アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)は1月26日、2018年のパートナー向け施策をメディア向けに説明した。勘定系システムのクラウド化や大規模なシステム移行などの案件獲得を見込む。
パートナー アライアンス本部長の今野芳弘氏は、まず2017年の収益がランレートベースで約180億ドルを超える見込みであることを報告。顧客企業数も世界で数百万社、国内で10万社以上に達し、特に金融機関での採用が急増しているとした。
国内パートナーの数は前年から95社増加し、主にシステム構築などを手掛けるコンサルティングパートナーは222社、AWSを基盤にSaaSなどを手掛けるテクノロジパートナーは299社となった。最上位のプレミアムパートナーでは、新たに伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が認定を受け、国内は8社(世界では67社)体制に規模が拡大している。
今野氏は、主に企業のITシステムをクラウド化する「ITトランスフォーメーション」と、新規ビジネス向けにクラウドなどを活用する「デジタルトランスフォーメーション」の2つの領域で、企業顧客によるAWSの利用拡大を推進していると説明。前者ではコスト削減やセキュリティ強化、グローバル化など、後者では人工知能(AI)やIoT、モバイルなどの活用がニーズの中心にあるという。
パートナー施策とユーザーニーズの変遷。2018年は勘定系システムもターゲットに入れる
2018年のパートナー施策もこの2つの領域を軸としつつ、勘定系システムのクラウド化、大規模システムのクラウド移行、マイクロサービスの推進、クラウド前提システムの拡大を目指す。
ITトランスフォーメーションでは、特にデータベースや業務アプリケーションのクラウド移行、SAPのERPシステムのクラウド化、WindowsシステムのAWS移行に注力する。また年内に開設を予定する大阪リージョンを活用したディザスタリカバリ需要も開拓したい考えだ。デジタルトランスフォーメーションでは、機械学習やIoT、FinTech、音声認識、顧客関係管理(CRM)、DevOps、マイクロサービスの利用促進を図る。
パートナー施策のうち認定プログラム関連では、マネージドサービスプロバイダー(MSP)、コンピテンシー、サービスデリバリーの3種類において、専任者アサインなどのリソース提供、トレーニング、案件支援、顧客事例化、ファンディングといった支援策を強化する。
MSPでは、AWSがパートナーに対して100項目以上の外部監査を実施することで顧客の信頼を担保しつつ、パートナーがプログラムの要求する水準を維持、向上していくための広範なサポートを提供するという。また、コンピテンシープログラムでは機械学習、サービスデリバリープログラムでは5つのカテゴリーが新設され、これらの認定取得を目指すパートナーを支援していく。
2018年に認定プログラムで強化していくジャンル
2017年にプレミアムパートナー入りしたCTCで執行役員 クラウド・セキュリティサービス本部長を務める藤岡良樹氏は、「既に一部の顧客はRFP(提案依頼書)でAWSのプレミアムパートナーであることを条件にしている。取得は大変だったが多大な支援があり、感謝したい」とコメント。同社では2020年にAWS関連事業で200億円の売上を計画しており、資格保有エンジニアを5倍に増員するなどの強化策を打ち出す。
また、AWSをサービス基盤としてSaaSでPCのフルバックアップサービスなどを手掛けるAOSテクノロジーズ 代表取締役社長の佐々木隆仁氏は、「この種のサービスではほとんどが無償利用で収益化しにくいが、当社の場合は有料会員が大多数を占め、30万ユーザーを超えている。AWSはコスト設計がしやすく、セキュリティレベルも高いことが成果につながっている」と述べた。このサービスで同社は、4.5ペタバイトものユーザーデータをAWSに保存しているという。
今野氏は、「AWSにとって顧客満足度の向上が最も重要であり、その実現には顧客を支えるパートナーの満足度の向上が不可欠だと考えている。パートナーの経験や能力の向上につながるサポートに注力したい」と語った。
AOSテクノロジーズの佐々木氏、AWSの今野氏、CTCの藤岡氏(左から)