版下 (浮世絵)
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版下(はんした)とは、書画版木の下書きである。本項では、版本ではない、一枚摺りの浮世絵版画に限定して述べる。
概要
[編集]浮世絵版画は絵師だけで生まれるものではなく、版元-絵師-彫師-摺師の分業によって成り立っている。また画題も、版元もしくは出資者が決めるものであって、絵師は彼らの要求に応えねばならない。
版元ないし出資者から注文を受けた絵師は、作図案を提出する。これが「版下」である。輪郭線のみの図である。版元の了承を得た後、名主、或いは版元業界の自主組織から、検閲を受ける必要があった[注釈 1]。
審査を通り、「改印(あらためいん)」を捺された版下は、彫師に渡る。そのまま彫摺すると、像が裏向きになってしまうので、版下を裏返して版木に貼り付け、小刀で輪郭を切り出し、不要な部分を各種鑿で浚う。鏡像を見やすくする為、版下には薄手の和紙を用い、版木に貼って乾かす[3][4][5]。彫られた結果、版下は木屑と共に消亡する。
但し、葛飾北斎の『千絵の海』や『百人一首うばがゑとき』[注釈 2]のように、揃い物が完結しなかった為、版下が現存するものもある[7][5][8][注釈 3]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 菊池ほか 1982, pp. 120、122-123.
- ^ 小林・大久保 1994, pp. 218–219森山悦乃「江戸幕府の出版統制」
- ^ 菊池ほか 1982, pp. 82–83.
- ^ 小林・大久保 1994, pp. 177–178製作の場から-企画から完成まで
- ^ a b 国際浮世絵学会 2008, p. 411大久保純一「版下」
- ^ モース 1996, p. 16.
- ^ 菊池ほか 1982, p. 83.
- ^ 鈴木 2017, pp. 480–503.
- ^ 小林・大久保 1994, p. 188小林・安達「浮世絵と共に50年」
参考文献
[編集]- 鈴木重三「『千絵の海』をめぐって」『葛飾北斎千絵の海』アダチ版画研究所、1972年。
- 鈴木重三「『千絵の海』をめぐって」『改訂増補絵本と浮世絵』ぺりかん社、2017年10月30日、480-503頁。ISBN 978-4-8315-1485-1。
- 菊池貞夫、ほか「版下」『原色浮世絵大百科事典3 様式・彫摺・版元』大修館書店、1982年4月15日、82-83頁。
- Morse, Peter (1989-8-1). HOKUSAI:One Hundred Poets. New York: George Braziller. ISBN 978-0-80761-213-2
- モース, ピーター 著、高階絵里加 訳『北斎百人一首うばがゑとき』岩波書店、1996年12月12日。ISBN 4-00-008184-5。
- 大久保純一 著、小林忠、大久保純一 編『浮世絵の鑑賞基礎知識』至文堂、1994年5月20日。ISBN 978-4-7843-0150-8。
- 国際浮世絵学会 編『浮世絵大事典』東京堂出版、2008年6月30日。ISBN 978-4-4901-0720-3。