英国ミュージシャン、レーベルから権利を取り戻すために声を上げる

英国のポップスター、ロックスターらが、音楽レーベルからコントロール、そして権利を取り戻すために団結した。Robbie Williams、Radiohead、Kaiser Chiefs、The Verve、Jools Holland、Travis、Kate Nash、Bryan Ferryなどのアーティストたちは、Featured Artists' Coalitionという圧力団体を設立した。同団体は、アーティストが創作した作品の権利を譲渡することなく自らが所有し、いかにして楽曲が販売されるか、についての発言権を強めることを求めている。

設立の背景とその反応

この件を報じたBBCは、この動きをデジタル時代における音楽産業の力関係がシフトしている兆候だとしている。昨年1年間を見ても、Radiohead、Nine Inch Nails、Madonna、その他数多くのアーティストたちが、自らの手で、もしくは伝統的な音楽産業の慣習に沿わない選択肢を選び、音楽リリースの新たな道を切り開きつつある。その一方で、レーベルや音楽出版社もオンラインコンテンツディストリビュータとの契約を進めていたが、そうした交渉にはアーティストが口を挟む余地はなかった。
新たな可能性と、旧態依然とした産業慣習への不満、それがこうした団体を生み出す原動力となったのだろう。
BPI(英国レコード産業協会)のスポークスマンは、同団体の設立に関して、連携を模索していく、と述べている。

「英国の音楽ビジネスは、パフォーマー、ソングライター、プロモーター、マネージャー、エージェント、レーベル、出版社、ディストリビュータ、製造者、リテーラーといった人々が結び合わさった、複雑なコミュニティです。
どれがかけてもビジネスが機能するものではありません。これは、強力な外圧の下にあるビジネスであり、我々の連帯は強固なものです。
主演アーティスト、セッションミュージシャン、ソングライターといったクリエイターたちこそが、まさにこのビジネスの中心にいるのです。私たちは今後、FACと密接に強調していくことを楽しみにしています。」

もちろん、話し合いのためにこうした団体が作られたのだろうが、ある意味では反旗を翻されたにもかかわらず、この返答というのものんきな感じがしないでもない。といっても、ここで対決姿勢をとってもそれほどメリットは無いからこそ、こうした差し障りのない発言に留めているのだろうが、FACとしてはこうした音楽産業の構造すら今後どうなるかわからない、と主張している。

FACの要求

Featured Artists' Coalitionは同団体の宣言"A charter for fair play in the digital age"の中で、コントローラビリティに関して以下の3点を強調している。

  • アーティストは自らの音楽の基本的な所有権を保持しなければならない
  • すべての合意は、フェアに実行されなければならず、収支には透明性を求める
  • ライツホルダーは、その著作者*1のケアを受託者義務として持ち、作品の利用のされ方について、契約がどのような影響をもたらしうるかを常に説明しなければならない

また、これらは以下の3点によって達成されるとしている。

  • 契約に対するアーティストのアプローチを変えること
  • 音楽企業、テクノロジー企業によるアーティストの権利、収入に対する待遇を変えること
  • 新たなミュージックランドスケープを反映した法律に書き換えること

そして、宣言は最後にこう締めくくられている。

我々はアーティストの権利を保護する法律、規則、商慣習、ポリシーのために運動を行う。我々は、政府、音楽企業、テクノロジー企業、徴収団体と共同することで、すべてのアーティストを支持する。我々はフェアプレイに賛成であり、アンフェアな実行をあらわにするものである。

アーティストとレコード会社、そして消費者

私はこれまでアーティスト側の発言を望んできた。なので、こうしたアーティスト側のアクションというのは非常に嬉しくもあるのだが、それは新たな局面を迎えるということでもある。これまで、様々な場面で(望むと望まざるとに関わらず)都合のいいように記述されてきた人々が口を開くことになる、これはともすれば、消費者とも直接衝突することもあり得るということだろう。
最近ホットな話題としてパフォーミングライツをとってみてもそうだろう。FACは、現在の著作権者(作詞、作曲者)の扱いに比して、パフォーマーの扱いが悪いと述べている。FACのマニフェストでは、英国でのテレビ広告、映画、米国での無料放送において、パフォーマーは著作権者に比べて支払いが少ない、もしくは支払われていない、としており、それらは改善させるべきだと主張している。ここでは、パフォーミングライツの保護期間延長問題については触れられていないが、ともすればそうした部分でも権利拡張を求めてくるかもしれない。
アーティストを含めたレコード産業の各プレイヤー、そして消費者は、それぞれの利害があり、ときにそれは対立する。もちろん、対立したままであったり、一部のプレイヤーだけに便宜が図られるという状況は望ましくないが、それでもそれぞれのプレイヤーがそれぞれの利害を主張し合い、それがフェアに調整されるのであれば、望ましい状況になりうるのではないかと思っている*2。

*1:元の著作権、パフォーミングライツの所有者

*2:もちろん、消費者が最も声が届きにくいと言う問題があるのだが…