グリー、クックパッドのエンジニア兼人事が語る、人事にエンジニアが求められる理由 |HR NOTE

グリー、クックパッドのエンジニア兼人事が語る、人事にエンジニアが求められる理由 |HR NOTE

グリー、クックパッドのエンジニア兼人事が語る、人事にエンジニアが求められる理由

  • 採用
  • エンジニア採用手法

※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

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こんにちは。HR NOTE編集長の根本です。

先日、「人事 × ITエンジニアリング・テクノロジー」を主題にしたイベント、『人事 to ITカイギ』に参加させていただきました。主催はワミィ株式会社伊藤 和歌子氏。登壇者はグリー株式会社藤本 真樹氏、クックパッド株式会社庄司 嘉織氏。

今回は「エンジニアのキャリアパスとして人事責任者」がテーマとなっており、なぜ人事責任者にエンジニアのバックグラウンドが必要だと思ったのか、エンジニア経験者が人事業務をおこなうことで何が生まれるのか、どのような気付きを得たのかをお話いただきました。 「エンジニアを変に特別視しない人事制度づくり」「エンジニア採用の強化」「人事データの収集・活用の仕組み化」「HRTechサービスの導入」など、人事領域におけるさまざまな場面において、エンジニアが人事に加わることによる大きなメリットがあると強く感じました。本記事ではその一部をご紹介します。

人事にエンジニアのバックグラウンドが必要だと感じたその理由

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伊藤様

伊藤 和歌子(いとう わかこ)|ワミィ株式会社 代表取締役

米国留学を経て新卒でニフティに入社。システムエンジニアとして勤務。2009年よりセキュリティソフトメーカーにて、採用・研修・制度設計・全社プロジェクトの切り盛りなど、幅広い分野を担当。2016年、ワミィ株式会社を設立。人事コンサルティングや採用支援のほか、オンライン秘書サービスをテスト稼働中。

伊藤氏:「エンジニアのキャリアパスとしての人事責任者」というテーマですが、今の時代はさまざまなツールがあり、業務を効率化しようと思えばいろんな発想でできるかと思います。人事部においてもそのようなことをしていければ良いなとずっと思っているのですが、ITツールを活用するカルチャーで育ってきていなかったり、IT、エンジニアリングに関する理解が不十分であったりということがあると感じています。 

そう思ってたときに「とある記事」に出会いました。毎年秋にアメリカで開催されているHRTechカンファレンスの記事で、主催者の人が「現在ではすべての会社がIT企業であるように、すべての人事部門のリーダーはテクノロジーリーダーである」と言っていました。 

「まさにこれだ」と思い、近年、データの活用やHRTechサービスが数多く出てきている中で、人事部門の方々がIT・エンジニアリングテクノロジーに関して興味・理解をもつことは非常に重要なことだと感じました。テクノロジーに詳しい方が人事にいることで、より人事領域が発展していくのではないでしょうか。

ですので、定期的に人事やITなどの文脈でイベントや勉強会、ワークショップなどを開催し、みなさんに何かしら貢献できればと思っています。 

No Engineering、No HR|人事領域でもテクノロジーの存在は無視できない

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藤本さん

藤本 真樹(ふじもと まさき)|グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者

2001年、上智大学文学部を卒業後、株式会社アストラザスタジオを経て、2003年1月に有限会社テューンビズに入社。PHPなどのオープンソースプロジェクトに参画しており、オープンソースソフトウェアシステムのコンサルティング等を担当。2005年6月、グリー株式会社 取締役、最高技術責任者に就任。2016年10月より取締役として人事も管掌。

ソフトウェアが関わっていない仕事はほとんどない

藤本氏:私は、CTOと人事を兼ねている立場なのですが、そのときに思ったことをお話させていただきます。 まず、たとえば20年前や30年前と違い、例えばいわゆる開発に直接関連しない業務においても、何かのサービスを提供する、サービスを受けるというときに、ソフトウェアが絡んでいないことがほぼなくなってきているように思います。

なので、ソフトウェアをまったく使わないでその仕事ができるという機会は少なくなっているのではないでしょうか。  何をやってもソフトウェアとの関わりは増える一方だし、そこでエンジニアが関われることはすごく多いと感じています。その中でエンジニアならではのアプローチで物事を変えていくことが許されるのであれば、それは絶対楽しいことだと思います。

また、エンジニアが純粋にソフトウェア開発だけに関わるチーム以外のところでパフォーマンスを出すという事例はもっと増えていくべきだと考えています。エンジニアが働くフィールドをもっともっと広げていくべきだと思っています。そして、その一例として自分が関わっていければいいなと考えています。 「人事がやりたいです」と手を挙げたわけではないのですが、人事の話がきたときに、そういう意味でおもしろいなと思ってやることにしました。

人事にエンジニアの視点を入れることは、すごくいい

藤本氏:会社によると思うんですけど、「人事の方が人事っぽい仕事をしている時間」というのは、そこまで多くないと感じています。

何をしてるかというと、やれ集計していたり、やれ社員データベースからイレギュラーな人を除く仕事をしていたり、このようなことに結構な時間を使っていると思っています。

「3回同じことをしているのであれば、機械にやらせなさい」と言ってみたりしているのですが、エンジニアがより多く関わることで、よりよい人事組織になるのではないかと考えています。 人事部の中にエンジニアの視点を入れることは、すごくいいなと思っています。それはどういうことかというと、会社のカルチャーをつくる部分や制度設計、採用など、いろいろあります。

たとえば、エンジニアを採用するときに、人事部にエンジニアがいないと「エンジニアの採用の仕方がよくわからないからエンジニアの方に、手伝ってもらおう」という話がよくありますが、エンジニアが人事にいればその必要もありません。人事は会社の根幹を支えている部署で、そういう意味ではやることがいっぱいあるので、そこにどんどん自分が関わっていきたいです。

人事が、人間にしかできない仕事により時間を使えるようにしていきたい

藤本氏:私が最初におこなったことは人事のミッションの確認とメッセージングです。人事領域でいきなり何かを大きく変えるということはしていません。

なぜかというと、人事領域には人事領域固有の専門知識があり、法律や自分の知らない知識を要する部分が多く、そのあたりの把握ができないと大きな手は打てないので、今は勉強しながら模索しています。 

今おこなっていることは、「人間がやらなくてもいいな、あるいは機械がやったほうがいいな」という業務に関しては、ウェブサービスとして提供できるような準備を進めています。 また、基本的には「データサイエンスを用いて、どれだけ人事を効率的にやるか、人の主観を交えずにやるか」というアプローチが自分にできることだと思っています。

ただその手前で何が大事になるかというと、とにかくデータが集約されてないので、それを一箇所に集めていろいろ使えるようにしています。  これが結構奥が深いなと感じています。たとえば、「ある人が同じチームに何日間ジョインしていたのか」というデータをすぐ出せますか?意外に難しかったりするんですよね。

例えばですが、同じチームにずっといる人に対してアラートを出して、ローテーションを促す、みたいなことは機械でできるべきことだと思います。  人事が、人間にしかできない仕事により時間を使えるようになるということが、エンジニアリングにずっと携わってきた私ができることだし、やろうとしていることです。

集めたデータはセンシティブだからどう活かすかが難しい

藤本氏:1つ悩んでいることがあるのですが、データを集約していく中で、人事のデータはとにかくセンシティブなので、「誰が触っていいのか」という部分で、人をそんなに増やせない問題があります。

なので、今とりあえず私がやっていますが、「みんなでシステムつくっていこうぜ」とか、あるいは「外のクラウドサービスとの連携をこうしようぜ」という話がしにくい。 勤怠データ1つをとっても、休みの理由はプライバシーの部分もありますし「そのデータを使ってどうこうしようぜ」というのは意外に難しいです。

ですので、プライバシーやそれに伴うアクセス権限の問題に関しては、今後考えていかないとと思っています。新しい領域に関わるからには、人事としての専門知識をしっかりと学んでいかないというのは、このあたりが難しいなと、法律が結構絡むんだなっていうことがわかりました。  ということで、エンジニアリングという観点で人事を見るのはとても楽しいです。

面倒なこともいっぱいありますが、人事に関わることで何かやれと言われてトライしない理由はないと思います。エンジニアが外から人事を見ると、「こんなのいろいろできるんじゃないか」という話がゴロゴロあるんですよ。でもやろうと思うと、それなりの歴史的経緯、社会のしがらみ、いっぱいあって思ったより大変です。エンジニアリングのスキルに加え、調整力などの大人な力も必要だなと思いました。

エンジニアが人事にいることのメリットとは

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よしおりさん

庄司 嘉織(しょうじ よしおり)|クックパッド株式会社 技術部長 兼 人事部長

25歳から本格的にプログラミングを勉強。前職で電子書籍の立ちあげ開発リーダーなどをおこなった後、クックパッドに転職。投稿部門の部長を経て、動画配信基盤の開発、サービスのmicroservices化などに従事したあと、現在は技術部長兼人事部長を担う。

最初は人事部長の打診を断っていたが「当事者になろう」と決意した

庄司氏:私は、技術部長と人事部長を兼任していますが、最初に人事部長を打診されたときに断りました。理由はすごく単純で、人事のことがわからない人間が人事の責任者になると、さまざまな摩擦が起こるんじゃないかと考えたからです。

あとは、エンジニアとして開発がしたいという想いもあったので、実は何回か断っています。

結局なんで引き受けたかというと、任天堂の岩田社長のインタビュー記事を読んで感銘を受けたことが理由です。その記事にはどういうことが書いてあるかというと、「誰かのお役に立ったり、誰かが喜んでくれたり、お客さんが嬉しいと思ったり。

それはなんでもいいんですが、当事者になれるチャンスがあるのに、それを見過ごして、手を出せば状況をよくすることができるし、何かを足してあげられるけど大変になるからやめておこうと、当事者にならないままでいるのは私は嫌い。というか、そうしないで生きてきたんです」ということが書いてありました。

「うちの会社は何も問題ない、文句ない」っていう人は少ないと思います。そして、「ここをこうしてくれたらいいのにな」ということは、私が人事部長になることで変えていけるかもしれません。そうすると、会社をよりよくするために当事者になれるのに、自分が変えていけるのに、大変になるからやめておこうという決断を自分は今しようとしている、という思いになり、当事者になる決意を固めて人事部長を引き受けました。 

「変にエンジニアを特別視しない」ような人事制度つくりを意識している

庄司氏:私は、2016年の6月に人事部長になりましたが、最初は何もわからなくて、「人事部長って何やったらいいんだろう」というような状況でした。そこから人事部の仲間と一緒に何をしてきたのかお話させていただきます。 何をしてきたのか挙げていくと、トライアル中のものもありますが、以下のような取り組みをしてきました。

  • コアタイム廃止
  • リモートワーク制の導入(トライアル)
  • 海外スタッフの採用体制づくり
  • 新卒の通年採用
  • 協力的なエンジニア職の採用面接官を増やす
  • Rubyコミッターの採用

コアタイムの廃止について、「裁量労働制にしないの?」とよく聞かれます。実際、以前にエンジニアとデザイナーは裁量労働制だったこともあるのですが、実は、裁量労働制は特定職種しか適用できないという事情があります。

具体的には、エンジニア、デザイナーなどの企画職は裁量労働制にできるけれど、バックオフィス系は裁量労働制にはできません。私が人事部長になったタイミングでは、全社員コアタイムフレックスでしたが、コアタイムのないフルタイムフレックスなら全社員に適用できると考え、制度を改定しました。 フルタイムフレックス制を導入するに至った理由は他にもありますが、「エンジニアだけ」と感じさせてしまう制度をつくりたくないというのは、大きな理由のひとつでした。

「●●だけ」っていう制度の否定は、その恩恵を受ける側の人間が言わないといけません。エンジニア以外の人が説得力をもってエンジニアの感じ方を伝えることはとても難しく、だからこそ、エンジニアが「エンジニアを特別扱いしちゃいけない」と自ら言うべきという考えです。 また、わからないことに対する恐怖ってすごく多いと思います。

たとえば、エンジニアがいない中でエンジニアに関わる制度を決めると、エンジニアに遠慮しすぎる傾向があるように感じています。「こういうのを入れるとエンジニアって嫌がるのでは?」という話がでたときに、「いや、エンジニア、そこは何も気にしてませんよ」となることが意外にあったりします。「変にエンジニアを特別視しないように」という意味でも、エンジニアが人事部に入ることは大事だと思います。

もう一つ、大事なのがエンジニアの採用です。よく採用イベントや面接など「手伝ってください」と言われることがあったですが、人事部にいて当事者になっていないと、あくまでも手伝いしかできないんですよね。採用の手法や選考フローを変えることは、実際に自分が当事者にならないとできないので、結構そういうところでも役に立っているのでは、と思っています。

今実施している2018年度の新卒採用選考のエントリーでいうと、GitHub(※1)で公開をしています。エンジニア採用の内容を公開していて、採用フローをエンジニア目線で考えて変えていきました。ポートフォリオを作るための構造と自分の実際のポートフォリオを書くためのYAMLを提供してもらっています。

その2つのYAML(※2)を使ってHTMLをはきだすプログラムを書いて、それも含めてGist(※3)で提出してくださいといっています。 この方法には大きな利点があって、そのGistを見るだけで、応募者のプロフィールがわかるし、コードもわかるし、1ページ見るだけでかなり具体的な実力がわかります。で、そのままGitHubを見にいってGitHubでどういう活動しているかも全部見られるんです。これって多分エンジニアが人事部にいなかったらなかなか思い浮かばないんですよね。このようなことを考えられるので、エンジニアが人事部にいることはおもしろい変化をもたらすと思っています。

  • ※1 GitHub:ソフトウェアを開発するために使うソースコード管理サービスです。公開されているソースコードの閲覧や、バグ管理や修正などの機能も備えています。SNSなどの機能もあり、エンジニア同士でコミュニケーションを取ることが可能です。

 

  • ※2 YAML:文書の構造やレイアウト情報記述するために用いられるもので、構造化されたデータを表現するためのフォーマットです。かんたんにざっくり言うと、XMLやHTMLをわかりやすくしたイメージです。

 

  • ※3 Gist:GitHubの提供している断片コードの共有サービスです。1ファイル、1クラス、コードの一部分のみなど、GitHubで管理しないような小さいパーツを管理することができます。

システムの導入検討時からエンジニアがいることで、その後の運用も変わってくる

庄司氏:逆に、できなかったことの話をすると、基盤システムの入れ替えですね。「ある基盤システムが使いにくい」と思っていて、入れ替えたいんですけど、やはり基盤システムの入れ替えには結構時間がかかると感じています。

ただ、そこにエンジニアとして意見を出せるのはいいなと思っています。  入れ替えるときに「シングルサインオンに対応しているものにしてほしい」「より使いやすく自分たちでカスタマイズできるようにAPI提供しているものにしてほしい」といったことは、エンジニアがだからこそ言えることなので、導入検討段階からいろいろと要望をだせることは会社にとって大きなメリットだと思います。 また、学んだことは、人事は大変だということです。ミスが絶対に許されないんですよ。給料が振り込まれていない、人事異動の際に「この人の配属先を決めてなかった」ということを起きないって、当たり前のことをミスしないでおこなうことが求められます。そういうミスが起きてしまうと本当に大変なことになります。正常に遂行して当たり前で、ミスするとすごく怒られます。

もちろんどんな職種でもミスは無い方が良いのですが、エンジニアで言うとインフラが感覚として近いなと思いました。なのでDevOpsやInfrastructure as Code的なものの思想的な部分は結構参考になるのでは、と最近思い始めています。

最後に

 いかがでしたでしょうか。

テクノロジーサービスが増えてきている中で、エンジニアの従業員の割合が多くなってきた企業はたくさんあるかと思います。 そんな中で、エンジニア採用強化、エンジニアの評価制度、エンジニアにとって働きがいのある環境づくりなど、エンジニア経験ある人間が人事に加わることによって、非常に大きなメリットをもたらしてくれるのではないかと感じました。

エンジニア採用、エンジニアの人事制度に課題感をお持ちの人事の方、幅広いキャリアを検討されているエンジニアの方など、参考になれば幸いです。

【イベント概要】
  • イベント:人事 to ITカイギ
  • 主催:ワミィ株式会社 伊藤 和歌子
  • 日時:2017/02/17(金)19:30~
  • 場所:dots.[ドッツ] 東京都渋谷区宇田川町20-17

 

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