ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

熊本一規著『脱原発の経済学』を読んで

 上記の本を図書館で借りて読みましたが、内容は実に細かく、経済の基本用語をよく知っていないと、なかなか理解が難しい本です。
 故に著者が言わんとしているところで、理解出来た箇所を若干挙げたいと思っています。
 既に熊本氏の事は11月1日のブログで触れました。高校まで数学少年で大学に入ってから、公害問題との関わりで都市工学科を選んだ人で、この本でも数学は若干採り入れられています。
 まずあとがきからです。熊本氏がこの本を書くきっかけになったのは、「原発の電気が安い」という主張に対する反論をきっちりしておきたいからという事からでした。
 最初に一般電気事業ですが、契約電力50kW未満の需要家(主として一般家庭)に対して今も地域独占が認められている他は、1995年以後の改革で部分的自由化が実施され、特定規模電気事業者(PPS)が東京電力よりも遥かに安い料金で、オフィスビル、学校、ホテル(ほとんどの省庁も)などに電力を供給出来るようになりました。しかしPPSは電力会社が決める「託送料金」の約款を承諾しないと送電出来ない仕組みになっています。その為公平な競争が妨げられ、現在全面自由化及び発送電分離が見送られています。
 電気料金算定では「総括原価主義」というものが採用され、電気を供給するのに必要な発電から販売に至るすべての費用に事業報酬を加えて、これに電気料金収入が見合うような形にしています。総括原価を詳しく見ると、1電気事業固定資産の減価償却費、2営業費、3諸税、4事業報酬から成り立っています。
 このうちの2の営業費の中に膨大な広告費、研究費が含まれ、各種広告の他、原子力ムラなどに大量の研究費が提供されて来ました。
 熊本氏によると、一般家庭が選択出来る余地のない独占状態(関東地方では東電)で、どうして莫大な宣伝費が必要とされ、製品価格に含められ、結果的に電気料金に反映されて一般家庭に押し付けられるのか、それは全く不当であると主張しています。当然です。
 そして熊本氏は原発の電気が安いという主張に真っ向から反論しています。発電の費用として減価償却費、固定資産税,一般管理費、燃料費などがかかりますが、熊本氏は簡単な数式を用いて詳しく問題点を指摘しています。かぎとなるのが「設備利用率」で、37.1パーセント以下では、石油火力が一番安く、それ以上で石炭火力、62.8パーセントを越えると原子力が一番安くなるとの事です。ところが石炭火力は実態で83パーセントを確保していたので、原子力より安くなっています。
 この電源別原価のモデル計算で1985年、石炭火力が原子力より安くなる事が分かってから、経産省や電力会社はまずいと考えて、算定方式を変更しました。それによって原子力が一番安いという結果をずっと維持して来たそうです。2004年のモデルが、最もひどい算定方式の改ざんでしたが、その操作を加えての試算がなければ、石炭火力が断然安く、次いでLNG火力が安く、その下に原子力が来ます。このカラクリを熊本氏が詳しく計算して暴露した事になります。その詳細をこのブログで紹介するのは無理なので、実際この本を読む事をお勧めします。

 この後熊本氏は東電原発体制が地域を破壊し、住民・漁民にモノを言わさぬ体制を作り上げて来た事を批判し、安全な原発はあり得ず、したがって脱原発の方向へ向かう事が必要であり、それが可能である事を述べています。休眠状態の水力・火力を動員すれば、最大電力はまかなえます。
 しかし他のエネルギーへの変換はなかなか難しいです。太陽光、風力もいろいろ難点があり、バイオエネルギーには問題があるので、目を海洋に向け海草に注目して、バイオエネルギーとして利用する事、それに昔ながらの水車を利用する水力エネルギーを利用する事など、独特な提案がありました。外国では熊本氏はデンマークの技術を高く評価しています。
 東電の「剃刀」勝俣会長の原発経済論理には、この熊本氏は立派な対抗馬となれます。とにかく私たちの払って来た電力料金に、膨大な広告費。研究費が含まれていた事は腹立たしく、その被害者でもあり無知の加害者でもあった事から、もっと目をそちらに向け批判して行く事が大切です。
 「あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない」(出エジプト20:16十戒)。
 「真実な証人はまやかしを言わない。偽りの証人はまやかしを吹聴する」(箴言14:5)。
 「偽りの証人は罰を免れない。まやかしを吹聴する者も、のがれられない」(箴言19:5)。