高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)について
2009年 02月 17日
治療抵抗性高血圧の定義を採用したことで、本来は利尿剤主体の併用療法となるべきなのに、”Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬の5剤のみが第一選択薬”と横並び表現が継続されている。また、特殊な病態の中で無呼吸は特記されているのにポイントにはいかされてない、脳血管障害慢性期血圧設定理由が理由付けになってないなど・・・まじめな各論と違う要約の存在ということで実にちぐはぐ・・・支離滅裂・・・最低のガイドライン
めんどくさいので、アステラスがまとめた改訂ポイント
①高血圧管理計画のためのリスク層別化に用いる予後影響因子が詳細となり、近年急増しているメタボリックシンドロームやCKD(慢性腎臓病)が追加された。2.血圧値の分類と危険因子の評価
②血圧値に基づいた脳心血管リスク層別化において、正常高値血圧(130-139/85-89mmHg)のリスクも示され、それに伴い高血圧管理計画も改訂された。
2.血圧値の分類と危険因子の評価 3. 初診時の高血圧管理計画と降圧目標
③24時間の血圧管理の重要性から、診察室血圧のみならず家庭血圧に関する降圧目標が示された。また、新たに心筋梗塞後および脳血管障害を合併した高血圧患者に対する降圧目標が示された。3. 初診時の高血圧管理計画と降圧目標
④降圧治療に用いる薬剤として、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬の5剤のみが第一選択薬になり、それぞれの積極的適応に関して新たに示された。
5. 降圧薬治療⑤臓器障害や他疾患を合併する高血圧に関する治療計画が改訂され、メタボリックシンドロームを合併する高血圧患者に対する治療計画についても詳細に記載されるようになった。
6. 合併症をともなう高血圧の治療A. 脳血管障害
B. 心疾患
C. 腎疾患
D. 糖尿病
E. メタボリックシンドローム
一般検査:初診時と年1回
・一般尿検査
・血液検査
・生化学:BUN,Cr、Na,K,Cl、TG、HDL、総コレステロール、LDL、PG、T.bil、GOT、GPT、γGTP
・胸部レントゲン写真
・心電図
・Cr→eGFR推定
・家庭内血圧モニタリング
糖代謝・炎症リスク評価
・HbA1c、空腹時血糖>100 mg/dLの場合75g OGTT
・hsCRP
二次性高血圧の精査
・問診、身体所見、一般臨床検査から疑われる場合
・早朝安静臥位30分:PRA、アルドステロン、コルチゾール、ACTH、カテコラミン三分画
・夜間経皮酸素分圧モニタリング
・二次性高血圧の確定診断:専門医:副腎CT、腎血流エコー、腎血流シンチ、副腎シンチ、副腎静脈サンプリング、睡眠ポリグラフィーなど
無呼吸症候群について・・・専門学会でも未だにSASと、国際的には一般的でない呼称がなされている主に閉塞型無呼吸症候群(OSA)
前述のごとく、無呼吸スクリーニングのため、夜間経皮酸素分圧モニタリングをわざわざ使う理由がわからない・・・酸素飽和度モニタリングが一般的だとおもうのだが・・・
経皮酸素分圧ってのは、あまり普及してないと思う・・・参考(J Jpn Coll Angiol, 2005, 45: 299–304 : pdf)
睡眠時無呼吸症候群簡易検査自宅配送サービスなどをテイジンなどもやり始めているのでそれ使えば、専門機器無くても検査できるのだから、もうちょっと力を入れればいいのに・・・
ただ、今回は第7章.5.睡眠時無呼吸症候群として、まとめてあり、従来より詳細な紹介となっている
1.睡眠時無呼吸症候群は、肥満とともに増加し、メタボリックシンドロームの高リスク群として、今後、本邦でも増加する二次性高血圧の背景病態と考えられる
2.本邦の睡眠時無呼吸症候群の特徴として、小顎症など顔面骨格の特徴による非肥満例も多い
3.昼間の眠気を訴える典型的な肥満冠者はもとより、夜間尿、夜間呼吸困難、夜間発症の心血管イベントよあ、治療抵抗性高血圧、特に治療抵抗性早朝高血圧、正常血圧にもかかわらず左室肥大を示す例では、積極的に睡眠時無呼吸症候群を疑う
4.睡眠時無呼吸症候群では、夜間低酸素発作時に血圧返送を伴う”non-dippier・riser型” 夜間高血圧を示し、その夜間高血圧は早朝へ維持し、「早朝高血圧」として検出されることが多い
5.重症睡眠時無呼吸症候群を合併するI度、II度の高血圧患者では、まず持続性用あう呼吸療法を行う
6.降圧目標レベルは、胸部大動脈や心臓への睡眠時胸腔内陰圧負荷の増大を加味して、特に夜間血圧を含めた、より厳格な降圧療法を行う
・・・だが、まとめをするような、お偉い先生たちの考えは相変わらずのよう・・・・
JNC-7では、一番うえにOSAが原因の特定できる高血圧ということで記載されている
「職場高血圧」・「仮面高血圧」という造語にご用心 2005年 07月 21日に記載したような馬鹿な表現が今回なくてほっとした・・・奇をてらいすぎて混乱をもたらすような暴走は良くない
・α遮断剤について
とんでも 高血圧ガイドライン 2004年 11月 26日で、問題にした遮断薬は・・・「医科のベル薬剤は、降圧効果自体が限定的であるばかりでなく、心血管予後の改善を証明した臨床試験がない。従って、それぞれの薬剤に適応となる病態に限って、主要高圧薬に併用する薬剤として位置づけられる」として主要薬剤から脱落してはいるが、相変わらず、”早朝の高血圧に対する眠前投与などの投与法”の記載があり、老人などの夜間排尿時転倒などの危険を加味していない・・実に無責任な記載に終始
治療抵抗性高血圧
治療抵抗性高血圧のAHAステートメント 2008年 04月 13日に準じたもの
2剤併用の相加的メリットとして、サイアザイド利尿剤の併用効果は確実であり、拡張期血圧コントロール不良なら降圧利尿剤を含まないときよりは確実に下がるなどAHAステートメントにあるが、JSH2009でも、この項目でだけ、利尿剤の重要性が強調されている。
3つの作用カテゴリーとして、血管拡張薬としてのACE阻害剤・ARB、ジヒドロピリジン系Ca拮抗剤、心拍数抑制薬としてのβ遮断剤・非ジヒロドピリジン系Ca拮抗剤、利尿剤のバランスをとること、一日二回へ増量、アルドステロン拮抗剤追加など・・・
第6章のひどい記載!脳梗塞・慢性期・(1)降圧目標値について
ASA/ASHガイドラインでは・・・JNCでは正常血圧は120/80mmHg未満と定義されていることを強調している。一方、2007年に改訂されたESH-ESCガイドラインではPROGRESSの結果を尊重し、脳血管障害慢性期患者の高圧目標として、130/80mmHg未満という数値を推奨している。しかし、主幹動脈閉塞、高度狭窄があるような場合には、この結果をすべてあてはめることはできず、個々の症例に応じた対応が必要である
と書いているのに
最終目標は、個々の症例により異なるため、両側内頚動脈強度狭窄例や主幹動脈閉塞例をのぞき、140/90mm Hg未満とするのが妥当と考えられる。と記載
”多国のガイドラインではA以外Bで、これを根拠にA以外をCとしている”って・・・日本語になってないと思うのだが・・・
メタボリックシンドローム・特定検診・特定保健指導のための記載
・・・言い訳に終始・・・低リスク・I度高血圧の生活指導不応例一ヶ月以内治療開始は矛盾しているのだが、矛盾してないと強弁しているところが笑える。・・・厚労省をおそれているのだろう。
by internalmedicine | 2009-02-17 15:51 | 動脈硬化/循環器