多国前向き研究: ICUにおける薬物投与ミス :ESICM ・SEE
2009年 03月 13日
医療過誤のうち、薬剤医療過誤(medication error)を処方期(prescription stage)と投与期(administration stage)に分け、検討。
ICUの1名の患者あたり1日1回弱の投与過誤があり、生命や臓器障害を与えるインパクトがあるとの報告
Errors in administration of parenteral drugs in intensive care units: multinational prospective study
BMJ 2009;338:b814, doi: 10.1136/bmj.b814 (Published 12 March 2009)
【目的】 多国レベルの評価によるICUの注射薬剤の投与過誤の頻度、特性、寄与因子、予防的測定
【デザイン】 観察研究、前向き、24時間横断的研究で、スタッフの自己報告
【セッティング】 113 のICU(27ヶ国)
【被験者】 ICUの1328 成人
【主要アウトカム測定】 過誤数;過誤のインパクト;過誤特性分布;寄与・予防要因の分布
【結果】 441名の患者への影響を与えた、861の過誤の報告
100患者×日数あたり、74.5(95%信頼区間 69.5-79.4)
4分の3は、不作為による過誤(errors of omission)に分類される項目
12名の患者(研究対象の0.9%)は、薬物投与期における過誤により、永続的有害事象もしくは死をもたらす
多変量ロジスティックにて、少なくとも1回の注射投与過誤のオッズ比は、臓器障害数を増加させる (1臓器不全あたりのオッズ比 : 1.19, 95% 信頼区間 1.05 ~ 1.34)
同様に、静注薬剤使用 (yes v no: 2.73, 1.39 ~ 5.36)
注射薬剤数(1回の注射投与あたりの増加: 1.06, 1.04 ~ 1.08)
ICU患者への定型的介入 (yes v no: 1.50, 1.14 ~ 1.96)
大規模ほどなICU(1床増加毎: 1.01, 1.00 ~ 1.02)
看護婦あたりの患者数(1人増える毎に: 1.30, 1.03 ~ 1.64)
占有率 (10% 増加毎: 1.03, 1.00 ~ 1.05)
注射薬剤過誤の頻度のオッズ比は、以下で減少basic monitoringの存在 (yes v no: 0.19, 0.07 ~ 0.49)
重大なインシデント報告システムの存在(yes v no: 0.69, 0.53 ~ 0.90)
看護シフト変更時のルーチン・チェックの確立(yes v no: 0.68, 0.52 ~ 0.90)
ユニット・サイズに対して患者回転比率の増加 (1人の患者増加毎に: 0.73, 0.57 ~ 0.93)
【結論】 治療投与期における点滴薬品に関わる過誤は普通に生じ、ICUの安全性に重大な影響を及ぼしている。重症患者のケアの複雑性が増すほど、過誤報告システムやルーチンチェックの組織化要因はそのような過誤リスクを減少させる
「”まず、害を与えないこと”」("Primum non nocere" 2005年 09月 01日::由来にうさんくささがある)が、治療において、リスクとベネフィットのバランスということでまず念頭に置かれる。オランダの21病院の研究で2004年意図しない有害事象が130万入院あたり約6%生じていること(BMJ 2007;334: 925. )が示された。集中治療においては、その複雑さは飛行以上のリスクが充満している(BMJ 2000;320:745-9.)。
多国sentinel events evaluation (SEE 1) 研究(Intensive Care Med 2006;32:1591-8.)で、205のICUにおいて、5項目のカテゴリー(ドレーン、ライン、人工気道、装置、アラーム操作、医薬品)で、100患者×日において38.8のインシデント数。
24時間横断研究にて、薬剤医療過誤(処方期、投与期)はユニットスタッフ報告で100人年あたり10.5とされた。第2多国sentinel events evaluation study (SEE 2)で選択されたトピックとなったらしい。
患者の安全のためには、人的集約とシステム化が大事・・・そのためにはコストをかけることが重要
マスコミや司法によれば、一個人の犯罪にされてしまって終わりだが、実は、国をトップとした医療施策の問題であることを強調したい
by internalmedicine | 2009-03-13 14:19 | 医療と司法