最近の医療保険系雑誌で、電子カルテについて批判的論文を目にしました。「成果を期待する」報告ではないのでとても新鮮でした。
というわけで、匿名どうしで論評をさせていただきます。
■論文では、「電子カルテが診察室にやってきた」という始まりで、患者さんが「先生大変ですね」
とよくいわれるというエピソードを紹介している。導入した当初は、確かによく聞いた言葉だ。
論文は、「電子カルテの導入が医療の現場に及ぼす影響をさぐり、
医療の質がどうのように関係するのか」を検討していくことを目的にし、まず電子カルテのルーツなるものを振り返っていきます。
■電子カルテを「医療情報システム」と定義、そのルーツを「レセコン」とし、「レセコン」の普及は病院の9割以上にのぼり、
医療における本格的なコンピュータ・システムの導入になったと位置づけています。
■次に、1980年代~90年代にかけてオーダリングシステムがIT技術とダウンサイジング、ネットワーク技術の進歩により、
登場してきたが、普及率は低いことが紹介されています。
その理由に、
①ドクターが指示を出す際に、コンピュータに入力する負担が現場で受け入れられなかった ②ソフトウエアのデザインがわるく、
入力方法が難しいこと ③90年代は医療の冬の時代で設備投資がすすまなかった ④オーダリングシステムは増収に直結するわけではない
⑤人員削減が期待できるが、診療が遅くなる ⑥入力代行をすると人員削減にならない以上のように、
経済的メリットが不透明なシステムへの投資をためらってきたのは当然であると評価しています。
さて、私が90年代に検討してきた、ドクターオーダリングシステムは、
高額で、しかも使えるオーダリングシステムとはとてもいえないという2d大要素が壁でした。あくまで主観的ですが、「使える」
と感じたのは90年代後半です。
これもあくまでえ経験上ですが、論文で後述される「安全性」
や人員削減による「効率化」は、病院全体、医療全体の人、物、金に関わるすべての、「再構築」「業務見直し」が必要でした。
システムに合わせて、業務を組み立てる発想もこれまでの業務に固執してシステムを導入する発想も、基本的に禁止とし、
医師をはじめ多くの職種で検討しました。
■筆者は、「病院業務を規定する電子カルテ」という前提で話をすすめていきます。
論点の特徴は
①電子カルテが、「現場の必要性に合わせて比較的自由に作り変えること」ができないので、「ソフト」でなく、「ハード」である。したがって、
建物と同じで、病院業務の在り方を規定する。 ②電子カルテの記入や入力、閲覧をするという操作にしたがって行う必要があるので、
ミスをすると先に進めないことがある。紙カルテは省略をしても進める。したがって、紙カルテは過去の記録や他職種の記録、
検査結果が同時に並べてみることができるが、電子カルテはルールが必要。ルールに従わないと仕事ができない。
③電子カルテには厳格な手順が必要となる。医師の指示がないと進まない。しかし、手術や緊急処置などは電子カルテは操作できず、
ミスをチェックするシステムがうまく機能しない。「急変している患者に背を向けて電子カルテの端末に向かう医師の姿」は見てられない・・・
④電子カルテを導入すると、電子カルテが想定している業務の手順に医療現場が合わせていく必要がある。実際には、
具体的な手順は医療機関毎にかなり違う。仮に、病院の手順に合わせてシステムを変更すると電子カルテが複雑になり、バグが多い。
⑤医師の入力負担が大きい。画面ばかり見ている、テクノストレスが増大し、質が低下する可能性がある。
カルテになじめない医師がやめる可能性がある。また、できない医師に事務や看護をつけ人件費が増えることもある。
■この稿の最後に、このような「電子カルテが増収に直結するとはいいにくい」し、保守や機器更新のランニングコストの増大からすると、
電子カルテが病院経営に貢献するかどうか判断は難しい。電子カルテコストが高いと現状では見ている。したがって、
「医療の質を上げるかどうかはせいぜいケースバイケースというところである」
原稿がつづくので、どういう展開になるか分からないが・・・
ここに登場する電子カルテは確かにひどいと思います。
電子カルテが頑固で、変化しない物であるとしたら、または、いろいろな病院の業務を反映させるので、複雑になり、カスタマイズできない、
バグだらけになるとしたら、誰も使いません。
"#A52A00">電子カルテシステムを総論的にレセコンルーツ説の枠組みで評価している点はおもしろいと思います。また、
ここまで役立たない電子カルテシステムがあるのだということが驚きでした。
しかし、その結果、電子カルテの情報共有性、情報開示性、真正性、見読性、
情報活用性などの可能性には一切言及されてません。後半に登場すると思いますが・・・
何れにしても、電子カルテの導入には、医師を中心に、
安全性を第一にして病院業務全般を見直し、患者さんへの待ち時間ではなく”
"#A52A00">滞在時間”短縮とサービス向上、集団医療を情報の共有化によってレベルアップ・
医療の質向上をめざすなど、目標をより具体的にして取り組んでいくことが、必要だと思います。
メーカによって規定されてしまうのも現実ですが、この取り組みで、
電子カルテはハードではなく、成長するソフトウエアであることが実感できると思いますが、どうでしょうか?
もし、実感できないときは、
ご相談ください。