Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

《make + O + C》の《O》が長大で後回しにされている実例、《make + it + C + that節》の構文で例文をAI/LLMに出力させる(元王子の違法行為の疑いと国王の判断)

最新ニュースをチェックしておこうと、ごはん食べながらBBC Newsのサイトを見ていたら、ウェブであれ書籍であれ、何らかのテクストを、どのように検索しても絶対に探し出せない実例に遭遇したので、メモっておく。

 

記事はこちら。どこからか連れてきた年少の女性たちを性の道具として、世界各国の政界・財界・アカデミアの有力者たちと次々とつながっていっていた故ジェフリー・エプスタイン*1とのつながりと、そこで生じた自身の不品行が原因で、2025年秋に王族の称号を剥奪されたアンドルー元王子に、2026年初春に公開された新たな「エプスタイン文書」において、イスラエル当局とのつながりがかなり露骨で(あるにも関わらず大手メディアはそれを無視していて)ロシアとのつながりも考えられているエプスタインに、英国の微妙な情報を流していたという疑いが生じたため、警察が動くことになり、アンドルーの兄であるチャールズ国王がそれに協力すると表明した、という報道記事である。ちなみに、今回のエプスタイン文書に対する英王室の反応は、これが最初のものとなる。

www.bbc.com

 

《make + O + C》の《O》が長大で後回しに

実例の箇所はここ。

https://www.bbc.com/news/articles/cqlgv3z79klo

第2パラグラフより:

The King has made clear, in words and through unprecedented actions, his profound concern at allegations which continue to come to light in respect of Mr Mountbatten-Windsor's conduct 

この文は、SVOCの構文だが、Oがとても長いのでOとCの順番が逆になっている形だ。つまり: 

S = The King

V = has made

C = clear

(M*2 = , in words and through unprecedented actions, )

O = his profound concern at allegations which continue to come to light in respect of Mr Mountbatten-Windsor's conduct 

 

本題は以上。こんなの、どうやって検索したって出てこないでしょ。なのでメモっておいた。

 

あとは余談。

 

 《make + it + C + that節》の構文

《make + O + C》の構文でこういうふうになるときは、仮目的語のitを使い、《make + it + C + that節》の形にするものが、うちらが「受験戦争」の中で習った「受験英語」で頻出の構文としておなじみで、実際にもときどき見かけるものである(が、ラサール石井氏のような人にとっては、排撃すべき古臭い構文なのだろう)。

ときどき見かける構文なのだが、このエントリのために自分で例文を考えるのがめんどくさかったので、AIに投げた。

 

AI/LLMに出力してもらったこの構文の文例

私が使っているのは検索エンジンDuckDuckGo内蔵のDuck AIで、これはAIというかLLM提供者のサイト外でログインすることなく(つまりLLM提供者に履歴を残すことなく)簡易的にAIを利用できるという便利なもので、検索クエリというかプロンプトを書いてEnterキーを押すと、GPTやClaudeやLlamaなどいくつかのLLMのどれかが答えてくれる。どれが出てくるかはやってみるまでわからないので、「今日のLLM占い」みたいな遊びもできる(意味はわからない)。今回は、初手でGPT-4o miniが出た。

GPT-4o mini

[プロンプト] 英語の構文の実例を教えてください。形式目的語を使った、「make it C that節」の構文の実例を3つ、挙げてください。

 
GPT-4o mini

形式目的語を使った「make it C that節」の構文の実例

  1. Make it clear that you understand the instructions.
    (指示を理解していることを明確にする。)

  2. Make it known that the meeting has been rescheduled.
    (会議が再予定されたことを知らせる。)

  3. Make it certain that everyone will be informed about the changes.
    (全員が変更について知らされることを確実にする。)

この構文は、Cの部分が形容詞であり、その後に続くthat節が具体的な内容を示しています。

全部、対訳が変だ。命令文なんだから「明確にするように」「知らせなさい」「確実にしておきなさい」といったように訳されていなければならない。まあ、このLLMの翻訳の品質は常にだいたいこんなもん。

 

Llama 4 Scout

Duck AIではLLMの切り替えもできるので、ついでにLlama 4 Scoutに出力してもらった。

形式目的語を使った「make it C that節」の構文の実例を3つ挙げます。
  • I made it clear that I would not attend the meeting. (私は会議に出席しないことは明らかだと言った)
  • She made it obvious that she was unhappy with the decision. (彼女はその決定に不満であることを明らかにした)
  • He made it plain that he would not tolerate any further delays. (彼はこれ以上の遅延は容認しないことを明らかにした)

対訳の品質は「うーーん」と思ってしまうけれど(この程度でいいんか、翻訳ってものは……)、例文はGPTのよりよい。ストーリーがある。

ちなみに最初の例文は「私は会議には出席しないことを明らかにした」という意味で、読みやすい日本語にするなら「私は会議には出席しないと明言した」「その会議には出ないからねとはっきり言っておいた」くらいの感じだろう。Llamaのは、英文和訳の答案用紙に書かれてきたら、満点は難しいのではないかと思う(採点基準による)。

しかし、3つとも「~ということを明示した」という方向性の例文なのは、退屈だね。もう1個、Claude Haiku 3.5もいってみよう。

 

Claude Haiku 3.5
英語の形式目的語を使った「make it C that節」の構文について、具体的な実例を3つ挙げます:
  1. It is important that we make it clear that everyone understands the new policy. (新しい方針を全員が理解することを明確にすることが重要だ。)
  2. The manager made it evident that the project deadline would not be extended. (マネージャーは、プロジェクトの締め切りが延長されないことを明白にした。)
  3. Scientists made it certain that climate change poses significant risks to our planet. (科学者たちは、気候変動が地球に重大なリスクをもたらすことを確実なものとした。)
(以下、多弁なところは略)

 

AIが出力してくれる例文は、いずれにせよ、「~ということを明示した」という方向性だね。自分でもそれしか思いつかないから、たぶんこの方向性の内容について使われる定番の構文なのだろう。このあとはコーパスとかで調べないと確定できないけど、その時間はないのでここまで。

 

あと、Claudeも対訳の品質はアレです。特に3番の気候変動のはひどい。この日本語を単独で読んで意味が取れる人もいないと思うけど……。 

 

 

*1:Epsteinの英語での実際の発音は「エプステイン」もしくは「エプスティーン」に近い。

*2:修飾語句。ここではコンマに挟まれた《挿入》の形。

現実味のcould, can't do A without doing B (米ニューヨーク市長選で当選確実視されていた候補者についての記述)

松井孝志先生のおっしゃる《現実味のcould》の実例が、先週末、今話題の米ニューヨーク市の市長選挙のニュースに乗って流れてきた。火曜日の投票を前にした土曜あたりの*1BBC News記事である。

 

https://www.bbc.com/news/articles/c3rjjdvx5r5o

よく見たら、もうひとつ別の重要構文もこのキャプチャ画面に入っているので、本稿ではその2つを取り上げておこう。

  • 《現実味のcould》の実例
  • 《can't do A without doing B》の構文

 

《現実味のcould》の実例

記事見出し: 

New Yorkers could pick a political newcomer to run their city - and take on Trump

このcouldが《現実味のcould》だ。「~かもしれない」「~することもありうる」ではなく、「~するのはほぼ確実」くらいの意味合いである。"a political newcomer" つまりゾフラン・マムダニ候補の当選は、ここのところずっと確実視されていた。それ以外の結果が出ることはまずあるまい、というくらいに。

*1:BBC Newsは現在タイムスタンプが「〇日前」式で、記事が古くなれば「〇年〇月〇日」の表記になりはするものの、記事がアップされてから1週間くらいは投稿日時の確認ができない。どうしてこういう仕様にしたのか、全然理解できないが。

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without pauseか、without a pauseか、英文書いててわかんなくなったので生成AIに聞いてみた。

検索エンジンにAIが搭載されたことによって、かつてのオフィス環境で職場に常駐しているネイティヴ・チェック担当者に「ちょっとすいませーん、今、2分くらいよろしいですか」と声をかけて「これってどっちがよりナチュラルですかね」と尋ねる、というふうにして実施していたチェックが、自分ひとりでデスクトップだけでできるようになった。

 

AI導入前だって検索エンジンにキーワードと、場合によっては検索したいサイトのURL(語学系質問掲示板など)も入れてEnterキーを押せば、だいたいの調べものはできたのだが、「こちらの質問に、直接、あちらが答えてくれる」というスタイルではなく、どこかのウェブサイトに書かれていることが自分の疑問に当てはまるのかどうかは個別に考えなければならなかった。生成AIが質疑応答の形に落とし込んでくれると、その「自分(だけ)で考える」というプロセスが不要になり、場合によってはさらに確認のための質問を追加して確証を得ていく、ということが可能になった。

 

もちろんこれは、生成AIというものがあくまで《言葉》を扱うものであり、《言葉が表す内容》(つまり情報)には一切の責任を負わないということを前提としなければならないのだが(例えば「『1984』で知られるロシアの作家ジョージ・オーウェルは、ジョージ・マイケルとして1880年にパリで誕生した」というデタラメ文は、情報はまったくのデタラメであっても文としては正しい)、単なる文法チェックや可読性チェックといったことは、かなりの程度まで任せることができる。文の内容まではチェックしてくれないが、それは人力のネイティヴ・チェックでも基本的には同じである*1。ただし、内容チェックまで含めての「ネイティヴ・チェック」という場合もある。

 

というわけで、さっき英文を書いていて「はて」と思った疑問を、AIが組み込まれている検索エンジンに聞いてみた。

 

普段からDuckDuckGoを使っているので(この検索エンジンはGoogleなどと違って追跡されないし、検索結果に変なフィルターバブルを作ることもないとされている)今回もここを使っている。アカウント作成なども不要で、Anthropic’s Claude 3.5 Haiku, Meta’s Llama 4 Scout, Mistral AI’s Mistral Small 3 24B, and OpenAI’s GPT-5 mini and GPT-4o mini が使えるようになっている。選べるのかどうかは知らない。私が使うとだいたいいつもGPT-4o miniが回答してくれる。

ここでAIを使って質問をすると、OpenAIのサイトやGoogle Geminiのサイトなどで質問をしたときと同じスタイルでチャット履歴が残っているように見えるが、実際にはDuckDuckGoのチャット履歴はサーバーに保存されているのではなく、自分のPCでローカルな形で保存されているだけである。自分で履歴をオフにすれば何も残らない。

 

というわけで質問した内容。これがまた、「これだから英文法英文法とうるさい奴はどうでもいいことにこだわって」と、英語でものを書くということをしない人たちから冷笑されること必至なのだが(英語でものを書く人からも「そんなことにこだわる暇があったら全体の質を上げろ」と冷笑されるかもしれないが、とりあえず今のところ、AIに英文校正してもらって「今のままで大丈夫だけど、次のように書き直すとフロウがよくなるよ」みたいな反応をもらわなかったことは2度くらいしかない)。

 

Which is correct, "without pause" or "without a pause"? . GPT-4o mini  Both "without pause" and "without a pause" are grammatically correct, but they can convey slightly different nuances.      Without pause: This phrase suggests an ongoing action or process without any breaks. It often emphasizes continuity and is commonly used in more formal contexts.      Without a pause: This version implies a specific instance of pausing and can sound slightly more conversational. It may suggest that there was an opportunity to pause but none was taken.  In most contexts, either phrase would work, but if you want a more fluid expression, "without pause" is often preferred.

without pauseでもwithout a pauseでも、

文法的にはどっちでもいいんかい。

ああ、英語。ああ、楽しい冠詞沼。

 

でも言われてみればここで説明されているようなニュアンスの違いを踏まえて使い分けているような気がしてくる。

 

……してくるのだが、気のせいだ。授業で先生の説明を聞いて「最初からわかってましたけど?」という気がしてくるのと同じで、説明が上手なだけ。自己を過信するな。これを機会に覚える。そのためのステップとして使う。それだけだ。

 

なお、ここで生成AIが言ってることのソースを確認しようとして、回答文面の下にある「ウェブ検索」をチェックしてみても、示されているリンク先にはここに書いてあるようなことはまったく書かれていない。例えば語学学習者の "To pause or not to pause" みたいなスレッドが出てくるのだ(音声教材の聞き取れないところでpauseボタンを押すかどうか、という話題)。私が聞きたいこと(不定冠詞の有無)および私が得た回答とまったく関係なく、生成AIがどうやってこの回答の文面を組み立てているのかは、生成AIというものが話題になりだしたころから変わらず、わからない。つまり、ここで生成AIが流暢に語っていることが正しいのかどうかは、実は直接には確認しようがなくてわからない。実際には「パリに生まれたロシアの作家ジョージ・オーウェル」的なことを言っているのかもしれない。

 

生成AIを使うのなら、この不安定さ、この不確実さといかに「付き合って」いけるかですねー、としたり顔をしておくのがよいのだろう。

 

 

11月1日追記: ガザのメド先生(臨床栄養学のモハンメド医師)から、実例きた。

 

 

*1:ネイティヴ・チェックとは、「『1984』で知られるロシアの作家ジョージ・オーウェル*が*、ジョージ・マイケルとして1880年にパリ*に*誕生した」とあるのを「オーウェルは」「パリで」に直すようなもので、「ロシアの作家」云々の記述内容を見るのは担当外、と考えておくと、うまくいくはず。

大切なものを燃やしながら、"My heart burns with it." という言葉が出てくる……これをどう日本語にするか

作業中に詰まっている。

 

ある人が、大切なものを自分の手で燃やさなければならない、という事態を想像していただきたい。そのときに、 "My heart burns with it." と述べている。これをどう日本語にするか。

 

実際にその人のheart(心臓、もしくは心)が燃えるわけではないから、これは比喩表現だ。心理描写のためのメタファーである。そこまでは機械ではない人間なら即座に判断できるだろう(最近のAIもこのくらいの解釈は楽勝だ)。それを踏まえたうえで、直訳(というか文字通りの訳)をすれば、「それと一緒に私の心も燃える」だろう。

 

しかし日本語では、「心が燃える」といえば「何かについて熱い感情を抱く」とか「闘志がわいてくる」といった意味になる。大切なものを燃やさなければならないときの心情を言う表現ではない。物を燃やしながら、これから取り組まねばならない課題に向けての決意を新たにする、といった流れであればこれでいいかもしれないが、私が抱えている案件ではそうではなく、「泣きながらものを燃やし、私の心も泣いている」という話である。ただそれを筆者は「泣く」とは言わず「燃える burn」と言っている。強い。激しい。

 

先日、歌人の俵万智さんが、大谷翔平選手の凄腕っぷりに、ベンチ(って言うんだっけ、野球のとき)の選手たちがひたすら驚くしかなくて、手を頭の後ろに回すようにして頭を抱えるしぐさをしていたり、口をあんぐりと開けたままになったりしている状態を、日本の放送局のアナウンサーが「頭を抱える」「開いた口がふさがらない」と描写してみせるのはいかがなものか、と指摘しておられるのを読んだが(どちらもネガティヴな表現なので、素晴らしいものを見て唖然としているときに使われても違和感がある)、その問題と同じようなものである。

昔、お手本として習ったのだが、エドワード・サイデンステッカーのやり方だと、例えば英語の「肩をすくめる」を日本語にするときは、その感情を表す日本語表現に置き換える、というのが鉄則だった(サイデンステッカーの翻訳は英→日ではなく日→英の方向だが)。その方針をとるのが、ナチュラルな訳文を作るためには最善だろう。けれど、それをぴたりと一言で言いあらわせる言葉を探すのが一苦労だ。

 

というわけで少し旅に出る。行き先は辞書。

「旅」といっても、ブラウザの検索窓に burn dictionary と打ち込むだけなのだが。

 

検索結果の冒頭に示されている、ウェブ上の記述を多めに抜粋したところに、アメリカン・ヘリテージ辞書の定義が出ていて、そこに "To be damaged, injured, or destroyed by fire, heat, radiation, electricity, or a caustic agent." とある。

また、ケンブリッジ辞書には "to be hurt, damaged, or destroyed by fire or extreme heat, ..." と出ている。

みんな大好きコリンズ・コウビルド辞書には、めっちゃ細分化された定義の2番目に "you destroy or damage it with fire" が出ている(自動詞ではなく他動詞の用法だけど)。

というわけで、ここで原文筆者が使っている英語のburnは、単に「燃える」「燃え上がる」というより「燃えてだめになってしまう」という意味と考えることに無理はない。

筆者が燃やしている大切なものと一緒に、筆者の心/心臓も燃えてだめになってしまっているのだ。

 

さて、これをどう日本語にするか。「私の心も燃える」は、上述の理由から、ここでは使えない。「燃える」という動詞に問題があるので、日本語の類義語辞典を見てみたりしたが、全然ピンとくるものがない。故山岡洋一さんのご訳業に基づいたDictJugglerさんを見てみても、ひたすら、文脈が違いますしねー、という感じである。

 

自分の脳の外を参照しても特にこれというものを見つけることができないのだから、あとは自分の脳との格闘である。

 

そうしてたどりついたのが「心臓が焼ける思いだ」と「心も燃えがらになる」だ。さあ、どうしよう……。先はまだ長い。

 

ちなみに今回の内容はいわば「小手先」的な話で、翻訳のベースは英文法です(日本の「学校英文法」の知識でもOK)。つまり、My heart burns with it. の burn が自動詞であって、「~を燃やす」の意味ではないということがわからない場合は、「翻訳」という作業はできません。

 

あと「こんなのAI翻訳で何とでもなるでしょ」と思うのは勝手ですが、それをいちいち私に言わないでください。AI翻訳は文脈を理解しない(理解しているように人間に見えているだけ)。訳例をサジェストしてくれるよう依頼する(プロンプトでそういう指示を出す)ことはできるけれど、それは人力でやった「各種辞書の参照」と何も変わらない。ただ、本当に煮詰まっているときは、AIは意外なところからぽんっとヒントを投げ込んでくれるかもしれない。それだけ。

 

 

追記: 

「胸が焼ける」という表現も一瞬浮かんだんだけど、それも日本語では慣用表現とぶつかって、「天ぷらでも食べすぎました?」ってなっちゃうので秒で却下した。オーニホンゴムズカシーネー

「↑→↓↓↓」から「↓↓↓」だけを切り抜いて、それを斜めに配置したAntiFa系のシンボルマークのことだと大騒ぎした主流メディアと、米極右界のネットミーム

Twitter/Xの画面を見たら、Helldiversという単語がTrendsに入っていた。どんなに低気圧でだるくても眠くても、知らない単語があればチェックしてみるのが習性である。字面から漫画か何かか、あるいはガザでアメリカがやってる食糧支援に偽装したデス・トラップ、GHFに参加している面々のことか(GHFには反イスラムの暴力的バイカー集団が参加していることが伝えられている)、と当たりをつけてみてみたら、ゲームのようだ。

時は西暦2084年。宇宙に進出した人類は、さまざまなエイリアンの襲撃を受け、窮地に立たされていた。プレイヤーは、そんな人類の脅威を取り除くために戦う精鋭・特殊部隊“HELLDIVERS(ヘルダイバー)”の一員となり、エイリアンたちと激闘を繰り広げていくことになる。

本作は、一筋縄ではいかない挑戦的なバトルを楽しめる“超骨太”のシューティング。限られた弾薬数、救援が到着するまでの残り時間、無限かと感じられるほどに次々と迫り来るエイリアンたち——。緊張感あふれる戦場では、正確でいて時に大胆なアクションや戦術、そして仲間との連携が重要となる。……

HELLDIVERS(ヘルダイバー) | ゲームタイトル | PlayStation

なぜこの単語がTrendsに入っているかを見てみれば、例えば「新作がアナウンスされた」とか「映画化が決定した」といったゲーム系のニュースがあったからではない。「ターニング・ポイント」という極右デマのムーヴメントを組織化したチャーリーなんとか(関心がなさすぎて名前を憶えていない)を撃ち殺した人物が使ってた暗号みたいなのが、このゲームで使われるコードだったということが判明して、メインストリーム・メディアが流していた「アンティファの犯行」とかいったデマ・誤情報が覆されたのだそうだ。

 

何でも、銃弾のケーシングに彫り込まれていた下向きの矢印3本が並んでいるのが「アンティファのシンボル」として取りざたされていたが*1、それは実はこのHelldiversというゲームで使われるコードで、「下向き矢印3本」だけでなく、「上向き矢印1本、右向き矢印1本、下向き矢印3本」というのがセットになっていて、 そっから「下向き矢印3本」だけを切り出すのは、それなんて国家安康、って感じだな。ちなみにこのコードを使うと Eagle 500kg Bombってのが出てくるんだって。ミームにもなってるんだって。私はゲームをやらないので文字でしか知らないんだけど、「コナミコマンド」みたいなものかな。

Know Your Memeまで出てきてるし…… (^^;)

 

メインストリーム・メディアは、これを「アンティファだー」とか「トランスジェンダーだー」と大騒ぎしていたらしい。こっぱずかしい。ちなみに、Helldiversというゲームはantifaとは逆の側にいる人たち(つまりfa, もっとちゃんと書けばfash)の間で人気なのだそうだ。

 

銃撃容疑者はほかにもいろいろミーム的なものをちりばめているそうで、それらをまとめてくれているスレッドが下記。

"Groyper" ってのがもうわかんないよね。でも私にはどうでもいいから「何かわかんないけどそういう極右フリンジ」とだけ認識して先に行く。いずれにせよ、「アンティファ」でも「トランス」でもない。「サヨク」ではない。

 "transvestigating" ってのがわかんないよね。でもどうでもいい。字面からだいたいわかるし。

アメリカでは、極右が歴史的にアンティファが使っていたものを使うということも平気で起きるんだな。ばかばかしい。まともに取り合ってられるか。

これは過激派あるある。いわゆる「内ゲバ」。Fuentesってのはニック・フエンテスでしょ、この文脈で名前くらいは知ってるような気がするけどそれだけ。調べるのは私にとっては時間の無駄。

下品で幼稚。

 

アダムさんのスレッドを単に貼ってるだけなんだけど飽きてきたので、あとはThreadreaderに投げとこう。

 

ここに列挙されている、銃撃犯の銃弾に彫り込まれていたという文言のように、読んだときに意味が取れないものは、現代の文では、ほぼ例外なく、特定の界隈だけで通用するようなネットスラングやミームである。そのまま英語から日本語にしたって意味が取れないばかりか意味がない。警察の人やBBCのような大手メディアの記者だって、その界隈に通じていなければわからないだろう。

 

しかし、やっぱり笑いものであることに変わりはない。

"chefs kiss" というのは、ちゃんと書くとchef's kissなのだが(アポストロフィー)、作った料理を味見したシェフが「最高!」というときに手の親指と人差し指でやるしぐさのことで、意味は「最高」。「メインストリームメディア(MSM)がゲームのヘルダイバーへの言及を認識せず、アンティファが悪いと言っているのは、本当にもう最高だ」といった文意。

WSJがどうたらというのは、さっきはてブで見たんだけど、これですね。

【ワシントン共同】米国の保守系政治活動家チャーリー・カーク氏(31)が射殺された事件で、ウォールストリート・ジャーナル紙は11日、捜査当局が犯行に使われたとみられるライフルを発見し、内部からトランスジェンダーの権利擁護や反ファシズムを訴える刻印のある弾が見つかったと報じた。ただその後、記事を修正し、一部の当局者からこの分析に懐疑的な見方も出たと伝えた。

弾の刻印、分析に懐疑論 活動家射殺で米紙修正|47NEWS(よんななニュース)

 

ここでアレックス・ガーランドの映画『シヴィル・ウォー』を思わずにはいられない。私が見た日本語字幕は「アンティファによる虐殺」と、まったく反対の方向に転がっていくような誤訳をしていたが(翻訳をした人がそういう思想なんだろうなという質の誤訳)、あの映画の中の大統領は何でもかんでも「アンティファがー」と言うタイプの人間で、アンティファを虐殺したあとの世界があの映画の舞台だ。あの映画が始まる前に起きたことは、たぶん、『アクト・オブ・キリング』みたいなことだ。アメリカがどうなるのかはわからないが、『シヴィル・ウォー』の世界にいたる道は、もう整備されているんだろうと思う。ガザ・ジェノサイドの扱いを見ていても。

 

 

 

*1:「アンティファのシンボル」とは、ひょっとして左斜め下を向いてるやつのことかな……銃撃犯が使ってる真下向いたのとは違うじゃん。アメリカって紋章学的なことやってる人っていないの?

3単現のs(はてブで話題の漫画『順子 NEVER DIE!!!』をめぐって)

 

くだらないからツイート貼るだけでいいやと思ったんだけど本文ないのもおさまりが悪いので形式を整えるために本文を書く。

 

"順子 never die!" は「順子よ、絶対に死ぬな!」としか読めない。

「順子は決して死なない」と言いたいのなら、 "順子 never dies!" としなければならない。

neverのない形でも同じで、「順子は死んだ」なら "順子 dies!" だ(あの漫画の中での使い方ならば、新聞の見出し調の文体でよいので、過去形にせず現在形でよい)。

 

んで、こういうのを「細かいこと」だとか「どうでもいいこと」だとか言ってると、「英語ができない奴」扱いされるような英文しか書けなくなるし、使い物になる英語力は身につかない。

 

本稿、縦読みはありません。

人称代名詞を使わないで書かれた報道記事と、男性名から女性でも使われる名前に改名した銃撃犯

やることが山積みの状態のまま、腱鞘炎がやばい感じの上に、ずいぶん前に何だかわけのわからない言いがかりをつけられていたことに今頃気づいたので自衛のために反論したらものすごい絡み方をされて(Twitterのリプライの埋め立て……15年ぶり。前にそういう目にあわされたときは、はてなブログじゃなくてはてなダイアリーで何が起きたかを書いたんだけど、リプの埋め立ては攻撃手法のひとつなんですよね)、前の記事のはてブをまだチェックすることもできていなくてすみません。ブクマしてくださった方が忘れたころ(3日後くらい)にチェックすることになると思います。ご海容のほど。

 

で、例によってパレスチナと関係のない話題での英文を読まないと頭がおかしくなるので、関係のないニュースの記事を読んだんですよ。日本で伝えられているかどうかは未チェックですが、米ミネアポリスでの、痛ましい銃撃事件。標的は学校を併設したカトリックの教会。標的は教会の中の子供たち。銃撃犯の窓からの乱射で子供2人が殺され、14人が負傷。

最初にこの銃撃事件に気づいたのは、たまたま見ていたニューズアグリゲーターの画面で "anti-Catholic" という文字列を見たから。こんな文字列がニュースに出てくるのは北アイルランドだろうと思ったらミネアポリスで、頭の中が「?」で満たされた。いわく、警察は銃撃犯は「反カトリック」で、事件はヘイトクライムと考えられるという、といったリード文だったが、それはすぐに訂正されて、「動機は不明」もしくは「動機は複合的」になっていた。

いずれにせよ、何があったのかは確認したかったので、その画面で目についた見出しをクリックしてみた。乱射して子供たちを殺傷してすぐに自分に銃を向けた容疑者は、ロビン某という名前で、代名詞は "he" が使われていた。容疑者の顔写真はまだ公表されていない段階だった。感想は「まだ何もわかってない段階なんだな」というだけで、数時間したらまたニュースチェックしよ、と思って画面を閉じた。

その次に見たのは、スマホに入れてるアイルランドのThe Irish Timesのアプリだ。たまたまアイルランドの政治ニュースに用があったのだが、トップニュースがこのミネアポリスの銃撃事件だったので記事を読んでみた。そしたら、容疑者のロビン某の代名詞が "she" だった。よく見たらアイリッシュ・タイムズの記事ではなく、提携メディアであるNYTの記事だったが、まあそれは些末なことだろう。

web.archive.org

ロビン (Robin) は男性でも女性でもありうる名前である。『ブレードランナー 2049』で主人公の上司を演じていたロビン・ライトは女性だし、『いまを生きる』のロビン・ウィリアムズは男性だ。

名前が「ロビン」で、代名詞が "he" と "she" の両方あるということは、報道機関の間違いでなければ、トランスジェンダーで、例えば「自分では男性と称し、そのように生活しているが、法的には女性」といったことが考えられるな、と思っていたが、何しろ情報がない段階なので考えたってしょうがない。

そしてしばらくしてから、この事件はLive blogで報じていたが、容疑者についてはいつも以上に慎重だったBBCのわりと確定的な記事が出ていた。そして、この記事が、徹底的に代名詞を避けていた。少し見てみよう。下線で示してあるのが銃撃犯に言及している語句である。

Investigators say that the attacker who opened fire on pupils as they were praying at a church in Minneapolis was "obsessed with the idea of killing children".

Robin Westman, who killed two children and injured 18 others, did not seem to have any specific motive, according to Minneapolis Police Chief Brian O'Hara.

The attacker "appeared to hate all of us", the chief said on Thursday, adding: "More than anything, the shooter wanted to kill children".

The murdered children have been identified by family as Fletcher Merkel, eight, and Harper Moyski, 10.

...

Officials have released few details so far about the suspect's background, but say Westman previously attended the church's school and had a mother who had worked there. 

The 23-year-old suspect is believed to have approached the side of the Annunciation Church, which also houses a school, and fired dozens of shots through the windows using three firearms. Police also found a smoke bomb at the scene.

Witnesses have described seeing children bleeding as they fled from the church, begging for help from strangers.

In a news conference on Thursday, acting US Attorney General for Minnesota Joseph Thompson said "the shooter expressed hate towards many groups, including the Jewish community and towards President Trump".

The attacker, who died at the scene of a self-inflicted gunshot wound, left a note, officials said, but they added that a definitive motive may never be known.

"I won't dignify the attacker's words by repeating them, they are horrific and vile," said Mr Thompson. 

...

日本語で書かれた文面を機械的に英語にしたのではないかと思うくらい、徹底的に代名詞を排除して書かれている。むしろ、英語ってこういうふうにも書けるのかとびっくりしたくらいであるが、英語で読んでるとさすがに違和感がある。

そしてこの次のパラグラフで説明がなされる。

Westman's name was legally changed from Robert to Robin in 2020, with the judge writing: "Minor child identifies as a female". However, some federal officials and police have referred to Westman as a man when discussing the attack.

つまり「容疑者ウエストマンの名前は、2020年に法的に変更され、ロバートからロビンになった。この際、判事は『自己を女性と認識している未成年者』と書き記している。しかしながら、一部の連邦政府関係者や警察官は、今回の攻撃について語る際に、ウエストマンを男性として扱っている」。

2025年に23歳なので2020年は未成年だ。そのときに名前を男性名の「ロバート」から、女性名(としても一般に使われる)「ロビン」に変更した。どちらも愛称は「ロブ」のままでいけるから、かなり現実的な選択だったのかもしれない。

そして2025年に彼女が起こした事件について語るときに、一部の警官やFBIが「彼」扱いをしているというのがどういうことなのか。私はアメリカのことはろくに見てないのではっきりとはわからないし調べるのもだるいのではっきりわからないまま書くが、2025年1月にドナルド・トランプ政権が発足して真っ先にやったトランスジェンダーやクイアの権利の剥奪に関連しているのかもしれない。

BBC記事のこのあとの部分: 

Chief O'Hara told reporters that news outlets should stop using the killer's name, because "the purpose of the shooter's actions was to obtain notoriety".

He added that she, "like so many other mass shooters that we have seen in this country too often and around the world, had some deranged fascination with previous mass shootings".

Chief O'Haraは上の方でBrian O’Haraとフルネームで言及されており、男性である。したがって、太字にした "He" は警察のオハラさんのことだ。

そしてそのオハラさんの発言内容を報じる文が、少し不自然にも見える形で、引用符で全文をそのまま転記するようなスタイルではなく、地の文としてthat節を使う形で主語だけ引用符の外に出して、書かれている。それが、容疑者についてようやく出てきた人称代名詞の "she" だ。ということは、オハラさんは容疑者について "she" とは言わなかったということだろう。単に "the suspect" と言ったのかもしれないし、"Westman" と名前で言及したのかもしれない。あるいは "he" を使ったのかもしれない。わからない。

 

というわけで、「北アイルランドでもないのに、『反カトリック』の攻撃だなんて、嫌な話だ」というのが入口だった陰惨な事件は、もっと別な方向で陰惨な展開を見せた。実際に、この1つの事件を以て「ほらみたことか、トランスジェンダーの連中は狂暴なんだよ」とわめきたてている自称フェミニストがいるらしい。気が重い。

そして何よりも、身勝手な人物の一方的暴力で命を奪われた2人の子供たちがかわいそうでならない。けがをした子供たちや、体は大丈夫でも精神的に傷を負った子供たちには、時間はかかるだろうけれど、着実な回復の道を歩んでほしいと思う。

この人物の背景には興味はないし、この人物が使った武器(例によってアソルトライフルを含む銃を3丁も使ったらしい。それも合法的に入手したものを)に関しては、もう、外国人は関心を持つだけ無駄だと私個人は思っているので、記事も流し読みするだけだ。

ただこの容疑者、個人的に非常に迷惑だなと思うこともしてくれている。

FBI Director Kash Patel has described the attack as "an act of domestic terrorism motivated by a hate-filled ideology".

In a post on X, Patel said that the attacker "left multiple anti-Catholic, anti-religious references" written on guns and in notes uncovered by investigators.

"Subject expressed hatred and violence toward Jewish people, writing Israel must fall,' 'Free Palestine,' and using explicit language related to the Holocaust," he wrote.

The killer also "wrote an explicit call for violence against President Trump on a firearm magazine".

パレスチナではガザが武力で制圧どころか抹消されようとしていて、ガザにいるカトリックの人々、正教の人々も、生命の危機に瀕している。個人の生命だけでなく、ずっとそこにあったクリスチャンのコミュニティ自体が抹消されようとしている。それに抵抗している。カトリックの人々がパレスチナの解放を訴えている。そういうときに「反カトリック」を標榜し無差別暴力を子供に加える人物が「パレスチナ解放」と口にする。その害悪たるや。つか、うちら、自分たちの側にこういうのがいることは事実として認識しないとだめですよ。

 

下記は、先日イスラエルに爆撃されたカトリック教会の前に集うカトリックの人々。ガザを立ち去ることはしないという。

「反カトリック」の思想で、ガザを支持・支援することはできない。

 

ちなみに、最初にアグリゲーター経由で見た "he" を使っていた記事だが、履歴を頼りに探してみると、NDTVという媒体の記事だった。普段は見ない媒体で、どの国のものかもはっきりとはわからなかったが、調べてみるとインドである。私が見た "he" を連打したような記事はサイト検索してももう見つからず、あったのはこの記事で、"he" を使うことに正当性があると主張しているような記事だ。

The man who opened fire on students and worshippers at a Catholic School in Minneapolis on Wednesday had previously shared the details of what he wanted to wear for "my shooting".

"I don't want to dress girly all the time, but I guess sometimes I really like it. I know I am not a woman, but I definitely don't feel like a man ... I really like my outfit," revealed a translation of parts of Robin Westman's notebooks, mostly written in Cyrillic.

これをそのまま読めば、この人物を単に "she" で表すことは難しいと報道機関の記事を書いた人が判断したということだろう。名前の「ロビン」も性別関係なく用いられる名前だ。そういうときの代名詞は、今のお約束では単数でも3人称ならtheyを使うということになっているのだが、ここではそのルールに従ってもいない。

というか「ロビン」が「女性」だったというのの根拠は、2020年にロバートからロビンに改名したときの判事の言葉(上述のBBC記事より、'with the judge writing: "Minor child identifies as a female".')だけなのだろうか。

この銃撃犯のことは個人的にまったくどうでもいいのだが(いずれまた、例の90年代の高校銃乱射事件の犯人みたいに一部で神格化されるんだろうなとは思う)、英語の実例として、ここまで「これはどうなの?」と思わされる記事もまずない。

 

最後に資料として、アイリッシュ・タイムズに掲載されているNYTの記事の一部。下線を補ったのがこの銃撃犯をさす名詞・代名詞。ちなみに記事の後の方で "Federal officials referred to Westman as transgender." と書かれてはいる。

https://web.archive.org/web/20250828072319/https://www.irishtimes.com/world/us/2025/08/28/robin-westman-minneapolis-school-shooting-suspect-posted-videos-fixated-on-guns-and-violence/

https://web.archive.org/web/20250828072319/https://www.irishtimes.com/world/us/2025/08/28/robin-westman-minneapolis-school-shooting-suspect-posted-videos-fixated-on-guns-and-violence/

本人が「自分の代名詞はshe/herです」と明示していたのなら、英文としてこれで何も問題はない。だが、 "I know I am not a woman, but I definitely don't feel like a man" という人が、自分のことをshe/herで扱ってほしいと言うだろうか、という疑問がある。以前はそう言っていたけれど、今はそうではないということも考えられるが。

 

そして単に英文として、NYTのこの "she" 連呼と、上で見たBBCの違和感のあるほど代名詞を使わない文体と見比べると、ちょっと怖い。自分が当たり前だと思っていた報道の文体はNYTのもので、BBCのに違和感がある。でもきっとファクトに忠実なのはBBCのほうだ。

英語ってこういう性質、NYTの文体が自然に見えて、するっと読めてしまうような性質の言語だ……。ファクトと「読みやすさ」は関係ない。

英語に限らず、三人称の代名詞で執拗に性別を言う言語はきっとどれもそう。代名詞だけでなく名詞も性別をつける言語も多いが(英語はactor, actressなど一部の語だけだが、フランス語は例えば "Je suis étudiant." と"Je suis étudiante." と語の形が変わるし、名詞が変われば形容詞も変わる)、それを思うだけで気が遠くなる。この点は、私は心底「日本に生まれてよかった(日本語が母語でよかった)」と思っている。

英語のhometownとは何か、実例を通して確認する。(英語読まずに機械翻訳の結果見てパニクるなっての)

週末あたりから、ネット上の日本語圏でやたらと「ホームタウン」という語を見るようになり、それが「移民がー!!!!!」っていうパニックと重なってて、「なんだこれ」と思っていたのだが、ガザ・ジェノサイドで手一杯&頭もいっぱいで、22日に封切られたドキュメンタリー映画も初日に見たんだがそれについて書くこともできていないなかで、目の端にとらえるくらいしかしてこなかった。

 

それが今日、電脳塵芥さんで検証記事が出ているのを見かけ、おかげでようやく、だいたいの経緯が把握できた(気がする。わけわかんないままだけど)。

nou-yunyun.hatenablog.com

とにかくこれ、わけわかんないのは、そもそもJICAが使っている用語の「ホームタウン」が意味不明であるというところから始まってる。何の話をしているのかわからないときに、「何の話をしているのか、説明を!」と呼びかけるのではなく、その意味不明な用語を好き勝手に解釈してパニクっている人たちが引き起こしている大騒ぎがネットで肥大化しているわけで、なんつうか、虚無の上に虚無を重ねても虚無なんすよ。豆腐の上に豆腐乗っけても豆腐でしょ。ねぎとかしょうがとか醤油とかがないと冷奴にはならない。何の話だ。

 

JICA語の「ホームタウン」については意味がわからないままだが、hometownは「故郷」っていうか「出身地」の意味である。あるいはスポーツチームの「拠点(とする町)」。

 

例えば今BBC Newsを探してみたら、下記の記事がある。

 

Depeche Mode fans call for hometown recognition
2 August 2025

https://www.bbc.com/news/articles/c4gzvvgyejpo

 

これは、デペッシュ・モードというバンドのファンが、出身地(エセックス州ベイジルドン)に記念の壁画なり何なりを作って、バンドを顕彰し、バンドのファンがいわゆる「聖地巡礼」ができるようにしようと言っている、という記事である。

 

あと、これ。

Lemmy mugs created in Motorhead singer's hometown
6 August 2025

https://www.bbc.com/news/articles/c620j1g4e17o

 

2015年に没した*1モーターヘッドのレミーの出身地が、焼き物の街であるストーク・オン・トレントで、そこの製陶業者(窯)がレミーを記念するデザインのマグカップを作った、という地域ニュースである。5月には銅像もできていて*2、「レミーの出身地」が没後10年にして盛り上がっている、ということか。(でも彼の活動拠点は米国のハリウッドだった。自宅もそこ。)

 

それとこれ。

Tour de France Scot hailed a hero in his hometown
30 July 2025

https://www.bbc.com/news/articles/c07p99kglp9o

 

これも、ツール・ド・フランスで活躍したスコットランド人の選手が、出身地(故郷)でたたえられている、という記事だ。彼はこの町のサイクリングクラブでトレーニングしていて、彼が活躍したことで次の世代が触発されるだろう、といった地域ニュースである。

 

いずれも、誰かの「出身地」をいうときにhometownという語が使われている例だ。「現在の拠点」ではない。

 

最初の例のデペッシュ・モードは、バンドとして成功したときには故郷 (hometown) のベイジルドンを離れてロンドンを拠点としていたはずだし*3、モーターヘッドのレミーは英国を出て米国のLAを拠点としていた。しかも、「LAのロックスター」なのに豪邸ではなく小さなアパートに住んでいたことで有名だ。レミーは国境を越えているから「移民 immigrant, migrant」だけど、hometownはストーク・オン・トレントであって、移住先のLAではない。

 

7月に亡くなったオジー・オズボーンも、ミュージシャンとしては長くビバリーヒルズに暮らしていたけれど(ふなっしーが訪問してたよね)、最後は故郷である英国のバーミンガムに戻っていた、というのを、亡くなったときのBBC Newsでやっていたけれど(ラジオで聞いた)、ついでにオジーについての英語版ウィキペディアでhomeの用例を探してみると次のようになってる。

The original Black Sabbath line-up of Ozzy, Tony Iommi, Geezer Butler, and Bill Ward reunited in November 2011 for a world tour and new album. Ward had to drop out for contractual reasons, so the project continued with Rage Against the Machine's Brad Wilk stepping in for Ward on drums. They played their first reunion concert in May 2012, at the O2 Academy in their hometown Birmingham.

... 

In January 2016, the band began a farewell tour, titled "The End", supposedly signifying the final performances of Black Sabbath. The final shows of The End tour took place at the Genting Arena in their home city of Birmingham on 2 and 4 February 2017, where Tommy Clufetos replaced Bill Ward as the drummer for the final show.

https://en.wikipedia.org/wiki/Ozzy_Osbourne

バーミンガムは「シティ」の格がある町・都市なのだが、hometownも使われるし、home cityという表現もあることがわかった。すばらしい。濡れ手に粟だ。

 

一方で、オジー・オズボーンにとって、長く拠点としていたビバリーヒルズはhometownではない。

 

となると、例えばナイジェリアのラゴス出身の人が日本の東京都杉並区に住むとして、hometownと呼ばれるのはどこか。2秒も考えればわかるだろう。ラゴスである。

 

だから、JICAの「ホームタウン」という用語がトンチキなことは別として、「日本の〇〇市が、アフリカからの移民のホームタウンになる」という文は、完全に意味不明なので、取り合う必要がない(「何かの勘違いでしょう」と指摘すればよい)、といえる。

 

のだが。

 

しかも発端がGoogle翻訳というのを知って、私は膝から崩れ落ちたよ。崩れ落ちているヒマなどないのだが。私の頭の中はテトリスががんがん積みあがってる状態で、とにかくひとつひとつ片づけなければならないのに、崩れ落ちていたらそれもできない。

 

それ以上にショッキングなのはJICAの英語のセンスのなさなんだけど……英語使える人、いるよね、さすがに。意思決定層にも。

 

以下、Twitter/Xにとりあえず連投したものの転記。

 

※最後の方「訳出されが」は制限文字数に収めるときの編集ミスで、「訳出」です。「訳出されてそれが」と書いてあったのを編集したんだけど、なんでこうなった。

↑↑↑↑↑↑これ、重要↑↑↑↑↑↑

普通に読まれる文として書かれた英文*4を日本語に訳したときに、日本語として読んで何を言っているかわからないのは、9割以上は自分の解釈ミス・誤訳です。このケースでは「故郷」が誤訳ですね。「(JICA用語の)ホームタウン」であって「故郷」ではない。

それはテクストに書かれているんですよ。Google翻訳は捨象しちゃうかもしれないけど。

この引用符、1つ前のエントリにも出てきてるので、そっちも見ておいていただければと。

hoarding-examples.hatenablog.jp


www.youtube.com

こんなものをみているじかんはない……

 

 

*1:もう10年になるのか……。

*2:北アイルランドで量産される誰だかわかんない銅像を見慣れている目には新鮮なことに、誰だか一目でわかる。

*3:ファンが「ロンドンの聖地マップ」みたいな本を作っている。https://walkingintheirshoes.info/

*4:読んでも意味があまりよくわからないように書かれている芸術性の高い英文は話が別。ジェイムズ・ジョイスとか。

《there's + 複数形》の実例をメモる。

ウェブ検索では見つけられない実例をちょいメモ。

 

ガザ・ジェノサイドやパレスチナとは関係のない話題の英文をときどき読まないと、言語野が涸れはててしまうので、ランダムにウィキペディアを読んだりしているのだが、今日はたまたま、BBC Newsのアプリを立ち上げているときに誤タップしたために目の前に出てきた記事がするすると読める感じだったので読んでいたら、メモすべき実例にも遭遇した。一石二鳥とはこのことか。

 

記事はこれ: 

www.bbc.com

オーストラリアで警官2人を撃ち殺し、逃走中の容疑者についての記事である。通常、そういう事件の容疑者のプロフィール記事みたいなのが出ることはあまりないのだが、この人物の場合は記事化も納得、という印象の内容だった。

 

この人物、元から国家・政府の権威には従わないという主義主張(リバタリアニズム)の人だったのかもしれないが、新型コロナウイルスによる行動制限やマスク義務化がきっかけとなったのか、近年、そういう「反国家・反権威」の考えがますます強固になっていて、 BBC記事で引用符を使って "a "sovereign citizen"' と示されている類の人になっていたという。あえて日本語にすれば「主権市民」か(「市民主権」ではない)。つまり、「国家の権威が及ばない市民」ということで、一般的なリバタリアンより過激だ。むしろ、武装勢力じみている。

 

実際、米国の自警団運動などはそういう思想なのだが、それをこの人はオーストラリアでやってて、司法や警察相手に、いろいろ奇矯な行動をとっていたという。ただしネオナチとかではなく、ナチズムの権威主義、全体主義を警戒するあまり、普通の警察を見てもナチスに見えるようになっている系だ。当局の側は何かあったときもいわば「はいはい」と流していたみたいだが、今回、警官が2人も射殺されるという深刻極まりない事件になってしまった。日本でちょうど今、神戸で面識のない女性を付け回してオートロックのマンションのエレベーターに入り込んでエレベーター内でその女性を殺した容疑者が、しばらく前に殺人未遂で逮捕されて傷害罪で起訴されて執行猶予になっていたということがニュースになっているのと頭の中で重なり合って、「どっちもこっちも、『あのときもっと厳正に対処していれば』ということになっとるな」などと思いつつ記事を読んでいったところに、あるじゃん、実例が。

 

Police say they understand he is an experienced bushman - or a person familiar with the wilderness - which presents a challenge for the search party hunting for him.

"He's well-versed in the bush and there's caves up there, so it'll be a while before they find him, I think," a neighbour told the ABC.

https://www.bbc.com/news/articles/cr4e9ddwd5ro

《there's + 複数形》である。こういうの見ると、目が輝いちゃう。メモっておかないと、って。

 

標準文法では、《there is + 単数形》、《there are + 複数形》である。何かが1つあるときはthere isで、何かが複数あるときはthere areだ。これが「正しい英語」である。 なので、「正しい」表現では、 "there's caves up there" ではなく "there are[there're] caves up there" となるはずである。

 

だが、口頭での発話においては、常に「正しい英語」が出てくるとは限らない。特にthere isはthere'sという短縮形で発話されることが多く、話者が細かいことにあんまりこだわらない性格だったり、「正しい英語」を使う必要性があまりなかったりすると、《there's + 複数形》の形で発話されることがある。

 

こんなの、ウェブ検索してもそうそう簡単には見つけられないので、自分のためにメモっておく。

 

 ちなみに、上記発言のコンテクストは、「テレビニュースでインタビューを受けた容疑者の近隣の人の発言」である。意味は「ブッシュ(野山)には慣れてる人だし、あの辺は洞穴もあるから、警察が容疑者を見つけるにはしばらくかかるんじゃないですかねえ」ということ。

 

容疑者は銃持ったままだろうし、早く身柄拘束されますように。

 

しかし名前がすごい。元々Desmond Christopher Filbyだったのを、Dezi Bird Freemanと改名しているそうで。

不定詞の意味上の主語(ガザからの自由詩 "How much must I?")

先日、《不定詞の意味上の主語》を表す《for ~ to do ...》の構造について書いた。

hoarding-examples.hatenablog.jp

「不定詞の意味上の主語」とは、「to doするのは誰か」ということである。それが文の主語と一致している場合や一般論のときは明示されないが、一致していないときにforを用いて明示するのである。

 

■ I have something to read. (私は読むべきものを持っている)※直訳

→ to read するのは、文の主語である I なので、特に何も書かない

 

■ I have something for my son to read. (私は息子が読むもの/息子に読ませたいものを持っている)

→ to read するのは my son で、文の主語である I とは異なるので、forを用いて明示する。「息子が読むもの」か「息子に読ませたいもの」かは文脈次第で、いずれにせよ「読む」のは話者である「私」ではなく「息子」である。

 

一般論をいうときはこうなる。

■ It's important to sleep well. (ちゃんと寝ることは重要だ)

→「誰にとってもしっかり睡眠をとることは重要」という文。

 

■ It's important for you to sleep well after a hard day. (あなたは一日大変だったんだから、ちゃんと寝ることが重要だ)

→何らかの文脈があって(例えば「私は大丈夫だから、あなたが寝なさい」と言われたのに対する応答、など)、「あなたが寝る」ことをことさらに言っている、という状況になる。

 

forを使わずに《意味上の主語》を言う構文もある。want to do ...と、want ~ to do ...を思い浮かべていただくとよいだろう。この形をとれる動詞は限られている。

■ I want to take a break. (私は少し休憩したい)

→ to take するのは、文の主語である I なので、特に何も書かない。

 

■ I want you to take a break. (私は、あなたに少し休憩してもらいたい)

→ to take するのは you で、文の主語である I とは異なるので、明示する。

 

ラサール石井参院議員のような人たちが深い知見も意味もなくdisってくれたおかげで軽視されつくしている「英文法」は、こういうことを体系的に学ぶものだ。そしてこういうことを知らないと、英語が「道具として」使えるレベルにはならない(なるとしてもひどく時間がかかる)。信じられないほどのレベルで英語を使いこなしているガザの人たちは、こういうことをかなり徹底的に学んでいる。マーフィー使ってるっていうし。

 

さて、上にリンクした先日の記事への補足。"a song for you to sing" が「あなたのために(誰かが)歌う歌」ではなく「あなたがが歌う歌」であるならば、「あなたのために(誰かが)歌う歌」は何というのかという質問があった。それは "a song to sing for you" である。語句の順番が違うだけだが、それで意味が全然変わってくる。

 

というわけで今回は、ガザでテント暮らしをせざるを得ない状況の中でも勉強し続けて修士論文の口頭試問をパスしたMBA持ちのモハンメドさんの自由律詩(自由詩)を読んでみよう。英語の詩は、規則通りに韻を踏むことがお約束だが、「自由律」ではそのルールは無視してよい。

 

 

全体にわたって、《不定詞の意味上の主語》を表す《for ~ to do ...》の構造が繰り返されている。"for them to call me a hero" は、直訳すれば「彼らが私をヒーローと呼ぶ(ためには)」の意味で(callが作るSVOCの構造にも注意)、それが "How much must I do ..." の文の中にはめ込まれている。つまり、この詩は全体が、"How much must I do ... for them to call me a hero" を何層にも重ねてある形で、最後に "a hero" をめぐるどんでん返しがある。

 

英語としては全然難しくないし、《for ~ to do ...》の構造を意識して読むのに非常に適したテクストだと思う。全訳はnoteのほうに掲載する(noteはこれから書くので、書いたらリンクします→書きました)。

note.com

 

このエントリが1ミリでも英語の勉強になったと思われたら、可能なら、MBA持ちのモハンメドさん(「モハンメドさん」が多すぎるのでひとりひとりにニックネームをつけて呼ぶようにしている)にご寄付を。金銭的余裕がないかたは、彼の言葉を広めてください。今、集団として殺されつつある人びと(ジェノサイドされている人びと)のなかにどういう人がいるのか、「あちこちのすずさん」的な目をもって、事態を見てほしい。Twitter/Xをやっていたら彼をフォローしてその言葉を追ってほしい。幼い息子さんが2人(イマドとアダム)いて、お連れ合いのヤラさんとの核家族4人でテント暮らしをしていて、珍しく、お連れ合い(成人女性)の姿も映像や写真に入れています(自分の家の成人女性の姿は見せまいとするのが現地のデフォ)――つまりとても「リベラル」な人です。

chuffed.org

さて、当ブログならびに拙Twitter/Xアカウントを、id:tmrowing (松井孝志先生)にご紹介いただきました。ありがとうございます。

tmrowing.hatenablog.comTwitter/Xのアカウントでの#ガザ市民の声翻訳について、"胸が締めつけられるような投稿が多いのですが、現実を知るためにもお読みいただければと思います" とおっしゃっていただきました。

私は、普通に読んでいたらとっくに胸が締め付けられてつぶれていたと思いますが、翻訳者なので自分の感情などというものはないものとして扱っています。それでも現実があまりにひどいし、ずっとフォローしてる人たちについてはそれなりに愛着もあるので(「ネット上の友人」という関係になっている人もいる)、本当に、ときどきどうしたらいいかわからなくなっています。そういうときに英文法解析ができる隙があると、私は救われます。現実世界で起きていることと異なり、ちゃんと根拠を示して解説すればそれで話が終わるからです。イスラエルのやっていることは単なる違法行為なので、本来、ちゃんと根拠を示して法的な手続きをとれば、それで解決するか、解決するに至らなくても停止するはずのことなのです。その秩序が、イスラエルによって破壊されている。それは今に(2023年10月7日以降に)始まったことではなく、例えば隔離壁についてはもう20年以上も前に「違法」と判断されています(「国際司法裁判所は2004年7月9日にイスラエル政府の分離壁の建設を国際法に反し、パレスチナ人の民族自決を損なうものとして不当な差別に該当し、違法であるという勧告的意見を出している」)。

ガザ・ジェノサイドは、この世界のルール、特に戦争犯罪や人道に反する罪、ジェノサイド罪といったものを規定する国際法をすべて無視して――というより「スルーして」という日本語がふさわしい――遂行されています。法律が無視されているということは、被害者からみれば頼れるものがないということになる。警察にストーカー被害の相談をしているのに「痴話げんか」とみなされて放置される被害者と同じで、どこにも救いがないのです。そして、その流れを主導し決定づけたのは、米国の民主党政権(ジョー・バイデン大統領)です。トランプが最悪なのは、1期目で米大使館をテルアビブからエルサレムに移転させたことからも明らかですが、ガザ・ジェノサイドの責任を負うべきはトランプではないです。でも、トランプはICC(国際刑事裁判所)に制裁を発動するという暴挙に出たわけで、責任がないわけでもないです。そこまでして、何を守りたいのか、と私は思ってもいるけど、結局、彼らは「守りたい」ものがあるから破壊しているのではなく、単に破壊したいのでしょう。何のためにかはわかりませんが。

そうそう、ウガンダといえば、ICCじゃなくてICJの方で、南ア対イスラエルで唯一反対してイスラエル側についていたあの判事(ICJの副所長で、今年初め、当時の所長が自国の首相となるために辞職したので、臨時の所長になったけど、その点は岩澤判事が正式な所長に選出されたので大丈夫は大丈夫)が、法に照らしてではなく、自身の信念に照らして判断していた*1ことがウガンダのメディアのインタビューで判明し、今、Twitterは大騒ぎになっている状態。国際法方面がこれを何ともできないなら、アメリカとイスラエル(とロシア)による破壊に加えて自壊の方向の力も加わるのではないかと。

 

*1:「自身の信念」だけではないかもしれない。あの人、書いたものがあれこれコピペだったことがばれているんだけど、コピペ元を誰かが支給していたのだったら……。

誤訳しそうになったときにGoogleに助けられた話: "to call out the silence" は熟語化しつつあるのかな

今、本当に、翻訳の作業中なんだけど、誤訳しそうになったのでちゃちゃっと書いておく。

頭を翻訳モードにしているつもりでも、翻訳に必要な集中ができる前に目にしている言葉が目の前で崩壊して意味を失っていくという状態で*1、普段ならこんなところで誤訳しそうになるということはたぶんないのだが。

 

今やってるのはこれで: 

https://x.com/translatingpal/status/1954609141793890626

それは下記への追記分である: 

https://note.com/nofrills_note/n/n92655b7f4838

note.com

原文: 

Following his killing, UEFA issued a statement noting his “death” but failed to mention that he was deliberately murdered by the genocidal Israeli state. His wife has publicly called out the silence, addressing football star Mohamed Salah directly: ...

これを流れで翻訳していて(英語の文字を追うのと同時に頭の中で日本語になるがままにしている状態)、太字部分をうっかり「沈黙を破り」と訳しかけ、「いや待て、この原文はそんなこと言ってないぞ」と読み返して(だって事実として、ここでの話者、つまり "His wife" には「破る」ほどの「沈黙」はなかったのだから)、……通常ならここですぐにちゃんと言葉通りに訳せるんだけど、今は極めて調子が悪いので、意味が取れなくなった。

もちろん、call outという句動詞は知ってるし、自分でも英文を書く際に使いたいときに使える範囲の表現だが、普段なら何ら苦労しないところで、call outがひとつの表現として意味をなさず、callとoutというばらばらの単語にしか見えない。頭が高校2年レベルまで戻ってしまった(こういうのを繰り返して、自分で英文を少しは書けるところまで持ってきたのである)。

それがまた自分に負担になってストレスが増すのだが、やらないという選択肢はない。

こういうときにすべきなのは、辞書を参照することだが(辞書をひくという習慣がない最近の人にはこれがまったく通じないのだが、この基本をおろそかにすると、誤訳量産機にしかなれないよ)、辞書を引く気力すらないので、とりあえずググるという雑なやり方をしたところ、AI導入後の今どきのGoogleは気の利く秘書みたいになってて、一発で調べものが完了する。これが「誰も元の記事を見ようとしないのである」的な状況を引き起こし、内容だけGoogleに吸い上げられる報道機関は危機感を表明、みたいなことになっているのは知っているが(報道機関よりも、個人がSubstackなどで運営している専門性の高いサイトが深い危機感を抱いている様子。エチオピア情勢とか)、実際にググるだけでこれが目の前に出てくると、「わ~い、一発で済んだ♪」と思ってしまう。

 

https://www.google.com/search?q=Call+out+the+silence+meaning

つまり《to call out the silence》という表現には、"to bring attention to the lack of speech or response in a situation" (発言や反応がないという事実に注意を向けさせる)という意味がある。うん。直訳だね、これは。「沈黙をcall outする(指摘する)」だから。

そっから、「さまざまなニュアンス」として4項目が挙げられているが、"Publicly confronting" と "Focus on injustice" が《熟語》っぽい。「沈黙をcall outする」という直訳からずいぶん離れてきてるので。

 

なお、上記のGoogle検索画面のキャプチャは私のトラッカーがある状態でのもの(私のフィルターバブルの中でのもの)で、トラッカーを手動で外して同じURLを読み込むと下記のようになる。私向けにカスタマイズされている検索結果より、こっちの方がわかりやすいね。そんなに「難しいの読んでる奴」扱いされてるのかな。

 

※AIがまとめて列挙している部分は、本気で参考にしたいなら、ソースとして表示されるリンク先に本当にそんなことが書いてあるのかどうかを確認する必要がある。実際に中を見てみると「そんなこと書いてないじゃん!」ということも多発するのがAIなので、本当に要注意。

 

ともあれ、これで疑問は解けたので、翻訳の作業に戻ることができる。英語ブログのネタもできたし、Googleのフィルターバブルの実例も採取できたし、めでたしめでたしじゃないか。

 

というわけで、note記事の更新に戻ります……。とりあえず「夫について語られないことがあると指摘」っていう方向性で日本語にします。

 

*1:原因はストレスで、しかもそれは翻訳対象の言葉、それらの言葉が語っていること、それらの言葉が生じている状況が私という人間にもたらすストレスなので、逃げ場はない。

not ~ any, help + O + 動詞の原形, など(ガザから、学問継続のためのペンと紙を買う代金の支援要請)

ガザの大学生マフムードさん(アズハル大学、医用生体工学専攻)から、学問を続けるための支援要請が来ています。

 

これ、対面でお話する方にお伝えするとほぼ例外なくびっくりされるんですが、この状況下で、ガザでは高校も大学もリモートで授業・講義・試験が続いています。学生はテント暮らしをしながら課題と向かい合い、教員は授業プランを考えたり試験問題を作問したり採点したり、学生からの「昨日、隣のテントが爆撃されて急遽避難しました。課題提出日を遅らさしてください!」といった請願に応じています。コロナ禍でリモート教育のシステムが整っていたのが不幸中の幸いで、それがなかったらいったいどれだけの人が教育をあきらめていたか。

 

マフムードさんも、北部ベイトハヌーンから南部ハンユニスに避難してしばらくしたころ、一度、学問の継続をあきらめたことがあります。一家の長男坊として生活を支え、食料や水、燃料を確保しながら、スマホやPCの充電のため共同充電所にでかけ、ネットのつながるところまで行って課題をDLしてくるだけでももういっぱいいっぱいで、その上学費もかかる。学問の中断は思いとどまったものの(彼は真剣に、技術者になりたいとがんばっています)、今度は、3日にハンユニスの避難先の学校が爆撃されてお身内を亡くし、埋葬が済んだらその足で殲滅作戦がおこなわれているハンユニスを脱出して、破壊の程度がそれほどでもない中部デイル・アル=バラハに行き、数日路上生活したあとでようやく身を寄せることができる家を見つけ、高額な家賃も何とかしたばかり。そのなかで、ノートやペンがどこかにいってしまったのかもしれないし、あるいは単に持っていたものを使い果たしたのかもしれない。

 

いずれにせよ、逆境なんていうものではない逆境で、学ぶことをあきらめていないひとりの学生さんのため、金銭的ご支援が可能な方にはご検討いただければと思います。何とぞよろしくお願いします。

chuffed.org

※本稿はnoteにもクロスポストしますが、当ブログらしく英文法解説しておくと、 "I don’t have any notebook or pen" は《not ~ any》の構造で、noの意味、全否定です。「まったく~ない」。 "Please help me buy the necessary paper and pens." は《help + O + 動詞の原形》の構造。

 

→ noteへのクロスポスト完了

note.com

UPDATE

期末試験受験中のマフムードさんから。まず初日の受験完了報告。添付画像で「提出済み、採点待ち」であることが確認できます。

 

試験2日目。「大変な状況下でろくにものもないけれど、全力を尽くして学業をやり遂げます」という決意の弁。学費もクラファンで集めているとはいえ、細かく報告してくれて、本当に律儀な若者だと思う。

しかも勉強してるだけでなく買い出しにも出てるし(まだ価格が高すぎて買い物はできないなあという段階): 

弟さんが買い物をしてきたんですね(彼は彼のクラファンをやっている): 

幼い弟さんと妹さんがスープか何かの鍋を見ている間、そばについているお兄ちゃん。この肩の細さ。痛々しい。

 

UPDATE: ブクマ家のみなさん、ありがとうございます

当エントリがはてなブックマークのトップページに出てるのを発見して、スクショしてマフムードさんに送ったら、すごい喜んでくれました。ブクマカのみなさん、ありがとうございます。

 

手書き文字(90代のイギリス人)

いやもう、「Twitterすごい」としか言いようがないんですが、以下をここにアップするのは第一義的には手書き文字の実例です。90代のイギリス人の手書き文字。かなり読みやすいので読んでみてください。下記のツイートに添付されている写真。

 

 

ツイ主のニコラ・ペルジーニさんは、スコットランドのエディンバラ大学准教授(政治学)。彼のもとに送られてきた手書きの手紙を写真で紹介してくれているのですが、この送り主のおじいさんA L Smithが、第一次大戦中から戦後にかけて、オクスフォード大学のベイリオル(ベリオール)・コレッジ*1のmasterで、1919年にヴァイツマンから2年前に出されたバルフォア宣言を支持するよう依頼する書簡を受け取ったが、おじいさんは「パレスチナの地にユダヤ人がsettleすれば、現在住んでいる人がunsettleすることになる」として支持を拒否したと。

 

ベイリオル・コレッジともなるとmaster(学長)のリストがウィキペディアにあるのでチェックしてみると、確かにある。歴史学者で1850年生まれ、1924年没。

https://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_Smith_(historian)

 

ウィキペディアにはさすがにバルフォア宣言のことは書いていないけれど、大英図書館などで掘ろうと思えば掘れるのではないかと。英国のことなので。

 

いやあ、すごいものを見たのでシェアしたくなりました。

 

肝心の通信の内容はペルジーニ准教授が論文なり論説記事なりに書いてくれると思いますので、気長に待ちましょう。

 

サムネ用:

 

*1:雅子さんが学んだのはここ。

「仮定法はこう使え!」というお手本が、ガザからやってきた。

久しぶりにログインしました。

 

今回のエントリは、表題通り。下記です。初見で、あまりの美しさにしばししびれました。英語の仮定法独特の、ちょっともっちゃりした余韻が重なり合うところに、等位接続詞andを使う(べき)《列挙》の構造が絡んできて、気取らない、身近で素朴な言葉の連なりが美しい絵を描く。そこに "siege" とか "F-16" といった、いわば「ガザ用語」が、現実というものを突き立てるようにして、自然に織り込まれている。

 

とにかく、読んでください。医用生体工学専攻で義足の技術を学んでいる大学生、マフムードさんの投稿。彼にとって英語は外国語です。私にとってもそうだけど、私が彼の年齢のときに英語でこういう表現力を持っていたかというと持ってなかったし、今だってたぶん、かろうじて足元に貼りつけてはいるかなっていうくらいの能力しかない。

 

一応、当ブログらしく英文法解説めいたことをしておくと、下記の太字のところが《仮定法》です。あと、下線で示した "used to" もきれい。

What if there were no war on Gaza?
Perhaps I would be telling you about the beauty of Gaza — about its calm sea and its kind-hearted people.
I would have spoken about our beautiful traditions, about thyme and olives, about the traditional dabke we dance in joy,
about our simple celebrations that filled our homes with laughter,
about how we used to play and have fun in our little neighborhood in Beit Hanoun, running freely, laughing wholeheartedly.

...

 

本来は、一字一句に真剣に向き合って、粗訳して寝かせて推敲して訳しなおして……というプロセスを経て日本語化して公開するような性質の文(というか「散文詩」ですよね)なのですが、今は事情があってスピード優先なので、ざっと仮訳したものをnoteにアップしてあります。

note.com

なぜ「スピード優先」かというと、マフムードさんは緊急にお金(クラウドファンディング)を必要としているから。私にできることとして、ガザからの言葉の翻訳に使っているTwitter/Xやnote以外のチャンネルにも彼の言葉を流して、彼への投げ銭を1人でも多くの人に検討してもらいたいから。

chuffed.org

何が起きているかというと、ガザでは今が「物資入手のチャンス」(それも今後ないかもしれないようなチャンス)になっているのです。

 

数か月前に完全に封鎖されて物資がまったく入らなくなったガザ地区には、基本的に、食べるものも生活必需品もずっと入っていません。ひどい兵糧攻めです。GHFとかいう「人道支援を称するデス・トラップ」と称される詐欺的な目くらましの事業と、「人道危機を憂慮してま~す」というアラブ諸国のポーズのための物資の空中投下で、焼け石に雀の涙を垂らすような物量の物資を、加害者自身が焼け石を火炎放射器であぶりながら入れてくる、という状況で、それを加害者は「物資は入っている」と言っているんだけど、「なんがつなんにちなんじなんぷん、何を何キロ?」と小学生のようにツメたら、相手は黙るんじゃないかなという程度でしかない。ガザとイスラエルまたはエジプトの境界のこちら側には、普通に物資を積んだトラックが列をなして待機しているのに、境界線を越えることを、ガザ地区の外周部を制圧している/支配するイスラエルが許可していない、というか、イスラエルの一般市民のうちの過激派が、道路をふさぐなどして積極的に妨害している。

 

私がフォローしているガザの人たちも、自撮り写真を見る限り、「細い」んじゃなくて「薄い」という印象になっていて、赤ちゃんは体が大きくなるどころか痩せ始めていて、こちらとしても不安と焦りでどうしようもなくなっているんですが、昨日8月7日に唐突に、支援物資のトラックがある程度の意味を成すくらいの数量でまともに(略奪されずに)入って、何人もの人が「市場に物が並んでいる」という報告をしている、という状況です。物価も、小麦粉やお米1キロが日本円に換算して数千円、という法外な価格から見れば大幅に下がっていて、多くの人が、数か月ぶりにお砂糖を買って、甘くしたお茶を飲んでいると報告している。

 

しかしマフムードさんは、つい先日、避難先としていた南部ハンユニスの学校がイスラエルに爆撃されてお身内が犠牲になり、イスラエル軍が殲滅作戦の最終段階に入ったハンユニスを出て、中部デイル・アル=バラハに移動したはいいものの身を寄せる場所も見つからず、ようやく見つけた家は大家が法外な家賃を要求……という状況で、本人ふらっふらの状態で必死にネットで呼びかけてお金を集め、ようやく家を確保したばかりです。つまりこれまで集めたお金は使い果たしている状況と思われます。ちなみに彼は彼の核家族では長男で、お父さんは怪我のため働けず、長男の彼が大黒柱です。まだ大学生なのに。ジェノサイドなんか起きていなくて順当に技師になれていたら、専門職として安定した収入を得ていたかもしれないけれど(←仮定法で書いてみた)、今はその見込みもなく、頼れるのは本当にクラファンだけという、めちゃくちゃ不安定な状況です。しかも、彼が面倒を見る責任を負っているのは、彼自身の核家族の他に5家族(近縁の親族)。というわけで、物価が下がっているこのチャンスに必需品を調達するために、1家族あたり100ドル、6家族分で合計600ドルの支援要請が出ています。

 

 

というわけでの「スピード優先」での仮訳公開です。何卒、よろしくお願いします。

 

マフムードさんのクラファンはこちら: 

https://chuffed.org/project/mahmoudmassri

クラファンの要請文の文面は日本語化してあります。下記画像です。これは自由にダウンロードして印刷等していただいてかまいませんし、これをネタに金儲けをしようというのでない限りは訳文は自由にお使いいただいて構いません(訳文の権利は私は主張しません)。

https://chuffed.org/project/mahmoudmassri

しかしまあこの人たちのこの英語力は本当にすごいと思う。日本で「12年間もやって英語がしゃべれないのはどういうことだ」というルサンチマンのにきびみたいなものから噴出した怨念が作り出した、間に合わせの、「道具としての英語」という美名で呼ばれるようなものではないので。

 

(ほぼ全編現地語の映画『ノー・アザー・ランド』でもバーセルが一瞬だけ英語を使うシーンがあって、そこで彼は自分の教育的なバックグラウンドに言及していたんだけど、ガザの人たちの状況は西岸のバーセルとはまた違う。)

 

"a song for you to sing" は「あなたのために歌う歌」ではない。「あなたが歌う歌」である。(不定詞の意味上の主語)

わたしは激怒した。必ず、かの、イメージだけでしたり顔で「日本の英語教育」を語っちゃう上に1980年代末の、『別冊宝島』の「道具としての英語」の時代の認識のまま「文法」を敵視する業界人改め国会議員(参議院)の、「張りぼて」と言うのも張りぼてに失礼なレベルでチャチな言説にカウンターをくらわしておかなければならぬと決意した。わたしには政治がわからぬ。わたしは、一介の英語屋兼ブロガーである。コンマのあとにスペースがなければ笛を吹き、仮定法と遊んで暮して来た。けれども「英文法なんかやってるからしゃべれない」という邪悪な言説に対しては、人一倍に敏感であった。

ラサール石井*1の思い込みとは逆に、日本の英語教育で「英文法」が片隅に追いやられて、もう何年になるだろう。ぶっちゃけ、そうなる前から、文法などお構いなしに「何となくフィーリングで」*2英文を読む大学受験生はとても多かったし、その中にはごくまれに、なぜかとびぬけて優秀で、文法はまったくできないのに読解テストは8割超をコンスタントに得点するという人もいた(が、そういう場合は自分では英文を書けないので、自由英作文ができないと受からない大学には進めなかったりするのだが)。いやもうほんとマジで、He is a lawyer. を He has been a lawyer for 30 years. に展開することもおぼつかない、みたいなことは、いつだってとてもありふれていたんだけど、もうそういう問題ではなく、全体に、なんていうか……と急に歯切れ悪くなっててあれなんですがごめん。

昨晩、noteのほうでこの記事を書いたときに、"My Death is not a song for you to sing" というタイトルの「ガザの詩人の会」の自主制作本(電子書籍)について自分のツイートを発掘する必要があって、このタイトルをTwitter/X内で検索したときに目にしたものを見て、「英文法大事!!!!!!」と叫んだわけですよ。さらしたいわけではないのであちこちマスクしますが、スクショ: 

 

 

うんうん、わかるよ、単語だけ勝手につなぎあわせるとこうなるよね。だがこれは《不定詞の意味上の主語》だ。英文法ちゃんとまじめにやってないとできない項目トップ10の上位に食い込む例のあれだ。

 

It's easy to take a picture with your phone. という文なら一般論だ。「(一般的に)携帯電話を使って写真を撮ることは簡単である」という意味だ。

それを一般論にせず、「特定の誰かが写真を撮ること」を言いたい場合に《意味上の主語》が出てくる。 It's not easy for me to take a picture with my phone, because I'm injured in my right hand. みたいなものだ。「私が携帯電話で写真を撮るのは難しい。右手に怪我をしているので」。これは一般論ではない。「ほかの人にとっては難しくないかもしれないが、私には難しい(怪我をしているから)」ということを言っている。

 

これを踏まえていないと、It's not easy for me to take a picture with my phone. を「携帯電話で自分のための写真を撮るのは簡単ではない」と解釈してしまうのだがそれは誤訳だ。上記キャプチャはまさにその例である。

さらにそこから、日本語だけで勝手に考えて「携帯電話で自撮りするのは難しい」とか「インカメラで映え写真ってどうやったら」みたいに「意訳」してしまうこともあるだろうが、それは意訳じゃなくて単なる誤訳である。元の解釈が間違ってるんだから。

 

ひるがえって、"My Death is not a song for you to sing" だが、これは「私の死は、あなたのために歌う歌ではない」ではなく、「私の死は、あなたが歌う歌ではない」である(to singするのがyou, というのが《意味上の主語》の構造。こう説明しても理解されないのがデフォっすけどね)。

 

要は、他人の死を勝手に称揚すんな、ということで、これは2023年10月以降全地球規模で広がっている、非パレスチナ人の間でのパレスチナ・ナショナリズムの熱狂と陶酔に、当事者であるパレスチナ人によってガツンとくらわされているパンチである。非パレスチナ人は、パレスチナについて語ることはできても、パレスチナを語ることはできない、というとわかりやすいだろうか。翻訳者なんざ特に、基本的にただの媒体なんで、自分が熱狂しちゃいかんのである(ましてや煽動するなどもってのほか)。自分が歌うな、言葉に歌わせろ、そういうことだ。

 

私はロマン主義的な熱狂、あの甘美な陶酔も知っている(いろいろあったんだよ)。むしろ大好きだ。だが、それを捨てねばならぬ。わたしは覚悟した。そういうことだ。

 

そんなことより、不定詞の意味上の主語くらいはしっかり押さえようず……

 

https://x.com/n0fr1ll5/status/1937904439941366256?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1937904439941366256%7Ctwgr%5E49b5a161e3c372e0c52184ea7ab9fc416d3cf21f%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fnofrills_note%2Fn%2Fn10746a0c0162

https://x.com/n0fr1ll5/status/1937904439941366256?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1937904439941366256%7Ctwgr%5E49b5a161e3c372e0c52184ea7ab9fc416d3cf21f%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fnofrills_note%2Fn%2Fn10746a0c0162

 

buymeacoffee.com

ちなみに、このEbookを紹介してる元スレッドはこれ: 

ドイツ、ベルリンとスコットランドに拠点のある自主出版レーベルで、フェミニズムや反植民地主義の詩を扱っている。下記の詩集はデスク脇に置いて常に参照できるようにしてある。

Keep Telling Of Gaza

Keep Telling Of Gaza

Amazon

 

英文法の重要性については、下記の本がいい。ゴールは「書く」ことで(このあたり「英会話」で熱狂している日本の「読み書きはできるのに会話ができなかったと思い込んでいるけれど実は書くこともできなかった中高年」の視野の狭さは致命的だが、今の30代から下はこの「英語の読み書きはできる日本人」という神話からは自由だろう)、そのために「文法」がいかに重要かをちゃんと書いている。著者は「外国語としての英語」というものを扱いなれている英語母語話者である。翻訳は高橋さきのさん。

 

ていうか、「英語の読み書きはできるけどしゃべれない」と眉間にしわよせてた中高年、こういう英語書けないでしょ。

これは、ガザで経営学を大学院で学んでいる最中にジェノサイドに巻き込まれた人の英語。

 

この人も経営学を修めた人。

 

看護師さん。

 

今、ぱぱっと見た画面にあったものをいくつかリンクしただけだが、このクオリティの英文がガザからは毎日、いくつものアカウントから流れてくる。この人たち、もう20年近く前から封鎖下にあって、自由に外と行き来できるわけでもない環境で育って学んできて、この英語を使えてるわけです。文法はケンブリッジの教材(マーフィー)でがっつりやってるみたいですね。

 

 

*1:この名前もいいかげん恥ずかしいんだが、私はこの名前を「恥ずかしい」と思って30年くらいになる。

*2:こういう常套句があった。

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