本日の転載歓迎

古山明男さんの記事

「愛国心」より「教育行政」が重大

 教育基本法改正案の国会審議が始まっている。新聞やネット上の話題のほとんどは、「愛国心」を中心に議論されている。 しかし、私は改正案のもっとも危ないところは、「教育行政」と「教育振興基本計画」のところだと思っている。


 政府案は、すでに制度疲労し、能力の限界に直面している文科省が、「もっと権限をくれればうまくいきますから」と権限を要求しているようなものだ。しかし、文科省がうまくやれるくらいなら、とっくになんとかなっているはずなのだ。


 政府案は教育行政(16条)に「法律の定めるところにより」を挿入し、「国民全体に対し直接責任を負って」を削除している。これは、教育は文科省の指揮でやることにする、と言っているようなものである。 「教育振興基本計画」も、文科省の教育指揮権を確定させるものである。これは、弊害のほうが大きいだろう。実情との乖離がひどくなる。


 不登校とか、学級崩壊とか、学力低下とかという具体的な教育問題を中央官庁の指揮で解決しようとしている限り、うまくいかないであろう。それらは、現場に自主性がないために起こっている問題だからである。それは、ソ連政府が経済を活性化しようと躍起になってもどうしようもなかったのと同じである。


 現在の学校システムでは、上から下まで誰もが、与えられた職務の枠と上司の意向を気にするしかしょうがないのである。巨大組織の悲劇である。そういうシステムを作ったのは「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」である。この法律をまず検討することが、ほんとうの教育改革になるであろう。

(転載歓迎 古山明男)



転載元:「愛国心」より「教育行政」が重大 - 教育基本法ね