コンテンツにスキップ

高野史緒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(たかの ふみお、女性、1966年9月14日[1] -)は、日本小説家

人物・来歴

[編集]

本名・井上久美子[2]茨城県土浦市出身。茨城大学人文学部卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程(フランス近世史専攻)修了。日本SF作家クラブ会員。日本・ロシア協会普通会員。日本文藝家協会会員。

1988年ニジンスキーをテーマとしたバレエ入り演劇脚本『エレヴァシオン』で第二回青山円形劇場脚本コンクールに佳作受賞(優秀作無しの年)。1994年、第六回日本ファンタジーノベル大賞に応募。『ムジカ・マキーナ』で最終選考を通過し、翌1995年、同作品で新潮社からデビューした。2012年「カラマーゾフの妹」で第五十八回江戸川乱歩賞受賞。

ヨーロッパを舞台とした、芸術と歴史、ことに音楽をテーマとしたSF的歴史改変小説を得意とする。イギリスのミュージシャン、音楽プロデューサーのトレヴァー・ホーンのファンとして知られ、作品のいくつかの「元ネタ」としていることを認めている。

夫はロシア映画研究者の井上徹(2023年6月12日死去)。医師で『看取りの医者』の著者、平野国美は遠縁の親戚に当たる。

2008年の長編『赤い星』以来、ロシア文化への傾斜を強くしている。2016年度から2018年度まで日本SF大賞選考委員。

2021年度、『まぜるな危険』で第42回日本SF大賞候補。2022年度、『カラマーゾフの兄妹 オリジナルバージョン』により第22回センス・オブ・ジェンダー賞SF初志貫徹賞を受賞。『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』で第44回日本SF大賞候補、及び『SFが読みたい! 2024年版』にて、国内第一位を獲得、第55回星雲賞日本長編部門を受賞。

作品リスト

[編集]

単行本 (長編)

[編集]
  • 『ムジカ・マキーナ』(1995年 新潮社 / 2002年 ハヤカワ文庫
  • 『カント・アンジェリコ』(1996年 講談社 / 2013年 講談社文庫
  • 『架空の王国』(1997年 中央公論社 / 2006年 ブッキング
  • 『ヴァスラフ』(1998年 中央公論社)
  • ウィーン薔薇の騎士物語シリーズ
    1. 『仮面の暗殺者』(2000年 中央公論新社 C★NOVELSファンタジア)
    2. 『血の婚礼』(2000年 中央公論新社 C★NOVELSファンタジア)
    3. 『虚王の歌劇』(2000年 中央公論新社 C★NOVELSファンタジア)
    4. 『奏楽の妖精』(2001年 中央公論新社 C★NOVELSファンタジア)
    5. 『幸福の未亡人』(2001年 中央公論新社 C★NOVELSファンタジア)
  • 『アイオーン』(2002年 早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
  • 『ラー』(2004年 早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
  • 『赤い星』(2008年 早川書房 ハヤカワSFシリーズJコレクション)
  • 『カラマーゾフの妹』(2012年 講談社 / 2014年 講談社文庫)
    • 『カラマーゾフの兄妹 オリジナル・ヴァージョン』(2022年 盛林堂ミステリアス文庫) - 『カラマーゾフの妹』の江戸川乱歩賞受賞時の改稿前オリジナル原稿
  • 『翼竜館の宝石商人』(2018年 講談社 / 2020年 講談社文庫)
  • 『大天使はミモザの香り』(2019年 講談社 / 2022年 講談社文庫)
  • 『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』(2023年 早川書房)
  • 『ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅』(2024年 講談社)

単行本 (短篇集)

[編集]
  • 『ヴェネツィアの恋人』(2013年 河出書房新社
    • ガスパリーニ(1996年 早川書房 ハヤカワ・ミステリ・マガジン 1996年4月号)
    • 錠前屋(2000年 光文社文庫 異形コレクション17『ロボットの夜』、2001年 講談社 日本推理作家協会編『ザ・ベストミステリーズ 2001』 、2004年 講談社文庫 日本推理作家協会編『殺人作法』 )
    • スズダリの鐘つき男(2002年 光文社文庫 異形コレクション21『マスカレード』)
    • 空忘の鉢(2003年、光文社文庫 異形コレクション28『アジアン怪綺(ゴシック)』)
    • ヴェネツィアの恋人(2005年 光文社文庫 異形コレクション34『アート偏愛(フィリア)』)
    • 白鳥の騎士(2005年 早川書房 S-Fマガジン 前編:2005年10月号、後編:2005年11月号)
    • ひな菊(2009年 早川書房 S-Fマガジン 2009年4月号)
  • 『まぜるな危険』 早川書房 2021年
    • アントンと清姫
    • 百万本の薔薇
    • 小ねずみと童貞と復活した女
    • プシホロギーチェスキー・テスト
    • 桜の園のリディヤ
    • ドグラートフ・マグラノフスキー

短篇(単行本未収録)

[編集]
  • G線上のアリア(1997年 早川書房 S-Fマガジン 1997年2月号、2020年 ハヤカワ文庫JA 伴名練編『日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙』)
  • 未来ニ愛ノ楽園(1997年 早川書房 S-Fマガジン 1997年9月号)
  • ラー(1998年 早川書房 S-Fマガジン 1998年2月号)
  • ツァラトゥストラはかく歌いき(1998年 アトリエOCTA 幻想文学 第53号)
  • パリアッチョ(1999年 光文社文庫 異形コレクション14『世紀末サーカス』)
  • 私のように美しい……(2002年 光文社文庫 異形コレクション23『キネマ・キネマ』)
  • ヴィデオ・スターの悲劇(2002年 早川書房 S-Fマガジン 2003年1月号『ことのはの海 カタシロノ庭』)
  • ミューズ(2003年 光文社文庫 異形コレクション26『夏のグランドホテル』)
  • イスタンブール(ノット コンスタンティノープル)(2005年 光文社文庫 異形コレクション32『魔地図』)
  • レニングラードの昼 ペテルブルクの夜(2009年 光文社文庫 異形コレクション42『幻想探偵』)
  • アントンと清姫(2010年 早川書房 S-Fマガジン2010年9月号「東京SF化計画」)
  • 百万本の薔薇(2012年 講談社 小説現代2012年12月号)(2013年、創元SF文庫『極光星群 年刊日本SF傑作選』収録)
  • 悪魔的暗示(2013年12月 講談社 江戸川乱歩賞作家アンソロジー『デッド・オア・アライヴ』収録)
  • 小ねずみと童貞と復活した女(2015年 『屍者たちの帝国』河出書房新社、再録:2016年 年刊日本SF傑作集『アステロイド・ツリーの彼方へ』創元SF文庫)
  • 舟歌(2015年、人工知能学会誌「人工知能」Vol.30)(2017年 文春文庫『人工知能の見る夢は AIショートショート集』収録)
  • ハンノキのある島で(2017年 小説現代4月号、日本文藝家協会編『短篇ベストコレクション 現代の小説2018の収録)
  • グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行(2018年 Amazon Single)
  • 浜辺の歌(2019年 『NOVA 2019年秋号』河出書房新社)
  • プシホロギーチェスキー・テスト(2019年 小説現代秋号乱歩賞特集)
  • 本の泉 泉の本(2019年 S-Fマガジン2020年2月号)
  • アイリーンの肖像(2020年 『幻想と怪奇 1 ヴィクトリアン・ワンダーランド 英國奇想博覧會』新紀元社)
  • 二つと十億のアラベスク(U NEXT、Kindle Single 2020年)
  • 桜の園のリディヤ(2021年 S-Fマガジン2021年4月号 漫画家の佐々木淳子と合作)
  • フランス革命最初期における大恐怖と緑の人々問題について(樋口恭介・編『異常論文』)
  • 未来への言葉(日本SF作家クラブ・編 『2084年のSF』 早川文庫)
  • 秘密(日本SF作家クラブ・編 『AIとSF』 早川文庫)
  • 楽園の泉の上で (小説すばる2022年五月号掲載、『雨の中で踊れ 現代の小説ベストコレクション2023』(文春文庫、2023年)収録
  • アッシャー家は崩壊しない 『幻想と怪奇 ショートショート・カーニヴァル』(新紀元社、2023年)収録
  • 百合の名前 『幻想と怪奇 不思議な本棚 ショートショート・カーニヴァル』〈新紀元社、2024年〉収録
  • 孤独な耳 『サイボーグ009トリビュート』(河出書房新社、2024年)

外国語翻訳

[編集]
  • "La ciotola della vuota dimenticanza" (「空忘の鉢」イタリア語訳)2011年、”La ciotola della vuota dimenticanza”『Alia Storie』翻訳:マッシモ・スマレ(Massimo Soumare'
  • ”Lest You Remember” (「空忘の鉢」英語訳)『Speculative Japan 3』Kurodahan Press、翻訳:ジム・ヒューバート(Jim Hubbert)
  • "Anton and Kiyohime" (「アントンと清姫」英語訳) 2012年、Tomo: Friendship Through Fiction?An Anthology of Japan TeenStories, Edited by Holly Thompson, Stone Bridge Press収録。翻訳:ハート・ララビー(Hart Larrabee) 。 2011年3月11日の東北・東日本大震災チャリティのための出版。
  • "Barcarolle" (「舟歌」英語訳) 2019年, Intelligence, Artificial and Human: Eight Science Fiction Tales by Japanese Authors, 翻訳:シャーニ・ウィルソン(Sharni Wilson) 。
  • 接骨木之岛 (「ハンノキのある島で」中国語訳 ) 2019年 台海出版社『時光囚徒』 訳/祝力新
  • "Anton e Kiyohime" (「アントンと清姫」イタリア語訳) 2020年, Delos Books, 翻訳:マッシモ・スマレ(Massimo Soumare' 2020年 Delos books 」  
  • "Swan Knight" (「白鳥の騎士」)2024年、Luna Press Publishing, Edinburgh 翻訳: Sharni Willson

翻訳

[編集]
  • ジョン・グリビン『ビッグバンとインフレーション 世界一短い最新宇宙論入門』(原文英語)2016年、Amazon Single

アンソロジー編纂

[編集]
  • 『時間はだれも待ってくれない 21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集』(2011年9月 東京創元社)ISBN:978-4-488-01339-4
    • 冷戦終結後、ほとんど紹介されなかった東欧幻想文学を21世紀に書かれた作品で構成するアンソロジー。東欧文学史上初、十カ国十言語を重訳なし、オリジナル言語からの直訳を実現。

評論

[編集]
  • 『ミステリとしての「カラマーゾフの兄弟」 スメルジャコフは犯人か?』 2013年5月 東洋書店 ISBN 4864591105    
    • 大著『カラマーゾフの兄弟』の瑕疵に見える二か所は瑕疵ではなく、フョードル殺しの真犯人につながる証拠かもしれないとして、原著を精読。事件当日のタイムテーブル完全版を作成する等、精緻に名作を掘り起こして光を当てる。

CD解説

[編集]


朗読版

 ・『カラマーゾフの妹』 (Amazon Audible  朗読:小長谷勝彦)

 ・「二つと十億のアラベスク」 (Amazon Audible  朗読:池澤春菜

ランキング(長編のみ。データ不完全)

[編集]
  • 『ムジカ・マキーナ』 SFマガジン ベストSF1995 国内長編部門第4位
  • 『カント・アンジェリコ』 SFマガジン ベストSF1996 国内長編部門7位
  • 『架空の王国』 SFマガジン ベストSF1997 国内長編部門7位
  • 『アイオーン』 SFが読みたい! 2002年国内部門13位
  • 『赤い星』 SFが読みたい! 2008年国内部門5位
  • 『時間は誰も待ってくれない 21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集』 SFが読みたい! 2008年海外部門 8位
  • 『カラマーゾフの妹』 SFが読みたい! 2012年国内長編部門10位、本格ミステリベスト10 2012年国内部門11位、このミステリーがすごい!2013 2012年国内部門第7位、週刊文春ミステリーベスト10 2012国内部門第3位
  • 『翼竜館の宝石商人』Apple Japanが選ぶ2018年ベストミステリー
  • 『まぜるな危険』 第4回細谷正允賞受賞 第42回日本SF大賞候補 『SFが読みたい! 2022年版』国内作品第4位 2021年度センス・オブ・ジェンダー賞候補
  • 『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』 『SFが読みたい! 2024年版』 国内第一位、第44回日本SF大賞候補 第55回星雲賞日本長編部門受賞

[編集]
  1. ^ 高野史緒』 - コトバンク
  2. ^ 『文藝家協会ニュース』2013年4月号

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]