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音圧レベル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

音圧レベル(おんあつレベル、: sound pressure level[1])とは、音圧の物理的な大きさを基準となる音圧との比の対数(レベル)として表すもので[2]、 基準となる音圧との比の2乗について、対数の底を10とする常用対数の10倍により表したものである[3]無次元量であり、単位デシベル[dB]が用いられる。

音圧は圧力であり、静圧からの変動分として表される[4]可聴域にある純音は同じ周波数であれば、音圧が大きいほど大きなとして認識される。音圧の単位は Pa(パスカル)であるが、人間が認識しうる音の大きさの範囲は音圧の実値では広範囲にわたるため、人間の聴覚特性に合わせ、音圧を基準となる値との比の対数をとった量である音圧レベルで表すことが多い。

定義

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音圧 p[Pa] に対して、音圧レベル Lp[dB] は次のように定義される。

基準値 p0 は、空気中では 20 μPa であり、正常な聴力を有する人間の 1 kHz における最小可聴値とされる値である[3]。なお、現在の等ラウドネス曲線 (ISO 226:2003) によれば 1 kHz における最小可聴値は 30 μPa 程度とされる。基準値は、水中など空気以外の媒質では 1 Pa が用いられる[2]

音圧としては瞬時音圧を取ることもできるが、特に指定が無い限り実効値が用いられる[2]。この「実効値」は一定時間にわたる平均値であるが、また音圧(瞬時音圧)が正負を変動する値であることから、二乗平均平方根が採られる。音圧レベルについては、音圧の2乗について比の対数をとることから、次元としてはエネルギー的平均値となる。

音圧レベルの単位はデシベル [dB] とされるが [dB SPL] と表記することもある。

平面進行波の場合、音圧レベルと音の強さのレベル(音響インテンシティレベル)はほぼ同じ値となる[3]。 これは、音圧レベルと同様に、音響インテンシティ(音の強さ)I[W/m2]をデシベルとして表した音響インテンシティレベル(音の強さのレベル)LI が、基準となる音響インテンシティI0を、10-12 [W/m2]として、

[dB]

と定義され、平面進行波において、音響インテンシティI[W/m2]は、実効音圧prms [Pa]、媒質の密度ρ [kg/m3]、媒質中の音波の速度c [m/s]を用いて、と表されることから、音圧レベルLp

となり、ρcの値は温度と気圧により異なるが、常温常圧では400に近い値であり、値をデシベルで表すときには、実用的にはρc = 400とおいて

となることによる[5]

聴覚特性との対応

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人間の聴覚特性により、同じ音圧レベルの音であっても、周波数の違いによって異なる大きさの音として認識される。このような聴覚特性を踏まえた音の大きさ(ラウドネス)を表す量としてラウドネスレベルがある。また、ラウドネスレベルを近似するために、周波数による重み付けを行い算出した音圧レベルが用いられており、代表的なものとしては騒音レベルがある。

騒音レベルは、ラウドネスレベル(音の大きさのレベル)を近似的に測定しようとするものであるが、騒音レベルの値はあくまで物理量であり、聴覚の感覚量であるラウドネスレベルとは異なることから、単位を適切に使い分け、明確に区別して混同しないようにしなければならない[6]

ラウドネスレベル

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ラウドネスレベル音の大きさのレベル)は、ある音の大きさ(ラウドネス)について、同じ大きさに聞こえる周波数1000ヘルツの純音の音圧レベルの値(単位:デシベル[dB])で表した量である。単位はフォン (phon)[注釈 1]。 聴覚特性に基づく量として定義される量であるため、個体によりラウドネスレベルの値は異なり、本来は1000Hzの純音とのラウドネスマッチングを行う必要がある[8]

騒音レベル

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騒音レベルは、定義式自体は音圧レベルと同一であるが、音圧(実効音圧)p をそのまま用いるのではなく、ヒトの聴感に合わせるためあらかじめ規定のバンドパスフィルタを通した値を用いる。

騒音の測定に用いる聴感補正は、A特性によるものが一般的である。A特性(周波数重みづけ特性A)は、フレッチャー=マンソンの40 phon[注釈 2]における等ラウドネス曲線を逆にしたものに近似される。このA特性により周波数重みづけを行った音圧pAを用いて算定した音圧レベル(A特性音圧レベル)LAを、騒音レベルといい、騒音の大きさの評価に用いられる[9]。単位は音圧レベルと同じデシベル[dB]である。

通常用いられるサウンドレベルメータ(騒音計)には、このような周波数による聴感補正を行う周波数補正回路が、ラウドネスレベル(音の大きさのレベル)を近似的に測定する目的で挿入されている[10]

「騒音レベル」という名称は、日本特有のものであるが[注釈 3]、上式により定義される量 LA は、各種の騒音評価尺度の基本量として国際的に広く用いられている[11]

その他

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音楽の世界では、「耳で聞いた平均的な音の大きさ」を俗に「音圧」と呼ぶことがある。200x年代後半以降、俗に「音圧の大きなサウンド」として、コンプレッサーを用いて信号レベルを常に目一杯に振ったようなマスタリングが行われることが増えた。

脚注

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注釈

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  1. ^ 別名ホンホーン[7]
  2. ^ 1000Hz、40dBの音圧レベルの純音に等しい音の大きさの、各周波数における音圧レベル(等ラウドネスレベル)
  3. ^ 国際的にはA特性音圧レベル: A-weighted sound pressure level)という。

出典

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  1. ^ IEC 60050 - International Electrotechnical Vocabulary - Details for IEV number 801-22-07: "sound pressure level"”. electropedia.org. 2025年2月21日閲覧。
  2. ^ a b c 「音圧レベル」ある音圧の基準の音圧に対する比の対数。比の10を底とする対数(常用対数)を採り、20倍すれば,音圧レベルはデシベルで表される。単位記号は dB。(備考)特に指定がない限り、基準の音圧は、空中伝搬音に対しては20μPa、空気以外の媒質に対しては1 Pa。また、特に指定がない限り、音圧は実効値で表されているものとする。 参考 IEC 60050-801では、空気以外の媒質に対して、1μPaを基準の音圧としているが、誤りである。(: sound pressure level)(JIS Z 8106:2000)
  3. ^ a b c 『新版 音響用語辞典』 (2003), p. 45, 「音圧レベル」.
  4. ^ 『新版 音響用語辞典』 (2003), p. 44, 「音圧」.
  5. ^ 大野・山崎『機械音響工学』 (2010).
  6. ^ 前川・森本・阪上『建築・環境音響学』第3版 (2011), p. 15.
  7. ^ 精選版 日本国語大辞典 「ホン」(コトバンク-ホン)
  8. ^ 『新版 音響用語辞典』 (2003), p. 38, 「音の大きさのレベル」.
  9. ^ 山本・高木『環境衛生工学』 (1988), p. 82.
  10. ^ 山本・高木『環境衛生工学』 (1988), pp. 81, 82.
  11. ^ 『新版 音響用語辞典』 (2003), p. 212, 「騒音レベル」.

参考文献

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  • 日本音響学会 編『音響用語辞典』(新版)コロナ社、2003年7月。ISBN 4-339-00755-2 
  • JIS Z 8106:2000「音響用語」日本産業標準調査会経済産業省)(日本産業規格JIS Z 8106:2000(音響用語)https://kikakurui.com/z8/Z8106-2000-01.html 
  • 山本剛夫; 高木興一『環境衛生工学』朝倉書店、1988年。ISBN 4-254-26123-3 
  • 前川純一・森本正之・阪上公博『建築・環境音響学』(第3版)、2011年。ISBN 978-4-320-07707-2 
  • 大野進一; 山崎徹『機械音響工学』森北出版、2010年。ISBN 978-4-627-66751-8 

関連項目

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