お前ら、SKKのすごさをもっと知るべきだと思います


ATOKなら3倍速く打てる!

記事を読みましたが、自分は SKK 信者であることをやめる必要を感じませんでした。SKK はフリーの日本語入力システムで、自分は Windows 上では skkime の1.0を使ってます。Mac用には AquaSKK というのがあります。

SKK は、他の日本語入力システムとはまったく違う。他の日本語入力システムについての話を見てて思うのは、あいもからわず「○○は賢い」とか「○○はバカ」とか言ってるんだなぁ、ということです。SKK は「バカ」とか「賢い」とかいう評価を下されることは、ほとんと無いと思います。考え方が全く違うのです。

連文節変換ってのがもう……ダメっ……

主流の日本語入力ソフトでは、一定の長さの文を仮名で入力して変換キーを押すと、ソフトが文節の区切りを検出して、文節ごとに文脈にあった変換をするという流れになっています。このときの「文節の区切りかた」と「変換候補の出しかた」が上手かどうかで、賢いとかバカとか言われているわけです。

しかし SKK は違います。SKK では、「どこを漢字にするか」をすべて明示的にユーザが指示します。カタカナやアフファベットについてもそう。SKK は勝手なことを一切しません。

別の言い方をすれば、連文節変換では、ユーザが「この文を変換してみてくれる?」とソフトに依頼し、ソフトはうまく空気を読んで「こんな感じでしょうか?」と案を出してくる。それをユーザがチェックして、間違いを修正する。こういう流れです。

SKK のやり方は、「ここから漢字…ここまで、はい変換して。…ここからカタカナね…ここまで、はい平仮名に戻して…また漢字…はい変換…」とユーザが全て先に指示を出すという流れです。だから SKK は文節の区切りを判断する必要がない、つまり「区切り間違い」が原理的にありえないのです。


具体的には、たとえば平仮名入力モードのときは、何もせず入力しているとそのまま平仮名で確定されていきます。漢字で書きたくなったら、その単語の最初のキーを Shift を押しながら入力します。「Kanji」(漢字)のように。変換は普通にスペースでやって、Ctrl-j で確定します(Enter でもいい)。確定されるとまた平仮名入力に戻りますから、次に漢字を入力するまではそのまま入れていけばいいのです。片仮名と平仮名は「Q」を押せば切り替わります。


説明を読んだだけでは、あるいはかえって面倒そうに見えるかもしれません。しかしよく考えてみてください。連文節変換では、自分の意図をソフトがある程度理解してくれることを期待することになりますが、いくら賢くても間違いは必ずあるのです。一旦「おまかせ」で案を出させるわけですから、チェック、修正という作業がいつまでたっても必要なのです。

対して、SKK は全てがユーザのコントロール下にあります。SKK に何かを任せるということはありません。だから「賢い」とか「バカ」とかいう評価は、全くそぐわないのです。


「文章を書いてるのに、いちいち今から漢字を書くのか、カタカナを書くのか指示するのでは、思考の流れが妨げられるのでは?」という疑問をもつ人がいそうですが、そんなことはありません。手書きで書く時には、書きはじめる前に漢字にするか仮名にするか決めているではありませんか。むしろその方が自然なのです。変換の案を出させてチェック、などという作業が挟まるほうが、よほど思考の流れを遮るものだと思います。

予測補完?昔からあるよ

Tab キーで履歴から予測して補完するという機能なら、SKK には昔からありますよ。
ただ、SKK では候補が一覧表示されることがないので、自分はあまり使いません。これについては、やっぱり候補の一覧表示があったほうがいいかもしれない、とは思います。

辞書になければ登録すればいいじゃない

ATOK を褒める記事の中に、マニアックな単語や新しい言葉にも辞書が対応していて素晴しい、というのがありました。でも、それはそんなに凄いことなんでしょうか。結局は、ある程度の頻度でアップグレードしなければならないし、それでも「ジャストシステム様が登録してくださる」のでない限り、使う言葉が辞書に載らないことだってあるでしょう。


そこでユーザ辞書に登録するわけですが、まあ、面倒ですよね?いちいち登録してられっか、ですよね?だから辞書がいいソフトがいいんだよ、と。

違うのです。その発想を逆転して下さい。辞書登録さえスムースなら、ユーザ辞書で十分なのです。SKK では、辞書登録はシームレスです。変換中に、使いたい漢字が候補に上がってこなかったら、そのまま辞書登録モードに「自動的に」入ってくれます。そこで変換結果を入力すれば、辞書に登録してくれます。


たぶん皆さんも「この字を変換するときには、一回○○と入れて変換して、一字消して、次に○○と入れて変換する」みたいな妙な方法を使うことがあるでしょう。ちょっと珍しい名字とかね。辞書登録が面倒で、毎回そうやってたりする。でも SKK なら、一度だけそれをやれば次からはもう既に辞書に登録されているのです。
文章から離れて辞書登録ウィンドウを表示して…なんて確かにやってられませんが、SKK のやりかたなら「普通に使ってるだけで辞書がガンガン鍛えられていく」のです。

さあ、騙されたと思って…

使ってみたらいいと思います。フリーですから、もし合わなかったら捨てればいいだけです。

SKK の使い方は独特なので、わからないところはマニュアルを読む必要があるかもしれません。JavaScript で書かれたチュートリアルもあります。少々敷居が高いのは事実だと思いますが、それだけの価値はあるはずです。

確かに僕も、最初はまるで利き手じゃないほうの手で箸を持つようなもどかしさを感じましたが、慣れればもう手放せません。というか、忘れます。優れた道具というものは、その存在を忘れて作業に没頭させてくれるものだと思います。一旦慣れてさえしまえば、SKK はあなたの意識から消えて、ただ黙々と作業を支えてくれることでしょう。