新薬の開発、すなわち創薬には何年もかかる。しかし、英国に拠点を置くBenevolentAIは人工知能(AI)を用いて、初期の研究から、市場に投入可能な製品を生み出すまでの期間を短縮しようとしている。
製薬会社は新薬の開発に多大な労力と膨大な額の資金を投資している。こうした企業の抱える問題のなかでとりわけ無視できないのが、見込みのありそうだった医薬が実際には期待通りの効果を発揮しなかったという場合の研究に費やされた時間だ。
BenevolentAIは、AIの独創的な利用によって、創薬プロセスを数十倍に高速化できると確信している。同社はAIツールを活用することで、膨大な量の薬学文献を読み取って分析し、最も有望な研究対象分野を見つけ出している。
BenevolentAIは9月、同社のテクノロジ部門であるBenevolentTechの最高経営責任者(CEO)としてJérôme Pesenti氏を迎え入れたと発表した。Pesenti氏はそれまで、IBMで「IBM Watson」プラットフォーム担当のバイスプレジデントを務めていた。同氏は現在、AIを用いて創薬プロセスのスピードを劇的に向上させようとしているチームを率いている。
米ZDNetは、このほどPesenti氏にインタビューし、同氏の新たな役割や、同社の成功に向けた鍵について尋ねる機会を得た。
——BenevolentAIに入社する前はIBMに在籍していたとのことですが、その前はどこにいらっしゃったのでしょうか?
AIを学ぶために米国に渡った後、カーネギーメロン大学での成果を基に起業しました。この会社はテキストマイニングや検索に特化しており、2012年にIBMに買収されました。買収により、この会社と私自身はWatson事業部に加わりました。私は(IBMにおける)研究開発のかなりの部分を任され、AIの基礎テクノロジの開発に取り組む350人の研究者を束ねていました。この研究グループのオフィスはニューヨークのマンハッタンにあるアスタープレイスに置かれていたため、私自身もそこを拠点にしていましたが、メンバーは世界各地に散らばっていました。
われわれが開発していたのは、現在Watsonプラットフォームとして知られているものです。私が取り組んでいたのは基本的に、他の人々が土台として利用できるさまざまなテクノロジを生み出すということでした。具体的には音声認識や仮想エージェント、機械翻訳などです。
「当社は現在、リサーチだけでなく、自らの手で臨床試験を実施しています」と述べるBenevolentTechの最高経営責任者(CEO)Jérôme Pesenti氏
提供:Colin Barker