音楽著作権管理事業者の新規参入を阻害するのは「Culture First」なんでしょうか

みんな大好きJASRACが公取委に怒られてるみたいだよ、っと。
■ 音楽著作権管理、JASRAC独占の疑い・公取委が立ち入り:NIKKEI NET(日経ネット)
■ JASRACに立ち入り検査、音楽著作権新規参入を阻害 : 社会 : YOMIURI ONLINE
■ 公正取引委員会、JASRACに立ち入り検査--著作権管理市場を独占の疑い:CNET Japan
■ 公正取引委員会、JASRACに独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査:InternetWatch
確かに包括契約ってのは、契約を結んでしまえば、煩雑な処理が必要なく音楽を利用できるという点で、非常に有効な契約だとは思う。
ただ、それが許されていたのはJASRACが独占的に著作権管理業務を行っていたためであり、2001年の著作権管理事業法施行以降、競争相手が登場するいたっては、そうした利便性だけで判断されるものではなくなったと。
個人的には事前であれ、事後であれ全曲報告の方向に向かうのがベターだと思う。確かに処理は煩雑になるだろうし、包括的契約そのものの是非まで問われない状況になるかもしれない*1。ただ、それもシステムが追い付くまでの一時的なものだと割り切るしかないんじゃないかな。それが実現すれば、徴収の曖昧さ、分配の曖昧さも幾分は解消されるだろうし。
実際、JASRACとの包括契約がある以上、さらに他の著作権管理団体と契約を結ぶとすれば、利用者(放送局など)は単純にコストが上乗せされるだけに終わる。おそらく、JASRACとしてはどうしても避けられない状況になるまでは、包括契約のレートを下げるということはしないだろうし、結局は他管理団体が放送局との契約を結ぶことが難しい状況が作り出される。で、そうなれば著作権者も他管理団体に著作権を信託することはない。さらに新規参入組はこの分野には進出が難しくなる。

ただ…

JASRACとしてもこうした状況は考えていたんじゃないかなぁ。2001年の著作権管理事業法施行から何も考えていないとは考えにくい。おそらく、全曲報告システムに移行するだけの準備はしてるんじゃないかしら?とは思うのだけれど。あとは、報告する側の対応ってところなんじゃないかな。たぶん、一部の放送局もそういった準備は行っている…と思うよ。
とはいっても、この件がうやむやになれば、おそらくこれまで通りの包括契約を進めると思う。簡単にいえば、JASRACの独占体制を維持するためには、もってこいの契約だからね。最も音楽著作権を多く管理する団体の楽曲が定率の使用料で使い放題なんだもの、わざわざ他の著作権管理団体と契約を結ぶのも損だよね。そうなれば、利用者との契約も、著作権の信託も一手に引き受けることができると。
まぁ、それでも公取委による著作権に絡んでの指摘はそれほど珍しいことでもないので、これによって大きく変わるか、というのは今のところは?マーク付きということで。

ところで、この事件により、2ちゃん等でまためちゃくちゃなJASRAC叩きが始まるかと思いますが、当ブログの読者の方はおわかりのように、JASRACのすべてが大問題というわけではありません。比較的ちゃんとしている部分もあれば、問題ありな部分もあります。事実に基づいた冷静な批判を行なっていきたいものです。

栗原潔のテクノロジー時評Ver2 > 【速報】公取委がJASRACに立ち入り検査 : ITmedia オルタナティブ・ブログ

同感です。
あとこの記事も要ちぇき。

*1:すべての包括的契約が問題視されるわけじゃないだろうけど