?

この中で、フィジーおよびコンウェイ礁はCWで交信済みでした。ロツマ島でコンプリートするため、DXpeditionを心待ちにしていました。

結果を下記に示します。なんとか10m CWで交信でき、CWで3つのエンティティをコンプリートできました。

FT8は、IC-705/AH-705と室内LWがカバーするバンドの中で、80mと6mを除くバンドスロットを全て埋めることができました。室内LW×10Wでは稀有な例です。80mは戦力外ですが、最近コンディションが良い6mを逃したのが残念なぐらいです。ハイバンド(10m~20m)は短期間に矢継ぎ早に交信できましたが、ローバンド(30m、40m)は難しく時間がかかりました。なお、Dupeが多発しているように見えますが、ログの二重アップロードがあったようです。

彼我のSNRを下表にまとめます。ハイバンド側の10mから15mは、室内LW×10Wの当局の方が良いレポートを受け取っています。MSHVによる運用だったため、ストリーム数に応じて逆転現象が起こり得るということだと思います。40mのSNRはFT8の下限限界値(-24dB?)を超えていました。深夜でQRMが少なかったのかもしれません。

CWよりFT8の方が交信が容易という結果になりましたが、上記dx-world.netに以下の記述があり、FT8の交信の機会が多かったのも事実です。

  • Modes: FT8 priority; CW and SSB less important.

最近のDXpeditionの一般的傾向かと思います。そのため、CWのパイルがなかなか小さくならないことにより、室内LW×10WのCW局には順番が回ってこないというジレンマがありました。15m CWも交信のチャンスがあり参戦しましたが、順番が回ってきませんでした。

DXpeditionにおけるFT8の利点は、MSHVやS/Fモードで並列交信が可能な点だと思います。CWで同一バンドの並列交信を行うと、片方はパイレーツになってしまうか、混信を引き起こして潰し合う結果に終わりそうです。FT8の方が同じ遠征期間で交信達成数が増えることから、DXpeditionが「FT8 priority」に傾くことは致し方ないことと思います。呼ぶ側は2つのモードを楽しんで、技術の違いに思いを馳せるということでしょうか。

PX0FF – FERNANDO DE NORONHA

DXpedition開始当初は、15m FT8で良く見えていましたが、室内LW×10Wの信号は届きませんでした。JAがパイルで呼んでいる時にもCQを連発していたため、片パスだったように思います。

後半は、スペクトラム上でFT8の信号が見えているのにデコードしないという残念な結果になりました。理由は、同じ時期に耳で聞いたCWの信号にヒントが隠されているように思います。

CWの信号も耳でデコードできないのです。スポット情報を見るとLP(Long Pass)との注記があり合点しました。LP信号優勢とはいえ、SP(Short Pass)信号も届いていると思われます。位相の少しずれた信号を合成すると唸り(エコー)が発生します。指向性アンテナであれば、LP信号優勢時にSP信号を抑制できますが、室内LWには無理な相談です。

FT8も唸り信号から位相シフト情報を取り出すことは難しいと考えれば、信号が見えていてもデコードできない現象が発生しそうです。FT8の性能アップのためにエコーキャンセラーを実装してほしいところです。

C21MM – Nauru

ナウルにはFT8でアクティブな常駐局が存在するため、10m/12m/30m FT8は交信済みでしたが、CWは未交信でした。今回のDXpeditionによって、15m FT8のスロットを埋めると伴に、12m/17m CWで交信できました。

30m CWのスロットもLog-inしていますが、残念ながら当局のログではNILです。確かに30m CWのパイルにも参戦したため、コールバックをQSBで取りこぼしたのかもしれません。599 TUは自局のコールバックと間違えた別の局が代返してくれたのでしょうか・・・。まだDXpeditionが進行中のため、機会があれば復活戦を挑みたいと思います。

ZL7IO – Chatham Islands

ZL7 チャタム諸島はニュージーランドの東側に位置し、ニュージーランドの特別領とのこと。どこかで聞いた(見た)ことがあるエンティティ名と思いましたが、CQ誌2024年 1月号に「ZL7A ニュージーランド チャタム島へのDXバケーション」という題名の寄稿がカラーページに掲載されていました。

まず、12m FT8で交信できました。CWにも参戦しましたが、時間切れになってしまいました。まだ、始まったばかりのため、CWによる交信の機会も今後あるものと思います。

新着QSL

JT1A - Mongolia

FT8でも室内LW×10Wでモンゴルと交信するのは容易ではありません。空振りが続いた後に、FT8でもモンゴルの3局と何とか交信できました。しかし、何れの局ともLoTWでCFMできませんでした。そこで、JT1AにOQRSリクエストを出しました。

JT1Aはコンテスト用の短縮コールサインと思われます。ホームはUSA CAのバークレーで、QSLはバークレーから送られてきました。風にはためくモンゴルの国旗を図案にした綺麗なQSLカードでした。

IR9RDIO - Italy Sicily

ARI(Associazione Radioamatori Italiani)のSES局と年に1~2回交信する機会があります。単なる記念局運用ではなく、アワードプログラムを運用しています。

今回は、Centenary of Italian Radio Broadcasting(イタリア・ラジオ放送100周年)を記念したアワードプログラム対象のSES局と17m CWで交信できました。深夜に再送を繰り返し、何とか取ってもらえました。hamaward.cloudから高解像度の綺麗なeQSLカードをダウンロードできます。

イタリアはCWで交信済みですが、IOTAとしてのシチリア島(IOTA EU-025)とは初めての交信と思います。残念ながら、eQSLにIOTA No. は記載されていませんでした。

イタリアには2回訪問したことがあります。ボローニャとシチリアです。どちらも学会に絡んだ訪問であり、国際会議は風光明媚なところで開催される傾向があります。ボローニャ訪問については既に紹介しました。今回、シチリアと交信でき、人生の伏線をまた1本回収できました。

 

室内ロングワイヤーアンテナはDXCCの夢を見るか(4)

DXCC カウントアップ

DXCC 101 : Tanzania LoTW コンファーム

東アフリカのタンザニアDXpedition 5H1WX と17m FT8で交信できました。CWも聞こえたことがありましたが、パイルが大きく交信はできませんでした。数多くのモード×バンドのスロットの中で交信できたのは17m FT8だけですが、室内LW×10Wには貴重なアフリカのエンティティです。

交信の経緯は次の通りです。9月下旬の深夜に3B8(モーリシャス)が17mのFT8で見える日がありました。3B8とはCWで交信済みですが、FT8の力量を図るためにコールをしばらく続けました。しかし、やはり室内LW×10Wの設備にとってアフリカは遠く、FT8でも簡単には交信に至りませんでした。

3B8を諦めたところで、バンドスコープ上で17m FT8の常用周波数の左を見るとFT8のパイルが見えました。DXpeditionに違いないと思い、周波数を合わせると5H1WXのパイルが見え、ご本尊の強い信号も見えました。この日はアフリカ東側のインド洋とのパスが開けていたようです。

WSJT-Xのスクリーンショットは交信から約10分経過後に撮ったものです。そのため、画面が示すコンディションは交信時から変化しています。(当局が使用したDF=2600を別のJA局が使用中です。)

3コールでコールバックがありましたが、レポート送信に再送が必要でした。室内LW×10Wでは無限再送(ウオッチドックで止まります)に陥ることも多く心配になりましたが、2回目にRR73が返って来たため安堵しました。再送2回目にRR73が帰ってこないとQSBの谷が深く、無限再送に陥るケースが多くなります。FT8はパワーの違いが赤裸々になります。

EUの局は軒並み+dBのレポートをもらっており、こちらからは見えませんがEUの壁ができている様子が想像できます。幸運にもたまたま空き周波数で呼ぶことができたのかも知れません。(交信実績を見た別のJA局がDF=2600を使用中なのがそれを裏付けているように思います。)

交信時のSNRは His/My = -01/-16dB でした。室内LW×10Wの設備としては妥当な差であり、QRMやQSBが無ければ交信可能となる強度でタンザニアまで届いたようです。5H1WXは2~5ストリームのMSHVで運用していた模様で、当局の番では2ストリームで信号強度を上げて返してくれました。

5H1WXは、セレンゲティ国立公園等があるタンザニア内陸部ではなく、インド洋のマフィア島からのDXpeditionでした。剣呑な島名ですが、アラビア語もしくはスワヒリ語に由来しているとのことで、シチリア島を起源とすマフィアとは関連がないようです。

南極POTA

VKのPOTA局と交信ができたため、暫くしてからpota.appのMy LogbookでVKを検索したところ、当該VK局の他に以前報告した南極デイビス基地のVK0DSのログもアップされていて驚きました。

南極(AQ)では75のParkが登録されています。大多数のAQ Parkの名称には「Station」が含まれるため、基地は全てParkに登録されているのではないかと推測しています。8月の南極月間(自称)に交信した3つの基地もAQ Parkに登録されていました。

  • AQ-0035    Davis Antarctic Station
  • AQ-0048    Syowa Antarctic Station
  • AQ-0049    Progress Station Antarctic Station

残念ながら、昭和基地とプログレス基地のActivationログはゼロ件です。デイビス基地以外でActivationログのアップロード実績がある基地を以下に示します。

  • AQ-0036    Casey Station (ANARE) Antarctic Station
  • AQ-0052    Belgrano II Antarctic Station
  • AQ-0053    Carlini Antarctic Station
  • AQ-0064    Marambio Antarctic Station
  • AQ-0065    Esperanza Antarctic Station
  • AQ-0066    Orcadas Antarctic Station
  • AQ-0067    Decepción Antarctic Station
  • AQ-0069    Camara Antarctic Station
  • AQ-0070    Melchior Antarctic Station
  • AQ-0071    San Martín Antarctic Station
  • AQ-0072    Petrel Antarctic Station
  • AQ-0073    Matienzo Antarctic Station
  • AQ-0074    Primavera Antarctic Station

数は多いのですが、聞こえたことや見えたことはありません。度々FT8で見えるデイビス基地はPota Hunterには貴重な基地です。おかげさまで、POTA DX Hunterのバッジが10エンティティになりました。

蛇足

ドジャース対パドレスの試合を見ていたら、あるパドレスの選手の出身地が「オランダ領キュラソー」と表示されていました。キュラソーの局と交信したことがあるため、カリブ海の島ということはすぐに分かりましたが、野球が強いとは知りませんでした。

そういえば、ワールドベースボールクラシックにオランダが出場していたことを思い出しました。その時は、なぜEUで野球が・・・と思いましたが、キュラソーがオランダ王国の4つの構成国(地域)の1つと聞けば納得です。

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