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オーストラリアで16歳未満SNS禁止法案--他国や日本への影響は

特集

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 11月、オーストラリアで16歳未満のSNS利用を禁止する法案が可決した。法案の内容と背景、他国や自国での対応についてご紹介したい。

  1. 国民の77%が禁止法案に賛成
  2. 禁止法案のメリットと懸念点、批判は
  3. フランス、米国などの対応は
  4. 日本で未成年のSNS制限は進むか

国民の77%が禁止法案に賛成

 同法案は、2025年1月から仮運用となり、1年間の猶予期間後、2026年1月から施行となる。「X」「TikTok」「Instagram」「Facebook」「Snapchat」などが対象で、健康や教育関連コンテンツを持つ「YouTube」や、メッセージングサービス、オンラインゲームなどは対象外となる。

 子ども達がSNSにのめり込み、日常生活やメンタルヘルスに悪影響が出ていること、ネットいじめや性被害にあうなどのリスクがあることから、保護者を中心に規制を求める声が高まった背景があるのだ。

 法案では、SNS運営企業は、12カ月以内に16歳未満の子どもがアカウントを作成できないような手段を提供する義務を課しており、違反した場合は最高4950万オーストラリアドル(約50億円)の制裁金が科せられる。保護者や子どもに罰則はない。

 ロイターでは、プライバシー擁護団体や一部の児童権利団体から反対の声が挙がる一方、世論調査では同国民の77%がこの措置に賛成していると報じている。一方で、既に利用しているティーンユーザーからは、反対の声が挙がっている。

 SNSには利用規約で年齢制限はあるものの、あくまで自己申告制となっており、守られていないのが現状だ。厳格な年齢認証の方法と、個人情報の取り扱いなどが議論されている。

禁止法案のメリットと懸念点、批判は

 SNSはやり取りする相手がいるものであり、一人だけやめることが難しいものだ。国単位で一斉に禁止することで、やめやすくなる、始めづらくなるのは間違いない。

 一方で、既に利用している子ども達は、SNSが使えないことで相手と連絡がとれなくなり、交友関係自体を失うリスクもある。SNSは必要な情報の取得、いじめなどにあっているティーンにおけるセーフティネットなどとしても機能しているが、そのようなメリットが得られなくなってしまうのだ。

 また、隠れて利用して被害やトラブルにあった場合、相談できずに被害が甚大になってしまうリスクもあるだろう。本格的に禁止が進んでも、未成年が被害やトラブルを相談できる体制などが必要だ。

 Bloombergによると、Instagramを運営するMetaは同法案に対し、「禁止措置は効果が薄い、または欠陥がある」と主張。TikTokの字節跳動(バイトダンス)も、「性急かつ非現実的」で「未解決の疑問や懸念」が山積していると法案を非難している。国連児童基金(ユニセフ)は、「法案は子どもたちを規制が届かないオンライン上の暗部に追いやることになる」と警告。子どもが隠れて利用し、被害にあうことを懸念しているというわけだ。

 SNSは、ティーンにリーチできるプラットフォームとして広告主に支持されてきた。16歳未満が完全に利用できなくなった場合、現在のビジネスモデルが成立しなくなる可能性もある。

フランス、米国などの対応は

 未成年へのSNS規制は、オーストラリアだけではない。

 フランスでは、15歳未満の子どもが保護者の同意なしにSNSにアクセスすることを禁じる法律が制定された。なお、オーストラリアでは保護者の同意があっても禁じられている。

 米国では、ユタ州で18歳未満がSNSを利用する際には親の同意を義務づける法律が成立。フロリダ州では、14才未満のソーシャルメディアの利用を禁止する州法が成立している。

 他にも、ノルウェーで15歳未満のSNS制限を検討中など、各国で未成年のSNS利用への制限は進みつつある。

日本で未成年のSNS制限は進むか

 では、日本ではどうなのか。日本では、主に命にかかわるような大きな問題から対処してきている状態だ。

 たとえば誹謗中傷で罪に問われることが多い「侮辱罪」を厳罰化し、プラットフォーム側に相談窓口を設定、対応の迅速化などを義務づける「情報流通プラットフォーム対処法」を制定するなど、誹謗中傷への対処は迅速に行ってきた。

 16歳未満の子どもに対してわいせつ目的での面会の要求や、性的画像・動画の送付を要求することは、「グルーミング罪」として罪に問えるようになった。増え続けるネット経由の未成年の性被害や自画撮り被害への対処として行われたことだ。

 能登半島地震で偽の救助要請が拡散するなどしたSNS上の偽・誤情報に関しても、総務省の有識者会議で具体策が話し合われている最中だ。

 未成年のSNSにおける被害やトラブルは問題だが、SNS規制が対策として正しく、効果があるとは限らない。まずはリスクの啓蒙啓発活動を行い未成年と保護者におけるリテラシーを高め、ペアレンタルコントロール機能やフィルタリング機能の活用などを推進していくべきだろう。

 実際にInstagramには、フォロワー以外が投稿を見たりやり取りを制限したりするなどの13〜17歳のティーンを守る仕組みを備えた「ティーンアカウント」や、ペアレンタルコントロール機能も用意されている。TikTokにもペアレンタルコントロール機能が用意されている。

 日本は表現の自由を重んじる傾向にあり、少なくとも早期に未成年のSNSを制限という議論には発展しないだろう。

 しかし一方で、未成年のSNSにおける被害やトラブルは他国に比べて少ないわけではない。保護者によるルールや見守り、ペアレンタルコントロール機能やフィルタリング機能の活用、情報リテラシー教育などが必要なことは間違いない。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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