Amazon Web Services(AWS)の最高経営責任者(CEO)Andy Jassy氏は「re:Invent 2018」の基調講演で生バンドを演奏させたが、そこで演奏すべき曲は、むしろ「Anything You Can Do」だったかもしれない。このカンファレンスを見れば、AWSが単なるクラウドスタックではなく、顧客にとって一番のエンタープライズITベンダーを目指しているのは明らかだった。それどころか同社は、さらに大きな野望を露わにした。
(訳注:「Anything You Can Do」は米国で大ヒットしたブロードウェイミュージカル「アニーよ銃を取れ」の劇中曲。主人公のアニーとその恋人のフランクが口げんかをする場面で歌われるデュエットで、「あんたにできることなら何でも、あたしの方がうまくできる(Anything you can do, I can do better)」「できっこない!(No you can’t!)」という歌詞から始まり、お互いに自分の方が優っていると言い張る掛け合いが続くコミカルな曲になっている)
Jassy氏は(MicrosoftとOracleのデータベースを除いて)直接的な競合企業にはあまり言及しなかったが、競争についてはある程度触れている。AWS re:Invent 2018で行われた大量の発表の端々には、同社がIBMのようなクラウドプロバイダーを目指していることをうかがわせるような部分がある。また他のところを見れば、AWSは機械学習の企業のようにも見える。ストレージプロバイダーも脅威を感じたに違いない。そしてもちろん、AWSがOracleをたたきつぶしたがっていることは明白だ。それに加えて、AWSは企業がまさに求めている人工知能(AI)やアナリティクスのサービスを並べてみせた。
ほかにも、筆者が見逃しているものがいくらかはあるだろう。この記事では、AWS re:Inventで明らかになったさまざまなことを、歌の力を借りて振り返ってみよう。
あんたにできることなら何でも、あたしの方がうまくできる
何でもあんたより、あたしの方がまし
AWSが掲げた大きなテーマは、仕事に適したツールを開発者(失礼、「ビルダー」と書くべきだった)に提供するために、果てしなくイノベーションを繰り返していくということだった。Jassy氏は挑戦的な口調で、レガシーシステムや顧客を顧みない企業からのビルダーの解放について語った。
もちろんJassy氏は、AWSがそれを支援すると述べている。
「われわれは、1つのツールが世界を支配していいとは思っていない。仕事に合った適切なツールを使ってほしいと思っている」と同氏は述べた。続けて同氏は、次のように語った。
ビルダーは既存の古いインフラの制約を受けてきた。これはもどかしいことだ。ビルダーのほとんどは、同じことを何度も繰り返すためにその仕事に就いたわけではないはずだ。そういった制約はやる気をなくさせる。また、企業はビルダーたちを訓練して、顧客体験のイノベーションを行わせないようにしてきた。