ネズミの相談
「ネズミの相談」(ネズミのそうだん)は、寓話のひとつ。イソップ寓話とされることが多いが、古いテクストには見られない。ペリー・インデックスは614番。
英語では bell the cat というイディオムになっており、「他人が嫌がる中で進んで難局に当たる」という意味である。日本語ではこの英語の言葉を翻訳した「猫の首に鈴をつける」という成句でも知られる。
出典
[編集]この話は15世紀末にヴェネツィアで出版されたアブステミウス (Laurentius Abstemius) (イタリア語でアステーミオとも)の寓話集である『百話集』(Hecatomythium)に見られる[2]:224。日本の江戸時代の『伊曽保物語』には下巻第17「鼠の談合の事」としてこの話を収めるが[2]:222-224、アブステミウスのものよりかなり内容が詳しいため、アブステミウスが出典ではないかもしれない[3]:43-44。ほかに『為愚痴物語』(1662年刊)では長文の物語に、『うかればなし』(1682年頃)では笑話に直されている[3]:33。
17世紀イギリスのロジャー・レストレンジによる寓話集やラ・フォンテーヌの寓話詩にはアブステミウス集から採録している[2]:224。
明治以降の国定教科書に繰り返し取り上げられた話の一つである[2]:272。
あらすじ
[編集]ネズミたちは、いつも猫のためにひどい目にあわされていた。何とかしようとネズミたちが集まって相談し、その中の一匹が、「猫が来たらすぐわかって逃げられるよう、猫の首に鈴を付けよう」と提案する。皆は名案だと喜んだが、では誰が猫に鈴を付けに行くのかという段になると、誰もその役を買って出る者はおらず、ネズミたちは猫に怯えて暮らすしかなかった。
教訓
[編集]いくら素晴らしい案でも、実行できなければ絵に描いた餅であり、無意味である。
脚注
[編集]- ^ “Conseil tenu par les Rats”. Choix de fables de La Fontaine. 1. Tsoukidji-Tokio. (1894)
- ^ a b c d 小堀桂一郎『イソップ寓話』講談社学術文庫、2001年(原著1978年)。ISBN 4061594958。
- ^ a b 伊藤博明「「猫の首に鈴をつける」(1) : アステーミオ『百話集』をめぐって」『埼玉大学紀要 教養学部』第46巻第1号、2010年、31-60頁、doi:10.24561/00015831。
関連項目
[編集]- アイソーポス(イソップ)