(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
プロ野球・巨人は2025年シーズンのリーグ連覇に向けて、今オフは近年にない大型補強を敢行した。中日から守護神のライデル・マルチネス投手、楽天を自由契約になった日米通算197勝の田中将大投手、米球界からは走攻守に三拍子そろったトレイ・キャベッジ選手を獲得した。
そして、最大の目玉はソフトバンクから甲斐拓也捕手を獲得したことだろう。日本球界ナンバーワンの呼び声高い「扇の要」の加入でリーグ連覇を盤石にし、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで途絶えた日本一奪回を目指す。一方、32歳の正捕手獲得としてレギュラーに固定すれば、これまでレギュラーには「帯に短く、たすきには長かった」他の捕手陣の成長を妨げるリスクもある。
日本を代表する捕手
「新たにもう一度野球選手として、ここからスタートする気持ちでいます」
甲斐選手は巨人の入団会見でこんな意気込みを口にした。
育成契約からはい上がった甲斐は、ソフトバンクの正捕手として不動の地位を確立。昨季の日本シリーズでも全6試合のうち、5試合で先発マスクを被った。23年春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では世界一にも貢献した日本を代表する捕手である。
巨人は、5年総額15億円(推定)で契約し、阿部監督が現役時代につけていた背番号10の継承を用意して迎え入れた。
甲斐選手が移籍を決断した要因の一つに挙げられるのが、ソフトバンクで指揮を執った小久保裕紀監督の采配だった。監督就任1年目でリーグ優勝に導いた指揮官もソフトバンク(当時はダイエー)の生え抜き選手だが、一時期は巨人に在籍していた。甲斐選手は次のように発言している。
「小久保監督の采配を見ていて、セ・リーグの野球を知っているからこうなるのかと思うことが何度もあって、すごく学ばせてもらった。自分の中で答えの出ていないものや、まだまだ分からないことが多い。これからも常に学びの精神を大事にして、選手として成長したい」(24年12月18日付・東スポWEB)
どん欲な姿勢は、将来、指導者になる上でもメリットは大きい。