オカムラとマイクロソフト、2025年までにオフィス家具の完全IoT化へ

阿久津良和

2020-02-06 16:49

 日本マイクロソフトは2月6日、IoT(モノのインターネット)をテーマにした年次イベント「IoT in Action」を開催した。基調講演では、オフィス家具などを販売するオカムラが、オフィス家具をIoT化して未来のオフィス空間を実現する「OKAMURA Office IoT Platform構想(仮)」を発表、2020年から東京・丸の内のコワーキングスペース「point 0 marunouchi」で実証実証し、2021年内のサービス提供を目指す。

 オカムラがIoTを活用するソリューションを手掛ける背景には、ワークプレース(働く場所)の変化がある。同社は2018年4月に、社名を「岡村製作所」から改称し、「社会に新たなソリューション提案をする企業」(同社上席執行役員 マーケティング本部長の荒川和巳氏)を目指してきた。モノ作りの売り切り型ビジネスから、働き心地に配慮する“ITを駆使したワークプレース作り”への変革の1つだと、荒川氏は説明した。

オカムラ 上席執行役員 マーケティング本部長の荒川和巳氏
オカムラ 上席執行役員 マーケティング本部長の荒川和巳氏

 同日発表された構想は、名称の通り現時点では構想段階であるものの、一般的なデスクチェアやソファーなど各種オフィス家具にセンサーを内蔵し、従業員の位置情報や家具の配置情報、着座や離席といった使用情報、温度や湿度、二酸化炭素、照度、騒音といった空間環境情報をデータとして取得し、クラウドサービス「Microsoft Azure」にアップロードする。

 それをデータレイクツールの「Azure Data Lake」に格納し、機械学習ツールの「Azure Machine Learning」などを用いて分析する。そこからビジネスインテリジェンス(BI)ツールの「Power BI」などを用い、家具や空間の稼働率や占有率、フリーアドレスの拡散率、ヒートマップなどを可視化する。

 オカムラ マーケティング本部 DX推進室長の遅野井宏氏は、このソリューションについて、物理空間にある現実の機器や設備の稼働状況、環境情報などをリアルタイムに収集すると同時に、仮想空間上で機器や設備を構築してシミュレーションする「デジタルツインがベース」と語った。

オカムラ マーケティング本部 DX推進室長の遅野井宏氏
オカムラ マーケティング本部 DX推進室長の遅野井宏氏

 オカムラは、このソリューションを通じて、データに基づくファシリティーマネジメント(施設や環境の総合管理)や、空きスペースを有効活用した戦略的かつ積極的なオフィス投資、データに基づく「ABW(アクティビティー ベースド ワーキング)な働き方が実現可能だ」(遅野井氏)だとアピールした。また、パートナー企業として日本マイクロソフトを選んだ。

 遅野井氏は、その理由を「(Microsoft Azureが)世界的にもセキュアな環境で展開され、年間100サービス以上をローンチしたIoT関連サービスや、Office 365との連携も期待している」と語った。昨今はフリーアドレスを導入する企業も少なくないが、このソリューションでは、仕事の内容や座席の選択といった特性データを蓄積すると、従業員にレコメンドを送信するという。この当たりは「Microsoft MyAnalytics」が使用するデータと連携させるようだ。

 他方でビジネスモデルにも機運を見出しているオカムラは、「データを活用できるのはわれわれのオフィス営業に限らず、コンサルティング部門やオフィス研究チームも含まれる」(遅野井氏)という。コンサルティング部門であれば、顧客の利用状況や他社の利用状況に基づく能動的な提案を可能し、研究チームなら文字どおり研究や仮説の実証に用いることができるだろう。

 さらに、このソリューションをその他のソリューションやサービスとAPIで連携する構想も明らかにした。「会議室の管理やドキュメント、ヘルスケアや人事といった各種のソリューションはもちろん、照明や空調、複合機とも接続する」(遅野井氏)と、ことでスマートオフィス基盤を目指す。

 具体的に「OKAMURA Office IoT Platform構想」では、オカムラがIoT搭載家具の生産・販売、オフィスIoTビジネスの確立と商用展開を担い、日本マイクロソフトがMicrosoft Azureの提供と技術およびマーケティングの協力体制を用意する。この構想にはサトーも参加し、同社は日本マイクロソフトと技術連携して、次世代RFIDタグを含めたセンサーソリューションの生産と供給を担う。サービスはこのソリューションに対応する製品の展開に応じて順次拡大し、2025年時点で全ての新製品のIoT化を予定している。既存製品の対応についても、外付けのセンシングユニットを開発し、自社および他社製オフィス家具が対応できるようにするという。

 なお、このソリューションは現時点で構想段階のため、採用するセンサーや電源供給問題など課題は多い。だが、遅野井氏は「家具のデザインを損なわず、データを取得しやすい箇所を踏まえて選定する」と話す。

日本マイクロソフト IoTデバイス本部長 業務執行役員の菖蒲谷雄氏
日本マイクロソフト IoTデバイス本部長 業務執行役員の菖蒲谷雄氏

 家具のIoT化では、2017年8月にMicrosoftとSteelcaseが協業しているケースがあるものの、日本マイクロソフト IoTデバイス本部長 業務執行役員の菖蒲谷雄氏は「この規模の(メーカーとの)協業は日本初。エンドユーザーのアクションに結び付けるのがIoTの価値だ。われわれはMicrosoft Azureに加えてOffice 365の価値を感じている」と述べ、3社協業によるビジネス展開に自信を見せた。

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