「Office」のクロスプラットフォーム開発を成功へ--開発者が明かすマイクロソフトの挑戦

Mary Jo Foley (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2014-10-29 06:00

 「われわれの課題は、どうやって飛行中のジャンボジェットを組み立て直すかだ」

 「Microsoft Office」に取り組むMicrosoftのディスティングイッシュドエンジニアIgor Zaika氏は、同社のOfficeチームが直面する難問をこう説明した。Microsoftは、どのように10億人のOfficeユーザーのサポートを継続し、混乱させないようにしながら、Officeの核となるインフラを再構築して「Windows」以外のOSでも動くようにしたのだろうか。

 Zaika氏は最近、Facebookの@Scaleカンファレンスで、Officeのクロスプラットフォームアーキテクチャ戦略について語ったTwitterユーザーWalking Cat氏の、同氏のプレゼンテーションへのリンクに感謝する)。その50分間のセッションで、Zaika氏はMicrosoftがどのようにC++を使ってOfficeをWindows、Apple、「Android」、ウェブで構築しているかについて詳しく説明した。

 同社が30年前に作り始めたOfficeは、現在では数千万行のコードからなっている。Officeは、Cで書かれた数多くの独立したアプリケーションからスタートした。Microsoftは1990年にこれをひとまとめにしたが、Zaika氏によれば、当時はアプリケーション間で共有されているコードはほとんどなかったという。開発チームは当時、Officeを書き直して、Windows用OfficeとMac用Officeの共通コードベースを作るのが望ましいと考えた(Microsoftは1985年にMac版を別個に発売している)。

 「非常に困ったことに、これはうまくいかなかった」とZaika氏は話す。

 開発チームはWindowsとMacの共通のコードを一部は救い出したが、Macユーザーは、他のMacのアプリケーションとは見た目も動作も異なるOfficeを好まなかった。


 Officeチームは2年前からこの課題に新たな形で取り組んでおり、コードの共有はいいが、共有コードが多すぎるのはよくないと考えているとZaika氏は語った。

 今回、Officeチームは複数の小規模なプラットフォーム抽象化層(PAL)を設計し、サポートするさまざまなOSで、ユーザー体験を実現するコードを、どのように、どの程度共有するかという問題について、賢明な選択をしようとしている。

 社内にはMicrosoftがOfficeのコードベースをフォークさせて、異なるブランチと各OSをサポートする専門のチームを作るべきだと考える者もいたが、Zaika氏によれば、Offceチームは現在このアプローチを採っていない。Microsoftは、1997年にWindowsとMacでOfficeのコードベースを分離した際にこの手法を用いたが、現在はやっていないという。またOfficeチームは、「最小公倍数」的アプローチも選択しなかった。ユーザーは、各OSが持つプラットフォーム独自の機能を、最大限に利用したいと考えているのだ。

 Officeチームはこれを実現しようとしている。同チームは、可能な場合には機械的なリファクタリングを行い、そうでない場合にはユニットテストを行いながら、明確に定義された、組み合わせ可能なコンポーネントを作っている。重視しているのは、すべてのプラットフォームで常にすべてが正常に動作する状態を維持することだと、Zaika氏は言う。開発チームは、どのプラットフォームでもリグレッションを一切許容せず、すべてのプラットフォームに関して、社内で大規模にコードベースのドッグフーディング(訳注:社内で実際に試用させること)を行っている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  2. ビジネスアプリケーション

    新規アポ率が従来の20倍になった、中小企業のDX奮闘記--ツール活用と効率化がカギ

  3. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  4. セキュリティ

    「どこから手を付ければよいかわからない」が約半数--セキュリティ運用の自動化導入に向けた実践ガイド

  5. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]