🌀ぐるぐるねこ男ブログ🌀

ぐるぐるねこと一緒に暮らしている男の雑記ブログです(毎週月曜日に更新)

癌と霊能治療

ぐるぐるねこ男

 

先日、僕の外来に通院している患者さん(=Kさん)が「最近、赤いおしっこが出るんです…」と言ってきました。泌尿器科は専門外なのですが、田舎の病院には泌尿器科の専門医なんていないので、おしっこ系の病気でも(ある程度は)診察しなければなりません。早速お腹のCT検査をしてみたところ、腎臓に癌が見つかりました。検査の結果をKさんに告げて、精密検査や手術ができる近隣の総合病院へ紹介することになりました。しかしそのKさん、一度はその総合病院を受診したようですが、腎臓にできた癌の治療は受けませんでした。

 

その理由を聞いてみたところ、Kさんは申し訳なさそうに「知り合いに信頼できる霊能者がいて、その方の霊能治療を受けることにしました」と言いました。そしてすでに施術を受けていて、その霊能者が言うには「このまま待っていれば腎臓の癌は治ります」とのことです。おそらくKさんは精密検査や治療を受けることなく、このまま癌に体を蝕まれ亡くなる可能性が高いと思いますが、その一方で手術や抗がん剤治療を受けていないのに、奇跡的に末期癌が治った患者さんがいるというのも事実です。

 

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僕が研修医の頃に受け持った胃がん患者のAさん。Aさんは癌の摘出術を受けたのですが、お腹を開けてみてあまりにも癌の転移がひどかったため、病巣を摘出することなくそのままお腹を閉じることになったのです。麻酔から目が覚めないAさんを横目に、手術ができないほど癌が進行していたことをご家族に告げました。その事実をAさんに話すとショックで立ち直れなくなると判断したご家族は「手術で胃がんを全部摘出したことにしてください」とお願いしてきたのです。

 

Aさんには嘘をつくことになりますが、ご家族からの依頼通り説明をしました。そしてAさんは「これで癌が治る!ありがとうございました」と喜んで退院されたのです。その後のAさんですが「何かわからないものに、どこかに連れていかれそうな気になる」とおっしゃっていました。そして気を紛らわせるために毎日海辺を1時間くらい散歩するようになりました。そして手術(実際はお腹を開けて閉めただけ)をしてから定期的に検査を続けていましたが、1年半くらい経過した時の検査で胃にあった癌が全て消えて無くなっていたのです。

 

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がん細胞というものは自分にとって異物なので、免疫力を高めればやっつけられるのですが、なにぶん元々は自分の細胞なので、免疫系ががん細胞だけを認知できないという問題があります。その一方で、現代の医学では証明できない不思議な力(治癒力)に時々出くわすこともあります。もし自分が癌になったらどうしようか?こんなことを時々考えますが、やっぱり手術や化学療法などの標準的な治療を受けると思います。

 

霊能治療だけを受けたKさん、主治医として標準的な治療を強く勧めるべきかどうかは悩みどころです。抗がん剤などによって他の病気を誘発する可能性もあるし、手術によって合併症を起こす可能性もあるので、Aさんを説得して無理やり治療を受けさせても「先生に強制された治療で余計に悪くなった…」と責められてしまうかもしれません。どうなるかは神のみを知るですが、自分の健康と命の責任は自分でとるしかありません。これが医療現場での現状です。

 

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それではまた^ ^