クレイトポン
プラトンの著作 (プラトン全集) |
---|
初期 |
ソクラテスの弁明 - クリトン エウテュプロン - カルミデス ラケス - リュシス - イオン ヒッピアス (大) - ヒッピアス (小) |
初期(過渡期) |
プロタゴラス - エウテュデモス ゴルギアス - クラテュロス メノン - メネクセノス |
中期 |
饗宴 - パイドン 国家 - パイドロス パルメニデス - テアイテトス |
後期 |
ソピステス - 政治家 ティマイオス - クリティアス ピレボス - 法律 第七書簡 - 第八書簡 |
偽書及びその論争がある書 |
アルキビアデスI - アルキビアデスII ヒッパルコス - 恋敵 - テアゲス クレイトポン - ミノス - エピノミス 書簡集(一部除く) - 定義集 正しさについて - 徳について デモドコス - シシュポス エリュクシアス - アクシオコス アルキュオン - 詩 |
『クレイトポン』(希: Κλειτοφῶν, 羅: Clitopho, 英: Clitophon)とは、プラトン名義の短篇の対話篇。副題は「徳のすすめ(勧告)[1]」。
古代にトラシュロスがまとめた四部作(テトラロギア)集36篇の中に含まれるが、プラトンの真作であるかについては疑義が呈されることも多い[2]。
作中の対話者であるクレイトポンや、話題に出てくるトラシュマコスやリュシアスといった人物、ソクラテスに対する姿勢批判、そして「正義」に関するその内容など、全体としてその設定や内容が『国家』(の第1巻)と近しいので、四部作(テトラロギア)集においては、『国家』や『ティマイオス』『クリティアス』と対にされている。
構成
[編集]登場人物
[編集]年代・場面設定
[編集]ソクラテスがクレイトポンに、最近「クレイトポンがリュシアスに、『ソクラテスと話してもつまらないし、トラシュマコスと話す方がずっと面白い』と話していた」と話してくれた人がいたと切り出す。
クレイトポンは、ソクラテスを褒めている部分もあり、その伝聞は不正確だと言いつつも、2人はいい機会だから腹を割って話そうということで合意する。
クレイトポンはまず、ソクラテスを褒める点として
- 魂の世話の重要性
- 徳からこそ富や善きものが生じる
- 悪は無知から生じる
- 徳は教えられる
といった、よく知られたソクラテスの「徳・哲学のすすめ」に関する一連の主張を挙げ、これらを讃える。
そして次に、クレイトポンは、自分の関心・不満は「その先」にあるのだと述べる。彼は、ソクラテスの仲間と「正義」について問答した例を挙げつつ、ソクラテスやその仲間は、「徳・哲学のすすめ」は盛んにするが、いざその知識・技術・成果について問うと、それには答えられないと指摘・批判し、話が終わる。
補足
[編集]本篇は、初期対話篇に頻繁に見られるようなソクラテス等の議論の「行き詰まり」(アポリア)ぶりを批判する構成になっている。ソクラテスと問答した相手が「行き詰まり」(アポリア)に苛立ったり、ソクラテス自身が自嘲する構成の対話篇は他でも見られるが、本篇のように相手に一方的に批判されたまま終わる構成は珍しい。
クレイトポンは、『国家』の第1巻において、ソクラテスの姿勢・考えに批判的な対話者であったソフィストのトラシュマコスに同調する話者として、わずかに登場するが、本篇はその設定・内容を引き継いで書かれたものと考えられる。
内容
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
日本語訳
[編集]- 『プラトン全集 11 クレイトポン 国家』 田中美知太郎訳、岩波書店、1976年、復刊2005年ほか。後者は藤沢令夫訳
- 『エウテュデモス/クレイトポン』 朴一功訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2014年
- 『アルキビアデス クレイトポン』 三嶋輝夫訳、講談社学術文庫、2017年