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生誕29周年記念出版『肉萬』の『ウォーズマン・ビギンズ』がすごい

8月29日(金)、キン肉マンの日に、『肉萬〜キン肉マン萬之書〜』という本が発売されました。

充実の内容はamazonを見てもらうとして、ウォーズマンの生い立ちを描いた読切漫画、『ウォーズマン・ビギンズ 仮面の告白!の巻』が本当に本当に素晴らしかったです。超大作描きおろし49ページ!キン肉マンを読んでてこんなに興奮したの久し振り。ゆでたまごの描く読み切りって名作が少ないのになあ・・・。ロビンメモとかひどいし…。

ちにみにこれは現在、週刊プレイボーイの「究極の超人タッグ編」で活躍中の21世紀ウォーズマン。

20年ぐらい不遇の時代があったので、最近のウォーズフィーバーは本当に嬉しい…。


さて、『ビギンズ』の内容を軽く紹介しようと思います。

なにがすごいって、「そもそも『ロボットでもない、超人でもない』ロボ超人って何?」っていう謎が明かされたのがすごいんですよ。

この作品は、ウォーズマンの幼少時代から始まります。

どうやら母親と2人暮らしらしく、その母親(ナターシャ)は瀕死。ちなみにここでウォーズマンの本名がニコライ・ボルコフということも判明。往年のロシア人ギミックレスラーと同じですね。


そしてナターシャさんは、自らの死期を悟ってか、ニコライに亡き父の秘密を語りだします。

ニコライの父親ミハイル・ボルコフは、“ミハイルマン”のリングネームで超人レスリング東ヨーロッパチャンピオンでした。


強くて人気者だったにも関わらず、ある日突然「もっと強くなりたい、いずれ私を脅かす若い超人が現れるかもしれない」と言いだし、

「機械超人研究の第一人者、ユーリ・コピィロフというチェコの医者が、機械への改造に耐えられる強さを持っている超人を探してるんだ!」ということで、妻を残しチェコに旅立ちました。


そして半年後、戻ってきたミハイルの体は

機械超人になっていました。
「でもどんなに容姿が変わっても私たちは愛し合い慈しみ合った」ということで、この後ニコライが誕生。


しかしその幸せも長くは続かず、ある日の試合中にニコライの機械の体が暴走。対戦相手とレフェリーを惨殺したあげく、「神の領域に踏み込んだ罰だ」と言い残し、体に仕込まれていたスイッチを押してリング上で自爆…という凄絶な最期をとげました。


その話を初めて聞かされたニコライ。「パーパが機械超人…だからそのパーパの血を引くボクも…」

怖っ!そりゃいじめられるよ。



「まさかあなたにまであの手術の爪痕が… 機械のち…血が残ろうとは…」
「機械の血」!いやー、上で「ロボ超人の秘密が分かった」と書きましたが、正確には「説明されたけど余計に分からなくなった」の誤りでした。「機械の血」ってなんだよ!どういう仕組みだよ!とにかくウォーズマンは、超人から機械超人になった父親・ミハイルマンと、人間(特に明記されてないので超人かも)の母・ナターシャのハーフという珍しい例なわけですね。ミハイルマンがどれぐらい機械なのかは分かりませんが、ウォーズマンは半分は人間なので髪の毛もあるし、将来ヒゲも生えるわけですかね。


その秘密をニコライに告白した後、ナターシャさんは亡くなりますが、「ボクは機械の体を恨んでなんかいないよ だってこの体にはパーパとマーマのふたりの血が脈々と流れているんだもん 一生懸命に生きてみせるよ」という泣かせる決意を見せたニコライは、

それから10年後、立派な青年に。ミハイルが手術を受ける時に「手術さえ受ければ俺は老いることなく永遠の強さを手に入れるってことができるってわけさ!」って言ってたことを無視してガッチリ成長していました。数ページで矛盾が発生したよ!早いよ!人間の血が混ざってるからしょうがない…と思いたいんですが、『II世』に出た時に「俺はロボ超人で年をとらない」って言ってますからね…。


成長したニコライはソビエト連邦による国家発揚のための超人レスラー養成施設・SKGB(超人レスラー国家保安委員会)にスカウトされます。

「俺がパーパより偉大なレスラーになれるのか?」ということで快諾。


そしてSKGBから「未来のチャンプにズダ袋は似合わない」ということでコスチュームをプレゼントされ、「ふさわしい名前も用意してある… ヴァイナー・ムシーヌイ 英語名は…ウォーズマンだ!」

なんで英語で言っちゃったんだろ。


そこで地獄の特訓を受けたりもしつつ、


特殊な生い立ちのせいか、組織によって研究の材料にも使われます。

「西側の一流超人レスラーがここぞという時にしか使わない奥義ともいうべき隠し技を今から探し出してみろ! お前の脳コンピューターで計算しこの前にあるスクリーンに投影するんじゃ!」


「東西冷戦勃発以来 わがソビエトは遠隔感知能力の研究にもあい務めてきた」 

「すでにこの半年の訓練によってそのノウハウはお前のコンピューターに蓄積されているはずじゃ!」


この変な髪形のおっさんの、「屏風から虎を追い出せ」ぐらいの無茶ぶりにもちゃんと応えるウォーズマン。

スクリーンにはなんと、ロビンマスクが過去に見せたことない技をかける姿が。
しかも「ウォーズマンがこの技を投影したということはウォーズマン自身ロビンマスクの必殺技を既に体得しております」とのこと。便利!


そしてその光景を天井裏から除いていたのは、バラクーダ親分!

「我が一族に伝えられる一子相伝のパロ・スペシャルを探し出すだけでなく、自分のものにしていると!?」
「まさか超人レスラー未開の地といわれるソ連にこのような逸材が隠れていようとは… フフフ…半年間このクソ寒い国であの男を追い続けた甲斐があったというもの」
「やつならやってくれる きっとわが終生のライバルを倒してくれる―――」 


『ビギンズ』はこのあとバトルとかバラクーダとかの出会いが描かれてるのですが、そこら辺は買って読んでもらうとして。


II世で「パロ・スペシャルはロビン一族の技」って設定が出てきた時以来、「バラクータがウォーズマンをスカウトした時点でウォーズマンがあの技を使っているのになんでだよ!ウォーズマンの技じゃないのかよ!でもまあゆでたまごだし別にいいか」と全読者が疑問に思ってたんですが、ここにきてゆで先生は「え?元々こういう設定だけど?」と言わんばかりに辻褄を合わせに来ました。「ソ連だから超能力の軍事利用」っていうのも、ゆでっぽい説得力!ロボ超人の秘密と同じく、強引だけど納得するしかありませんね。


たとえば初代キン肉マンでマリさんが唐突に出番がなくなったのは、マリさんがビビンバと仲のいいスグルを見て「私よりお似合いだから」と思ってひっそり姿を消したから、みたいな裏設定の説明がII世の作中でけっこうあって、読者を驚愕させたことが何度かあったんですが、ひょっとしたらキン肉マンの作中部分でおかしく見えることって、全部ゆでたまごの中では設定が決まっているのかも!重いものが先に落ちるのも何か理由があるのかも!今後「ネプチューンマン物語」の中で完璧超人物理学の説明が全部されるのかも!みたいなことを思いました。


実際はそんなことなくて、誰かにつっこまれて辻褄を合わせようとしてるんでしょうけど、ゆでたまごがそんな細かいこと気にしてるのはショック!でもそのおかげでこんな裏設定が出てきて深みが増したので問題なし!

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