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紙屑屋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

紙屑屋(かみくずや)は古典落語の演目の一つ。上方落語では『天下一浮かれの屑より』という演目で、音曲がふんだんに入った複雑な噺となっている。

2代目桂小文治5代目桂文枝が得意としていた。

あらすじ

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道楽のし過ぎで勘当され、出入り先の棟梁のところへ居候している若旦那。しかし、まったく働かずに遊んでばかりいるため、居候先の評判はすこぶる悪い。とうとうかみさんと口論になり、困った棟梁は若旦那にどこかへ奉公に行くことを薦めた。

「奉公に精を出せば、それが大旦那様の耳に届いて勘当が許されますから」

さて、若旦那が行かされた先は町内の紙屑屋(現在で言うところの古紙回収業)。早速いろいろとアドバイスを受け、主が出かけている間に紙の仕分けをやらされる事になった。

「エート・・・。白紙は、白紙。反古は、反古。陳皮は陳皮。エー・・・」

早速仕事をやり始めるが、道楽していた頃の癖が抜けずに大声で歌いだしてしまいなかなか捗らない。挙句の果てには、誰かが書いたラブレターを見つけて夢中になって読み出してしまった。一度は正気に戻って仕事を続けるが、今度は都々逸の底本を見つけて唸り出してしまう。また正気に戻って仕事を続けるが、今度は義太夫の底本を見つけ、役者になった気分で芝居の真似事を始めてしまった。そこへ主が帰ってきて

「何をやっているんですか? まったく、貴方は人間の屑ですねぇ・・・」

それに対して若旦那は

「屑? 今選り分けているところです」

概要

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上方版の演目となっている『天下一』はサイコロ賭博の目の一つで、これが出ると場にあるお金はすべて胴元のものになる決まりとなっていた。

もともとは、クズの山から出てきたサイコロで遊んでいるうちにこの目が出て、「総取りや!」とせっかくより分けたクズをかき寄せる落ちが使われていたことに由来している。

作中、踊りの場面が出てくるが、もちろん立って踊る訳にはいかないため高座で立膝になって踊る必要があり、見た目の派手さとは裏腹に演者名は相当の体力が要求される話。

踊りの素養のあった文枝の高座は、話の一演出である事を忘れてしまうほど流麗なものだったそうだ。

上方の方は『はめもの』と呼ばれる三味線やその他の楽器、歌がふんだんに盛り込まれる。

上方での演出

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上方では、恋文の件、幇間の踊り「吉兆まわし」、「義経千本桜・吉野山」の狐忠信の軍語りのくだりなどがあって、最後に「娘道成寺」となる。

鞠突きの三味線が隣の稽古屋から聞こえ出し、居候が踊り出すと、長屋中も一緒に踊り出す騒ぎとなる。

サゲは「これ!ええかげんにせんかい。あんさんがたは人間の屑じゃな!」「へえ、最前よりより分けておます」または「俵があったら入りとうございます(紙屑はに入っていたことによる)。」となる。

関連項目

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