ミーティングで選手に話す黒田剛監督(写真:共同通信社)

2024年、J1昇格初年ながらも3位という好成績を残した「FC町田ゼルビア」。わずか2年前にはJ2で15位だったチームが大躍進を遂げた。そんな快進撃を実現した監督・黒田剛氏は、以前は高校サッカーの現場にいた。その黒田氏がまとめた『勝つ、ではなく、負けない。結果を出せず、悩んでいるリーダーへ』(幻冬舎)では、チームマネジメントを軸に「負けないチーム」の作り方を学ぶことができる。

(東野 望:フリーライター)

強い組織を作るために「目標は高く」

 高校サッカーから直接プロサッカーへ、前例のないキャリアチェンジを遂げた黒田監督。たった1年という短期間で、J1昇格へチームを導くために何をしたのだろうか。

 黒田監督は、まず目標を「J1昇格」ではなく「J2優勝」に設定した。

優勝を狙っていても実現しない場合がほとんどだと思います。ただ、金メダルを狙うから、金メダリストになれる。優勝を狙うから、優勝チームになれる。2位でいいという考えでは、そこにすら届かない可能性が十分あります。

 J1に昇格するために、優勝は必須条件ではない。3~6位であってもプレーオフに勝てばJ1に昇格できる。しかし2位以下でもいい、最低でもプレーオフで勝ちさえすればいいという考えでは、目的の達成は遠のくとの考え方だ。

 営業職のビジネスパーソンも同じかもしれない。売上目標を自分が達成できると思う額にしか設定しなければ、それ以上の売り上げを達成するモチベーションは下がる。それどころか、目標にすら届かない可能性もあるということだ。つい“保険”をかける癖のある人は、明日からでも志を大きく持つ習慣をつけたい。

継続するだけでなく「習慣化」が必要

 何かを成し遂げようとする時には、トレーニングなど何かしらの行動を継続することになるが、黒田監督は“継続”と“習慣化”は異なると言う。良い結果をもたらすための思考や行動は、「意識的に継続する」のではなく「無意識に行えるようになること」が重要なのだ。

チームコンセプトが徹底されなかったり散漫になったり、あるいはメンバーが代わったり、相手の状況が変わるとできなくなるという現象が度々ありました。意識的に継続しても習慣になっていなければ必ずボロは出るのです。

 ただし、習慣化にはある程度長い時間が必要だ。黒田監督も、2023年シーズン中には習慣化にまでは至らなかったそうだが、諦めずに2024年シーズンも「習慣化」を徹底しているという。それがJ1昇格後の初シーズンで3位という好成績につながったのだろう。