スポンサードリンク
5088分割で部分駆動する直下型Mini-LEDバックライトを搭載し、最大輝度1400nits超のHDR表示やVRR同期機能に対応する、4K解像度かつ160Hzリフレッシュレートの27インチ量子ドットIPS液晶ゲーミングモニタ「Titan Army M27E6V-PRO」をレビューします。
Titan Army M27E6V-PRO レビュー目次
1.Titan Army M27E6V-PROの概要2.Titan Army M27E6V-PROの開封・付属品
3.Titan Army M27E6V-PROのモニタ本体
4.Titan Army M27E6V-PROのOSD操作・設定
・PIP/PBP機能について
5.Titan Army M27E6V-PROの発色・輝度・視野角
6.Titan Army M27E6V-PROの色精度・ガンマ・色温度
7.Titan Army M27E6V-PROのリフレッシュレート
8.Titan Army M27E6V-PROの応答速度・表示遅延
9.Titan Army M27E6V-PROの可変リフレッシュレート同期
10.Titan Army M27E6V-PROのHDR表示やCSゲーム機対応について
10.Titan Army M27E6V-PROのHDR性能やローカルディミングについて
11.Titan Army M27E6V-PROのレビューまとめ
製品公式ページ:https://www.links.co.jp/item/titan-army-m27e6v-pro/
【機材協力:Titan Army国内正規代理店 リンクスインターナショナル】
Titan Army M27E6V-PROの概要
Titan Army M27E6V-PROの開封・付属品
まずは「Titan Army M27E6V-PRO」を開封していきます。「Titan Army M27E6V-PRO」はパッケージサイズが幅88cm×高さ46cm×厚み18cmで、27インチモニタが入っている箱としては横幅がかなり大きめです。重量は約10kg程度ありますが天面に持ち手があるので、成人男性なら問題なく持ち運べると思います。
各種付属品はスペーサーに蓋もなく収められているので、保護スペーサーをパッケージから取り出す際は、付属品が脱落しないように、付属品のある面が上になるように確認してから引き出してください。
「Titan Army M27E6V-PRO」は99% DCI-P3、99% AdobeRGBの非常に広い色域がアピールポイントの1つということもありΔE<1の色精度を証明する、メーカーによるカラーキャリブレーションレポートが同封されています。
「Titan Army M27E6V-PRO」の付属品を簡単にチェックしておくと、DisplayPortケーブル、USBアップストリームケーブル、ACアダプタ&ACケーブル、VESAマウント用スタンドオフが付属します。(貸出サンプル機では一部欠品ですが市販品には全て付属します。)
各種ケーブルを個別に購入する場合のオススメ製品も紹介しておきます。
視覚損失のない非可逆圧縮機能DSCに対応するDisplayPort1.4ケーブルなら「サンワサプライ KC-DP14シリーズ」を推奨しています。
標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。「Titan Army M27E6V-PRO」で正常動作も確認済みです。
HDMI2.1ケーブルについては「エレコム ウルトラハイスピードHDMIケーブル スリム CAC-HD21ESシリーズ」がおすすめです。標準で付属するケーブルよりもケーブル径が細くて取り回しが良いので管理人も個人的に使用しており、おすすめのケーブルです。
同製品は4.5mm径のスリムケーブルながら、HDMI2.1の正常動作を証明するUltra High Speed HDMIケーブル認証を取得しており、安心して使用できます。
当サイトでもGeForce RTX 40シリーズGPU搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
その他にもケーブル径5.0mm以下でスリムな48Gbps対応HDMI2.1ケーブルについてまとめた記事も公開しているので、こちらも参考にしてみてください。
長さ5m以上でも安定した動作が期待できる光ファイバー式HDMI2.1ケーブルでイチオシは、「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」です。
「Cable Matters Active 8K HDMI Fiber Optic Cable」は、HDMI協会の公式認証であるUltra High Speed HDMI認証を取得、さらにXbox Series X/S互換製品認証も取得しており、ケーブル性能の保証としては隙の無いカンペキな製品です。
5mが7000円、10mが10000円で光ファイバー式HDMIケーブルとしては標準的なお値段で、 信頼性の高さも考慮したらかなりリーズナブルだと思います。
当サイトでもGeForce RTX 40シリーズGPU搭載PC、PlayStation 5、Xbox Series X/Sで正常動作を確認しています。
「Titan Army M27E6V-PRO」に付属するACアダプタのコンセントケーブル側端子はミッキー型と呼ばれることの多い3PIN端子です。
「Titan Army M27E6V-PRO」に付属するモニタスタンドはフレームとフットプレートの2つの部品で構成されています。
メインフレーム端にフットプレートを挿入して、底面のネジを締めるだけで簡単にモニタスタンドを組み立てられます。ネジにはレバーが付いているのでドライバー不要で組み立てが可能です。
モニタスタンドを組み立てたら、モニタ本体背面の溝に斜め下の方向からモニタスタンドを差し込めば取り付け完了です。
モニタ側の根本にあるスイッチを押下するとモニタスタンドのロックが解除されます。モニタスタンドを装着した時と逆に手前方向に斜め上へ引き上げればモニタスタンドが取り外し可能です。
Titan Army M27E6V-PROのモニタ本体
続いて「Titan Army M27E6V-PRO」のモニタ本体をチェックしていきます。「Titan Army M27E6V-PRO」は概ねフレームレス構造ですが、フレーム内パネル上には非表示領域があり、上左右の非表示領域の幅は10mm程度です。下側にはスピーカー内蔵で厚めのフレームがあり、幅は25mm程度です。
ディスプレイ下端は金属ではなくファブリック素材のメッシュカバーが装着されていて、シックで落ち着いた印象です。
「Titan Army M27E6V-PRO」のディスプレイ下端にあるメッシュカバー部分には、5W×2の中高音域用ステレオスピーカーと、12Wの低音域用サブウーファーという構成で2.1ch内蔵スピーカーを搭載しています。
内蔵スピーカーの音質についてはPCモニタ搭載としては普通ですが、サブウーファーがあまり良くないのか低音が若干ノイジーに感じました。音質を求めるなら別途、スピーカーは専用で用意したほうがいいと思います。
「Titan Army M27E6V-PRO」に標準搭載のスピーカーは、イコライザ設定として標準/ゲーム/会議の3種類が用意されており、用途に合わせて音質を選択できます。
「Titan Army M27E6V-PRO」はイヤホン&マイク用4極3.5mmジャックも搭載されており、イヤホン・ヘッドホンを接続すると、モニタ側の音声出力機器は自動的にイヤホンに切り替わります。
ただ、イヤホンを繋いだ状態ではモニタ搭載スピーカーからは一切音を出せなくなるので、ここはOSD設定から選択できるようにして欲しかったところ。
イヤホンから音声出力をする時もスピーカー同様にイコライザ機能があり、オリジナルサウンド(イコライザオフ)、ゲーム、ゲームのカスタマイズ、音楽の4種類から選択できます。
またイヤホン&マイク用4極3.5mmジャックに接続した機器が、カナル型イヤホン(Ear-Buds)、インナーイヤー型イヤホン(非カナル型イヤホン、On-Ear)、ヘッドホン(Over-Ear)なのかも選択でき、機器に最適化して音声出力をしてくれます。
またスピーカー同じくモニタ下端のメッシュフレーム内にはステレオマイクも内蔵されています。
USBアップストリームケーブルを接続しているPCやUSB Type-Cケーブルでビデオ出力をしている機器でUSBマイクとして使用できます。あとUBS DACにもなっていてPCからはUSB経由で音声出力も可能です。
「Titan Army M27E6V-PRO」の内蔵マイクは用途に合わせたノイズキャンセリングやイコライザの機能も使用できます。マイクモードの設定から、原音をそのまま出力するオリジナルサウンドに加えて、会議やゲームを選択できます。
「Titan Army M27E6V-PRO」の3.5mmジャックはマイク対応の4極タイプなので、マイク機能のある4極ヘッドセットを接続した場合、備え付けマイクの代わりにヘッドセット側のマイクを入力機器として使用できます。
イヤホン・ヘッドホンの音声出力自体は挿した瞬間に切り替わり、音が出るのですが、マイクはモニタ電源を一度入れ直さないと認識されないようなので注意してください。
あとイヤホンマイクを使用時でも、マイクモードの設定を変更できますが、イヤホンマイクにはノイズキャンセリングやイコライザは反映されないようです。
またOSD設定においてオーディオミックス機能をオンにすると、DisplayPort/HDMI経由でモニタに出力される音声と、モニタ内蔵マイク/イヤホンマイクのマイク音声をミックスして、USBマイク出力に出すことができます。
マイナーメーカー製のモニタは背面カバーのデザインや質感が安っぽくなりがちですが、「Titan Army M27E6V-PRO」はシルキーで滑らかな表面加工、少しグレーがかったホワイトで清潔感があり、大手メーカーのクリエイター向けモニタと言われても通用する感じです。
最大輝度1000nitのMini LEDバックライトを採用しているので背面カバーには放熱用のエアスリットも広範囲で設けられていますが、それも背面デザインの一部として違和感がありません。
「ARCHISS AS-MC34MWQ165A」のモニタスタンドはモニタ本体背面と同系色の少しグレーがかったホワイトカラーを基調としていて、湾曲したディスプレイパネル本体とも調和する曲面デザインです。
ただアルミニウムにメタリック塗装なので安っぽいわけではないものの、全体的にホワイト基調のクリエイター向けデザインに対して、ヘッドホンホルダーとケーブルホルダーだけメタリックレッドに塗装されていてゲーミング感があるのが少々違和感です。濃いめのグレーかブルーのほうがクリエイター向けデザインとして調和した気がします。
モニタスタンドの頂点付近には折りたたみ式のヘッドホンホルダーがあります。
「Titan Army M27E6V-PRO」はモニタ背面、エアスリットに並んで縦に2列のLEDイルミネーションを搭載しています。ARGBタイプなのでオーロラ状に七色に変化する発光パターンにも対応しています。
LEDイルミネーションの発光カラーや発光パターンはOSD設定メニューから設定が可能です。
LEDイルミネーションに関するOSD設定の位置が微妙に分かり難く、トップ9項目のうち、eスポーツ設定のところは全てLEDイルミネーションの設定です。
固定モデル-ブリーズ-カラフルが初期設定の発光パターンになっていて七色に変化します。常時明るいは固定カラー、ブリーズはゆっくり明滅、フリッカーは点滅という感じです。背景フローは前景色と背景色で色が移り変わります。
上記のある種静的な発光パターンに加えて、オーディオリズムではレベルメーター的に音声出力の音量に合わせて左右のLEDバーの点灯・消灯が上下へ動的に変化します。ピクチャーリズムは表示内容に合わせて発光カラーが変化します。
音響光学律動は点灯・消灯はオーディオリズム、各アドレスの発光カラーはピクチャーリズムという2種類の組み合わせです。
輝度でオフを選べば背面のLEDイルミネーションは完全に消灯させることも可能です。
モニタスタンドにはケーブルホルダーも付いているので、各種ケーブルを綺麗にまとめて配線できます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のモニタ本体の厚さは最厚部で80mm最近の液晶モニタとしては大きめですが、端の最薄部で20mm程度なので実用体感的には厚みは感じないと思います。モニタ本体重量は5.1kg程度と比較的に大きいのでモニタアームを使用する場合は耐荷重に注意が必要です。
「Titan Army M27E6V-PRO」の背面には垂直に後方へ各種I/Oポートが実装されています。
右から順番に、ダウンストリームUSB3.0端子×2、アップストリームUSB3.0端子、1基のHDMI2.1、12基のDisplayPort1.4、1基のUSB Type-C(DP1.4相当のDisplayPort Alternate Mode)、イヤホン&マイク用4極3.5mmヘッドホンジャック、DC端子が設置されています。
「Titan Army M27E6V-PRO」のビデオ入力選択には自動切り替えの機能もありますが、手動選択に加えて自動切り替え機能をON/OFFするという形ではなく、完全に自動切り替え任せにするか、手動選択かのどちらかという実装です。
「Titan Army M27E6V-PRO」のUSB Type-Cビデオ入力はUSB Power Delivery規格による最大90Wの給電にも対応しています。
90Wなど大電力による充電に対応した機器を所有していないので、Surface Pro 7+での検証となりますが、USB Type-Cケーブルで4K/160Hzのビデオ出力を行いつつ、20V電圧で20~30Wの充電が行えることも確認できました。HDR表示の場合は20V給電はできず、15V給電になり、最大出力は45Wに制限されます。
モニタに実装された2基のUSB3.0ポートの接続先はUSBアップストリームケーブルとUSB Type-Cビデオ入力から選択でき、OSD設定メニューで指定できます。
USB Type-CはDisplayPort Alternate Modeを無効化できるので、他ビデオ入力に接続している機器のアップストリーム端子としても使用できます。
またモニタがスリープ状態の時にもUSBハブ端子へ常にモニタから電力供給を行うかどうかも指定できます。
「Titan Army M27E6V-PRO」の付属モニタスタンドの左右スイーベルの可動域は左右25度(50度)に対応しています。
「Titan Army M27E6V-PRO」の付属モニタスタンドの上下チルトの可動域は仕様通り下に5度、上に20度となっています。
モニタの高さはモニタ本体とスタンドの付け根部分が上下に動く構造になっており、全高で445mm〜565mmの範囲内で調整できます。
「Titan Army M27E6V-PRO」の付属モニタスタンドはピボットに対応しており、縦向きにして使用できます。付属スタンドは時計回りと反時計回りのどちらにも回転可能です。
「Titan Army M27E6V-PRO」はVESA100x100規格のVESAマウントに対応しておりサードパーティ製のモニターアームを使用できます。モニタ単体の重量も5.1kgほどなのでモニターアームを問題なく利用可能です。
「Titan Army M27E6V-PRO」のVESAネジ穴は背面外装から10mmほど窪んだ場所にありますが、スタンドオフが付属するので、クイックリリースでスライドさせるタイプのモニターアームも問題なく使用できます。
オススメのモニターアームや調整機能が豊富なVESA汎用モニタースタンド、VESAマウントの干渉を避ける方法についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。
Titan Army M27E6V-PROのOSD操作・設定
「Titan Army M27E6V-PRO」のOSD操作はモニタ底面の右下に設置されている操作スティックを使用します。操作スティックは上下左右、押下の5種類の操作が可能です。従来のTitan Army(INNOCN)系列のモニタは下端に実装された複数の押下式ボタンで操作する構造になっていて、ボタンが小さいので押下し難い、形状が同じなので間違いやすい(電源ボタンが並んでいて誤押下しやすい)、などの不満点も多く、ユーザーフレンドリーとは言い難い仕様でしたが、「Titan Army M27E6V-PRO」はその点が大幅に改善されています。
操作スティックには電源LEDインジケーターが内蔵されていて標準では紫色に点灯します。
設定の場所が分かり難いですが、システム設定 - 省エネ設定の順番にアクセスすると、電源LEDの項目が現れます。完全に消灯するオフに加えて、明るさを3段階で調整できます。
上記の電源LED設定をオフにするだけだと、ビデオ入力がない等、モニタがスリープ状態になった時に電源LEDが1秒間隔で点滅します。
モニタのスリープ状態における電源LEDの点滅も無効にしたい場合は、下に並んでいる省エネをオフからレベル1に変更してください。
省エネの設定値をレベル1にした場合、スリープ時の電源LEDが無効化されるだけですが、レベル2にするとスリープ状態から10分経過後にモニタ電源が完全にOffになります。スリープ状態ではビデオ入力が検出されると自動でモニタが復帰しますが、電源オフでは電源ボタンを押して手動で再起動が必要になります。
あと、「Titan Army M27E6V-PRO」は電源オン・オフ時にスプラッシュ音、OSD操作で効果音が鳴ります。
日本語訳が変で分かり難いですが、オーディオ設定の中にある”OSD交流音量”の項目から、電源オン・オフ時のスプラッシュ音や、OSD操作時の効果音を無効化できます。
操作スティックを押下すると画面右下にクイックメニューが表示されます。
クイックメニューに表示されるアイコンの位置はそのまま操作スティックに対応しています。下方向の電源アイコンはスティックを下に操作してから押下で電源オフなので誤っていきなり電源を切ってしまう心配はありません。
クイックメニューの上と右はカスタマイズ可能なホットキーになっていて操作すると、それぞれショートカット設定メニューが表示されます。
2つのホットキーの機能は初期設定では輝度とビデオ入力選択ですが、OSD詳細設定から変更も可能です。
クイックメニューを表示してさらに操作スティックを押下するとOSD詳細設定メニューが画面中央に表示されます。OSD表示領域は27インチ画面の1/20程度となっており、UI表示は小さいですが、OSD操作ボタンに手が届く範囲なら視認性は問題ないと思います。
OSD設定メニューの表示位置は詳細設定から画面上を縦横それぞれ100分割で自由に変更できます。
ただし、詳細設定メニューとホットキー設定は設定した場所に移動しますが、クイックメニューは右下位置に固定です。あとPIP/PBP機能のON/OFFなど一部のOSD設定を切り替えると表示位置は初期化されてしまいます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のOSDメニューは日本語UIに対応しています。
OSDリセットをかけても言語設定は最後の設定値が引き継がれる仕様だったので、市販製品のアウトボックス時点での初期言語設定が不明ですが、仮に初期言語が英語か中国語でも、下写真の通りにメニューに合わせてボタンを操作すれば詳細設定メニューから日本語に切り替えが可能です。
「Titan Army M27E6V-PRO」のOSDメニューには大きく分けて、「T.I」「ゲーム設定」「ピクチャー設定」「Game+機能設定」「eスポーツ設定」「オーディオ設定」「PIP/PBP」「入力/出力設定」「システム設定」の9種類の項目が用意されています。
「Titan Army M27E6V-PRO」には、ゲーム設定の項目内に初期設定の「標準」に加えて、「RTG/RPG」「FPS」「MOBA」のゲーム種類に特化した3種類、「ムービー」「リーディング」「ナイト」「アイケア」「Mac View(アップル製機器最適化)」「E-Book」、そして色域エミュレートの「sRGB」「Adobe RGB」「DCI-P3」で、計13個の画質モードが用意されています。
上記の通り、表示される13種類の画質モードに加えて、各画質モードを選択するとデフォルトとカスタマイズという項目もそれぞれ表示されます。カスタマイズを選ぶとその後すぐにOSD詳細設定から一部抜粋したショートカット設定メニューが表示されます。
実は各画質モードのデフォルトとカスタマイズは異なるプロファイルになっていて実質、26種類ものプロファイルがあります。
Titan Army(INNOCN)系列のモニタはOSD設定にカレント設定(現在の設定)の1つしかプロファイルがなく、かなり使い難い製品が多かったのですが、「Titan Army M27E6V-PRO」はビデオ入力別の設定にこそ対応していないものの、任意に設定を保存できる多数のプロファイルがあり、一般的なPCモニタと同レベルに使えるOSD設定です。
ビデオ入力を切り替えると直前のビデオ入力で使用していた設定が引き継がれるので、ビデオ入力毎に設定を変えて運用する予定の人は注意してください。
Titan Army M27E6V-PRO OSD設定プロファイルとビデオ入力について |
|
複数プロファイルの編集 【要件】 ・ユーザーが画質設定プロファイルを任意に編集できる ・カレント設定を上書するだけのメーカープリセットは含まない |
対応、計13種類 (×2?) 標準(ユーザーカスタム設定): 1 映像・写真: 1 ゲームジャンル: 3 色域エミュレート: 3 特殊: 5 |
プロファイルセットの保存 |
非対応 |
ビデオ入力別の設定 |
非対応 直前の設定を引き継ぎ プロファイルセットも共有 |
その他、補足 |
- |
可変リフレッシュレート同期機能はGame+機能設定の中に「Adaptive-Sync」の名前で設定項目が配置されています。
Titan Army M27E6V-PROではGame+機能設定からさらに画像補正の項目を開くとオーバードライブ補正やシャドウブースト等のゲーミングモニタでよく触る設定が現れます。
一般にオーバードライブと呼ばれる応答速度を調整する機能は「ダイナミックOD」の名前で配置されています。
オーバードライブ補正の強度をオフ、レベル1、レベル2、レベル3、トップスピードの5段階で設定ができて、標準設定はオフになっています。
黒の強弱を調節して暗がりの視認性を高める機能として「シャドウバランス」も搭載しています。
補正強度は0~100の数値で設定できます、標準設定では50(おそらく機能OFFの状態)が設定されており、設定値を下げるほど暗く、設定値を上げるほど明るくなります。
その他にも色彩強調、コントラスト強調、ナイトビジョンモード等のゲーム画面を調整する機能が用意されています。
Game+機能設定からゲームアシスタンスの項目を開くと、リアルタイムリフレッシュレートの表示や照準点の表示などゲームのプレイに便利な機能の設定が行えます。
基本的には一般的なゲーミングモニタでよく見る便利機能ですが、「Titan Army M27E6V-PRO」が独自に発展させている部分もあります。
OSDクロスヘアでは背景カラーに埋もれないように動的に色を変える「クロスヘアカラー - 自動」を選択できます。また拡大鏡モードでは画面中央を数倍に拡大した拡大鏡ウィンドウを右上に表示できます。
Dual Game Modeでは「Titan Army M27E6V-PRO」の27インチ画面のうち中央部の25インチ相当だけ表示するように切り替えます。オンライン対戦FPSゲームでは24~25インチ画面が主流というか、対戦には強いとされるので、それを意識した機能です。
ちなみにトップメニューの「T.I.(AIをもじった、TitanArmy Intelligenceの略?)」はゲームアシスタンスの一部機能を抜粋したショートカット設定的な内容なので、どちらを設定しても同じです。AIeスポーツ設定も背面LEDイルミネーションの設定なので、やはりeスポーツ設定の一部抜粋となっています。
PIP/PBP機能について
「Titan Army M27E6V-PRO」は2つのビデオ入力を画面上に同時に表示する「PIP/PBP」にも対応しています。PIP/PBPにおいて最大で4K解像度にも対応しますが、リフレッシュレートは60Hzが上限です。またHDR表示やVRRも排他利用になります。HDRは排他利用ですが、接続機器によってはHDR対応モニタとして認識されるので注意してください。(HDR映像を出力しても灰色がかった映像になる)
まずはPIP機能について説明します。
通常のビデオ入力選択を主画面として、副画面はPIP設定内の項目から選びます。副画面は主画面と同じものを含め4つのビデオ入力から自由に選択できます。ウィンドウスワップを選択すると主副が入れ替わります。
PIPでは副画面の表示位置を右上/右下/左上/左下の4ヶ所から選択できます。
副画面のサイズには小/中/大の3サイズの選択肢があり、32インチモニタ上でそれぞれ1/9、1/6、1/4程度の小窓として表示されます。
副画面は表示サイズにモニタ側でリサイズされますが、出力機器としては最大で4K解像度で表示できます。
続いてPBPについて説明します。
PBPには”PBP 2Win11”と”PBP 2Win21/12”の3つの動作モードが用意されています。
PBP 2Win11では4K画面が1920×2160で左右に2等分されます。左側が主入力、右側が副入力となります。主画面と副画面は4つのビデオ入力から任意に選択できます。
PBP 2Win11においてPCを接続している場合、デスクトップ解像度として特殊解像度の1920×2160を選択できます。
しかしながら、PBPモードにはアスペクト比の保持機能がないので、PS5など16:9アスペクト比画面のゲーム機を接続すると縦横に延び縮みしてしまいます。
PBP 2Win12/21は4K画面を2632×2160と1016×2160で不均等に分割します。
2632×2160解像度の方が主画面、1016×2160解像度の方が副画面となり、PBP 2Win12では主画面が左側、PBP 2Win21では主画面が右側に表示されます。
主画面のビデオ入力は通常時のビデオ入力として任意に選択できますが、1208×2160解像度で縦長の副画面はスマートフォンを想定したものなので、USB Type-C入力で固定されています。
主画面にPCを接続した場合、2632×2160はネイティブ解像度としてPCに表示されますが、副画面はPCからはネイティブ解像度が表示されません。PBP 2Win11同様にPBP 2Win12/21も主画面にはアスペクト比保持の機能はありません。
また、DP Alt Modeのビデオ出力に対応したスマートフォン(Android、iPhone)を所有していないので未確認ではあるのですが、PCでネイティブ解像度が表示されないのに、スマートフォンなら縦長解像度で表示できるのか微妙です。あと、なぜか細長ウィンドウのほうは16:9がなぜかストレッチせずそのまま表示されます。
Titan Army M27E6V-PROの発色・輝度・視野角
「Titan Army M27E6V-PRO」の発色・輝度・視野角など画質についてチェックしていきます。直接的な画質ではありませんが「Titan Army M27E6V-PRO」の液晶パネルは光沢のあるグレアではなくアンチグレアタイプなので暗転時に自分の顔などが映り込みません。
PC向けディスプレイパネルには、LEDバックライトを必要とする液晶パネルと、画素そのものが自発光する有機EL(OLED)パネルの2種類があります。さらに、PCモニタで一般的な液晶パネルはIPS液晶パネルとVA液晶パネルとTN液晶パネルの3種類に大別されます。
各ディスプレイパネルの特性を簡単にまとめると次の表のようになります。
ディスプレイパネルの簡易比較表 | ||||
パネルタイプ | 有機EL | 液晶 | ||
IPS液晶 | VA液晶 | TN液晶 | ||
色域 (高彩度の発色) |
〇〇 | 〇 量子ドットなら〇〇 |
△ | |
コントラスト (黒レベルの低さ) |
〇〇 | △ | 〇 | △ |
視野角 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
応答速度 | コンマms級 | 〇 (遅いものもある) |
△ |
〇 |
大型テレビ | 40~80インチ超まで幅広く採用 |
近年は 採用なし |
||
最大輝度 | △ |
〇〇 高輝度FALDなら1000nits超も |
- |
|
ハロー現象 Backlight Blooming |
発生しない |
FALDでは発生 |
- |
|
焼付の可能性 | あり |
発生しない | ||
価格 (高リフレッシュレート) |
× |
△ (×) |
△ | 〇 |
液晶パネルの種類による性能・特性の違いについてはこちらの記事も参照してみてください。
「Titan Army M27E6V-PRO」は160Hzの高速リフレッシュレートながら、IPS液晶パネルが採用されているので視野角も良好です。
ここからはカラーキャリブレータを使用して、色域・色再現性・輝度・コントラスト・均一性など画質に直結するモニタの性能について詳細な検証結果を見ていきます。なおこれらのモニタ性能(特に輝度の均一性)については同じ製品であっても個体差が大きいのでご注意ください。
検証にはカラーフィルター式(色差式)で比色計と呼ばれるCalibrite Display Plus HLと分光式(スペクトロメーター)のX-Rite i1 Basic Pro 3を使用しています。
「Titan Army M27E6V-PRO」のディスプレイ輝度について白色点の輝度をOSD設定別で測定しました。OSD上の輝度設定10%刻みで0%~100%の輝度変化は次のようになっています。
「Titan Army M27E6V-PRO」において、一般に見やすい明るさと言われる120cd/m^2は輝度15%前後、室内照明に依りますが個人的に見やすいと感じる明るさの180~200cd/m^2は輝度25~30%前後です。
SDR表示でも最大輝度が600cd/m^2程度なのでかなり明るいモニタです。
「Titan Army M27E6V-PRO」はバックライトの調光にPWM方式を採用しているようです。所謂、”フリッカーフリー”のモニタではなく、フリッカーがあります。
Titan Army P32A6V(国内では同等製品としてINNOCN 32M2Vが流通し有名)もPWM方式ですが、「Titan Army M27E6V-PRO」の方が輝度の振り幅が非常に大きく、1ms(1000Hz)程度での周期的な変動もあります。応答速度の章で掲載している16倍速の960FPSスーパースローモーション程度でもハッキリと明滅が確認できます。
通常の目視で画面の点滅を感じるわけではありませんが、フリッカーに敏感な人だと目の疲れを感じやすいかもしれません。
「Titan Army M27E6V-PRO」のディスプレイ輝度の均一性(Uniformity)を検証しました。画面中央の輝度が約120cd/m^2になるOSD設定において、画面を横7×縦5の35分割として各位置の白色点の輝度を測定し、中央輝度を基準にしたパーセンテージで等高線マップにしています。
「Titan Army M27E6V-PRO」は中央の大部分は良好な均一性ですが、四隅は少し輝度が下がります。とはいえ35カ所の測定点のうち、差分15%を超えるポイントがなく、上下の最大差分でも15%程度なので悪くありません。
液晶モニタにおいて輝度の低下が特に大きい四隅&四辺は、上のような領域分割測定では見落とされてしまうので、同様に中央120cd/m^2を基準にして個別に測定したところ次のようになりました。
「Titan Army M27E6V-PRO」は中央の均一性が高く、色ムラもない分、20~30%程度の輝度低下がある外周付近は単色のような表示だと相対的に暗くなっている感が目立ちます。ベゼルから10mmの範囲内は単色のようなシンプルな表示内容だと輝度低下が気になるかもしれません。
参考までに輝度と色温度による色差の分布です。
個体差がありますが、今回入手したサンプルだと右上と左上の輝度低下が大きめでした。基本的に色差の原因は輝度ですが、左上はホワイトも少しズレていました。
「Titan Army M27E6V-PRO」はフルアレイ型ローカルディミングに対応していますが、HDR表示だけでなくSDR表示でもローカルディミングを有効化(無効化も)できます。SDR表示中は基本的に無効でいいと思います。
「Titan Army M27E6V-PRO」はHDR表示においてローカルディミングは強制で有効、SDRではオン/オフを選択でき、SDRにおける設定はちゃんとキープされます。
SDRとHDRでローカルディミングを使い分けたい人も問題ありません。
なお輝度等の設定と並んでDCR(ダイナミックコントラスト)という設定があります。オンにすると輝度が自動制御になります。
DCR(ダイナミックコントラスト)は所謂、グローバルディミングの機能となっており、表示内容に合わせて画面全体のバックライト輝度を一律で可変調整します。こちらも基本的にオフ設定でOKです。
直下型Mini LEDバックライトを採用する一部の製品では、ローカルディミング無効化のSDR表示でもバックライト配列による縞模様が浮かぶことがありますが、「Titan Army M27E6V-PRO」にはそういった症状はなく、単色でも均一に表示されました。
画面中央の白色点が約120cd/m2になるOSD設定において「Titan Army M27E6V-PRO」のブラックレベルを測定したところ次のようになりました。ブラックレベルの測定にはCalibrite Display Plus HLを使用しています。
またこの時のコントラスト比も算出したところ次のようになっています。
なおコントラスト比に大きく影響するブラックレベルはコンマ2桁での測定になるため測定精度が若干怪しく、ブラックレベル0.01の差でコントラスト比が大きく変わるので参考程度と考えてください。
「Titan Army M27E6V-PRO」はsRGBだけでなく、Adobe RGBとDCI-P3の全てをほぼ100%カバーするという極めて広い色域を実現しています。
HDR表示の色域のスタンダードであるRec.2020もカバー率が81%となっており、「Titan Army M27E6V-PRO」は2024年の液晶ディスプレイとして最高峰の性能です。
色域のカバー率については、量子ドット技術を採用する液晶/有機ELでもRec.2020の色域をフルにカバーする製品は存在しないので、Rec.2020のカバー率はそのまま高彩度な色の発色性能と考えられます。
また、2024年現在ではDCI-P3(CIE1931)を85%以上カバーすれば広色域モニタの入門レベル、95%以上なら高彩度の色性能が非常に高いモニタと考えてOKです。
分光型測色計で白色点のカラースペクトラムを測定しました。
「Titan Army M27E6V-PRO」のディスプレイパネルには量子ドット技術(Quantum Dot Technology)が採用されており、赤緑青の分離は良好かつ、それぞれのピークも鋭く尖っています。
量子ドット技術採用パネルはIPSでもVAでも非常に高価になる傾向ですが、発色や色再現性では頭1つ飛び抜けた性能です。
Titan Army M27E6V-PROの色精度・ガンマ・色温度
続いて「Titan Army M27E6V-PRO」の色精度やガンマ・色温度に関する検証結果です。前章が高輝度、高コントラスト、高彩度といった画質の綺麗さに影響する特性を調べているのに対して、クリエイターやWebデザイナーといった”色の正確性が求められる用途(SDRコンテンツ)で使用できるかどうか”を評価する章になっています。
標準設定そのままの色の正確性について
まずは「Titan Army M27E6V-PRO」で標準設定そのままの色の正確性について検証していきます。モニタのOSD設定は標準モードで各種補正機能を無効化し、ガンマは2.2、色温度はプリセットの中で最もD65に近い”ウォーム”、ディスプレイ輝度は120cd/m^2になるように調整しています。
SDR 8bitで0~255のグレーを32分割にして測定し、ガンマ値やRGBバランス、色温度を確認してみました。
下のグラフは標準モードで各種補正をオフ、ガンマの設定値を2.2にした状態のガンマカーブです。
固定値なのか、sRGBカーブが浮いているだけなのかよく分かりませんが、どちらにせよPCモニタとして標準的なガンマカーブではありません。
「Titan Army M27E6V-PRO」はガンマカーブ設定にも対応していますが、基本的にsRGBカーブ、2.2や2.6など固定値のような標準的なガンマにはできません。
数値の5種類は初期設定のガンマ2.2を基準にして、設定値毎に0.2ずつ上下オフセットし、高輝度部分は扇状に差が広がります。
S曲線は大きく右肩下がりなガンマ値、つまり暗い色はより暗く、明るい色はより明るいというコントラストを強調するガンマカーブになります。
「Titan Army M27E6V-PRO」には色温度設定として寒色(クール)/通常(ナチュラル)/暖色(ウォーム)の3種類のプリセットがあります。
これらを切り替えてもホワイトポイントや発色に違和感がある場合は、ユーザー設定でRGBのバランスを好みに合わせて整えてください。
「Titan Army M27E6V-PRO」ではその他にも6軸色相や6軸彩度(飽和)の調整が可能です。3軸っぽいUIですが、青色のバーから右に操作するとシアン/マゼンタ/イエローが表示されます。
さらにOSD設定の章、ゲーム関連機能で紹介した通り、コントラスト強調やシャドウブースト等の独自機能にも対応しています。
同じくSDR 8bitで0~255のグレーを32分割にして測定した各点のRGBバランスと色温度です。
OSDの色温度設定はプリセットの中からD65に最も近かった”ウォーム”としていますが、i1Pro3で測定した色温度は6600K程度でした。RGB値255の白においてxy色度は(0.3110, 0.3258)です。
量子ドットのような広色域技術が採用されたディスプレイはメタメリック障害と呼ばれる現象が理由で、スペクトロメーターであってもi1Pro3程度の性能だと正確には白色の色温度やRGBバランスを評価できない(体感と一致しないことがある)のですが、今回は色温度やRGBバランスの測定結果の通り、「Titan Army M27E6V-PRO」は僅かに寒色に寄っているものの、D65と見なしても問題ないレベルで良く校正されていました。
D65から僅かにズレているのでRGBバランスは均等(0%付近に収束)ではありませんが、色付きに見えることのある100~255のレベルで平行に推移しているので、測定ホワイトポイントを基準にしてブラックからホワイトは色付きやバンディングのない綺麗なグラデーションです。
カラーチェッカーやマクベスチャートと呼ばれる24色のカラーパッチを使って色の正確性を確認していきます。
まずはICC等のカラーマネジメントの影響を受けず単純に特定のRGB値のカラーパッチを表示して、その色度を測定しました。
Windows OSや一般的なWebコンテンツはsRGBの色規格で表示・作成されているので、sRGB色規格内でそのRGB値を表示した時の色度をリファレンスとして、測定値との色差を出しています。
高性能(広色域)なモニタほど彩度が強調されるので、色差が大きくなります。一応測定していますが、この段階での色差(色の正確性)にはあまり意味がありません。
「Titan Army M27E6V-PRO」はAdobe RGBとDCI-P3をほぼ100%、Rec.2020すら81%をカバーする非常に色域の広いモニタなので、ICCによるカラーマネジメントを行わない場合、一般的なSDR(sRGB)コンテンツは上のxy色度図の通り彩度が強調されます。
WindowsでプレイするPCゲームはもちろん、PlayStation 5やXbox Series X|Sといったコンソールゲーム機もディスプレイ色域がsRGB(BT.709)のつもりでRGB値をそのまま出力するので、同様に想定される色(リファレンス)よりも彩度は強調されます。
続いてモニタのネイティブ色域を基準にRGB値から算出した色度をリファレンスにした場合の色差が次の通りです。広色域モニタでも良く出荷前校正された製品ならネイティブ色域をリファレンスにすれば色は概ね一致します。
「Titan Army M27E6V-PRO」はsRGBカーブや固定値2.2のような一般的なガンマではないので、ネイティブ色域をリファレンスにしても色差は大きいです。ホワイトポイントは綺麗にD65に合っていましたが、色の正確性を求めるならカラーキャリブレータによる校正は必須です。
色域エミュレートモードの色の正確性について
sRGBやAdobeRGBなど代表的な色規格通りの色域、場合によってはホワイトポイントやガンマを再現するエミュレートモードにおける色の正確性を検証していきます。「Titan Army M27E6V-PRO」は標準、ゲームジャンルなどほぼ全ての画質モードでディスプレイパネルの性能を最大限に発揮し、上のような非常に広い色域で動作しますが、画質モードからsRGBモード、Adobe RGBモード、DCI-P3モードを選択することで各色域に一致するエミュレート動作も可能です。
「Titan Army M27E6V-PRO」の色域エミュレートモードはいずれも、ガンマは自動制御となりますが、色温度などほぼ全ての画質設定を標準モードと同じように設定できます。
sRGB/DCI-P3/AdobeRGBの色域エミュレートモードにおいて色温度の設定に軽微なバグがありました。
例えば同じsRGBモードかつ色温度:ウォームの組み合わせでも、標準など別の画質モードから色域エミュレートモードに切り替えた時と、色域エミュレートモード内において別の色温度設定からウォームに切り替えた時とで、色温度が同じになりません。
大幅なズレがあるわけではありませんが、ある程度色差に敏感であれば違和感を覚えると思います。後述する通り、3種類のプリセットの中では一番D65に近いだけで、綺麗に一致しているわけでもないので、色域エミュレートモードを使用する場合はユーザーモードでD65など各自のターゲットとするホワイトポイントに合わせて使用するのがオススメです。
「Titan Army M27E6V-PRO」のsRGBモード(sRGBエミュレート)については、色域に加えてガンマも自動制御になりますが、色温度は設定できるのでD65に最も近いウォームに設定しています。
RGB値 100以上でガンマカーブは浮いて右肩上がりになるものの、ゲーム・シネマ・カスタム等のカラーモードと異なり、sRGBカーブ的な軌跡を描きます。
sRGB色規格のホワイトポイントはD65ですが、sRGBモードの色温度はi1Pro3による測定では6300K程度、RGB値255の白においてxy色度は(0.3177, 0.3232)で、少し桃色がかった白色です。
メタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、筆者にはD65よりも少し桃色がかった色味に感じるものの、すぐに目が順応する程度なのでD65と見なしても実用的には問題のない範囲だと思いました。
ただ、非エミュレートの標準モードにおいて色温度設定:ウォームはD65とよく一致していたのに、sRGBエミュレートでホワイトポイントがズレるのは解せません。
sRGBモードにするとネイティブではAdobeRGBやDCI-P3を軽くオーバーしていた色域がsRGBピッタリに制限されます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のsRGBモードはi1Pro3の測定ではホワイトポイントがD65からズレているので全体的に色がシフトしてしまい、sRGB色規格をリファレンスにすると色差は平均ΔE(00)が2.76程度、有色パッチに限定してもと2.09程度と比較的に大きくなります。
sRGBモードの実測色域からリファレンスの色度を出すと平均ΔE(00)は0.82程度と良く校正されています。
sRGB規格に対する絶対値としてはズレがやや大きいものの、実測のプライマリ・ホワイトポイントに対しては良く校正されているので実用的には十分に許容範囲内だと思います。
「Titan Army M27E6V-PRO」のDCI-P3モード(DCI-P3エミュレート)については、色域に加えてガンマも自動制御になりますが、色温度は設定できるのでD65に最も近いウォームに設定しています。
DCI-P3にはDisplay P3など同じ色域でホワイトポイントやガンマが異なる派生系がいくつかあり分かり難いのですが、「Titan Army M27E6V-PRO」のDCI-P3モードは色域制限に加えて、ガンマが固定値2.2になるようチューニングされているようです。
sRGBモードのsRGBカーブとは異なり、規格上のガンマが固定値2.2のAdobeRGBと一致しているので、「Titan Army M27E6V-PRO」のDCI-P3モードにおけるガンマのターゲットは固定値2.2でいいと思います。
DCI-P3色域かつガンマが固定値2.2という色規格は一般的ではないので、ひとまずD65想定として、色温度設定はウォームにしていますが、色温度やRGBバランスはsRGBモードとほぼ同じで、D65よりも僅かに桃色がかった色味(実用的にはD65とみなしても問題ないレベル)です。
DCI-P3モードにするとネイティブではAdobeRGBやDCI-P3を軽くオーバーしていた色域がDCI-P3ピッタリに制限されます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のDCI-P3モードはi1Pro3の測定ではホワイトポイントがD65からズレているので全体的に色がシフトしてしまい、sRGB色規格をリファレンスにすると色差は平均ΔE(00)が2.56程度、有色パッチに限定しても1.86程度と比較的に大きくなります
DCI-P3モードの実測色域からリファレンスの色度を出すと平均ΔE(00)は0.91程度と良く校正されています。
DCI-P3規格に対する絶対値としてはズレがやや大きいものの、実測のプライマリ・ホワイトポイントに対しては良く校正されているので実用的には許容範囲内だと思います。
「Titan Army M27E6V-PRO」のAdobeRGBモード(AdobeRGBエミュレート)については、色域に加えてガンマも自動制御になりますが、色温度は設定できるのでD65に最も近いウォームに設定しています。
AdobeRGBモードのガンマは色規格の通り、固定値2.2になるようチューニングされているようです。
AdobeRGB色規格のホワイトポイントはD65ですが、sRGBモードと同じく、AdobeRGBモードの色温度はi1Pro3による測定では6300K程度、RGB値255の白においてxy色度は(0.3172, 0.3226)で、少し桃色がかった白色です。
メタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、筆者にはD65よりも少し桃色がかった色味に感じるものの、すぐに目が順応する程度なのでD65と見なしても実用的には問題のない範囲だと思いました。
ただ、非エミュレートの標準モードにおいて色温度設定:ウォームはD65とよく一致していたのに、AdobeRGBエミュレートでホワイトポイントがズレるのは解せません。
AdobeRGBモードにするとネイティブではAdobeRGBやDCI-P3を軽くオーバーしていた色域がAdobeRGBピッタリに制限されます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のAdobeRGBモードはi1Pro3の測定ではホワイトポイントがD65からズレているので全体的に色がシフトしてしまい、sRGB色規格をリファレンスにすると色差は平均ΔE(00)が2.59程度、有色パッチに限定しても1.88程度と比較的に大きくなります
AdobeRGBモードの実測色域からリファレンスの色度を出すと平均ΔE(00)は0.96程度と良く校正されています。 AdobeRGB規格に対する絶対値としてはズレがやや大きいものの、実測のプライマリ・ホワイトポイントに対しては良く校正されているので実用的には許容範囲内だと思います。
カラーキャリブレーション後の色の正確性について
最後にカラーキャリブレータを使用して色校正を行うことで、「Titan Army M27E6V-PRO」は正確な色を出すことができるのか検証していきます。カラーキャリブレーションはX-Rite i1 Basic Pro 3と純正ソフトi1Profilerを使用して行いました。
キャリブレーション設定はホワイトポイントがD65、白色輝度が120cd/m^2、ガンマは固定値2.2としています。キャリブレーションのカラーパッチ数は中(211)です。
「Titan Army M27E6V-PRO」ではカスタムモード、ガンマはモード3、色温度設定を”ウォーム”にするとホワイトポイントがD65からズレていて、RGBの強さに差が大きいとアラートが出たので、手動で調整できるユーザー設定モードでR(赤)=50, G(緑)=50, B(青)=49としてキャリブレーションを行いました。
X-Rite i1 Basic Pro 3によってカラーキャリブレーションで作成したICCファイルを適用し、同じくi1Profilerのディスプレイ品質検証(色の正確性の検証)機能で測定した色精度は次のようになっています。
カラーキャリブレーション後にi1Pro3で測定した「Titan Army M27E6V-PRO」の色の正確性はΔE 0.4でした。
アウトボックス状態では標準的なガンマがなく、色精度を求める用途では使いにくいですが、カラーキャリブレーションでモニタプロファイルを作成すれば、「Titan Army M27E6V-PRO」はかなり高い精度で色を出すことが可能です。
なおX-Riteが公開している色差に関するブログポストによると、によると『ΔE=1程度で2つの色を横にくっつけて見比べた時に違いが判別できるレベル』とのこと。
補足としてi1Pro3で行ったカラーキャリブレーションの結果についてもう少し詳しく見ていきます。
まずは単純に0~255を32分割したRGB値のテストパターンをそのまま表示してガンマを確認しました。ガンマ2.2になるようにキャリブレーションしたので、校正モニタプロファイルを適用した「Titan Army M27E6V-PRO」は固定値2.2のガンマで綺麗に安定しています。色温度もD65(6500K)前後、RGBバランスも安定しており全く問題ありません。
sRGB、AdobeRGB、DCI-P3 D65のICCプロファイルを埋め込んだpng画像をテストパターンにして測定したガンマ値は次のようになっています。
sRGBはsRGBカーブ、AdobeRGBは固定値2.2、DCI-P3 D65は固定値2.6のようにICCプロファイルで指定されるガンマへ綺麗に変換されています。
(ICCなし画像はRGB値がそのまま出力される場合とsRGB扱いで変換になる場合に分かれ、ソフトやモニタICCプロファイルによって挙動が変わります)
カラーキャリブレーションで作成したICCをモニタプロファイルとして適用すれば、sRGB/AdobeRGB/DCI-P3 D65のICCが埋め込まれたpng画像をテストパターンとしてi1Pro3で測定した色度は、各色規格から算出したリファレンスに概ね一致するはずです。
「Titan Army M27E6V-PRO」は市販カラーキャリブレータによる一般的なキャリブレーション(モニタICCプロファイルの作成)によって、sRGB/AdobeRGB/DCI-P3 D65などの色を正確に表示できます。
Titan Army M27E6V-PROのリフレッシュレート
「Titan Army M27E6V-PRO」のリフレッシュレートについてチェックしていきます。120Hzや144Hzなどリフレッシュレートについて、その意味自体は特に説明せずとも多くの読者はご存知だと思いますが、一般的な60Hzリフレッシュレートの液晶モニタが1秒間に60回の画面更新を行うのに対して、144Hzリフレッシュレートであれば標準的な60Hzの2.4倍となる1秒間に144回の画面更新を行います。
最近では競技ゲーマー向け製品で240Hzの超高速リフレッシュレートなゲーミングモニタも普及しつつあり、さらには、それを上回る360Hzや540Hzの超々高速なリフレッシュレート対応製品も各社から販売されています。
120Hz+の高リフレッシュレートなゲーミングモニタを使用する3大メリット『滑らかさ』『低遅延』『明瞭さ』についてはこちらの記事で概要を解説しているのでゲーミングモニタ選びの参考にしてみてください。
「Titan Army M27E6V-PRO」ではNVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードのDisplayPort1.4のビデオ出力に接続することによって、モニタリフレッシュレートを160Hzなどに設定できます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のUSB Type-Cビデオ入力はDisplayPort Alternate Modeに対応しており、DisplayPort1.4(DSC)と同等のビデオ入力として使用できます。
Surface Pro 7+とのUSB Type-C接続や、RTX 40シリーズGPUとClub3D製のType-C/DP双方向ケーブルの組み合わせで4K/160Hz/HDR 10bit RGBで正常動作を確認しています。
若干注意点として、同じClub3D製のType-C/DP双方向ケーブルをRTX 30と組み合わせたところ、4K解像度の60Hz以上で表示が安定しませんでした。RTX 30でも他の4K/144Hz+では問題がなかった組み合わせなので、「Titan Army M27E6V-PRO」のUSB Type-Cは若干相性が厳しいかもしれません。Type-Cの接続を検討している人は注意してください。
あと、互換性機能としてUSB Type-CにはDSCを無効化する設定があります。DSCをオフにすると最大リフレッシュレートが120Hzに制限され、4K/120HzにおいてHDR表示のカラーフォーマットがYUV422のクローマサンプリングになります。
ただ現在のビデオ出力がUSB Type-C以外の時は設定項目がグレーアウトしてしまい、全く映らない状態では設定を変更できないので、互換性確保の機能としては微妙です。この手の設定は全く映らない状態でもOSDメニューから変更できるようにして欲しいところ。
ゲーミングPCとゲーミングモニタの接続にはDisplayPortを使用するのが現在の主流ですが、「Titan Army M27E6V-PRO」に搭載されたHDMIビデオ入力は最新規格HDMI2.1に対応しており、4K/120FPSの映像伝送が可能です。
NVIDIA GeForce RTX 40/30シリーズやAMD Radeon RX 7000/6000シリーズなど最新グラフィックボードのHDMI2.1ビデオ出力と接続した場合、「Titan Army M27E6V-PRO」は4K/160Hzの表示に対応します。
モニタリフレッシュレートの設定は、NVIDIA製GPUの場合は上のスクリーンショットのようにNVIDIAコントロールパネルから、AMD製GPUの場合はWindowsのディスプレイ設定から行います。
高性能なゲーミングモニタには高性能なGPUが必要
ゲーミングモニタのリフレッシュレート(と解像度/フレームレート)と対になって重要なのが、PCのグラフィック性能を左右するGPU、グラフィックボードです。ハイフレームレートはヌルヌル、サクサクと表現できるような快適なゲーミングを実現するだけでなく、上で説明したように競技系ゲームを有利に運ぶ意味でも重要ですが、ゲーミングモニタがハイリフレッシュレートに対応していても、PCのグラフィック性能が不足していて大元の映像データが60FPS前後しか出ていなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
当サイトでは240Hz+の競技ゲーマー向けモニタや4K/120Hz+のラグジュアリーな画質重視モニタを検証するにあたりモニタ性能を最大限に発揮できるよう、2023年最新にして最速のウルトラハイエンドGPUを搭載したグラフィックボード「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8 Gaming VERTO EPIC-X RGB OC 3FAN」を使用しています。
PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8は、ベイパーチャンバー構造のベースコアや、厚みのあるファンブレードをバリヤーリングで結合した重厚な冷却ファンを採用する4スロット占有大型GPUクーラーにより、各社AIBモデルの中でもトップクラスの静音性を実現しています。
メーカーのPNYは2022年に株式会社アスクが販売代理店契約を結んだばかりの新参なので国内での知名度は高くありませんが、北米など海外市場では30年以上に渡りコンシューマーならびにビジネス向けで電子機器の製造・販売を行う大手メーカーです。
国内正規品なら代理店を介してPNY公式のグローバル保証と同じ3年間の長期保証が受けられるところも魅力です。
・「PNY GeForce RTX 4090 24GB XLR8」をレビュー
「Titan Army M27E6V-PRO」のポテンシャルを最大限に引き出すには、元から軽めのPCゲームや画質設定を下げた最新PCゲームであってもグラフィックボードのGPU性能はかなり高い水準で要求されます。
ゲーミングモニタとして「Titan Army M27E6V-PRO」を使用するのであれば2023年最新GPUであるNVIDIA GeForce RTX 4080/4090やAMD Radeon RX 7900 XT/XTXがおすすめです。
・GeForce RTX 40シリーズのレビュー記事一覧へ
・Radeon RX 7000シリーズのレビュー記事一覧へ
Titan Army M27E6V-PROの応答速度・表示遅延
次にゲーミングモニタのハードウェア性能として特に重要な、「Titan Army M27E6V-PRO」の応答速度や表示遅延についてチェックしていきます。まずは「Titan Army M27E6V-PRO」の応答速度について検証していきます。
なおゲーミングモニタを選ぶ、もしくはモニタの応答速度や残像を評価する上で重要な予備知識である『液晶モニタの応答速度とオーバードライブ機能』についてはこちらの記事で簡単に紹介しているので、よくわからないという人は先に確認してみてください。
「Titan Army M27E6V-PRO」のOSDメニュー上ではオーバードライブ機能は「ダイナミックOD」の名前で配置されています。オーバードライブ補正の強度をオフ、レベル1、レベル2、レベル3、トップスピードの5段階で設定ができます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のオーバードライブ設定は標準設定の”標準”から”高速”に引き上げることで、若干、応答速度が高速になるものの、低いリフレッシュレートではオーバーシュートの残像が多少出てしまいます。
実際に”高速”を使ってみて、違和感がなければ設定値を引き上げても良いですし、100Hz以上で適切かつ60Hz以下でも綺麗な応答を見せるので標準設定の”標準”で決め打ちにしてもいいと思います。
応答速度の確認には「UFO Test: Ghosting」を使用します。同テストではUFOが移動する背景カラーを選択できますが、今回の検証ではブラック/グレー/ホワイトの3色を選択しています。
背景カラーがブラックの場合は各液晶パネルにおいて応答速度は高速な数値を示すので、概ね理想的な応答を確認することになります。背景カラーがホワイトの場合の応答速度は、ドキュメントやウェブページでテキストをスクロールした時の文字の滲み度合いの参考になります。背景カラーがグレーの場合、中間色に移るまでの応答速度を比較することになるので、一般的なゲームプレイにおける物理的な残像の少なさの指標として参考になります。
まずは簡単にシャッタースピードを十分に速くして「UFO Test: Ghosting」の様子を写真撮影してみました。
「Titan Army M27E6V-PRO」を160Hzリフレッシュレート、オーバードライブ設定をレベル1で動作させると、ベストタイミングでも1つ前のフレームが薄っすらと残る感じでした。製品スペックとして1ms GTGを謳う近年の高速なIPS液晶モニタ的な性能です。
オーバードライブ設定を”レベル2”に引き上げると過渡応答は高速になり、ベストタイミングではほぼ現在のフレームだけ表示されるようになりますが、その後の応答においてオーバーシュートによる色滲みが若干生じます。
さらに「Titan Army M27E6V-PRO」のリフレッシュレートを変えてみたり、他の液晶モニタを比較対象にしたりしながら、「UFO Test: Ghosting」の様子を「SONY DSC-RX100M5」の16倍速(960FPS)スーパースローモーションムービーで撮影し、比較してみます。
「Titan Army M27E6V-PRO」は最大値の160Hzリフレッシュレートにした時、オーバードライブ設定が”レベル1”で綺麗な応答を見せます。
”レベル2”に引き上げると多少オーバーシュート感はありますが過渡応答が高速になるので、レベル1/2の2つについてはお好みでという感じです。
”レベル2”や”トップスピード”にするとオーバーシュートが強く、はっきりと色滲みが出るので非推奨です。
ゲーミングモニタのOD設定に関する一般論として、144Hz+の高リフレッシュレートで最適応答になるオーバードライブ設定は、コンソールゲーム機で一般的な60Hzや、PS5など最新ゲーム機が対応する120Hzにおいて補正が強過ぎてオーバーシュートによる色滲みが発生することが多いです。
「Titan Army M27E6V-PRO」については60Hz~144Hzでも、最大リフレッシュレートの160Hzとオーバードライブ補正による過渡応答とオーバーシュートの傾向は一致しています。
”レベル1”はオーバーシュートの薄い綺麗な応答、”レベル2”は若干オーバーシュートによる色滲みがあり過渡応答は高速、という感じなので、お好みで選べばOKです。
続いて5760FPS(96倍速)のスーパースローモーションカメラで同等スペックの液晶モニタと応答速度を比較します。
最初に5760FPSスーパースローでも160Hzの時のオーバードライブ設定について確認しておくと、960FPSスーパースローでも見た通り、”レベル1”もしくは”レベル2”が最適設定で、この2つからお好みで選ぶ感じです。
「Titan Army M27E6V-PRO」の応答速度は、BenQ MOBIUZ EX3210UやASUS ROG Swift PG32UQなど1D型LD対応のAUO製量子ドットIPS液晶パネル採用製品や、FALDに対応した量子ドットIPS液晶のTitan Army P32A6V(国内では同等製品としてINNOCN 32M2Vが流通し有名)よりも高速です。
BenQ MOBIUZ EX321UXにこそ及びませんが、量子ドットIPS液晶パネル採用製品としては「Titan Army M27E6V-PRO」は高速な部類です。
また、下の動画の通り流石に理想スイッチ的な応答を見せる有機ELには当然のように敵いませんが、SONY INZONE M9、MOBIUZ EX2710Uなど公称スペックとしてGTG 1msが表記されるLG/AUO/InnoluxのKSF蛍光体構造の液晶パネルと比較して同等か、やや下回るくらいの性能を実現しています。
続いてスーパースローモーション動画ではなく、オシロスコープ&光プローブのような光センサーを利用した定量的な測定で応答速度についてチェックしていきます。
ここで確認するのは製品スペックに置いて『〇〇s (GTG)』などと表記される性能そのものです。統計的な扱いや解析には差があるかもしれませんが。
「Titan Army M27E6V-PRO」については、PWM式バックライト調光の振り幅がかなり大きいため、Perceived/Completeやオーバーシュートエラーの算出が難しいので、スーパースローモーションでも綺麗な応答を見せたOD設定”Level 1”におけるTransient Responseの比較グラフのみ掲載します。
「Titan Army M27E6V-PRO」の最大リフレッシュレートで最適OD設定を適用した時の応答速度は次のようになっています。
ゲーム機や動画視聴において一般的な60Hzリフレッシュレートにおいて、「Titan Army M27E6V-PRO」に最適OD設定を適用した時の応答速度は次のようになっています。
ゲーミングPCだけでなくPlayStation 5やXbox Series X/Sといった最新ゲーム機も対応する120Hzの高速リフレッシュレートにおいて、「Titan Army M27E6V-PRO」に最適OD設定を適用した時の応答速度は次のようになっています。
最後に「Titan Army M27E6V-PRO」の表示遅延(内部遅延)について測定を行いました。
モニタにはGPUのビデオ出力が送られてきてから実際にモニタに表示されるまで遅延が存在し、この遅延が大きいと例えば、FPSゲームでゲームパッドのトリガーやマウスのクリックによる操作からワンテンポ遅れて、マズルフラッシュが表示される、といった現象が発生します。人間は当然目で見てから操作するので、格闘ゲームやFPSゲームなど1,2フレームを争うような競技性の高いゲームにおいてはモニタの表示遅延が可能な限り小さいことが望まれます。
システム表示遅延やディスプレイ表示遅延の測定には、フォトセンサーを使用した特殊な測定機器「PC Gaming Latency Tester」を使用しています。当サイトのレビュー用に特注した機器なので、詳細についてはこちらの記事を参照してください。
「Titan Army M27E6V-PRO」やその他の比較モニタのディスプレイ表示遅延の測定結果は次のようになりました。測定方法的に遅延が2ms以下であればディスプレイ内部の表示遅延は誤差の範囲内で十分に小さいと考えてOKです。
「Titan Army M27E6V-PRO」は標準的な60Hzから最大値の160Hzまで理想的なディスプレイ表示遅延を発揮しています。
「Titan Army M27E6V-PRO」やその他の比較モニタのシステム表示遅延の測定結果は次のようになりました。この測定値は一般的なPCゲームにおける操作から画面表示の変化までの遅延に一致します。
グラフの通りリフレッシュレートを上げると応答速度だけでなく表示遅延も改善するのでゲーマーにとってハイリフレッシュレートなゲーミングモニタを選択するメリットは大きいということが分かると思います。
Titan Army M27E6V-PROの可変リフレッシュレート同期について
続いて「Titan Army M27E6V-PRO」が対応する可変リフレッシュレート同期機能「AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible(VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」についてチェックしていきます。モニタの画面更新(リフレッシュ)に関する基本的な予備知識や、「AMD FreeSync (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)」と「NVIDIA G-Sync Compatible」の関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
・ゲーミングモニタの選び方[3] FreeSyncとG-Sync Compatibleについて
「Titan Army M27E6V-PRO」は、AMD FreeSync / NVIDIA G-Sync Compatible (VESA Adaptive-Sync、HDMI Variable Refresh Rate)など可変リフレッシュレート同期に対応しています。
2024年12月現在、GeForce Driver 566.14でG-Sync Compatible認証は未取得です。
従来のNVIDIA製GPUではHDMI経由でG-Sync Compatibleは利用できないケースが多かったのですが、HDMI2.1では伝送技術の規格の一部としてVRR同期が内包されているので、「Titan Army M27E6V-PRO」ではHDMI経由でもG-Sync Compatibleを利用できます。
当然、AMD製GPU環境でもAMD FreeSyncを有効化できます。
「Titan Army M27E6V-PRO」で可変リフレッシュレート同期機能を使用する場合、共通の確認事項としてOSD設定でAdaptive-Syncの項目をオンにしてください。
可変リフレッシュレート同期機能が正常に動作してリフレッシュレートが可変になると、「Titan Army M27E6V-PRO」のOSDメニューから確認できるリフレッシュレートがフレームレートに合わせて変動するようになるので、機能が正しく動作しているかどうかはここを見て確認してください。
Titan Army M27E6V-PROのHDR表示やCSゲーム機対応について
最後に「Titan Army M27E6V-PRO」のHDR表示やCSゲーム機の対応(4Kエミュレートなど)についてチェックしていきます。HDR表示やCSゲーム機対応について | |
HDMI ver, ポート数 |
HDMI2.1 (48Gbps, DSC1.2a) ×1 |
HDR表示 | 対応 |
VRR同期 | 対応、PS5でも使用可能 |
カラーフォーマット DisplayPort1.4 |
4K/160Hz/10bit RGB |
カラーフォーマット HDMI2.1 |
4K/160Hz/10bit RGB |
ピーク輝度(実測) | 2212cd/m^2 (WS:50%, BG:20%) |
輝度認証 | - |
ローカルディミング | 対応、5088分割 |
4Kエミュレート | 4Kネイティブ対応 |
PlayStation 5 | 4K/120FPS対応, YUV422 |
Xbox Series X/S | 4K/120FPS対応 |
「Titan Army M27E6V-PRO」はVESAがPCモニタ向けに展開している輝度認証 VESA DisplayHDRこそ正式には取得していませんが、同認証のハイエンドクラスであるDisplayHDR 1400相当の輝度性能です。
また従来比で半分となる200~300マイクロメートルサイズのMini-LEDを敷き詰めた直下型LEDバックライトが採用され、5088分割のフルアレイ型ローカルディミングに対応します。
VESA DisplayHDR Compliance Testsから「Titan Army M27E6V-PRO」のEDIDに収録されているHDRスペックが確認できます。
HDR表示モードやOSD設定について
「Titan Army M27E6V-PRO」は映像ソース機器から常時、HDR信号を受け付けるように認識されます。OSD設定内のHDR設定をオフにしても出力機器からHDR非対応モニタとして認識されるわけではなく、HDR映像が灰色がかって、正常に表示されなくなるだけなので、自動(もしくはHDRゲーム/ムービー)ではなくオフを選択する意味はありません。
「Titan Army M27E6V-PRO」はHDR表示において、自動、HDRゲーム、HDRムービーの3種類のHDR画質モードが選択できます。
各HDR画質モードでは色彩強調などHDR表示中にグレーアウトする画質設定が自動で調整されたり、EOTFやFALDバックライト制御も変わります。
「Titan Army M27E6V-PRO」のHDRモードでは輝度や色関連の設定ほぼ全てが排他利用になります。
ダイナミックODやゲームアシスタンスなどSDR同様に調整、変更できる設定もありますが、基本的には一般的なHDR対応PCモニタと同じで、HDR表示はモニタによる自動制御にお任せとなります。
PC接続時の解像度やカラーフォーマットについて
「Titan Army M27E6V-PRO」はDisplayPort1.4 DSCに対応しているので、最新グラフィックボードを搭載したゲーミングPCと接続した場合、4K/160HzのHDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。「Titan Army M27E6V-PRO」のHDMI2.1ビデオ入力の伝送レートはフルスペックの48Gbpsです。視覚損失のない非可逆圧縮機能 Display Stream Compression (DSC) 1.2aにも対応しています。
最新グラフィックボードと接続した場合、4K/160Hz/HDR表示において、RGB 10bitのカラーフォーマットに対応します。G-Sync Compatibleなど可変リフレッシュレート同期機能も併用が可能です。
CSゲーム機接続時の4KエミュレートやHDCP対応について
「Titan Army M27E6V-PRO」に搭載されたHDMIビデオ入力はHDMI2.1に対応しているので、PlayStation 5やXbox Series X/Sを組み合わせた場合、4K/120Hzの表示が可能です。Xbox Series X/SやPlayStation 5のようにゲーム機が対応していればVRR同期機能も利用できます。
Titan Army M27E6V-PROのHDR性能やローカルディミングについて
最後に「Titan Army M27E6V-PRO」のHDR表示における輝度性能、ローカルディミング対応、色性能をチェックしていきます。HDR表示における輝度性能について
HDR対応モニタ/テレビのHDRモードにおけるディスプレイ輝度は、高輝度領域の広さ(APL: Average Picture Level)や高輝度表示の継続時間に依存するので、Calibrite Display Plus HLを使用してHDR時の最大輝度を条件別で測定してみました。VESA DisplayHDR Compliance Tests以外の測定はdogegenというWindows上でRGB 10bitのHDRカラーをそのまま表示できるテストパターンジェネレーターを使用しています。
「Titan Army M27E6V-PRO」はVESA DisplayHDR Compliance Testsで確認すると、HDR画質モード 自動(Auto)において、10%部分で1800cd/m^2以上という非常に高い輝度を発揮できました。
全体についても最大1800cd/m^2以上、10秒以上の持続で1000cd/m^2以上となっており、輝度認証こそ取得していませんが、VESA DisplayHDR 1400の基準も余裕でクリアしています。
HDR画質モードをHDRゲームやHDRムービーにすると10%部分や全体の最大輝度は若干下がるものの、それでも1000cd/m^2を上回り、2024年最新のHDRゲーミングモニタ、テレビとして最高峰の性能です。
なおHDRゲームやHDRムービーは単純に最大輝度が下がる下位互換というわけではなく、ローカルディミングのバックライト制御にも影響があります。詳しくは後述します。
1000cd/m^2を超える高輝度は輝度性能の高いFALD対応液晶モニタといえど、ウィンドウサイズ 100%の全白では時間経過で輝度が低下し、数秒から10秒程度しか維持できない製品も多いです。
「Titan Army M27E6V-PRO」もやはり、画面全体の最大輝度である1500~1800cd/m^2を維持できるのは3秒程度で、そこから数秒程度かけて輝度が徐々に低下していきます。
ちなみにHDR画質モード別の違いとして、自動とHDRゲームに比べて、最大輝度の低いHDRゲームは最大輝度を維持できる時間そのものは同じですが、持続輝度に下がり切るまでが1,2秒長く、輝度低下が若干緩やかです。
最大輝度を発揮できる時間には制限があるものの、「Titan Army M27E6V-PRO」は30秒以上も画面全体で1000cd/m^2程度を維持し続けることが可能です。
先日レビューしたMOBIUZ EX321UXほどではありませんが、既存の1000cd/m^2超のHDR対応モニタと比較すると非常に高い持続輝度性能です。
高輝度領域に対するHDR輝度をもう少し細かく見ていくと、「Titan Army M27E6V-PRO」はウィンドウサイズが20%~80%においてはさらに高い輝度を発揮し、最大輝度はなんと2000cd/m^2超に達し、背景グレーなどの条件も揃えると最大2200cd/m^2になります。
ウィンドウサイズ 50%までなら持続輝度でも2000cd/m^2以上なので、黒背景と高輝度ウィンドウのようなテストパターンだけでなく、実際のゲーム映像でも2000cd/m^2近い高輝度を発揮できます。
HDRムービーモードはウィンドウサイズ別の最大輝度が自動よりも若干下がりますがほぼ同じ傾向です。HDRゲームモードはウィンドウサイズ 20%~80%における輝度性能の上昇がなく、最大輝度は1400~1500cd/m^2で、傾向が異なります。
FALD対応液晶や有機ELの各種製品とAPLによる輝度性能を比較してみました。
「Titan Army M27E6V-PRO」などFALD対応液晶モニタの特長はやはり50%~100%のような広い高輝度領域に対して安定して各製品の最大輝度を発揮できるところです。有機ELモニタは2024年現在トップクラスの性能でもVESA DisplayHDR 600相当の性能を発揮できるのは20% APL以下のような限られたシーンになります。
こちらの記事で解説している通り、HDRにおいて有機ELのような400~600cd/m^2程度の輝度性能は必ずしも不足するわけではありませんが、FALD対応液晶のように輝度性能が高いほど、表現の幅が広がり、よりリアルに、より大迫力になるのも事実です。
一方で、FALD対応液晶モニタはハローをどこまで抑制するかで小領域の輝度性能に制限がかかり、両者はトレードオフな関係になります。
有機ELはピクセル単位で輝度を調整できるので2%や5%の小さい領域でもハローなしで高輝度を発揮できるのが強みです。
超簡単にHDR表示性能の特長が分かるFALD対応液晶と有機ELの比較、低APL編。 pic.twitter.com/2QXuOlR4M2
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 26, 2024
超簡単にHDR表示性能の特長が分かるFALD対応液晶と有機ELの比較、高APL編。 pic.twitter.com/jcgQGwurJl
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) August 26, 2024
あと「Titan Army M27E6V-PRO」のように1500cd/m^2を軽く超えるような高輝度になると、瞬間的なフラッシュが眩し過ぎることもあるので、モニタ側で最大輝度を一定以下にクリップできる機能が欲しいと感じました。
本来、ゲームなどコンテンツ側で制御できればベストであり、FF7Rが高輝度を使い過ぎているのが悪いのですが、神羅ボックスを切るだけでかなりの高輝度フラッシュになって驚きました。
ローカルディミング対応について
「Titan Army M27E6V-PRO」はMini LEDによる直下型LEDバックライトが採用され、5088分割のローカルディミングに対応しています。HDR表示モードにおけるローカルディミングの動作は強制オンかつ自動制御です。
FALD対応モニタの中にはOSD設定を変更することで『バックライトの速さ(更新頻度)』や『輝点に対するカバー領域』といったローカルディミングの動作が変わるものもありますが、「Titan Army M27E6V-PRO」にはローカルディミングの設定はありません。
ただ、自動/HDRゲーム/HDRムービーの3つのHDR画質モードを切り替えるとEOTFと一緒に、小さいウィンドウサイズにおける輝度性能にも大きな変化がありました。バックライト強度(ハロー抑制とトレードオフ)はHDR画質モードによって差があるように思います。
バックライトをどこまで上手く制御できるかはFALD型液晶モニタの弱点というか課題の1つ、と筆者はFALD対応ゲーミングモニタをレビューするたびに繰り返していますが、「Titan Army M27E6V-PRO」はかなり良い塩梅にバックライト制御がチューニングされていると感じました。
PS5のメニューなど、フルアレイ型LDではバックライト浮き、バックライト更新のチラつきが気になりやすいシーンについていくつか確認しましたが、「Titan Army M27E6V-PRO」はバックライトのカバー範囲や更新速度が上手く最適化されていて、バックライトの動きに違和感を覚えず操作できました。
『オーバーレイする直下の3D映像が暗いとUIも暗くなる』というのはFALD対応液晶で一般的な弱点ですが、それ以外については、”プレイしていて気に障る”系の挙動は上手く抑制されています。
強いて挙げれば、『マウスカーソル程度の輝点でも比較的に広い範囲でバックライトが点灯するため、深い黒色を発揮できる条件が限られ、暗そうな位置にも若干黒浮き感がある』、『高輝度輝点によるハロー抑制とのトレードオフなので、線香花火的な小さい輝点が有機ELほど綺麗に光らない』という弱点はあります。
この2つは単純に高画質をどこまで追求するかというベクトルの話であって、バックライトのチラつきのようなゲームプレイの集中を削ぐタイプではありません。
実際に使用した感想はこの辺りにして、動画・写真や測定データからもう少し定量的に説明していきます。
「Titan Army M27E6V-PRO」のローカルディミングでは黒色表示かつ近傍に輝点がなければ、その部分のバックライトは完全に消灯します。
「Titan Army M27E6V-PRO」は5088分割とトップクラスの分割数ですが、マウスカーソル程度の小さい輝点に対しても100分割程度の範囲でバックライトが点灯します。輝点が動いた時の追従は5088という分割数に応じて細かく変化しますが、輝点に対するバックライトの漏れ具合という意味では、従来の1000分割かそれ以下のFALD対応モニタとあまり変わりません。(もちろん良くはなっていますが、劇的にかというと)
*注:ローカルディミングの比較動画においては違いを分かり易くするため異なる露出設定を使用しています。
1つの動画内で左右に並べた素材についてはISO感度など露出を統一していますが、異なる動画間ではカメラの露出設定が異なる場合があるので注意してください。
まずは96分割FALDのSONY INZONE M9と比較してみました。
分割数に比例して5088分割FALDの「Titan Army M27E6V-PRO」のほうがハローの影響が小さいのが一目で分かります。
ちなみに、現在10万円程度かそれ以下で販売されている4K/144Hz対応ゲーミングモニタの多くは、ローカルディミングに対応していても短冊状の1D型かつ分割数が10~20程度なので、96分割FALDに増して、輝点に対してかなりの広範囲でバックライトが点灯してしまうのがかなり微妙です。
続いて比較的に安価なFALD対応モニタとして1152分割のTitan Army P32A6Vと比較してみました。国内ではINNOCN 32M2Vとして有名な製品です。
上でも説明した通り、「Titan Army M27E6V-PRO」は輝点に対して比較的に広くバックライトが点灯するのでハロー自体にはそれほど大きな差がないものの、やはり輝点に対する漏れは小さくなっています。分割数が多い分だけ細かくバックライトの点灯を制御できるので、輝点部分の点灯もより均一です。
またバックライトの追従も改善されていて、最後の高速に動く小さな白円では、コマ送りで確認するとやはり1フレーム遅れはあるものの、白円が暗くならず点灯できています。
一方で、やはりピクセルレベルで調光が可能な有機ELと比べると5000分割のFALDでも差はあります。
ハローを確認しやすいように斜めから撮影しているので、一般的な実用シーンである正面から見た時よりもハローの効果が強調されているのですが、5088分割の「Titan Army M27E6V-PRO」でもやはり有機ELと見比べると輝点に対する光漏れは顕著です。
FALD対応液晶モニタにおいて、上記動画のようなハロー抑制とトレードオフになる要素として『暗い背景における前景オブジェクトが暗くなる』という現象があります。
要はハローを抑制に引っ張られてバックライトの点灯が弱くなるため、高輝度やベース輝度が本来よりも低く表示されてしまうという現象です。逆に近傍に高輝度があるとベース輝度域も明るくなります。
ゲームシーンへの影響としては、暗いシーンでUIの視認性が下がるというのは分かり易い例です。
ウィンドウサイズ別の最大輝度から推察するに、HDRゲームモードはハロー抑制の傾向が強く、HDRムービーは暗景でもベース輝度域が暗くならないチューニングになっていて、自動はピーク輝度を最大限発揮しつつ、両者の中間(HDRムービー寄り)という感じです。
100~300cd/m^2以下のベース輝度域についてもう少し詳しく見ていきます。HDRリファレンスに対してウィンドウサイズ別でどの程度実測輝度が下がるかをグラフにしています。
まずは自動モードですが、完全な黒背景でウィンドウサイズ別の実測輝度を確認したところ、ウィンドウサイズ 5%前後から下は基本的にHDRリファレンスの輝度よりも暗くなります。
ウィンドウサイズ別 1%で輝度低下は30~40%なので背景が真っ暗に近いシーンだとUIの視認性や小さい輝点のキラキラ感は微妙ですが、一応、実用レベルではあると思います。
一方で、HDR画質モードをHDRゲームにすると、傾向は自動とほぼ同じですが、より大きく輝度が低下します。
10%より小さいウィンドウサイズにおける輝度低下が50%前後、つまりHDRリファレンスの半分程度なのでかなり薄暗く感じるはずです。
最後にHDRムービーモードですが、最大輝度を見ると、自動モードよりも低輝度でしたが、ウィンドウサイズ別のベース輝度域は自動モードよりも高輝度になっています。また60cd/m^2未満の黒からグレーの暗い色の傾向が大きく異なります。
ハロー抑制をトレードオフにして、ベース輝度域の輝度低下を防止し、暗い階調の視認性も重視した感じのバックライト制御です。
HDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能について
「Titan Army M27E6V-PRO」のHDR表示における輝度性能(EOTF)や色性能についてもう少しだけ深堀りしていきます。カラーキャリブレータとしてX-Rite i1 Basic Pro 3やCalibrite Display Plus HLを使い分けています。
一桁cd/m^2以下の低輝度の検出が安定しているので輝度の絶対値については比色計のCalibrite Display Plus HLの測定データを使用しています。彩度マップやRGBバランスなどある程度明るく、色精度が重要な項目はスペクトロメーターのX-Rite i1 Basic Pro 3で測定しています。
ソフトウェアはdogegenというWindows上でRGB 10bitのHDRカラーをそのまま表示できるテストパターンジェネレーターを使用しています。
この章の測定ではパネルタイプに応じて理想的な性能を確認できるように、特別に設定について補足がない場合、液晶パネルの場合は50%部分/背景カラー20%グレー、有機ELパネルの場合は10%部分/背景カラー0%ブラックとしています。
まずは輝度性能について、HDR10など一般的なHDRコンテンツで採用され、PQ EOTFとも呼ばれるHDRガンマ曲線(SMPTE ST 2084)に対して、実際のディスプレイ輝度を測定しました。
「Titan Army M27E6V-PRO」はHDR画質モードでも変わりますが最大で2200cd/m^2という超高輝度を発揮します。
EOTFはEDIDに収録されているHDRスペックの最大輝度1415cd/m^2に一致するホワイトレベルまでリファレンスカーブに沿って上昇していき、以降はクリップされるというシンプルなチューニングです。
当サイトでは普段、液晶モニタのHDR性能をチェックする時はウィンドウサイズ:50%、背景グレー:20%にしているのですが、テストパターンとして一般的な10%/0%にすると、「Titan Army M27E6V-PRO」のEOTFは次のようになります。
HDRスペックに対して実際の最大輝度が大きいのでその分、HDRリファレンスよりも浮く傾向になっていますが、HDRムービーモードはフィルムメーカーモード的にHDRリファレンスを綺麗に再現することをターゲットにしてチューニングされているように思います。
一方で自動モードは最大輝度をより高く、低輝度のブラックをリファレンスより下げることでコントラスト感を強調するチューニングです。
HDRゲームは自動モードをベースにしつつ、ローカルディミングの節で解説した通り、ハロー抑制を重視したため全体的に輝度が下がるという塩梅になっているのだと思います。
10cd/m^2以下のニアブラックの輝度特性を確認すると、特に1cd/m^2未満で輝度カーブが若干ガタついていますが、LGの有機ELデモ動画のように、明るさが徐々に変化するフェードイン/フェードアウトのシーンで途中一瞬だけ急に明るく・暗くなることもなく、滑らかに変化しました。
続いてHDR表示における色性能(色域、色精度)をチェックするため彩度マップ、CIE Diagramを作成しました。【HDR規格に良く校正された例】
彩度の強調や不足の参考になるようにSaturation Shifts/Luminanceのグラフも作成しています。なお、Saturation Shiftsはuv色空間(CIE1976)を参考に重み付けをしています。Saturation Luminanceは白色輝度がリファレンスに一致するものとして正規化しています。
「Titan Army M27E6V-PRO」は3種類のHDR画質モードのうち、自動モードとHDRムービーモードの彩度マップがほぼ同じで、HDRリファレンスを綺麗に再現します。
バックライト制御の影響でHDRムービーモードの方がベース輝度域や低輝度域は明るい(Saturation Luminanceが高い)という傾向ですが、どちらもホワイトポイントのズレによるオフセットを除けば、HDRリファレンス通りに彩度の飽和は均等で変にバラつかず上手く表現できています。
Rec.2020やDCI-P3(D65)を想定して作成されてHDRコンテンツも、彩度・色相については概ねコンテンツメーカーの想定通りの表示になると思います。
先に確認したEOTFにも変なチューニングはありませんでしたし、特にHDRムービーモードは所謂、”フィルムメーカーモード”的な動作と考えていいと思います。
一方で、HDRゲームモードは設定項目自体はグレーアウトしていて変更できないものの、色彩強調のOSD設定がレベル3に設定されていて、HDRリファレンスよりも彩度が強調されています。
HDR対応ゲームでも実は広色域カラーを使用していないことはあるので、モニタ側で広色域カラーにプッシュできる彩度強調はゲーマーとして嬉しい機能です。ただHDRと併用できるならグレーアウト&自動設定ではなく、任意に設定値を変更できるようにして欲しかったところ。
「Titan Army M27E6V-PRO」のHDRモードにおけるホワイトポイントは3種類のHDR画質モードでほぼ共通なのでまとめて解説します。
量子ドットのような広色域ディスプレイではメタメリック障害もあるので厳密な評価は難しいのですが、i1Pro3の測定値上、「Titan Army M27E6V-PRO」のホワイトポイントは6700~6800K程度、xy色度は(0.3106, 0.3201)です。
少々寒色寄りですが、目の順応に任せてD65と見なしても問題ないレベルで良く校正されていると思います。
メタメリック障害と呼ばれますが、最新の広色域モニタの場合、カラーキャリブレーターの測定値から算出した色温度が実際に視覚で体感するものに一致しないことがあります。
そこで正確に測色できる低色域モニタでX-Rite i1 Basic Pro 3を使ってD65[xy:0.3127, 0.3290]の白色を表示し、それを基準に目視で確認する、という手順でもダブルチェックで検証しています。
Titan Army(INNOCN)系列のモニタはHDR表示におけるホワイトポイントがマゼンタやピンク寄りに比較的大きくズレる製品も多かったので、ゲーマー好みのやや寒色寄りかつD65と見なして問題ないレベルでホワイトポイントが調整されているというのは嬉しい誤算でした。
RGBバランスもベース輝度域からHDR高輝度域までしっかりと平行なので、高輝度を含むグラデーションも違和感なく綺麗に描かれます。
Titan Army M27E6V-PROのレビューまとめ
最後に「Titan Army M27E6V-PRO」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。良いところ
- 画面サイズ27インチで私室の4Kゲーミングモニタとしてはちょうどいいサイズ
- 発色や視野角に優れたIPS液晶パネル、量子ドット技術も採用
- 実測でDCI-P3とAdobe RGBがほぼ100%、Rec.2020も81% カバーの広色域
- 液晶パネルは反射防止のアンチグレア
- ビデオ入力はDisplayPort1.4×2、HDMI2.1×1、USB Type-C×1の計4系統
- DP1.4 DSCは4K/160Hz VRR/HDR 10bit RGBに対応
- HDMI2.1は4K/160Hz VRR/HDR 10bit RGBに対応
- 可変リフレッシュレート同期(VRR)機能に対応
- HDR表示において、実測で最大2000~2200cd/m^2の超高輝度を発揮
- 直下型Mini LEDバックライトで5088分割のローカルディミングに対応
- HDMI2.1搭載なのでPS5やXbox SXを接続時は4K/120FPSやVRR同期に対応
- モニタ本体重量7.1kgかつVESAマウント対応でモニターアームを使用可能
- 最強HDRスペックなのに税込み14万円程度
- PWM式バックライト調光なので非フリッカーフリー
- 色域エミュレートモードのホワイトポイントがズレている(通常モードはD65ピッタリなのに)
- 搭載スピーカーは低音域が若干ノイジーかも(モニタ搭載スピーカーとしては普通)
「Titan Army M27E6V-PRO」は3840×2160の4K解像度ながらネイティブ160Hzの高速リフレッシュレートで動作し、DP1.4 DSCやHDMI2.1によって4K/160HzをフルRGBで表示しながら、可変リフレッシュレート同期機能に加えて、2000ニットを超える超高輝度なHDRにも対応するというハイエンドゲーマーも大満足な理想のHDR対応ゲーミングモニタに仕上がっています。
最新規格HDMI2.1対応ビデオ入力を搭載しており、PlayStation5やXbox Series X/Sを接続した場合、4K/120FPSの表示が可能、VRRこと可変リフレッシュレート同期機能も使用できます。
HDR表示については、実測で2000cd/m^2を余裕で上回る超高輝度と5088分割のバックライト部分駆動によって、黒が引き締まって立体感が出たり、太陽やフラッシュ・爆炎の眩しさが大迫力で感じられたりと、ゲーム体験のリアリティを向上させる意味で高い効果を感じられるはずです。
HDR有効時にユーザーが任意に選択できる設定は、自動/HDRムービー/HDRゲームの3種類のHDR画質モードの切り替えだけです。
自動モードとHDRゲームモードはハロー抑制やコントラスト強調を重視したローカルディミング制御になっているのか、ベース輝度がかなり下がる傾向になっていてプレイ環境を選びますが、HDRムービーモードはベース輝度域の輝度低下も抑えられているので、フィルムメーカーモード的なHDRモニタとして十分に使えるチューニングだと思います。
3種類のHDR画質モードにはそれぞれ特長があるのですが、欲を言えば、ローカルディミングの挙動、彩度強調、クリップされる最大輝度の調整の3つを任意に調整できる形がベストだと感じました。あとホワイトバランスを変更できればHDR対応ゲーミングモニタとしてはほぼ完璧です。
あと従来のTitan Army(INNOCN)系列のモニタは操作スイッチのハード的にもソフトウェア的にもユーザーフレンドリーとは言い難い感じだったのですが、「Titan Army M27E6V-PRO」はOSD設定周りが普通のゲーミングモニタ水準になっています。
ゲームジャンルや色域エミュレートなど個別プロファイルをセーブ・ロードできますし、ローカルディミングもSDR/HDRで別に設定できます。ハードウェアスペック的に高コスパなだけに、OSD周りがネックにならないのは嬉しいです。
以上、「Titan Army M27E6V-PRO」のレビューでした。
記事が参考になったと思ったら、Xポストの共有(リポストやいいね)をお願いします。
5088分割FALDや2200nitsの超高輝度なHDR表示に対応する4K/160Hzゲーミングモニタ「Titan Army M27E6V-PRO」をレビュー。
— 自作とゲームと趣味の日々 (@jisakuhibi) December 21, 2024
最強HDRスペックかつ高コスパなのか、応答速度・表示遅延やHDR表示性能を徹底検証https://t.co/cnP1HierYx pic.twitter.com/CF6XPaVHo6
関連記事
・予算と性能で選ぶオススメのゲーミングモニタを解説・PCモニタ・ディスプレイのレビュー記事一覧へ
・PS5にオススメなゲーミングモニタを解説。HDMI2.1搭載や120FPS対応も!
・「Alienware AW3225QF」をレビュー。4K/240Hzの量子ドット有機EL
・「AORUS FO32U2P」をレビュー。DP2.1で4K/240Hzをデイジーチェーン
・「SONY INZONE M9」をレビュー。96分割FALDに15万円の価値はあるか
・「AORUS FO27Q3」をレビュー。機能性最強のWQHD/360Hz量子ドット有機EL
・「Alienware AW2725DF」をレビュー。最速360Hzの量子ドット有機EL
・「ASUS ROG Swift OLED PG27AQDM」をレビュー
・「Samsung S95B」をレビュー。量子ドット有機ELの画質を徹底検証
・「ASUS TUF Gaming VG28UQL1A」をレビュー
・「ZOWIE XL2586X」をレビュー。540Hz対応、DyAc2で明瞭さ1000Hz越え
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
スポンサードリンク