はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

豊かなダム体験

もともとは灌漑専用のダムだった福島県が有する千五沢ダムは、再開発によって治水機能が付加された。その際に整備されたのが、洪水調節機能を有するラビリンス型の洪水吐。これがなかなかお目にかかれないレアもので、その異様な姿にときめいた。形状はずいぶん違えど、岡山の苫田ダムにもラビリンス型の洪水吐が採用されているね。

ダムに大量の雨水が流入しても、4つの先端部にある開口部からのみの放流に制限され、それ以上はダムに貯留される。つまり、ピーク流量の時間を遅らせることで、下流の氾濫を防ぐわけだ。もちろんダムの容量を超えるような非常時には天端から越流するわけだが、ジグザグによってその延長を確保しているのだという。

訪問時にはダムカードをいただこうと、最初に管理事務所に立ち寄った。車庫の前で作業をされていた職員の方が手を止めて声をかけてくださり、満面の笑顔でわざわざ事務所の中にダムカードを取りに行ってくださった。一通りダム鑑賞を終えて車に乗り込むときには、その方が視点場付近の草刈り作業をしておられた。ダムへの訪問者の体験を豊かなものにしてくださっているのだなあとありがたい気分になり、完全に千五沢ダムのファンになった。そうそう、頭が4つに割れたラービくんとリンスちゃんが案内看板などに描かれているのも見逃せないね。