あなたは当事者ではない

非常に刺激的な問題意識で編集された本である。研究者が、研究テーマに関して当事者でない場合(子育て経験のない研究者が母親を研究する)、研究者が当事者の場合(障害者が障害者を研究する)、当事者とそうでない状況を研究者が行き来する場合(地域を越境する研究者)、に分けて、「当事者」とは誰のことか、当事者となって研究するとは、ということを、心理学の視点から探った本だ。心理学と言っても、まあ、ふつうの研究スタンスだと言えるだろう。

当事者だから深い研究ができるというわけでもないだろうし、当事者だからという理由で、不適当な代理表象をしてしまうこともあるだろうし、当事者であるという傲慢もあるだろう。私も以前から「当事者」という位置取りの大事さを強調してきたのだが(『脳死の人』など)、その先にはこのような難問が待ち受けているわけである。

あとでちゃんと読みたいと思う。生命学の視点からしても、重要な問題提起だろう。