IBMは米国時間の10月25日、企業が顧客対応の質的向上を図るため、顧客と対話するボットをクラウド上で作成し、展開できるようにする機能「Watson Virtual Agent」を発表した。利用企業が、顧客の問い合わせに対して迅速に対応したり、潜在的な問題にリアルタイムで解決を図れたりできるようにする。
IBMが10月24日から27日まで、ラスベガスで開催しているユーザーイベント「IBM World of Watson 2016」の基調講演で、StaplesやWeather Companyは、応用範囲が限られたツールの作成だけでなく、さまざまな顧客の要望に対応できる本格的な仮想エージェントを実現していることを示した。そうしたエージェントでは、顧客を支援するために利用できる自然言語の処理機能が鍵となる。
一般に、仮想エージェントの作成モデルでは、熟練した技術を持つ開発者が、煩雑なカスタムルールに従って複雑なシステムを構築する必要がある。
Watson Virtual Agentを活用すると、ユーザーは、業界間共通のコンテンツを含められるため、ボットをより迅速に展開できるという。これにより、熟練技術者と、正式なトレーニングを受けていないユーザーの両方が、作業プロセスを簡素化できるという。
ガートナーは調査で「2020年までに、少なくとも80%の新たなエンタープライズ・アプリケーションでチャットボットが多用される見込み」と指摘。2021年までに、ほとんどの企業のIT部門が会話AIを優先して導入することになるという。現在のクラウドとモバイルを優先するトレンドは、2021年までに会話AI優先に取って代わられるという見通しを示している。
IBM Watson担当のジェネラル・マネージャーであるDavid Kenny氏
IBMの会話機能を活用すると、ソーシャルメディアから、SMS、モバイルアプリケーション、ウェブサイト内に組み込む、あるいはロボティクスなどのその他のフォーム・ファクターに至るまで、あらゆるプラットフォームに簡単に展開できるソフトウェアを構築できる。
IBM Watson担当のジェネラル・マネージャーであるDavid Kenny氏は「IBMの科学と研究の能力を活用してサービス向上が図られるにつれ、IBMの基盤は進化し続ける。会話の分野における技術の進歩をリードしており、すべて企業によるカスタマーエクスペリエンスの変革を手助けする」と話す。
顧客とのより親密なやり取りを可能にするソリューションが構築できるため、顧客関係をより親密なものにできるとしている。
StaplesやAutodeskのほか、Weather Companyなどの企業も、IBMの会話技術が組み込まれたアプリケーションやサービスを作成しており、それにより日常業務の合理化、カスタマーサービスの向上などを図っている。
Staplesの事例
Staplesは、自社が展開するビジネス向け発注ソフトウェア「Easy System」でWatson Conversationを活用し、オンデマンド環境を顧客に提供している。いつでもどこでも、好きなデバイスにより注文できる環境を提供した。
Watsonの機能を利用することでStaplesは、同社のEasy Button、アプリ、Facebookメッセンジャー、Slackbotを問わず、顧客にシームレスな注文インターフェースを提供できるようになった。同インターフェースでは、顧客のショッピングエクスペリエンスが簡素化するため、補充品を迅速に再発注したり、出荷品を追跡したり、カスタマーサービスの必要性についてチャットできるようになったとのこと。
StaplesのEasy Systemによりユーザーは補充品の発注などの作業を容易に実施できるようになる