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アンビグラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アンビグラムambigram, またはinversion, flipscript)は、語を与えられた形式だけでなく、異なる方向からも読み取れるようにしたグラフィカルな文字のこと。テキストはいくつかの語からなる場合もあり、異なる方向で綴られたテキストは同一のものであることが多いが、違うテキストになることもある。ダグラス・ホフスタッターはアンビグラムを「2つの異なる読み方を同一のひとそろいの曲線に何とかして押し込める筆記体デザイン」と述べている。

わかりやすく言うと、文字を180度回転させたり、鏡に写したりしてできるデザインのことで、多くはシンメトリカルで、同じ語に読める。

歴史

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アンビグラムの名手ジョン・ラングドンによると、アンビグラムはラングドンとスコット・キムが1970年代に別々に進化、発展させたという[1]。キムは1981年に最初のアンビグラム集を出した時、『Inversions(反転)』というタイトルで出した。「アンビグラム」という語に言及した最初の本はホフスタッターによるもので、ホフスタッターは1983年から1984年にかけて友人たちのグループが使っていたのがアンビグラムの始まりだと述べている[要出典][2]。ホフスタッターの『ゲーデル、エッシャー、バッハ』1999年版の表紙には3次元アンビグラムが使われている。

アンビグラムが有名になったのは、ダン・ブラウンがベストセラー小説『天使と悪魔』でアンビグラムを取り上げてからである。その本で使われたアンビグラムはジョン・ラングドンが制作し、小説の主人公「ロバート・ラングドン」の名前もジョン・ラングドンから採られている。

日本語のアンビグラムについては、1986年に坂根巌夫が「新遊びの博物誌1」のなかで、「日本語はアルファベットより格段に難しく、出来るとしてもごく限られたものになるだろう」と述べている。しかし、『天使と悪魔』が邦訳されてアンビグラムが日本でも広く認知されるようになった頃から、日本語のアンビグラムも数多く作られるようになってきている。

アンビグラムの種類

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アンビグラムはいくつかの種類に分類される。

Rotational

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回転させたアンビグラムである。通常は180度回転させるが、90度または45度回転させたものもある。回転前と回転後で同じ読み方ができるのが一般的だが、まったく違う読み方になることもある。これは「Symbiotogram Ambigram」と言われ、単純な例だと、「dn」(「down」の小文字略記法)を180度回転させると「up」に読める。

Mirror

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いわゆる鏡文字のことである。鏡で反射した時に違う読み方ができる場合は「Glass Door Ambigram」と呼ばれる。ガラス戸を入る時と出る時で違う読み方ができることから付けられた名前であろう。
「鏡文字」は垂直軸に反射させたMirror Ambigramだが、水平軸に反射させたMirror Ambigramもある(いわゆる「逆さ富士」の状態)。たとえば、大文字の「CHOICE」は水平軸に反射させても同じ読み方ができる。

Figure-ground

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ある語の文字と文字(Figure)の間の空白(ground。つまり地、背景)が別の語に読めるデザインのこと[3]

Chain

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語(時には語句)が鎖の形で繰り返し繋がっているデザイン。Rotational Ambigramの場合もあれば、Mirror Ambigramの場合もある。通常、途中から読むと元の字と見える。Rotational Ambigramの時は円形に表されることもある。(サン・マイクロシステムズのロゴなどに使われている)

Space-filling

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Chain Ambigramに似ているが、2次元の平面を充填させるためにアンビグラムを敷き詰めたもの。

Fractal

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Space-filling Ambigramの一種で、敷き詰められた語がそれ自体から分岐し、自己相似的方法で小さくなったところがフラクタルになっているもの。スコット・キムの『TREE』がその例である。

Coexistence

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同じ形状によって二つ以上の語(語句)に見えるデザインのこと。

Contained matryoshka

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文字の中に別の文字が入っているデザインのこと。

Aの中にBが 若しくは Aの中にB、C、D...と入っているのが内包型(Contained)

Aの中にBが、Bの中にCが、と入っているのがマトリョーシカ型(matryoshka)

3-dimensional

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異なる角度から眺めた時、オブジェクトが異なる文字・語句に見えるデザイン。こうしたデザインはConstructive Solid Geometry(CSG)を使って発生させることができる。

Perceptual shift

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シンメトリーではないが文字の曲線をどう解釈するかによって2つの異なる語に読み取れるデザイン。

Natural

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印刷上のスタイリングの必要なく、自然な状態で書かれてもシンメトリーを持つもの。たとえば「dollop」と「suns」はそのままでRotational Ambigramsになり、「bud」は垂直軸に反射されたMirror Ambigramに、大文字の「OXIDE」は水平軸に反射されたMirror Ambigramになる。また、縦書きに大文字の「TOOTH」は垂直軸に反射されたMirror Ambigramになる。

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AmbiScriptはアンビグラムを遺伝子データの操作ならびに解析の助けとして使っている。

グラフィックデザインにおいては、アンビグラムは錯視シンメトリー視覚で楽しむものとして使われる。その愛好家は形と内容の間にある関係でそれを評価する。とくに独特のシンメトリーから、宣伝ロゴ、本やアルバムのカバー、入れ墨のデザインなどに利用されている。

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  • Panama Oxridge『Justin Thyme』 - 「Justin」のロゴを180度回転させたRotational Ambigramが「Thyme」に見える仕掛け。
  • ジョン・ラングドン『Wordplay』 - タイトルを180度回転させたRotational Ambigramも「Wordplay」と読める仕掛け。
  • 結城浩数学ガール・ゲーデルの不完全性定理』 - 物語に登場する図書館のロゴ・蔵書印が左右対称のアンビグラムとなっている。
  • 西尾維新 ローマ字表記がNISIOISINであり、NISIOのOを中心に180°回転させたアンビグラムとなっている。

音楽

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企業

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日本国有鉄道(JNR)のロゴ
Nissin
New Man

その他

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곰 / 문 (クマ/ドア 韓国語で)

脚注

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  1. ^ “The doodle bug”. The Telegraph. (April 11 2005). http://www.telegraph.co.uk/arts/main.jhtml?xml=/arts/2005/12/04/svambigram04.xml 2007年9月30日閲覧。 
  2. ^ [1][リンク切れ]
  3. ^ Figure/ground ambigram at flickr。黒=Figure=「BLOCK」、白=ground=「BABY」になる。

参考文献

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  • Kim, Scott, Inversions, Byte Books (1981)
  • Hofstadter, Douglas R., "Metafont, Metamathematics, and Metaphysics: Comments on Donald Knuth's Article 'The Concept of a Meta-Font'" Scientific American (August 1982) (republished in the book Metamagical Themas)
  • Langdon, John, Wordplay: Ambigrams and Reflections on the Art of Ambigrams, Harcourt Brace (1992, republished 2005)
  • Hofstadter, Douglas R., Ambigrammi, Hopefulmonster Editore Firenze (1987) (in Italian)
  • Polster, Burkard, Les Ambigrammes l'art de symétriser les mots, Editions Ecritextes (2003) (in French)
  • Polster, Burkard, Eye Twisters: Ambigrams, Escher, and Illusions, web-based book available at http://www.maths.monash.edu.au/~bpolster/ambigram.html (date unknown)
  • 五十嵐龍也 『逆立ちしても読める本 アンビグラム作品集』 オークラ出版 (2009)

関連項目

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外部リンク

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