カボチャ属
カボチャ属 | |||||||||||||||||||||||||||
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さまざまな色のカボチャ属の果実
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||
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シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
カボチャ属(カボチャぞく、学名: Cucurbita)は草本性つる植物の属の一つで、ウリ科に含まれる。アンデスおよびメソアメリカが原産。食用の果実はかぼちゃとして知られ、その果実と種子を採るために世界中で栽培されている。
カボチャ属のほとんどの種は巻きひげをもち数メートルの長さに成長する草本性つる植物であるが、ペポカボチャとセイヨウカボチャは非つる性品種も開発されている。カボチャの黄色や橙色の花には雌花と雄花の二種類があり、雌花が果実を、雄花が花粉を作る。多くの種には送粉者となる専門の蜂がいるが、蜜蜂など、より一般的な食性の昆虫も花粉を媒介する。
属の分類については議論があり、認められている種の数は13種から30種まで幅がある[2]。栽培種は、C. argyrosperma、クロダネカボチャ、セイヨウカボチャ、ニホンカボチャ、ペポカボチャの5種である[3]。これらすべて、成熟果が数か月間貯蔵可能であることから冬かぼちゃ(英: winter squash)として扱われるが、ニホンカボチャの一部の品種には夏かぼちゃ(英: summer squash)としてのみ利用したほうがよいものもある。
概説
[編集]生態
[編集]カボチャ属の種は二つの大きなグループに分けられる。一つめは、一年生もしくは短命の多年生つる植物で、中生(程度の差はあれ継続的な給水が必要な植物)のグループ。二つめは、乾燥地帯に生育する多年生で乾燥した条件に耐性のある乾生植物のグループである。栽培種のカボチャは、一つめのグループから派生したもの。
形態
[編集]茎は長さ5 - 15メートルに成長し、巻きひげを出して、近接する植物や構造物を上ったりもしくは地面に沿って伸びたりをする。ほとんどの種では節から根づくことは容易でないが、クロダネカボチャは明らかな例外であり、それほどでないにせよその他の4栽培種も節から根づく。多年生カボチャのつるは成長したまま放置すると半木本化することがある。カボチャの果実の大きさ、形、色は、外見が非常に均一なクロダネカボチャを除いて、単一種内であっても多様である[3]。ペポカボチャおよびセイヨウカボチャの形態のバリエーションはとても広範で、さまざまなその亜種や品種が全くの別種として誤認されてきた[4][5]。
典型的なカボチャ属の栽培種は、5裂した掌状分裂葉と長い葉柄をもち、葉序は互生である。いくつかの種では茎が角ばっている。地上部の全体がさまざまなタイプの毛状突起(トリコーム)で覆われているものもあり、その毛状突起は硬化してとがっていることが多い。ばね状の巻きひげはそれぞれの節から伸び、分枝している種もある。C. argyrospermaの葉は卵形から心形。ペポカボチャの葉の形はばらつきが大きい。ニホンカボチャの個体には薄い軟毛や密集した軟毛のあるものがある。クロダネカボチャの葉はわずかに角ばった形をしており、薄い軟毛に覆われている。これら4種すべて、葉に白斑のあるものもないものもある。[6]
雄花と雌花(単性花)は同一個体上にあり(雌雄同株)、葉腋から生じて個々に成長する。花は、黄色から橙色の5つの合着した花弁(花冠)と緑色の鐘形の萼をもつ。ウリ科の雄花には一般に雄蕊が5つあるが、カボチャ属には3つしかなく、それらの葯は繋がっているため1つであるように見える[7][8]。雌花には太い小花柄と、3 - 5つの柱頭をもつ下位子房があり、それぞれの柱頭に2つずつ突起がある[9]。C. argyrospermaとクロダネカボチャの雌花は、雄花よりも大きな花冠をもつ。ペポカボチャの雌花の萼は小さく、ニホンカボチャの雄花の萼は比較的短い。[6]
カボチャ属の果実は大きく、多肉である[7]。植物学上、カボチャ属の果実はウリ状果と分類される。ウリ状果は下位子房に由来する漿果の特殊な類型の一つで、厚い表皮は花托筒組織が子房のまわりに外果皮を形成し、多肉質な内部は中果皮と内果皮から構成される。「ウリ状果」という用語は主にウリ科の果実に用いられるが、この類型は広く見られ、トケイソウ属やパパイア属の果実もウリ状果とされることがある[10][11]。種子は、中央ではなく子房壁につき(側膜胎座)、大きくて扁平で、ほぼ子葉2枚からなる大きな胚をもつ[9]。果実の大きさにはかなりばらつきがあり、4センチメートルほどの小さい野生の標本や、300キログラムをはるかに超える重さの栽培種標本もある。[6]
分類
[編集]The Plant List[12]、および和名はYlist[13]による。太字は栽培種。
- Cucurbita andreana Naudin
- Cucurbita argyrosperma C.Huber
- Cucurbita cordata S.Watson
- Cucurbita cylindrata L.H.Bailey
- Cucurbita digitata A.Gray
- Cucurbita ecuadorensis Cutler & Whitaker
- クロダネカボチャ Cucurbita ficifolia Bouché
- Cucurbita foetidissima Kunth
- Cucurbita fraterna L.H.Bailey
- Cucurbita galeottii Cogn.
- Cucurbita lundelliana L.H.Bailey
- セイヨウカボチャ Cucurbita maxima Duchesne
- ニホンカボチャ Cucurbita moschata Duchesne
- Cucurbita okeechobeensis (Small) L.H.Bailey
- Cucurbita okeechobeensis subsp. martinezii (L.H.Bailey) T.C.Andres & G.P.Nabhan ex T.W.Walte
- Cucurbita palmata S.Watson
- Cucurbita pedatifolia L.H.Bailey
- ペポカボチャ Cucurbita pepo L.
- Cucurbita pepo var. texana (Scheele) D.S.Decker
- Cucurbita radicans Naudin
- Cucurbita × scabridifolia L.H.Bailey
系統
[編集]この属の系統の全容は不明であり、研究が続いている。以下のカボチャ属の系統分岐図は2002年のミトコンドリアDNA研究に基づくものである[14]。
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栄養素・毒素
[編集]栄養素
[編集]カボチャ属の果実は、種によっては特にビタミンAやビタミンCなどの良い栄養源となる。
毒素
[編集]植物中にはククルビチン、ククルモシン、ククルビタシンのようなフィトケミカルも含まれる。
- ククルビチン cucurbitin
- カボチャ属の生の種子中に含まれるアミノ酸で、カルボキシピロリジンの一種である。寄生吸虫に感染したマウスに投与すると、感染後ただちに投与を開始した場合にのみであるが、寄生吸虫の成長を阻害する効果が認められる[15]。乾燥したカボチャの種子は南瓜仁(ナンカニン)という生薬で条虫、回虫駆除に用いられる[16]。
- ククルモシン cucurmosin
- カボチャ属、特にニホンカボチャの果肉と種子に見られるリボソーム不活性化タンパク質である。ククルモシンは正常な細胞よりも癌細胞に対して、より毒性を持つ。[17]
- ククルビタシン cucurbitacin
- 野生のカボチャ属やウリ科の植物に存在する植物ステロイドの一種。野生や観賞用のカボチャに苦味があるのはこのためである[2]。哺乳類にとって有毒で、草食動物に避けさせるのに十分な量が含まれる[18]。ククルビタシンの大量摂取は、胃痙攣や下痢、虚脱をさえ引き起こしかねない[19]。野生のカボチャに含まれるこの苦味を利用し、メキシコにはその果肉を女性の胸にすりつけて子供を離乳させる地域がある[20]。栽培品種の苦味は栽培化の過程で大部分が除去されてきたが、それでも時折、ククルビタシンによる人間の中毒が報告される[2]。
歴史と文化
[編集]カボチャ属の植物は、アメリカ大陸を発見した探検隊がヨーロッパにもたらす以前から現地で栽培化されており[3]、人間にとって重要な食料と食用油の供給源となっている。
果実は少なくとも2000年間、人類の文化と関わりを持ってきた。その象徴の一つがペルーのモチェ文化の土器である[21]。クリストファー・コロンブスが新世界に到達したのち、16世紀初頭のヨーロッパではカボチャの描かれた絵画が表れ始めた[22]。パンプキンパイ、ビスケット、パン、プリン、スープなど、その果実を使った料理も数多い。また、カボチャの果実を用いる祭りや花と野菜の展示は多くの国で開かれている。
参考文献
[編集]- ^ “Cucurbita L.”. Tropicos, Missouri Botanical Garden. 2016年12月30日閲覧。
- ^ a b c ISBN 978-0-8138-2034-7 Burrows, George E.; Tyrl, Ronald J. (2013). Toxic Plants of North America. Oxford: Wiley-Blackwell. pp. 389–391.
- ^ a b c JSTOR 4255271. Nee, Michael (1990). “The Domestication of Cucurbita (Cucurbitaceae)”. Economic Botany (New York: New York Botanical Gardens Press) 44 (3, Supplement: New Perspectives on the Origin and Evolution of New World Domesticated Plants): 56–68.
- ^ doi:10.2307/3093892. JSTOR 3093892. Decker-Walters, Deena S.; Staub, Jack E.; Chung, Sang-Min; Nakata, Eijiro; Quemada, Hector D. (2002). “Diversity in Free-Living Populations of Cucurbita pepo (Cucurbitaceae) as Assessed by Random Amplified Polymorphic DNA”. Systematic Botany (American Society of Plant Taxonomists) 27 (1): 19–28.
- ^ Millán, R. (1945). “Variaciones del Zapallito Amargo Cucurbita andreana y el Origen de Cucurbita maxima” (Spanish). Revista Argentina de Agronomía 12: 86–93.
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- ^ Cucurbita Linnaeus”. Flora of China. 2017年1月25日閲覧。 “
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- ^ A Systematic Treatment of Fruit Types”. Worldbotanical. 2017年1月25日閲覧。 “
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- ^ The Plant List, Cucurbita”. 2016年12月30日閲覧。 “
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). "Cucurbita"(YList)2016年12月30日閲覧。
- ^ “Phylogenetic Relationships among Domesticated and Wild Species of Cucurbita (Cucurbitaceae) Inferred from a Mitochondrial Gene: Implications for Crop Plant Evolution and Areas of Origin” (PDF). Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (Washington, DC: National Academy of Sciences) 99 (1): 535–540. doi:10.1073/pnas.012577299. JSTOR 3057572 . Sanjur, Oris I.; Piperno, Dolores R.; Andres, Thomas C.; Wessel-Beaver, Linda (2002).
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