クマムシ博士のむしブロ

クマムシ博士が綴るドライな日記

クレーマーとまとめサイトにより社会が毀損される

東北大の教授のtwitterでの発言が炎上騒ぎになっている。


東北大、教員のTwitterでの「不適切発言」を謝罪


この教授が野球観戦をしながら、自分が応援するチームの敵とその地元を咎める発言をしたことが問題になっているようだ。発言直後から、この教授のtwitterアカウントには非難が殺到して炎上した。そして、まとめサイトにあげられてさらに延焼。この過程で東北大に苦情のメールや電話が多く寄せられたのだろう。昨日になって東北大が公式に謝罪を表明、新聞記事になるまでに至った。


東北大学教員によるツイッターにおける不適切発言について(お詫び)


私は、野球観戦でつぶやいていた独り言が、このような社会的制裁を受けるだけの妥当性は全くないと思う。確かに、この教授の発言内容は、敵対する野球チームのファンや、そのチームの地元にとって不愉快なものだろう。だから、その教授に対して直接抗議をするのは理解できる。


しかし、この個人による行為を所属組織の管理義務に結びつけて大学に苦情を入れるのは常軌を逸しているだろう。苦情を受けた大学側も、公式謝罪する必然性はなかったと思う。結果的に、この教授は不当に大きな社会的制裁を受けることになってしまった。


寛容さを放棄し、すべてに対して監視の目を向け制裁を加えるやり方では、この国の社会はますます息苦しいものとなる。今回の件のように、すぐに叩いたりクレームをつける人々は、自らの行いが社会をますます生きづらいものにしている自覚があるのだろうか。結局、クレームをつけることは、廻り廻って自分のところに返ってくる。自分で自分の首をしめているのだ。


このような社会では、大学教授などの比較的社会的地位の高い肩書きを持つ人は、実名でtwitterやブログをしなくなっていくだろう。ちょっとした不適切な発言でも、すぐにルサンチマンの攻撃対象となり、何の得にもならないからだ。そして、そうした人々が退出すると、オープンな空間での知的な情報交換や議論もどんどん減っていく。これは、結果的に、社会にとっての大きな損失となる。


これらのことを考慮すると、モンスタークレーマーを焚き付ける一部のまとめサイトも、社会的害悪であるとはっきり認定してよいだろう。クレーマーとまとめサイトがこの社会を著しく毀損しているのだ。


私の場合は、フランスに住んでいて本当にラッキーだ。仮に私が何かをやらかしたとき、クレームをつけたい人間は、私の所属先であるパリ第5大学にフランス語で苦情を言わなければならないからだ。もっとも、フランス語で苦情を言ってきたところで、事務局のフランス人はクレーマーに逆切れして終わりだろう。フランス人は、組織と個人はまったく別の存在と見なすからだ。中学生が学外で煙草を吸っているのを教師が見つけても、教師は何の干渉もしないくらいだ。


日本の組織も、クレーマーに"No"という勇気をもたないと、この国の社会はますます生きにくいものになってしまうだろう。


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